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解雇 - Wikipedia

解雇かいこ

使用しようしゃ一方いっぽうてき意思いし表示ひょうじによる労働ろうどう契約けいやく解除かいじょ

解雇かいこ(かいこ)とは、使用しようしゃ一方いっぽうてき意思いし表示ひょうじによる労働ろうどう契約けいやく解除かいじょである[1]解雇かいこ理由りゆうは、おも会社かいしゃがわ経済けいざいてき事情じじょうによるもの(余剰よじょう人員じんいんなど)と、労働ろうどうしゃ個別こべつ理由りゆうによるもの(能力のうりょく不足ふそく不祥事ふしょうじなど)に大別たいべつされる[2]

一般いっぱんてき解雇かいこ労働ろうどうしゃおおきな不利益ふりえきをもたらす[1]。そのためとく先進せんしん諸国しょこくでは雇用こよう保護ほご規制きせい対象たいしょうとなっており、各国かっこくほうなに公正こうせい解雇かいこ(Unfair Dismiss)とされるかが規制きせいされている[3][2]労働ろうどうかんする制度せいどは、政府せいふによる法的ほうてき規制きせい個人こじん企業きぎょうあいだ定着ていちゃく存続そんぞくしている行動こうどう様式ようしき慣行かんこう)によるものがあり、解雇かいこかんしても各国かっこくことなる[4]

雇用こよう慣行かんこうめんでは、米国べいこくでは比較的ひかくてき解雇かいこ容易よういとされており、きょう解雇かいこ(レイオフ)、景気けいき拡大かくだい雇用こよう増加ぞうかがみられる[4]日本にっぽんでは米国べいこくほど解雇かいこ容易よういでなく、きょうには人員じんいん削減さくげん可能かのうかぎけつつ、景気けいき拡大かくだいには雇用こよう増加ぞうかではなく残業ざんぎょう増加ぞうか対応たいおうする雇用こよう慣行かんこうがみられた[4]雇用こよう慣行かんこうちがいは統計とうけいなどによる国際こくさい比較ひかく留意りゅういてんとされている[4]

俗称ぞくしょうについては俗称ぞくしょう」のふし参照さんしょう

国際こくさい労働ろうどう機関きかん条約じょうやく

編集へんしゅう

国際こくさい労働ろうどう機関きかん(ILO)の1982ねん雇用こよう終了しゅうりょう条約じょうやくだい158ごう)においては、会社かいしゃ都合つごうによる解雇かいこさいには、解雇かいこ予告よこく期間きかんもしくはその期間きかんなずらえする解雇かいこ手当てあてあたえるよう規制きせいしている。さらにだい5-6じょうでは具体ぐたいてき公正こうせい解雇かいこケースをげている。

だい4じょう 労働ろうどうしゃ雇用こようは、当該とうがい労働ろうどうしゃ能力のうりょくしくは行為こうい関連かんれんする妥当だとう理由りゆうまた企業きぎょう事業じぎょうしょしくは施設しせつ運営上うんえいじょう必要ひつようもとづく妥当だとう理由りゆうがないかぎり、終了しゅうりょうさせてはならない。

だい11じょう 雇用こよう終了しゅうりょうされることとなる労働ろうどうしゃは、合理ごうりてき予告よこく期間きかんあたえられまた予告よこく期間きかんわる補償ほしょうける権利けんりゆうする。ただし、当該とうがい労働ろうどうしゃが、重大じゅうだい非行ひこう、すなわち、当該とうがい労働ろうどうしゃ当該とうがい予告よこく期間きかんちゅうつづ雇用こようすることを使用しようしゃ要求ようきゅうすることが合理ごうりてきでないような性質せいしつ非行ひこうおかしたとされる場合ばあいは、このかぎりでない。

だい12じょう 1.雇用こよう終了しゅうりょうされた労働ろうどうしゃは、国内こくない法令ほうれいおよ慣行かんこうしたがえつてのいずれかのものをける権利けんりゆうする。

(a) 使用しようしゃにより直接ちょくせつ支払しはらわれまた使用しようしゃ拠出きょしゅつにより設立せつりつされた基金ききんにより支払しはらわれる離職りしょく手当てあてその離職りしょく給付きゅうふ(そのがくは、とく勤務きんむ期間きかんおよ賃金ちんぎん水準すいじゅんもとづくものでなければならない。)
(b) 失業しつぎょう保険ほけんしくは失業しつぎょう扶助ふじょまた形式けいしき社会しゃかい保障ほしょうからの給付きゅうふたとえば、老齢ろうれい給付きゅうふ疾病しっぺい給付きゅうふ)。ただし、これらの給付きゅうふは、当該とうがい給付きゅうふ通常つうじょう条件じょうけんしたがう。
(c) (a)および(b)に規定きていする手当てあてまた給付きゅうふ組合くみあわ
—  1982ねん雇用こよう終了しゅうりょう条約じょうやくだい158ごう

なお以下いかものは、この158ごう条約じょうやくより除外じょがいすることが可能かのうである(だい2じょう2)。

  • 特定とくてい期間きかんまた特定とくてい仕事しごとのための雇用こよう契約けいやくもとづいて雇用こようされている労働ろうどうしゃ
  • 試用しよう期間きかんなか労働ろうどうしゃまた雇用こようかか資格しかく取得しゅとく期間きかんちゅう労働ろうどうしゃ。ただし、これらの期間きかんは、あらかじめ決定けっていされた合理ごうりてきなものでなければならない。
  • 短期間たんきかん臨時りんじてき雇用こようされているもの

欧州おうしゅう連合れんごう

編集へんしゅう

欧州おうしゅう社会しゃかい憲章けんしょうにおいては、解雇かいこ予告よこく期間きかんもうけることを人権じんけん条約じょうやくひとつとしてさだめている。さらに解雇かいこにおいては、労働ろうどうしゃ個人こじん能力のうりょく行為こうい関連かんれんする正当せいとう理由りゆう、もしくは会社かいしゃ都合つごう解雇かいこにおいては、雇用こようぬし事業じぎょう施設しせつ、サービス運営上うんえいじょう必要ひつようせいもとづく必要ひつようがあるとさだめている。

