(Translated by https://www.hiragana.jp/)
団体交渉 - Wikipedia

団体だんたい交渉こうしょう(だんたいこうしょう, Collective Bargaining)とは、労働ろうどう組合くみあいが、使用しようしゃまたはその団体だんたい労働ろうどう協約きょうやく締結ていけつその事項じこうかんして交渉こうしょうすること[1]団交だんこう(だんこう)とぶこともおおい。

OECD加盟かめいこく労働ろうどうしゃの3にん1人ひとりは、その賃金ちんぎん労働ろうどう条件じょうけん団体だんたい交渉こうしょうによる労働ろうどう協約きょうやくによって決定けっていされている[1]

種別しゅべつ

編集へんしゅう

OECDは団体だんたい交渉こうしょうシステムを以下いかの5つに分類ぶんるいしている[1]上位じょういレベル(産業さんぎょうセクター)で締結ていけつされた協定きょうていを、企業きぎょうレベルで変更へんこう可能かのう余地よちがあるかは様々さまざまである[1]場合ばあいによっては、賃金ちんぎん調整ちょうせい輸出ゆしゅつセクターと国内こくないセクターあいだ、もしくは企業きぎょうあいだ)がなされることがある[1]

中央ちゅうおう集権しゅうけんてき柔軟じゅうなんせいよわ団体だんたい交渉こうしょう制度せいど
産業さんぎょうセクターでの協定きょうてい強力きょうりょくであり、下位かいレベルでの逸脱いつだつ可能かのうだがほとんどない。賃金ちんぎん調整ちょうせいほとん[1]。 フランス、アイスランド、イタリア、ポルトガル、スロベニア、スペイン、スイスなど[1]
中央ちゅうおう集権しゅうけんてき柔軟じゅうなんてき団体だんたい交渉こうしょう制度せいど
産業さんぎょうセクターでの協定きょうてい強力きょうりょくであり、下位かいレベルでの逸脱いつだつ限定げんていてきなものである。一方いっぽう賃金ちんぎん調整ちょうせいはセクター共通きょうつう強固きょうこである[1]。ベルギー、フィンランドなど[1]
組織そしき分権ぶんけんてきかつ柔軟じゅうなんてき団体だんたい交渉こうしょう制度せいど
産業さんぎょうセクターでの協定きょうてい重要じゅうようだが、下位かいレベル協定きょうてい修正しゅうせいできる余地よちおおきい[1]。オーストリア、デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンなど[1]
おおきく分権ぶんけんされた団体だんたい交渉こうしょう制度せいど
企業きぎょうレベルでの交渉こうしょうおもであるが、産業さんぎょうセクターレベルの交渉こうしょう役割やくわりたしている[1]日本にっぽん春闘しゅんとうとして独自どくじ形式けいしきつ)、豪州ごうしゅう、アイルランド[1]など。
完全かんぜん分権ぶんけんされた団体だんたい交渉こうしょう制度せいど
団体だんたい交渉こうしょう企業きぎょうまたは事業じぎょうしょレベルに限定げんていされ、政府せいふ影響えいきょうりょくほとんいか限定げんていてき[1]。カナダ、チリ、チェコ共和きょうわこく、エストニア、ハンガリー、韓国かんこく、ラトビア、リトアニア、メキシコ、ニュージーランド、ポーランド、トルコ、英国えいこく米国べいこくなど[1]

OECDは、中央ちゅうおう集権しゅうけんがたまたは組織そしきされた分散ぶんさんがたのグループは、完全かんぜん分散ぶんさんがたなグループよりも、より労働ろうどう市場いちばをもたらしていることを示唆しさしている[1]。たとえば女性じょせい若者わかものていスキル労働ろうどうしゃ失業しつぎょうりつ不完全ふかんぜん雇用こようパートタイマーりつひくさにあらわれている[1]

国際こくさい労働ろうどう条約じょうやく

編集へんしゅう

国際こくさい労働ろうどう機関きかん(ILO)だい98ごう条約じょうやく団結だんけつけんおよ団体だんたい交渉こうしょうけんについての原則げんそく適用てきようかんする条約じょうやく)は、団体だんたい交渉こうしょうけんみとめ、政府せいふはそれを促進そくしんする措置そちおこなうようもとめている[2]。Fundamental convention(中核ちゅうかくてき労働ろうどう基準きじゅん)のひとつであり、日本にっぽんはこれを批准ひじゅんしている。

