上あがり框かまち

上あがり框かまち（あがりがまち/あがりかまち・上うえ框かまち）は、主おもに玄関げんかんの上あがり口ぐちで履物はきものを置おく土間どまの部分ぶぶんと廊下ろうかや、玄関げんかんホール等とうの床ゆかとの段差だんさ部ぶに水平すいへいに渡わたした横木よこぎをいう。まれに式台しきだいの部位ぶいを指さすことがある。日本にっぽん建築けんちくにおける床ゆかの間あいだの段差だんさ部ぶでは床框とこがまち（とこがまち）と呼よび区別くべつする。

目的もくてき

廊下ろうかや玄関げんかんホールの床ゆか材ざいを切きり落おとした切断せつだん面めんを隠かくし、床ゆか材ざいのささくれを防ふせぐ目的もくてきで用もちいる化粧けしょう材ざいである。そのため、床ゆか材ざいと同種どうしゅの材料ざいりょうである必要ひつようはなく色いろの異ことなる樹き種しゅを初はじめとして、床ゆか材ざいと異ことなる材ざい種しゅの石材せきざいや人造じんぞう大理石だいりせき（テラゾー）等とうが採用さいようされる傾向けいこうがある。

材ざい種しゅ

日本にっぽんにおいて、玄関げんかんは履物はきものを履はき替かえる場所ばしょであり、他た用途ようとの室しつに比くらべて人ひとの交通こうつう量りょうが比較的ひかくてき多おおい。加くわえて、履物はきものに付着ふちゃくした外部がいぶの埃ほこりや砂すななども多おおいため、一般いっぱん的てきに暴露ばくろ状態じょうたいの外部がいぶほどには耐たい候こう性せいを要求ようきゅうされることはないが歩行ほこう回数かいすうが多おおいこともあり耐久たいきゅう性せいを求もとめられる。さらに、段差だんさを乗のり越こえるために足あしの踏ふみ込こむ力ちからが強つよいため他たの床ゆか材ざいよりも強度きょうどを求もとめる傾向けいこうがある。このため、木材もくざいを用もちいる場合ばあいは表面ひょうめんの木目もくめ（肌理きめ、きめ、もくめ）が美うつくしく強度きょうどのある堅けん木き（かたき、かたぎ）を用もちい、木材もくざい以外いがいの材料ざいりょうでは石材せきざい・人造じんぞう大理石だいりせき・プラスチック系けいの部材ぶざいが使つかわれることが多おおい。

寸法すんぽう

建築けんちく物ぶつに関かかわる各種かくしゅ規定きていを定さだめた法令ほうれいの一ひとつである建築けんちく基準きじゅん法ほう施行しこう令れいでは一般いっぱん的てきな木造もくぞう建築けんちく物ぶつの「居室きょしつの天井てんじょうの高たかさ、床ゆかの高たかさ及および防湿ぼうしつ方法ほうほう」を「第だい二に章しょう一般いっぱん構造こうぞう第だい二に節せつ第だい二に十じゅう二に条じょう一いち号ごう」において

『床ゆかの高たかさは、直下ちょっかの地面じめんからその床ゆかの上面うわつらまで四よん十じゅう五ごセンチメートル以上いじょうとすること。』

と定さだめている。身近みぢかな高たかさの例れいとしては一般いっぱん的てきな椅子いすの座ざ面めんの高たかさに相当そうとうし、建築けんちく物ぶつにおいては玄関げんかんの床ゆか面めんである土間どまから廊下ろうか・玄関げんかんホール等とうの段差だんさとして現あらわれる。

この45cmの段差だんさは日本人にっぽんじんの一般いっぱん的てきな体格たいかくの人ひとであっても土間どまから常時じょうじ上のぼり下くだりするには高たか過すぎるために、土間どまから順じゅんに履物はきものの靴くつ脱ぬぎの利便りべん性せいのために置おく一段いちだん高たかい沓脱くつぬぎ石せき、ベンチのように腰掛こしかけることのできる式台しきだいを経へて廊下ろうか・玄関げんかんホール等とうに至いたる。

