中澤なかざわ年みのる章あきら

ヒト
性別せいべつ	男性だんせい
国籍こくせき	日本にっぽん
母語ぼご表記ひょうき	幽斎ゆうさい年ねん章あきら、中澤なかざわ年みのる章あきら
名な	としあき
読よみ仮名がな	なかざわとしあき
生年月日せいねんがっぴ	1864
出生しゅっしょう地ち	巨摩こま郡ぐん
死亡しぼう年月日ねんがっぴ	1921
職業しょくぎょう	浮世絵うきよえ師し、画家がか
師匠ししょう	月岡つきおか芳年よしとし
活動かつどう地ち	江戸えど、山梨やまなし県けん
ムーブメント	日本にっぽん画が
コレクション所蔵しょぞう者しゃ	ニューヨーク公共こうきょう図書館としょかん版画はんがコレクション
作者さくしゃの著作ちょさく権けん状態じょうたい	著作ちょさく権けん保護ほご期間きかん満了まんりょう

中澤なかざわ年みのる章あきら（なかざわとしあき、元治もとはる元年がんねん8月がつ20日はつか（1864年ねん 9月がつ20日はつか） - 大正たいしょう10年ねん（1921年ねん））とは、明治めいじ時代じだいの浮世絵うきよえ師し。

来歴らいれき

月岡つきおか芳年よしとしの門人もんじん。姓せいは中澤なかざわ、名なは延のべ太郎たろう。年とし章あきらは号ごうで、幽斎ゆうさいは別べつ号ごう。甲斐かい国こく巨摩こま郡ぐん布施ふせ村むら（現在げんざいの山梨やまなし県けん中央ちゅうおう市し小井川こいかわ）の百姓ひゃくしょう・惣そう甫はじめ・りうの長男ちょうなんとして生うまれる。6歳さいの時とき父ちちを亡なくし、2年ねん後ごに継父けいふ・喜七きしちが入婿いりむこ、弟おとうとが生うまれる。明治めいじ14年ねん（1881年ねん）継父けいふの姪めい・ゑいと結婚けっこんするが、4年ねん後ごに離縁りえん。その後ご、家いえを弟おとうとに任まかせ上京じょうきょうし、月岡つきおか芳年よしとしの内弟子うちでしとなった。

月岡つきおか芳年よしとしに師事しじした理由りゆうは明あきらかではないが、芳年ほうねんは元治もとはる元年がんねん（1864年ねん）に甲府こうふ道祖神どうそじん祭礼さいれいにおける幕まく絵え制作せいさくのため甲府こうふを訪おとずれており、1871年ねん（明治めいじ4年ねん）にも山梨やまなし県けんを訪おとずれている^[1]。元治もとはる元年がんねんの来訪らいほう時じには年とし章しょうがまだ年少ねんしょうであるため、明治めいじ4年ねんの来訪らいほう時じに芳年ほうねんに出会であったか、もしくは山梨やまなしにおいて地元じもと絵師えしに支持しじし、東京とうきょうの芳年ほうねんを紹介しょうかいされ入門にゅうもんした可能かのう性せいが考かんがえられている^[1]。

明治めいじ21年ねん（1888年ねん）の「青山あおやま練兵れんぺい所しょ観兵かんぺい式しき御幸みゆき之の図ず」（大判おおばん三さん枚まい続つづけ）が初はつ作さくで、明治めいじ39年ねん（1906年ねん）まで30点てん弱じゃくの錦絵にしきえが確認かくにんされている。内訳うちわけは、日にち清しん戦争せんそう関係かんけいなどの戦争せんそう絵えが最もっとも多おおい。他たに、大判おおばん3枚まい続つづけの「義経よしつね再興さいこう記き」のような武者むしゃ絵えや、「日本にっぽん撰せん景けい」などの風俗ふうぞく画がが知しられている。

明治めいじ31年ねん（1898年ねん）頃ごろに山梨やまなしに戻もどり、県内けんないを転々てんてんとしながら地元じもとの人々ひとびとのために肉筆にくひつ画がを手てがけた。これは、日にち清しん戦争せんそう後ごに浮世絵うきよえが衰退すいたいに向むかい浮世絵うきよえ師しを引退いんたいしたのが理由りゆうだと考かんがえられる。年とし章しょうの肉筆にくひつ画がは錦絵にしきえとは違ちがって世相せそう画がは見みられず、歴史れきし画が、人物じんぶつ画が、美人びじん画が、更さらに南画なんが風ふうが強つよい山水さんすい画がや花鳥かちょう画がなど、地元じもとを中心ちゅうしんに百ひゃく数すう十じゅう点てん確認かくにんされている。大正たいしょうの始はじめには三日みっか町まちの太田おおた源げん七なな、中村なかむら英一ひでかず、加藤かとう肇はじめ氏し等とうが子供こどもの頃ころ師事しじを受うけ教示きょうし代だいとして酒さけを持参じさんしたそうである^[2]。山梨やまなし県けんで大おおきな被害ひがいを出だしていた寄生虫きせいちゅう感染かんせん症しょうである地方ちほう病びょうの啓蒙けいもうのために作つくられた絵本えほんである『俺おれは地方ちほう病びょう博士はかせだ』の挿絵さしえもおそらく担当たんとうしたと考かんがえられている^[3]^[4]。大正たいしょう10年ねん東京とうきょうで客死かくししたと伝つたえられるが、異説いせつもある。