だい4じょう 公平こうへい賃金ちんぎん権利けんり
4. to recognise the right of all workers to a reasonable period of notice for termination of employment
すべての労働ろうどうしゃ雇用こよう終了しゅうりょうについて合理ごうりてき通知つうち期間きかん権利けんりみとめること。
だい24じょう 雇用こよう終了しゅうりょうについての保護ほごける権利けんり
雇用こよう終了しゅうりょうにおる労働ろうどうしゃ権利けんり保護ほごについて、実効じっこうせい確保かくほのため、締結ていけつこく以下いかみとめることをやくす。
  • a. the right of all workers not to have their employment terminated without valid reasons for such termination connected with their capacity or conduct or based on the operational requirements of the undertaking, establishment or service;
    すべての労働ろうどうしゃが、労働ろうどうしゃ個人こじん能力のうりょくまたは行為こうい関連かんれんする正当せいとう理由りゆう、もしくは事業じぎょう施設しせつ、サービス運営上うんえいじょう必要ひつようせいもとづくことなく、雇用こよう終了しゅうりょうさせられない権利けんり
  • b. the right of workers whose employment is terminated without a valid reason to adequate compensation or other appropriate relief.
    正当せいとう理由りゆうなく雇用こよう終了しゅうりょうさせられた労働ろうどうしゃが、適切てきせつ補償ほしょう、またはその適切てきせつ救済きゅうさいける権利けんり
—  欧州おうしゅう社会しゃかい憲章けんしょう

日本にっぽんにおける解雇かいこ

編集へんしゅう

雇用こよう解除かいじょについては、労働ろうどう基準きじゅんほう制定せいてい以前いぜんより民法みんぽう規定きていされていたが、民法みんぽうにおける雇用こよう契約けいやく当事とうじしゃ交渉こうしょうりょく社会しゃかいてき地位ちい対等たいとうであることを前提ぜんていとしておりたとえば期間きかんさだめの雇用こよう契約けいやく定年ていねんまではたらくような契約けいやくのこと)では、当事とうじしゃのどちらからでも一方いっぽうてき解除かいじょもうれることができる(民法みんぽう627じょう)。しかし使用しようしゃほう労働ろうどうしゃよりもつよ立場たちばにあるのが通常つうじょうであるから、労働ろうどうしゃ解雇かいこされるにたっては、民法みんぽうによる保護ほごでは十分じゅうぶんではない。そこで、1947ねん昭和しょうわ22ねん)、労働ろうどう基準きじゅんほうにより、解雇かいこする場合ばあい最低さいてい基準きじゅん制定せいていされ、さらに現在げんざいでは労働ろうどう契約けいやくほうなど各種かくしゅ労働ろうどうほう判例はんれい法理ほうりによって、民法みんぽう原則げんそく全面ぜんめんてき修正しゅうせいされている。

種類しゅるい

編集へんしゅう
 
退職たいしょく事由じゆうかかるモデル退職たいしょく証明しょうめいしょ

日本にっぽんにおいては判例はんれいじょう解雇かいこ原因げんいんによって、普通ふつう解雇かいこ整理せいり解雇かいこ懲戒ちょうかい解雇かいこけられる[1]法務ほうむじょう従業じゅうぎょういん解雇かいこするためにはすくなくとも就業しゅうぎょう規則きそく解雇かいこ条件じょうけん明示めいじする必要ひつようがある。

集団しゅうだんてき解雇かいこ
整理せいり解雇かいこは、経営けいえい不振ふしんによる合理ごうりなど、経営けいえいじょう事由じゆうもとづく人員じんいん整理せいりとしておこなわれる解雇かいこ[1]
解雇かいこ人数にんずういち定数ていすうえる場合ばあい労働ろうどう施策しさく総合そうごうてき推進すいしんならびに労働ろうどうしゃ雇用こよう安定あんていおよ職業しょくぎょう生活せいかつ充実じゅうじつとうかんする法律ほうりつもとづきとどようする。
個別こべつてき解雇かいこ
普通ふつう解雇かいこ
普通ふつう解雇かいこたん解雇かいこ場合ばあいもあり、労働ろうどう能力のうりょく低下ていかとう労働ろうどうしゃ個別こべつてき事由じゆうもとづいておこなわれる解雇かいこ
会社かいしゃ都合つごう退職たいしょくとなる。
懲戒ちょうかい解雇かいこ
会社かいしゃ規律きりつ秩序ちつじょはんした社員しゃいんたいして懲戒ちょうかいとしておこなわれる解雇かいこ[1]
会社かいしゃ懲戒ちょうかい事由じゆうとしては、犯罪はんざい行為こうい職場しょくば規律きりつ違反いはん経歴けいれき詐称さしょう業務ぎょうむ命令めいれい違反いはん機密きみつ漏洩ろうえい営業えいぎょうじょう秘密ひみつ漏洩ろうえい背信はいしん行為こういきおいぎょう避止義務ぎむ職務しょくむ専念せんねん義務ぎむ違反いはん)などがある。これにたいする懲戒ちょうかい処分しょぶんとしては、懲戒ちょうかい解雇かいこほか戒告かいこく譴責けんせき減給げんきゅう停職ていしょく諭旨ゆし解雇かいこなどがあり[5]懲戒ちょうかい解雇かいこ会社かいしゃ懲戒ちょうかい処分しょぶんのうちもっとおもいものとなる[6]
 実務じつむじょうは、従業じゅうぎょういん懲戒ちょうかい事例じれいとのい(平等びょうどうあつかいの原則げんそく)、社会しゃかい通念つうねんじょう相当そうとうせい手続てつづじょう事前じぜん弁明べんめい機会きかい付与ふよ必要ひつようというかんがかたがある。さらに、上記じょうきのような刑事けいじ犯罪はんざいとう該当がいとうしない場合ばあいには、継続けいぞくてき指摘してきすなわち指導しどう注意ちゅうい警告けいこく段階だんかいてき懲戒ちょうかい必要ひつようというかんがかたがある。
 本人ほんにん都合つごう退職たいしょくとされることがあり、退職たいしょくきん不払ふばらいの根拠こんきょとなるてん普通ふつう解雇かいことのあきらかな相違そういてんである。解雇かいこ時点じてん解雇かいこ事由じゆうすべかす必要ひつようがあるとされ事後じごてき追加ついかみとめられない場合ばあいがある。
重責じゅうせき解雇かいこ
雇用こよう保険ほけんほうじょうにてさだめられた、労働ろうどうしゃ本人ほんにんめにすべき重大じゅうだい理由りゆうによる解雇かいこ本人ほんにん都合つごう退職たいしょくとなる。
諭旨ゆし解雇かいこ[6]
諭旨ゆし解雇かいことは、懲戒ちょうかい解雇かいこ事由じゆうみとめられる場合ばあいに、会社かいしゃがわから本人ほんにん自発じはつてき退職たいしょくうながすもの。形式けいしきじょう本人ほんにん自発じはつてき退職たいしょくいわば普通ふつう本人ほんにん都合つごう退職たいしょくとなる。