だい4じょう 労働ろうどう協約きょうやくにより雇用こよう条件じょうけん規制きせいする目的もくてきをもっておこな使用しようしゃまた使用しようしゃ団体だんたい労働ろうどうしゃ団体だんたいとのあいだ自主じしゅてき交渉こうしょうのための手続てつづき充分じゅうぶん発達はったつおよ利用りよう奨励しょうれいし、つ、促進そくしんするため、必要ひつようがある場合ばあいには、国内こくない事情じじょうてきする措置そちらなければならない。 —  1949ねん団結だんけつけんおよ団体だんたい交渉こうしょうけん条約じょうやくだい98ごう

日本にっぽん

編集へんしゅう

日本にっぽんでは、労働ろうどう組合くみあい会社かいしゃあいだ交渉こうしょうのうち、とく日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい28じょうおよ労働ろうどう組合くみあいほうによって保障ほしょうされた手続てつづきにのっとっておこなうものをいう。これらの手続てつづきによらない交渉こうしょう一般いっぱん労使ろうし協議きょうぎとして区別くべつされる。団体だんたい交渉こうしょうにこのような手続てつづきを保障ほしょうしているのは、労働ろうどう組合くみあいほう労使ろうし対立たいりつ前提ぜんていとしたほう制度せいどであり、交渉こうしょう決裂けつれつしたときにはストライキなどの争議そうぎ行為こうい予定よていしているためである。

日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい28じょう 勤労きんろうしゃ団結だんけつする権利けんりおよ団体だんたい交渉こうしょうその団体だんたい行動こうどうをする権利けんりは、これを保障ほしょうする。

労働ろうどう組合くみあいほうだいろくじょう 労働ろうどう組合くみあい代表だいひょうしゃまた労働ろうどう組合くみあい委任いにんけたものは、労働ろうどう組合くみあいまた組合くみあいいんのために使用しようしゃまたはその団体だんたい労働ろうどう協約きょうやく締結ていけつその事項じこうかんして交渉こうしょうする権限けんげんゆうする。

使用しようしゃは、誠実せいじつ交渉こうしょう義務ぎむにより、労働ろうどう組合くみあいよりもうれられた団体だんたい交渉こうしょう正当せいとう理由りゆうなくして拒否きょひすることはできない。正当せいとう理由りゆうのない団体だんたい交渉こうしょう拒否きょひ不当ふとう労働ろうどう行為こういとなる(労働ろうどう組合くみあいほうだい7じょうだい2ごう)。

実際じっさいにはおおくの会社かいしゃにおいて、団体だんたい交渉こうしょうまえに、事前じぜん労使ろうし交渉こうしょうにおいて会社かいしゃ問題もんだい状況じょうきょう把握はあく意見いけん交換こうかんおこなわれていて、そのせき主要しゅよう労働ろうどう条件じょうけんひとしについて協議きょうぎされることもおおい。また、企業きぎょうべつ労働ろうどう組合くみあい圧倒的あっとうてき主流しゅりゅうである日本にっぽんにおいては、企業きぎょうがい労働ろうどう組合くみあい参加さんかする団体だんたい交渉こうしょうおおくない。

団体だんたい交渉こうしょう当事とうじしゃ

編集へんしゅう

労働ろうどう組合くみあい

編集へんしゅう

労働ろうどう組合くみあいほうだいじょう 労働ろうどう組合くみあいは、労働ろうどう委員いいんかい証拠しょうこ提出ていしゅつしてだいじょうおよだいこう規定きてい適合てきごうすることを立証りっしょうしなければ、この法律ほうりつ規定きていする手続てつづき参与さんよする資格しかくゆうせず、つ、この法律ほうりつ規定きていする救済きゅうさいあたえられない。

労働ろうどう組合くみあいほうさだめる要件ようけんたす労働ろうどう組合くみあいのみ使用しようしゃたいして団体だんたい交渉こうしょう要求ようきゅうでき、それが拒否きょひされた場合ばあいには不当ふとう労働ろうどう行為こういとして労働ろうどう委員いいんかい救済きゅうさいもうてをなしうる。

