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交渉 - Wikipedia

交渉こうしょう

合意ごうい到達とうたつすることを目指めざして討議とうぎすること

交渉こうしょう(こうしょう、えい: negotiation)とは、合意ごうい到達とうたつすることを目指めざして討議とうぎすること[1]

概要がいよう

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交渉こうしょうとは、利害りがい関係かんけいしょうじているなかで、合意ごういてんるためにおこなわれる対話たいわ議論ぎろん取引とりひきである。その目標もくひょう双方そうほうれることができるしょ条件じょうけんみちびし、それに合意ごういすることである。[注釈ちゅうしゃく 1]

そのゲーム理論りろんのっとって利害りがい関係かんけいかたから、両者りょうしゃにとってられる利得りとく全体ぜんたいかぎられた利得りとく獲得かくとく交渉こうしょうゼロ交渉こうしょう両者りょうしゃ利益りえき全体ぜんたい限定げんていされていない問題もんだい解決かいけつ交渉こうしょうゼロ交渉こうしょうとして分類ぶんるいできる。ゼロ交渉こうしょうにおいて交渉こうしょう当事とうじしゃ一方いっぽうみずからの利益りえき最大さいだいしようとするとかなら交渉こうしょう相手あいて利益りえき最小さいしょうすることになるため、中間なかまあん見出みいだされなければ合意ごうい到達とうたつすることはむずかしい。しかしゼロ交渉こうしょう交渉こうしょう当事とうじしゃ一方いっぽう利益りえき最大さいだいしたとしても相手あいて損害そんがいあたえるとはかぎらないため、より合意ごうい到達とうたつしやすい。ただしそうてんによってはゼロ交渉こうしょう困難こんなんである場合ばあいもあり、たがいにつよ動機どうきづけが必要ひつようとなる。

外交がいこう交渉こうしょう条約じょうやく作成さくせい手段しゅだんとして、また国家こっかあいだ関係かんけい調整ちょうせいする基本きほんてき手段しゅだんとして頻繁ひんぱんもちいられる(くわしくは外交がいこう交渉こうしょう参照さんしょう)。また国内こくないでも裁判さいばんなどのほか紛争ふんそう処理しょり手段しゅだん利用りようするまえ交渉こうしょうくすことを義務ぎむとする場合ばあいもあり、交渉こうしょう国際こくさい社会しゃかいにおいても国内こくない社会しゃかいにおいても、利得りとく主要しゅよう調整ちょうせい過程かていである。

交渉こうしょう過程かてい

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交渉こうしょうおもみっつの段階だんかいから構成こうせいされる過程かていである。交渉こうしょう最初さいしょ段階だんかいにあるのが予備よび交渉こうしょうであり、この段階だんかい交渉こうしょう領域りょういき争点そうてん明確めいかくおこなう。また交渉こうしょう相手あいてとの連絡れんらく交渉こうしょう準備じゅんびつうじて信頼しんらい関係かんけい構築こうちくし、さらに事前じぜん交渉こうしょう相手あいて交渉こうしょうりょく状況じょうきょう調査ちょうさし、内部ないぶでも交渉こうしょう目標もくひょう代替だいたいあん準備じゅんびして交渉こうしょう戦術せんじゅつ立案りつあんする。

さらにほん交渉こうしょう移行いこうすると、交渉こうしょう事項じこうについての見解けんかい相違そういあきらかにするための意見いけん交換こうかん、またその対立たいりつかんする代替だいたいあん提案ていあん検討けんとう合意ごうい到達とうたつすることが可能かのう見込みこまれるしょ条件じょうけん列挙れっきょ検討けんとう成約せいやく条件じょうけん確認かくにんおこなわれる。条件じょうけんきや取引とりひききがおこなわれるのはおもにこの段階だんかいである。

最後さいご成約せいやく交渉こうしょうはいると合意ごうい可能かのうしょ条件じょうけん文章ぶんしょうとしてまとめ、その文言もんごんについて相互そうご検討けんとうする。合意ごうい内容ないよう具体ぐたいされ、細部さいぶ調整ちょうせい表現ひょうげんなどがここでおこなわれる。最終さいしゅうてきには合意ごうい文章ぶんしょうとなり、調印ちょういんすることでその交渉こうしょう終了しゅうりょうする。

交渉こうしょう技術ぎじゅつ場合ばあい状況じょうきょう

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(1)おおくのひとは、交渉こうしょう利益りえきうばいであるとかんがえる。

金額きんがく交渉こうしょうであるような場合ばあいにも、単純たんじゅんうばいではなく、安定あんていした関係かんけい維持いじや、信頼しんらい確立かくりつなど、べつ価値かち関与かんよしている場合ばあいがある。(おおくのひとは、ゼロ交渉こうしょう場合ばあいも、ゼロ交渉こうしょうだとかんがえる)。

(2)人間にんげんには、いったん攻撃こうげきされると、仕返しかえしをする習性しゅうせいがある。

ゲームの理論りろんにおけるもっとすぐれた戦略せんりゃくひとつに、しっぺがえ戦略せんりゃくtit for tat)がある。このことは、人間にんげん行動こうどう影響えいきょうおよぼし、人間にんげん習性しゅうせいになっている。この戦略せんりゃく欠点けってんは、相互そうごにこの戦略せんりゃく採用さいようする場合ばあいに、偶然ぐうぜん攻撃こうげききると、仕返しかえしが永久えいきゅうかえされるてんである。