その解雇かいこ類似るいじした概念がいねん

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日本にっぽん解雇かいこ規制きせい

編集へんしゅう

解雇かいこは、使用しようしゃ一方いっぽうてき意思いし表示ひょうじおこなうものであるが、解雇かいこ労働ろうどうしゃ生活せいかつかて手段しゅだんうしなわせるものであるから、不意打ふいうちのようなかたちおこなわれることがないよう、各種かくしゅ法制ほうせい規制きせいもうけられている(解雇かいこ規制きせい)。

  • 期間きかんさだめのない労働ろうどう契約けいやく無期むき雇用こよう)では、解雇かいこは、客観きゃっかんてき合理ごうりてき理由りゆうき、社会しゃかい通念つうねんじょう相当そうとうであるとみとめられない場合ばあいは、その権利けんり濫用らんようしたものとして、無効むこうとなる(労働ろうどう契約けいやくほう16じょう[ちゅう 2]
  • 期間きかんさだめのある労働ろうどう契約けいやく有期ゆうき雇用こよう)では、使用しようしゃは、やむをない事由じゆうがある場合ばあいでなければ、その労働ろうどう期間きかん満了まんりょうするまでのあいだにおいて、労働ろうどうしゃ解雇かいこすることができない(労働ろうどう契約けいやくほう17じょう[ちゅう 3]
 
労働ろうどう条件じょうけん通知つうちしょ

退職たいしょくかんする事項じこう解雇かいこ事由じゆうふく)は、就業しゅうぎょう規則きそく絶対ぜったいてき必要ひつよう記載きさい事項じこうとされていて(89じょう)、使用しようしゃ解雇かいこ事由じゆう就業しゅうぎょう規則きそく記載きさいしなければならない。また労働ろうどう条件じょうけん絶対ぜったいてき明示めいじ事項じこうともされていて(15じょう)、使用しようしゃ労働ろうどう契約けいやく締結ていけつさいして労働ろうどうしゃたいして解雇かいこ事由じゆう書面しょめん明示めいじしなければならない。

しかし裁判所さいばんしょは、たとえ労働ろうどうしゃ就業しゅうぎょう規則きそく違反いはんなどのがあった場合ばあいであっても具体ぐたいてき事情じじょうからかんがえて「解雇かいこけん濫用らんよう」であるといえるならばその解雇かいこ無効むこうとして、使用しようしゃによる解雇かいこけん行使こうし制限せいげんしてきた。これが解雇かいこけん濫用らんよう法理ほうりばれるものである。つまり、紛争ふんそうになっている解雇かいこについて具体ぐたいてき事情じじょうらしてかんがえると、客観きゃっかんてき合理ごうりてき理由りゆう社会しゃかい通念つうねんじょう相当そうとうとして是認ぜにんすることができないという場合ばあいには解雇かいこけん濫用らんようとして解雇かいこ意思いし表示ひょうじ無効むこうになる。この法理ほうりは、2004ねん平成へいせい16ねん)1がつ改正かいせいほう施行しこうにより18じょうの2に明記めいきされ、さらに2008ねん平成へいせい20ねん)3がつ施行しこうされた労働ろうどう契約けいやくほうによりどうほう16じょううつされた。