労働ろうどう組合くみあい団体だんたい交渉こうしょう第三者だいさんしゃ委任いにんすること可能かのうで(労働ろうどう組合くみあいほうだい6じょう)、これをもって、上部じょうぶ組織そしき下部かぶ組織そしき外部がいぶ労働ろうどう組合くみあい交渉こうしょう参加さんかする権限けんげんつ。委任いにんあきらかであれば当該とうがい組合くみあい組合くみあいいんである必要ひつようもないので、弁護士べんごしひとし専門せんもんでもかまわない。

使用しようしゃ

編集へんしゅう

労働ろうどう組合くみあい交渉こうしょう相手あいてとなる「使用しようしゃ」は、原則げんそくとして労働ろうどう契約けいやくうえ使用しようしゃ一致いっちするのが通常つうじょうである。しかしながら、組合くみあいいんとのあいだ労働ろうどう契約けいやく近似きんじする関係かんけいにあるものについては、例外れいがいてき労働ろうどう組合くみあいほうじょう規範きはんおよぼすべき場合ばあいがある。具体ぐたいてき認定にんていされたケースとして以下いかれいがある。

子会社こがいしゃ団体だんたい交渉こうしょう

2007ねん6月25にち宮城みやぎけん労働ろうどう委員いいんかいは、親会社おやがいしゃたいし、親会社おやがいしゃ経営けいえい方針ほうしんにより解散かいさんした子会社こがいしゃ従業じゅうぎょういん組織そしきする労働ろうどう組合くみあいとの団体だんたい交渉こうしょうおうじるようめいじた[3]親会社おやがいしゃ子会社こがいしゃ全面ぜんめんてき支配しはいし、子会社こがいしゃ親会社おやがいしゃ意思いし決定けっていはんすることができない構造こうぞうであり、実質じっしつてき影響えいきょうりょくなどを行使こうししていた場合ばあいには、直接ちょくせつ雇用こよう関係かんけいのない親会社おやがいしゃ使用しようしゃせい雇用こよう責任せきにんみとめた。団体だんたい交渉こうしょうとは、雇用こよう関係かんけいがある使用しようしゃ労働ろうどう組合くみあいとのあいだおこなわれるものであり、直接ちょくせつ雇用こよう関係かんけいのない親会社おやがいしゃにその義務ぎむがあるかがあらそわれた。

退職たいしょくしゃ団体だんたい交渉こうしょうけん認定にんてい

住友ゴム工業すみともごむこうぎょう工場こうじょうない石綿いしわた使用しようする工程こうていたずさわり、その1997ねんおよ2000ねん退職たいしょくちゅうかわしゅ発症はっしょうしたもと社員しゃいん2にんおよ遺族いぞく1にんが、労働ろうどう組合くみあい兵庫ひょうごユニオン』をつうじ、同社どうしゃたいし、健康けんこう診断しんだん補償ほしょう制度せいど確立かくりつもと団体だんたい交渉こうしょう要求ようきゅうしたが同社どうしゃ拒否きょひし、2006ねん11月どうユニオンが、兵庫ひょうごけん労働ろうどう委員いいんかい救済きゅうさいもうてたが却下きゃっかされたため、神戸こうべ地裁ちさい提訴ていそ2008ねん12月いちしん判決はんけつ遺族いぞく1にんのぞのこり2にんについて団体だんたい交渉こうしょうけんみとめる司法しほう判断はんだんしめ判決はんけつをいいわたし、2009ねん12月しん大阪おおさか高裁こうさい)もこれを追認ついにん最高裁さいこうさい2011ねん11月11にちづけ兵庫ひょうごけんおよ同社どうしゃがわ上告じょうこく棄却ききゃくする決定けっていをし、退職たいしょくしゃ団交だんこうけんみとめる司法しほう判断はんだん確定かくていした[4]