(3)人間にんげんには、いったんたたかいになると、全力ぜんりょくとうとする習性しゅうせいがある。

歴史れきしつうじて、ったほうが、すべての利益りえき獲得かくとくするシステムであった。しかし、交渉こうしょうたたかいになれば、良好りょうこう関係かんけいうしなわれ、平和へいわてき共存きょうぞん共栄きょうえい不可能ふかのうになり、たたかいの荒廃こうはいがもたらされる。絶対ぜったい君主くんしゅ効率こうりつわるさから滅亡めつぼうし、民主みんしゅ主義しゅぎ国家こっかわる。

(4)人間にんげんには、相手あいて意図いとただしく把握はあくする能力のうりょくい。

社会しゃかい心理しんりがく帰属きぞく理論りろんあきらかにしたことは、人間にんげん相手あいて行動こうどう意図いとただしく把握はあくできないことである。自分じぶん自身じしんについては、そのむをない事情じじょうっており、いたみをかんじ、自分じぶん苦労くろう共感きょうかんてき理解りかいしているが、相手あいてたいしてはそうではない。根拠こんきょいのに、相手あいて最低さいてい最悪さいあく意図いとっていると即断そくだんしてしまうのである。なが自然しぜん状態じょうたいしたでは、当然とうぜん推定すいていであった。

交渉こうしょう技術ぎじゅつ

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(1)まず、相互そうご本心ほんしん正確せいかく主張しゅちょうしあうこと (アサーティブネス

自分じぶん主張しゅちょう相手あいてただしくつたえることが交渉こうしょう出発しゅっぱつてんである。自分じぶんにとっては自明じめい内容ないようでも、言葉ことばにして相手あいてつたえなければ、相手あいてにはからない。ただし、最低さいてい売却ばいきゃく価格かかくなど、通常つうじょう相手あいてわないこともある。

(2)つぎに、相手あいて意図いと正確せいかく把握はあくすること

つぎに、相手あいて主張しゅちょうただしく理解りかいして把握はあくすることが必要ひつようである。有名ゆうめいなオレンジのれいでは、ひとつのオレンジを姉妹しまいにんうばうが、あねじつはオレンジのかわだけしかったことが判明はんめいして、問題もんだい解決かいけつした。

(3)たたかうのではなく、共同きょうどう問題もんだい解決かいけつ目指めざすこと

相互そうご相手あいて主張しゅちょう意図いと把握はあくしたのちに、共同きょうどう問題もんだい解決かいけつ目指めざす。双方そうほうしんから満足まんぞくできる解決かいけつさく模索もさくする。

(4)妥結だけつのためのアイデアを可能かのうかぎおおすこと

妥協だきょうあんをなるべくおお考案こうあんする。「○○をゆずってくれれば、△△はゆずる」のようなあんおおす。この過程かていで、相手あいて主張しゅちょうをより正確せいかく把握はあくすることが可能かのうになる。

(5)主張しゅちょう内容ないようかんがえること

野球やきゅう選手せんしゅ年俸ねんぽう交渉こうしょうがまとまらない場合ばあいに、来期らいき出来高できだかばらせいれると妥結だけつすることがある。来期らいき活躍かつやく見通みとおしにがある場合ばあいには、それを反映はんえいさせたあんであれば、妥結だけつ可能かのうになりやすい。

(6)安易あんい譲歩じょうほしないこと

安易あんい譲歩じょうほすれば、交渉こうしょう容易ようい妥結だけつするが、自分じぶん不満ふまん蓄積ちくせきする。

(7)原則げんそく客観きゃっかんてき基準きじゅんしたがって、公平こうへい判断はんだんすること

その問題もんだいについて、すでおおくの研究けんきゅうおこなわれていて、国際こくさい機関きかん内外ないがい政府せいふ機関きかん採用さいようする原則げんそく基準きじゅん作成さくせいされている場合ばあいがある。そのような原則げんそく基準きじゅんまもる。交渉こうしょうにおいて正義まさよしちからである。

(8)調停ちょうていじん利用りようする場合ばあいがある

交渉こうしょうまった場合ばあいに、原則げんそく客観きゃっかんてき基準きじゅん目的もくてきで、調停ちょうていじん交渉こうしょうじん、ネゴシエーター)を利用りようする場合ばあいがある。ただし、調停ちょうていじんにも利害りがいがあり、かえって敵対てきたいがもたらされ、交渉こうしょう長引ながびき、紛争ふんそうかえされることがある。

(9)交渉こうしょう関与かんよする人数にんずうらす

権限けんげん代表だいひょう2めいあいだ交渉こうしょうにする。交渉こうしょう関与かんよする人間にんげんえると、利害りがい調整ちょうせい非常ひじょう困難こんなんになる。

(10)合意ごうい内容ないよう明確めいかくにする

合意ごうい内容ないよう文章ぶんしょうしておく。合意ごうい内容ないようがうまく機能きのうするかどうか確認かくにんして修正しゅうせいする。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ したがって基本きほんてき交渉こうしょうはおたがいに利得りとくられるウィン・ウィン(win-win)の関係かんけいとなるはずであり、利害りがい不一致ふいっちとなればその交渉こうしょう失敗しっぱいとなる。[よう出典しゅってん]

出典しゅってん

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  1. ^ Oxford Dictionary

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 佐久間さくまけん交渉こうしょうりょく入門にゅうもん』(日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃ、1989ねん
  • フィッシャー「ハーバードりゅう交渉こうしょうじゅつ」、金山かなやまやく三笠みかさ書房しょぼう、1982ねん ISBN 978-4837903604
  • ユーリー「ハーバードりゅうNOとわせない交渉こうしょうじゅつ」、斎藤さいとうやく三笠みかさ書房しょぼう、1992ねん ISBN 978-4837955832
  • ベイザーマン「交渉こうしょう認知にんち心理しんりがく」、奥村おくむらやく白桃はくとう書房しょぼう、1997ねん ISBN 978-4561232759

関連かんれん項目こうもく

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