  • 就業しゅうぎょう規則きそく労働ろうどう協約きょうやくさだめる解雇かいこ事由じゆう限定げんてい列挙れっきょであるか例示れいじ列挙れっきょであるかは個別こべつ判断はんだんによるが、一般いっぱんてきには就業しゅうぎょう規則きそくとう趣旨しゅしから限定げんてい列挙れっきょかいし、そこにげられていない事由じゆうによる解雇かいこ無効むこうとなる。もっとも限定げんてい列挙れっきょ解釈かいしゃくすると、就業しゅうぎょう規則きそくとう規定きてい十分じゅうぶん整備せいびされていない場合ばあいに、客観きゃっかんてき不可避ふかひかんがえられる解雇かいこさえ無効むこうになるという問題もんだいがある(例示れいじ列挙れっきょかいした裁判さいばんれいとして、大阪おおさかばん平成へいせい元年がんねん6がつ29にち東京とうきょうけつ平成へいせい12ねん1がつ21にちとう)。実務じつむじょう就業しゅうぎょう規則きそく具体ぐたいてき自由じゆう列挙れっきょしたのちに「そのぜん各号かくごうじゅんずるやむをない事情じじょうがあったとき」というような包括ほうかつてき規定きていもうけられていることがおおく、限定げんてい列挙れっきょ例示れいじ列挙れっきょのいずれであるかはさほどおおきな相違そういをもたらすわけではない[7]
  • 労働ろうどうしゃ能力のうりょく不足ふそく解雇かいこについて、能力のうりょく不足ふそく理由りゆうただちに解雇かいこすることはみとめられるわけではなく、高度こうど専門せんもんせいともなわない職務しょくむ限定げんていでは、改善かいぜん機会きかいあたえるための警告けいこくくわえ、教育きょういく訓練くんれん配置はいち転換てんかん降格こうかくとう必要ひつようとされる傾向けいこうがみられる(平成へいせい26ねん7がつ30にちもとはつ0730だい1ごう)。
  • 労働ろうどう協約きょうやくうえ組合くみあいいん解雇かいこしようとするときは組合くみあい同意どういようする」むね所謂いわゆる同意どうい約款やっかんそんする場合ばあい使用しようしゃ組合くみあいいん解雇かいこしようとするときは、組合くみあい同意どういなければならないことは当然とうぜんであり、これに違反いはんしてなされた解雇かいこは、特別とくべつ事由じゆうのないかぎり、無効むこうかいすべきである。しかしながら、当該とうがい約款やっかんは、本来ほんらい解雇かいこかんする使用しようしゃ恣意しい排除はいじょせんとする趣旨しゅしのものであって、労使ろうし相互そうご信義しんぎそくもとづき、約款やっかん本来ほんらい趣旨しゅし尊重そんちょうしてこと処理しょりあたるべきであるから、使用しようしゃがわにおいて、企業きぎょう必要ひつようじょう解雇かいこするにつきやむをない事情じじょうがあり、組合くみあい同意どういるべく相当そうとう努力どりょく傾倒けいとうしているにもかかわらず、組合くみあいがわにおいて正当せいとう理由りゆうなくしてこれを拒否きょひつづけている場合ばあいは、組合くみあいがわの「同意どうい拒絶きょぜつけん濫用らんよう」と場合ばあいがあり、かかる場合ばあい組合くみあいがわ最終さいしゅうてき了解りょうかいずして解雇かいこおこなっても同意どうい約款やっかん違反いはんとはならないとするのが一般いっぱんてきかんがかたである。しかしながら「同意どうい拒絶きょぜつけん濫用らんよう」とされるのは、使用しようしゃがわ相当そうとう努力どりょく傾倒けいとうしていてしか組合くみあい拒絶きょぜつ信義しんぎそくじょうはなは妥当だとう場合ばあいであって、形式けいしきてき交渉こうしょう協議きょうぎによつて組合くみあい同意どういられなかったという事実じじつのみをもってしては、いまかならずしも「同意どうい拒絶きょぜつけん濫用らんよう」とはいえない場合ばあいおおい。したがって、解雇かいこ同意どうい約款やっかん違反いはん構成こうせいするかかは、ひとえに当該とうがい人員じんいん整理せいり必要ひつようせいおよびその緊急きんきゅうせいならびにこれを実施じっしするにあたってられた労使ろうし協議きょうぎ度合どあいおよ協議きょうぎ態度たいどとう事実じじつ関係かんけい如何いかかかってくることになる(昭和しょうわ31ねん12月3にちろうおさむだい2775ごう)。

解雇かいこ制限せいげん

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解雇かいこ制限せいげん

だい19じょう  

  1. 使用しようしゃは、労働ろうどうしゃ業務ぎょうむじょう負傷ふしょうし、また疾病しっぺいにかかり療養りょうようのために休業きゅうぎょうする期間きかんおよびその30日間にちかんならびに産前さんぜん産後さんご女性じょせいだい65じょう規定きていによつて休業きゅうぎょうする期間きかんおよびその30日間にちかんは、解雇かいこしてはならない。ただし、使用しようしゃが、だい81じょう規定きていによつて打切うちきり補償ほしょう支払しはら場合ばあいまた天災てんさい事変じへんそのやむをない事由じゆうのために事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうとなつた場合ばあいにおいては、このかぎりでない。
  2. 前項ぜんこう但書ただしがき後段こうだん場合ばあいにおいては、その事由じゆうについて行政ぎょうせい官庁かんちょう認定にんていけなければならない。

解雇かいこ具体ぐたいてき制限せいげんされている場合ばあいとして、労働ろうどう基準きじゅんほうではつぎの2つをさだめている。労働ろうどうしゃめに事由じゆうがあっても、この解雇かいこ制限せいげん解除かいじょされないが、天災てんさい事変じへんそのやむをない事由じゆうのため事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうとなった場合ばあいには、行政ぎょうせい官庁かんちょう所轄しょかつ労働ろうどう基準きじゅん監督かんとくしょちょう以下いかおなじ)の認定にんていけたうえ解雇かいこ制限せいげん解除かいじょされる(施行しこう規則きそく7じょう)。

  1. 業務ぎょうむじょう災害さいがいにより療養りょうようのため休業きゅうぎょうする期間きかんとそのの30日間にちかん解雇かいこ
  2. 産前さんぜん産後さんご休業きゅうぎょう期間きかんとそのの30日間にちかん解雇かいこ

天災てんさい事変じへんそのやむをない事由じゆうのため事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうとなった」として、認定にんてい申請しんせいがなされた場合ばあいには、申請しんせい理由りゆうが「天災てんさい事変じへんそのやむをない事由じゆう」とほぐされるだけでは充分じゅうぶんでなく、そのために「事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのう」になることが必要ひつようであり、またぎゃくに「事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのう」になってもそれが「やむをない事由じゆう」に起因きいんするものでない場合ばあいには認定にんていすべきかぎりでない(昭和しょうわ63ねん3がつ14にちもとはつ150ごう)。