代表だいひょう作さく

錦絵にしきえ

「義経よしつね再興さいこう記き」大判おおばん3枚まい続つづけ刊かん年ねん不ふ詳しょう
「日本にっぽん撰せん景けい」大判おおばん3枚まい続つづけ刊かん年ねん不ふ詳しょう
「青山あおやま練兵れんぺい所しょ観兵かんぺい式しき御幸みゆき之の図ず」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ21年ねん
「金かね州しゅう大和尚だいおしょう山やま斥候せっこう奮戦ふんせん之の図ず」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ27年ねん（1894年ねん）
「威海衛いかいえい陸海りくかい攻撃こうげき之の図ず」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ28年ねん（1895年ねん）
「日本にっぽん艦隊かんたい強きょう勇いさむ威海衛いかいえいヲ撃破げきは之の図ず」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ28年ねん
「凱旋がいせん還幸かんこう新橋しんばし通どおり御お」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ28年ねん山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「大日本帝国だいにっぽんていこく勲章くんしょう鏡きょう」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ28年ねん
「女おんな礼れい裁縫さいほう之の図ず」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ28年ねん山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「三さん曲きょく合奏がっそう之の図ず」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ28年ねん山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「我わが第だい二軍摩天嶺之砲碁占領之図」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ28年ねん山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「我わが第だい二軍威海衛砲碁占領之図」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ28年ねん山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「日本にっぽん海軍かいぐん陸戦りくせん隊たい北京ぺきん進軍しんぐん之の図ず」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ28年ねん山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「清国きよくに三大将欲雪敗辱圍金州焼却而被逆撃干守備隊之図」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ28年ねん山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「聖せい駕が還幸かんこう市民しみん奉迎ほうげい之の図ず」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ28年ねん山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「講和こうわ談判だんぱん之の図ず」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ28年ねん山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「弁慶べんけい韃靼だったんの剛つよし将はた幹みき哩まいる毘」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ29年ねん（1896年ねん）山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「日本にっぽん撰せん景けい松島まつしま之の雪ゆきの旦だん」大判おおばん明治めいじ29年ねん山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「源平げんぺい盛衰せいすい記き」大判おおばん明治めいじ30年ねん（1897年ねん）山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「教訓きょうくん歴史れきし画が解かい」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ31年ねん（1898年ねん）山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「日本にっぽん歴史れきし教訓きょうくん画が」大判おおばん3枚まい続つづけの内うち2枚まい明治めいじ31年ねん山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「神君しんくん大久おおひさ保彦やすひこ左ひだりヱ門もん」大判おおばん3枚まい続つづけ明治めいじ39年ねん（1906年ねん）山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
「見立みたて雪月花せつげっか之の内うち五条橋ごじょうばし之これ月がつ」大判おおばん3枚まい続つづけ

肉筆にくひつ浮世絵うきよえ

作品さくひん名めい	技法ぎほう	形状けいじょう・員数いんずう	寸法すんぽう（縦たてx横よこcm）	所有しょゆう者しゃ	年代ねんだい
松まつに朝陽あさひ之これ図ず	板いた地ち著ちょ色しょく			諏訪すわ神社じんじゃ（中央ちゅうおう市し東花輪ひがしはなわ）	1902年ねん（明治めいじ35年ねん）
明治天皇めいじてんのう御幸みゆき記念きねん	板いた地ち著ちょ色しょく			姫宮ひめみや神社じんじゃ（韮崎にらさき市し船山ふなやま）	1918年ねん（大正たいしょう7年ねん）
春秋しゅんじゅう屏風びょうぶ	紙かみ本ほん著ちょ色しょく	六ろく曲きょく一双いっそう	131.4x310.0	山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん^[5]
三国志さんごくし	紙かみ本ほん着色ちゃくしょく	4幅ぶく対たい	128.458.4（各かく）	山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん^[6]^[7]^[8]^[9]	1910年ねん（明治めいじ43年ねん）
古梅ふるうめ	紙かみ本ほん墨画ぼくが		132.4x67.7	山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん^[10]	1920年ねん（大正たいしょう9年ねん）
楠公なんこう父子ふし之の図ず	絹本けんぽん著ちょ色しょく		117.0x51.8	山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん^[11]
寿老人じゅろうじん	絹本けんぽん著ちょ色しょく		103.0x34.0	山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん
梅うめ天神てんじん	紙かみ本ほん著ちょ色しょく		130.5x65.0	山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん^[12]
針仕事はりしごと	紙かみ本ほん著ちょ色しょく		123.3x46.9	山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん^[13]
白兎しろうさぎ	紙かみ本ほん著ちょ色しょく		113.3x58.9	山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん^[14]
夏なつ（風鈴ふうりんと金魚きんぎょ）	紙かみ本ほん著ちょ色しょく		127.4x54.2	山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん^[15]
若尾わかお逸平いっぺい一代いちだい図ず屏風びょうぶ	絹本けんぽん著ちょ色しょく	三さん曲きょく一いち隻せき		南みなみアルプス市立しりつ美術館びじゅつかん