団体だんたい交渉こうしょう対象たいしょう事項じこう

編集へんしゅう

団体だんたい交渉こうしょうにおける議題ぎだいは、法律ほうりつでは特段とくだんまっていないが、その内容ないようにより区別くべつしてかんがえる必要ひつようがある。

義務ぎむてき交渉こうしょう事項じこう
労働ろうどうしゃ団体だんたい交渉こうしょう要求ようきゅうしたさい使用しようしゃ団体だんたい交渉こうしょう拒否きょひできない事項じこうす。賃金ちんぎん労働ろうどう時間じかんなど、労働ろうどう条件じょうけんその労働ろうどうしゃ待遇たいぐうおよ労使ろうし関係かんけいのルールなどとされている。
任意にんいてき交渉こうしょう事項じこう
使用しようしゃ任意にんいおうじるかぎりで団体だんたい交渉こうしょう議題ぎだいとなる事項じこうす。人事じんじけん経営けいえいけん生産せいさんかんする事項じこうなどをはじめ、使用しようしゃ専権せんけん事項じこうぞくするものが想定そうていされている。もっとも、経営けいえいけんぞくするものであっても組合くみあいいん雇用こよう労働ろうどう条件じょうけんかんするかぎりは義務ぎむてき交渉こうしょう事項じこうとなり、人事じんじけんのうち個々ここ労働ろうどうしゃ解雇かいこ配転はいてんとう事後じご処理しょりについても義務ぎむてき交渉こうしょう事項じこうとなると解釈かいしゃくされている。

団体だんたい交渉こうしょう現況げんきょう

編集へんしゅう

厚生こうせい労働省ろうどうしょう調査ちょうさによると、過去かこ3年間ねんかん平成へいせい26ねん7がつ1にち - 平成へいせい29ねん6がつ30にち)において、使用しようしゃがわとのあいだおこなわれた団体だんたい交渉こうしょう状況じょうきょうをみると、「団体だんたい交渉こうしょうおこなった」67.6%(平成へいせい27ねん調査ちょうさ67.8%)、「団体だんたい交渉こうしょうおこなわなかった」32.0%(どう32.2%)となっている。「団体だんたい交渉こうしょうおこなった」労働ろうどう組合くみあいについて、交渉こうしょう形態けいたい複数ふくすう回答かいとう)をみると、「当該とうがい労働ろうどう組合くみあいのみで交渉こうしょう」84.1%(どう87.7%)がもっとおおく、いで「企業きぎょうない上部じょうぶ組織そしきまた企業きぎょうない下部かぶ組織そしき一緒いっしょ交渉こうしょう」12.0%(どう11.4%)、「企業きぎょうがい上部じょうぶ組織そしき産業さんぎょうべつ組織そしき)と一緒いっしょ交渉こうしょう」4.3%(どう3.0%)などとなっている[5]

学生がくせい運動うんどうにおける団体だんたい交渉こうしょう

編集へんしゅう

1960年代ねんだい学生がくせい運動うんどうさかんな時期じきには、学校がっこう運営うんえい当局とうきょく教授きょうじゅじん学生がくせいらが団体だんたい交渉こうしょうおこな事例じれいあらわれた。1969ねん10月28にち朝日新聞あさひしんぶん広告こうこくらんには、法政大学ほうせいだいがく法学部ほうがくぶながから学生がくせいけ、団体だんたい交渉こうしょう開催かいさい通告つうこくする広告こうこく掲載けいさいされるなど大掛おおがかりなものもあった[6]

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q OECD Employment Outlook 2018, OECD, Chapt.3 The role of collective bargaining systems for good labour market performance, doi:10.1787/empl_outlook-2018-en 
  2. ^ 労働ろうどう権利けんり”. 国際こくさい連合れんごう広報こうほうセンター. 2023ねん5がつ27にち閲覧えつらん
  3. ^ 住友電装すみともでんそうきょうたてハイパーツ事件じけん宮城みやぎけんろう たいら19.6.12命令めいれい)— 労働ろうどう判例はんれい通巻つうかん 940・発行はっこう年月日ねんがっぴ2007ねん10がつ1にち
  4. ^ アスベスト:石綿いしわた被害ひがい退職たいしょくしゃ団交だんこうけん確定かくてい 最高裁さいこうさいはつ判断はんだん 毎日新聞まいにちしんぶん 2011ねん11月16にち
  5. ^ 平成へいせい29ねん労使ろうしあいだ交渉こうしょうとうかんする実態じったい調査ちょうさ結果けっか概況がいきょう 厚生こうせい労働省ろうどうしょう
  6. ^ 広告こうこくらん法政大学ほうせいだいがくだいいち法学部ほうがくぶ学生がくせい諸君しょくんへ」『朝日新聞あさひしんぶん昭和しょうわ44ねん(1969ねん)10がつ28にち朝刊ちょうかん、12はん、15めん

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう

外部がいぶリンク

編集へんしゅう