  • 「やむをない事由じゆう」とは、天災てんさい事変じへんじゅんずる程度ていど不可抗力ふかこうりょくもとづきかつ突発とっぱつてき事由じゆうであり、事業じぎょう経営けいえいしゃとして社会しゃかい通念つうねんじょうるべき必要ひつよう措置そちもってしても通常つうじょう如何いかともなしがた状況じょうきょうにある場合ばあいをいう。以下いか場合ばあい該当がいとうする(昭和しょうわ63ねん3がつ14にちもとはつ150ごう)。
    • 事業じぎょうじょう火災かさいにより焼失しょうしつした場合ばあい事業じぎょうぬし故意こい重過失じゅうかしつもとづく場合ばあいのぞく)
    • 震災しんさいともな工場こうじょう事業じぎょうじょう倒壊とうかい類焼るいしょうとうにより事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうとなった場合ばあい
      • 震災しんさいによりいち工場こうじょう被害ひがい全然ぜんぜんないが本社ほんしゃならびにさん工場こうじょう震災しんさいにより倒潰とうかいあるいは焼失しょうしつしたため、再建さいけん資金しきんめんまりをきたし被害ひがいけなかったどう工場こうじょう事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうとなった場合ばあいは、「天災てんさい事変じへんそのやむをない事由じゆうのため事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうとなった」場合ばあい該当がいとうする(昭和しょうわ23ねん8がつ4にちもとおさむ2697ごう)。
  • 一方いっぽう以下いか場合ばあいは「やむをない事由じゆう」に該当がいとうしない。
    • 事業じぎょうぬし経済けいざい法令ほうれい違反いはんのため強制きょうせい収容しゅうようされ、または購入こうにゅうしたしょ機械きかい資材しざいとう没収ぼっしゅうされた場合ばあい
    • 税金ぜいきん滞納たいのう処分しょぶん事業じぎょう廃止はいしいたった場合ばあい
    • 事業じぎょう経営けいえいじょう見通みとおしの齟齬そごごと事業じぎょうぬし危険きけん負担ふたんぞくすべき事由じゆう起因きいんして資材しざい入手にゅうしゅなん金融きんゆうなんおちいった場合ばあい
    • 従来じゅうらい取引とりひきさき休業きゅうぎょう状態じょうたいとなり、発注はっちゅうしなく、ゆえに事業じぎょうなんおちいった場合ばあい
      • 親会社おやがいしゃからのみ資材しざい資金しきん供給きょうきゅうけて事業じぎょういとな下請したうけ工場こうじょうにおいて現下げんか経済けいざい情勢じょうせいから親会社おやがいしゃ自体じたい経営けいえい困難こんなんのために資材しざい資金しきん獲得かくとく支障ししょうをきたし、下請したうけ工場こうじょう所要しょよう供給きょうきゅうけることができず事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうとなった場合ばあい法律ほうりつてきには「やむをない事由じゆうのため事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうとなった場合ばあい」には該当がいとうしないが、事業じぎょう廃止はいしのち該当がいとう労働ろうどうしゃについてつづ労働ろうどう契約けいやく継続けいぞくさせる実益じつえきがない場合ばあいには運用うんようじょうしかるべく認定にんていせられたい(昭和しょうわ23ねん6がつ11にちもとおさむ1899ごう)。
  • 事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうになる」とは、事業じぎょう全部ぜんぶまたはだい部分ぶぶん継続けいぞく不可能ふかのうになった場合ばあいをいう。事業じぎょうがなおそのしゅたる部分ぶぶん保持ほじして継続けいぞくしうる場合ばあい、または一時いちじてき操業そうぎょう中止ちゅうしのやむなきにいたったがちか再開さいかい復旧ふっきゅう見込みこみがあきらかである場合ばあいふくまれない(昭和しょうわ63ねん3がつ14にちもとはつ150ごう)。
  • 派遣はけん労働ろうどうしゃについては、「事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのう」であるかどうかの判断はんだんは、派遣はけんもと事業じぎょうについておこなわれる(昭和しょうわ61ねん6がつ6にちもとはつ333ごう)。

業務ぎょうむじょう傷病しょうびょうにより使用しようしゃから補償ほしょうける労働ろうどうしゃが、療養りょうよう開始かいしして3ねん経過けいかしてもその傷病しょうびょうなおらない場合ばあい平均へいきん賃金ちんぎんの1200にちぶん打切うちきり補償ほしょう支払しはらえば解雇かいこ制限せいげん解除かいじょされる(19じょう1こう但書ただしがき、81じょう)。この場合ばあい行政ぎょうせい官庁かんちょう認定にんてい不要ふようである。もっとも、当該とうがい傷病しょうびょうかか療養りょうよう開始かいし3ねん経過けいかしたにおいて傷病しょうびょう補償ほしょう年金ねんきんけている場合ばあいまた同日どうじつにおいて傷病しょうびょう補償ほしょう年金ねんきんけることとなった場合ばあいには、当該とうがい使用しようしゃは、それぞれ、当該とうがい3ねん経過けいかしたまた傷病しょうびょう補償ほしょう年金ねんきんけることとなったにおいて、打切うちきり補償ほしょう支払しはらったものとみなされて解雇かいこ制限せいげん解除かいじょされるので(労働ろうどうしゃ災害さいがい補償ほしょう保険ほけんほう19じょう)、打切うちきり補償ほしょう支払しはらって解雇かいこ制限せいげん解除かいじょすることはきわめてまれなケースにかぎられる。

  • 業務ぎょうむじょう傷病しょうびょうにより療養りょうようしていた労働ろうどうしゃ完全かんぜん治癒ちゆしたのではないが稼働かどうしうる程度ていど回復かいふくしたので出勤しゅっきんし、もと職場しょくば平常へいじょうどお稼働かどうしていたところ、使用しようしゃ就業しゅうぎょう30にち経過けいかしてこの労働ろうどうしゃ解雇かいこ予告よこく手当てあて支給しきゅうして即時そくじ解雇かいこした場合ばあい、19じょうには抵触ていしょくしない(昭和しょうわ24ねん4がつ12にちもとおさむ1134ごう)。