脚注きゃくちゅう

^ ^a ^b 『芳年ほうねんと山梨やまなし』（山梨やまなし県立けんりつ博物館はくぶつかん、2018）
^ 『甲斐かい路ろ』第だい13号ごう、50頁ぺーじ。
^ “杉浦すぎうら醫院いいん四方山話よもやまばなし: 杉浦すぎうら醫院いいん四方山話よもやまばなし―329 『中澤なかざわ年みのる章あきら挿絵さしえ』”. 杉浦すぎうら醫院いいん四方山話よもやまばなし (2014年ねん4月がつ17日にち). 2023年ねん1月がつ30日にち閲覧えつらん。
^ “杉浦すぎうら醫院いいん四方山話よもやまばなし: 杉浦すぎうら醫院いいん四方山話よもやまばなし―267　『浮世絵うきよえ師し・中澤なかざわ年みのる章あきら－2』”. 杉浦すぎうら醫院いいん四方山話よもやまばなし (2013年ねん8月がつ29日にち). 2023年ねん1月がつ30日にち閲覧えつらん。
^ ［ID_8661］春秋しゅんじゅう屏風びょうぶ：資料しりょう情報じょうほう _ 収蔵しゅうぞう品ひんデータベース _ 山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん
^ ［ID_8662］三国志さんごくし：資料しりょう情報じょうほう _ 収蔵しゅうぞう品ひんデータベース _ 山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん
^ ［ID_8663 三国志さんごくし：資料しりょう情報じょうほう _ 収蔵しゅうぞう品ひんデータベース _ 山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん
^ ［ID_8664］三国志さんごくし：資料しりょう情報じょうほう _ 収蔵しゅうぞう品ひんデータベース _ 山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん
^ ［ID_8665］三国志さんごくし：資料しりょう情報じょうほう _ 収蔵しゅうぞう品ひんデータベース _ 山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん
^ ［ID_8666］古梅ふるうめ：資料しりょう情報じょうほう _ 収蔵しゅうぞう品ひんデータベース _ 山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん
^ ［ID_8667］楠公なんこう父子ふし之の図ず：資料しりょう情報じょうほう _ 収蔵しゅうぞう品ひんデータベース _ 山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん
^ ［ID_8671］梅うめ天神てんじん：資料しりょう情報じょうほう _ 収蔵しゅうぞう品ひんデータベース _ 山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん
^ ［ID_8672］針仕事はりしごと：資料しりょう情報じょうほう _ 収蔵しゅうぞう品ひんデータベース _ 山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん
^ ［ID_8673］白兎しろうさぎ：資料しりょう情報じょうほう _ 収蔵しゅうぞう品ひんデータベース _ 山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん
^ ［ID_8674］夏なつ（風鈴ふうりんと金魚きんぎょ）：資料しりょう情報じょうほう _ 収蔵しゅうぞう品ひんデータベース _ 山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん

参考さんこう文献ぶんけん

小林こばやし茂しげる編へん『甲斐かい路ろ』第だい13号ごう山梨やまなし郷土きょうど研究けんきゅう会かい、1962年ねん
日本にっぽん浮世絵うきよえ協会きょうかい編へん　『原色げんしょく浮世絵うきよえ大だい百科ひゃっか事典じてん』第だい2巻かん大修館書店たいしゅうかんしょてん、1982年ねん ※71頁ぺーじ
守屋もりや正彦まさひこ「明治めいじ時代じだいの浮世絵うきよえ師し中澤なかざわ年ねん章あきらについて」『山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん研究けんきゅう紀要きよう』第だい4号ごう、山梨やまなし県立けんりつ美術館びじゅつかん、1-59頁ぺーじ、1983年ねん3月がつ31日にち。NDLJP:7953391。 (要よう登録とうろく)
吉田よしだ漱『浮世絵うきよえの基礎きそ知識ちしき』雄山閣ゆうざんかく、1987年ねん