一方いっぽう、前述ぜんじゅつの建築けんちく基準きじゅん法ほう施行しこう令れい第だい二に十じゅう二に条じょう本文ほんぶんの但ただし書がきには居室きょしつの床下ゆかしたに防湿ぼうしつを施ほどこしている場合ばあいには45cmの制約せいやくを解除かいじょすることが謳うたわれており、コストパーフォーマンスを考慮こうりょした木造もくぞう住宅じゅうたくでは建物たてものの水平すいへい投影とうえい面積めんせきに相当そうとうする全面ぜんめんにコンクリートを敷しいたベタ基礎きそと呼よぶ基礎きそ方式ほうしきを採用さいようして防湿ぼうしつ効果こうかを兼かねる場合ばあいがある。建築けんちく計画けいかく上じょうでは土間どまのある住宅じゅうたく・外部がいぶと段差だんさの少すくない一体化いったいかしたリビングルームが生うまれる要素ようその一ひとつとなる。

高たかさ

建築けんちく基準きじゅん法ほう等とうの規定きていの存在そんざいしなかった時代じだい、古刹こさつに代表だいひょうされる建築けんちく物ぶつでは式台しきだいから廊下ろうかに至いたる段差だんさを構造こうぞう材ざいとしての役目やくめを持もたせて一本いっぽんの木材もくざいで上あがり框かまちとすることがあり、上あがり框かまちの高たかさ寸法すんぽうは十じゅう数すうcmから数すう十じゅうcmのものまで存在そんざいする。

建築けんちく基準きじゅん法ほう施行しこう令れい第だい二に十じゅう二に条じょう本文ほんぶんの但ただし書がきにより、居室きょしつ床ゆか面めんと地表ちひょう面めんの互たがいの制約せいやくが無なくなったことで、玄関げんかんの土間どまから廊下ろうか・玄関げんかんホール等とうに至いたる高たかさや段差だんさは寸法すんぽうの選択せんたくに自由じゆう度どが生うまれ、バリアフリーを代表だいひょうとする使つかい勝手がってを優先ゆうせんした高たかさが選えらばれるようになり、上あがり框かまちの高たかさも追従ついしょうし、構造こうぞう材ざいとしての役目やくめを失うしない、化粧けしょう材ざいとしての役割やくわりが強つよまっていき様式ようしき化かしていくことになる。この代表だいひょう例れいが共同きょうどう住宅じゅうたくの玄関げんかん廻まわりの段差だんさである。

共同きょうどう住宅じゅうたくは機能きのう性せいを重視じゅうしし且かつ低廉ていれんな価格かかくで分譲ぶんじょうや賃貸ちんたいすることに着眼ちゃくがんされる傾向けいこうがあり、またバリアフリーを促進そくしんする観点かんてんから、上あがり框かまちの部材ぶざいの高たかさは10cm内外ないがいが多おおく5cmに満みたない事例じれいもある。その結果けっか、土間どまと廊下ろうかの異ことなる床ゆか材ざいを区切くぎるために取とりつける部材ぶざいを指さす見切みきり材ざいとして形骸けいがい化かしている。

長ながさ

上あがり框かまちの長ながさは玄関げんかんの幅はばである間口まぐちに比例ひれいし、人ひとの出入でいりの多おおい建物たてもの用途ようとでは長ながくなる傾向けいこうがある。他方たほう、低廉ていれんさを求もとめる住宅じゅうたくでは下駄箱げたばこや玄関げんかん用ようシステム家具かぐなどの奥行おくゆき分ぶんの寸法すんぽうを生いかして長ながさを短みじかくする場合ばあいがある。

工業こうぎょう化か

住宅じゅうたく部材ぶざいメーカー各社かくしゃでは建設けんせつ現場げんば内ないにおける取とり付つけに伴ともなう作業さぎょうの省力しょうりょく化かや安定あんていした製品せいひん供給きょうきゅうの点てんで上あがり框かまち・式台しきだい・付つけ框かまちをセットにしたユニット製品せいひんを販売はんばいしている。