解雇かいこ予告よこく

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解雇かいこ予告よこく

だい20じょう  

  1. 使用しようしゃは、労働ろうどうしゃ解雇かいこしようとする場合ばあいにおいては、すくなくとも30にちまえにその予告よこくをしなければならない。30にちまえ予告よこくをしない使用しようしゃは、30にちぶん以上いじょう平均へいきん賃金ちんぎん支払しはらわなければならない。ただし、天災てんさい事変じへんそのやむをない事由じゆうのために事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうとなつた場合ばあいまた労働ろうどうしゃせめすべき事由じゆうもとづいて解雇かいこする場合ばあいにおいては、このかぎりでない。
  2. 前項ぜんこう予告よこく日数にっすうは、いちにちについて平均へいきん賃金ちんぎん支払しはらえつた場合ばあいにおいては、その日数にっすう短縮たんしゅくすることができる。
  3. 前条ぜんじょうだい2こう規定きていは、だい1こう但書ただしがき場合ばあいにこれを準用じゅんようする。

使用しようしゃ労働ろうどうしゃ解雇かいこしようとする場合ばあいすくなくとも30にちまえ予告よこくをしなければならない説明せつめいされるものの、これは30にちぶん賃金ちんぎん保証ほしょうする必要ひつようがあるのみで結局けっきょくのところ即日そくじつ解雇かいこみとめられている。解雇かいこ予告よこくは、解雇かいこについてなんねん何月なんがつなんにちというように特定とくていしておかなければならない解雇かいこ予告よこくおよ解雇かいこ予告よこく手当てあて趣旨しゅしは、失職しっしょくともな労働ろうどうしゃ損害そんがい緩和かんわすることを目的もくてきとしたものである。

30日間にちかん暦日れきじつ計算けいさんし、そのあいだ休日きゅうじつ休業きゅうぎょうがあっても延長えんちょうしない。月給げっきゅう年俸ねんぽうせいとうにおいては民法みんぽうにおける解除かいじょ予告よこく期間きかんが30にちよりながくなる場合ばあいであっても特別とくべつほうである労働ろうどう基準きじゅんほう規定きていにより、解雇かいこ予告よこく義務ぎむは30日間にちかん短縮たんしゅくされるという見解けんかいもあるが、労働ろうどう基準きじゅんほうによる規定きていはあくまで刑事けいじばつともな責任せきにんであり、民事みんじじょう就業しゅうぎょう規則きそくとうめが場合ばあいは30にちえる予告よこく義務ぎむべつ存在そんざいするとすることができる。予告よこく自体じたい口頭こうとうおこなっても差支さしつかえないが、実際じっさいには後日ごじつ紛争ふんそうふせぐために書面しょめん交付こうふする場合ばあいがほとんどである。予告よこく郵送ゆうそうによっておこな場合ばあいは、投函とうかんしたではなく相手方あいてがた郵便ゆうびん到着とうちゃくした予告よこくとなる(民法みんぽう97じょう)ため、解雇かいこ設定せってい郵便ゆうびん事情じじょうをも考慮こうりょして設定せっていしなければならない。民法みんぽう627じょう2こう規定きていによる予告よこく日数にっすうが30にちたない場合ばあいどうじょう2こう規定きてい排除はいじょされる(昭和しょうわ23ねん7がつ20日はつかもとおさむ2483ごう)。

解雇かいこ予告よこく原則げんそくとして取消とりけすことはできないが、労働ろうどうしゃ具体ぐたいてき事情じじょうした自由じゆう判断はんだんによって同意どういあたえた場合ばあいには取消とりけすことができる。同意どういがない場合ばあい予告よこく期間きかん満了まんりょうをもって解雇かいこされることになるため、自己じこ退職たいしょく問題もんだいしょうじない(昭和しょうわ25ねん9がつ21にちもとおさむ2824ごう昭和しょうわ33ねん2がつ13にちもとはつ90ごう)。

解雇かいこ予告よこくがなされても、その予告よこく期間きかん満了まんりょうするまでのあいだは、労働ろうどう関係かんけい有効ゆうこう存続そんぞくする。したがって、労働ろうどうしゃ労務ろうむ提供ていきょう義務ぎむがあり、使用しようしゃ賃金ちんぎん支払しはらい義務ぎむがある(昭和しょうわ25ねん9がつ21にちもとおさむ2824ごう昭和しょうわ33ねん2がつ13にちもとはつ90ごう)。解雇かいこ予告よこく同時どうじ休業きゅうぎょうめいじ、解雇かいこ予告よこく期間きかんちゅう平均へいきん賃金ちんぎんの60%である休業きゅうぎょう手当てあて(26じょう)しか支払しはらわなかった場合ばあいでも、30にちまえ予告よこくがなされているかぎり、その労働ろうどう契約けいやく予告よこく期間きかん満了まんりょうによって終了しゅうりょうする(昭和しょうわ24ねん12月27にちもとおさむ1224ごう)。解雇かいこ予告よこく有効ゆうこうみとめられ、かつその解雇かいこ意思いし表示ひょうじがあったために予告よこく期間きかんちゅう労働ろうどうしゃ休業きゅうぎょうした場合ばあいには、使用しようしゃ解雇かいこ有効ゆうこう成立せいりつするまでのあいだ休業きゅうぎょう手当てあて支払しはらえばよい(昭和しょうわ24ねん7がつ27にちもとおさむ1701ごう)。なお、3月31にちけでの退職たいしょくとどけをしていたが、それ以前いぜん、たとえば3がつ15にち即日そくじつ解雇かいこされた場合ばあいは、解雇かいこ予告よこく手当てあてとして30にちぶん平均へいきん賃金ちんぎん支払しはらいをしなければならないため、15にち以降いこう出勤しゅっきん休業きゅうぎょうさせ平均へいきん賃金ちんぎんの6わりである休業きゅうぎょう手当てあてはらうほうが合理ごうりてきである。

解雇かいこ予告よこくをしたにもかかわらず、解雇かいこ予定よていぎてもつづ労働ろうどうしゃ使用しようした場合ばあいは、どういち条件じょうけん労働ろうどう契約けいやくがなされたものとあつかわれるので、その解雇かいこ予告よこく無効むこうとなり、その解雇かいこしようとする場合ばあいにはあらためて解雇かいこ予告よこく必要ひつようとなる(昭和しょうわ24ねん6がつ18にちもとはつ1926ごう)。

予告よこく期間きかん満了まんりょうまえ労働ろうどうしゃ業務ぎょうむじょう疾病しっぺいのため休業きゅうぎょうした場合ばあい制限せいげん期間きかんちゅう解雇かいこはできないが、休業きゅうぎょう期間きかん長期ちょうきにわたるものでないかぎり、解雇かいこ予告よこく効力こうりょく発生はっせい中止ちゅうしされたにすぎないので、休業きゅうぎょうけにあらためて解雇かいこ予告よこくをする必要ひつようはない(昭和しょうわ26ねん6がつ25にちもとおさむ2609ごう)。

定年ていねん到達とうたつしたことで自動的じどうてき退職たいしょくする「定年ていねん退職たいしょく」の場合ばあい解雇かいこ予告よこく問題もんだいしょうじないが(昭和しょうわ26ねん8がつ9にちもとおさむ3388ごう)、定年ていねんたっしたときに解雇かいこ意思いし表示ひょうじおこない、それによって労働ろうどう契約けいやく終了しゅうりょうさせる「定年ていねん解雇かいこ」の場合ばあいは20じょうによる解雇かいこ予告よこく規制きせいける(秋北しゅうほくバス事件じけんさいはん昭和しょうわ43ねん12月25にち)。定年ていねんさい雇用こよう場合ばあいは、たん労働ろうどうしゃ職制しょくせいじょう身分みぶん変動へんどうであって労働ろうどう関係かんけい継続けいぞくして存続そんぞくするものであるから20じょう問題もんだいしょうじない(昭和しょうわ25ねん1がつ10日とおかもとおさむ3682ごう)。

解雇かいこ予告よこく手当てあて

編集へんしゅう

30にち以上いじょうまえ解雇かいこ予告よこくできない場合ばあいには、30にち不足ふそくする日数にっすうぶん以上いじょう平均へいきん賃金ちんぎん支払しはらわなければならない(労働ろうどうしゃ解雇かいこ予告よこく手当てあて受領じゅりょうこばんだため法務局ほうむきょく供託きょうたくした場合ばあいふくむ(昭和しょうわ63ねん3がつ14にちもとはつ150ごう))。たとえば10日とおかまえ予告よこくした場合ばあいは、20日はつかぶん以上いじょう平均へいきん賃金ちんぎん支払しはらわなければならない。この不足ふそくする日数にっすうぶん平均へいきん賃金ちんぎん支払しはらいを解雇かいこ予告よこく手当てあてという。

解雇かいこ予告よこく手当てあて労働ろうどう基準きじゅんほうじょうの「賃金ちんぎん」ではないが(昭和しょうわ23ねん8がつ18にちもとおさむ2520ごう)、解雇かいこ申渡もうしわたしと同時どうじ賃金ちんぎん同様どうよう通貨つうか直接ちょくせつ支払しはらわなければならない昭和しょうわ23ねん3がつ17にちもとはつ464ごう[ちゅう 4]。よって後日ごじつ請求せいきゅうすることはできず、時効じこう問題もんだいしょうじない(昭和しょうわ27ねん5がつ17にちもとおさむ1906ごう)。使用しようしゃ労働ろうどうしゃたいして金銭きんせん債権さいけんゆうしている場合ばあいであっても、解雇かいこ予告よこく手当てあて相殺そうさいすることはできない(昭和しょうわ24ねん1がつ8にちもとおさむ54ごう)。また健康けんこう保険ほけんほうにおける「報酬ほうしゅう」にも該当がいとうしないため、解雇かいこ予告よこく手当てあてっても標準ひょうじゅん報酬ほうしゅう月額げつがく変化へんかしない。なお、解雇かいこ予告よこく手当てあて税制ぜいせいじょうでは「退職たいしょく所得しょとく」となるため、退職たいしょくきん存在そんざいする場合ばあい合算がっさんして退職たいしょく所得しょとくとする。

労働ろうどう組合くみあい専従せんじゅうしゃ会社かいしゃ予告よこくせずに解雇かいこする場合ばあい専従せんじゅう期間きかんちゅう会社かいしゃ在籍ざいせきするものであるかぎり、解雇かいこ予告よこく手当てあて支払しはらわなければならない(昭和しょうわ24ねん8がつ19にちもとおさむ1351ごう)。

最低さいてい年齢ねんれい規定きてい(56じょう)に違反いはんして児童じどう使用しようした場合ばあい使用しようしゃ解雇かいこ予告よこく手当てあて支払しはらって即時そくじ解雇かいこしなければならない(昭和しょうわ23ねん10がつ18にちもとおさむ3102ごう)。

事業じぎょう譲渡じょうとによりしん会社かいしゃ雇用こようされた従業じゅうぎょういんきゅう会社かいしゃ予告よこくなく解雇かいこした場合ばあい労働ろうどう条件じょうけんについていちじるしい変更へんこうがなく実質じっしつてき雇用こよう関係かんけいにおける権利けんり義務ぎむ包括ほうかつ承継しょうけいみとめられる場合ばあい解雇かいこ問題もんだいしょうぜず、解雇かいこ予告よこく手当てあて支給しきゅう義務ぎむはない(昭和しょうわ33ねん8がつ27にちもとおさむ4107ごう)。

即時そくじ解雇かいこ

編集へんしゅう

解雇かいこ予告よこく手当てあて支払しはらわずに労働ろうどうしゃ即時そくじ解雇かいこできるのは、つぎ事由じゆうにより行政ぎょうせい官庁かんちょう認定にんていけた場合ばあいである[ちゅう 5]認定にんていければ、解雇かいこ効力こうりょく認定にんていけたではなく解雇かいこ意思いし表示ひょうじをした発生はっせいする。なお使用しようしゃ認定にんてい申請しんせいおくらせることはほう違反いはんである(昭和しょうわ63ねん3がつ14にちもとはつ150ごう)。ただし、行政ぎょうせい官庁かんちょう認定にんていけなくても、認定にんてい申請しんせいおこなわなかった20じょう違反いはんによる刑事けいじじょう問題もんだいはあるものの、民事みんじてきには認定にんていけるだけの事由じゆうがあれば即時そくじ解雇かいこ有効ゆうこう解雇かいこ予告よこく手当てあて支払しはらいは不要ふようというのが判例はんれい傾向けいこうである(東京とうきょうだかばん昭和しょうわ47ねん6がつ29にちほか)。

  1. 天災てんさい事変じへんそのやむをない事由じゆうのために事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうとなった場合ばあい(この場合ばあいは、上記じょうき解雇かいこ制限せいげん期間きかんちゅう労働ろうどうしゃであっても解雇かいこできる)。「やむをない事由じゆう」「事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのう」の判断はんだん基準きじゅんは19じょう場合ばあい同様どうようかんがえる。
  2. 労働ろうどうしゃせめすべき事由じゆう(この場合ばあいは、上記じょうき解雇かいこ制限せいげん期間きかんちゅう労働ろうどうしゃ解雇かいこできない)。
    • 除外じょがい認定にんていは、つぎ場合ばあいけることができると例示れいじされているが、具体ぐたいてきには個別こべつ判断はんだんされる(昭和しょうわ23ねん11月11にちもとはつ1637ごう昭和しょうわ31ねん3がつ1にちもとはつ111ごう)。就業しゅうぎょう規則きそくさだめる懲戒ちょうかい解雇かいこ事由じゆうとはべつ判断はんだんされるので、認定にんていけられなかったからといって懲戒ちょうかい解雇かいこできないわけではない。
      1. 事業じぎょうじょうにおけるぬすめ横領おうりょう傷害しょうがいなど刑法けいほうはん該当がいとうする行為こういのあった場合ばあい原則げんそくとしてきわめて軽微けいびなものをのぞく)
      2. 賭博とばく風紀ふうき紊乱びんらんとうにより職場しょくば規律きりつみだし、労働ろうどうしゃ悪影響あくえいきょうおよぼす場合ばあい
      3. やとれのさい採用さいよう条件じょうけん要素ようそとなるような経歴けいれき詐称さしょうした場合ばあい
      4. 事業じぎょうじょう転職てんしょくした場合ばあい
      5. 原則げんそくとして2週間しゅうかん以上いじょう正当せいとう理由りゆうなく無断むだん欠勤けっきんし、出勤しゅっきん督促とくそくおうじない場合ばあい
      6. 出勤しゅっきん不良ふりょうまたは出欠しゅっけつつねならず、すうかいわたって注意ちゅういけてもあらためない場合ばあい
    • クローズドショップせい事業じぎょうじょうにおいて、労働ろうどうしゃ労働ろうどう組合くみあい除名じょめいされるにいたった原因げんいんが20じょう1こう但書ただしがき事由じゆう該当がいとうする場合ばあい認定にんていをしてつかえないが、クローズドショップせいであっても組合くみあい除名じょめいされたことのみによって20じょう1こう但書ただしがき事由じゆう該当がいとうするとはかぎらない(昭和しょうわ23ねん8がつ23にちもとおさむ2426ごう)。

しかしながら、上記じょうき事由じゆうたさないのに、解雇かいこ予告よこくも、解雇かいこ予告よこく手当てあて支払しはらいもないまま即時そくじ解雇かいこ通告つうこくすることがままみられる。このような解雇かいこ通告つうこくは、即時そくじ解雇かいことしては当然とうぜん無効むこうであるが、使用しようしゃ即時そくじ解雇かいこ固執こしつする趣旨しゅしでないかぎり、解雇かいこ通知つうち30にち経過けいかまた解雇かいこ通知つうち予告よこく手当てあて支払しはらいのあったときから解雇かいこ効力こうりょくしょうずる。つまり、解雇かいこするむね予告よこくとして効力こうりょくゆうする昭和しょうわ24ねん5がつ13にちもとおさむ483ごうさいはん昭和しょうわ35ねん3がつ11にち)。また裁判所さいばんしょは、解雇かいこ予告よこく手当てあて支払しはらわなかった使用しようしゃたいして、労働ろうどうしゃ請求せいきゅうにより、未払金みはらいきん同一どういつがく付加ふかきん支払しはらうようめいずることができる(114じょう)。なお下級かきゅうしん判例はんれいによれば、解雇かいこ意思いし表示ひょうじそのものをどのようにるか(解雇かいこ意思いし表示ひょうじ無効むこう主張しゅちょうするか、あるいは解雇かいこ有効ゆうこうであるとの前提ぜんてい解雇かいこ予告よこく手当てあて支払しはらいをもとめるか)は労働ろうどうしゃ選択せんたくまかされているとほぐされる(東京とうきょうばん昭和しょうわ41ねん4がつ23にち[ちゅう 6]

実際じっさいにはシフト・出勤しゅっきん日数にっすう調整ちょうせいによる事実じじつじょう解雇かいこや、労働ろうどうしゃがわ法的ほうてき知識ちしきこと訴訟そしょう費用ひよう十分じゅうぶんこと理由りゆうに、会社かいしゃがわ不当ふとう解雇かいこかりながら違法いほう即日そくじつ解雇かいこおこなことがある。また会社かいしゃがわから損害そんがい賠償ばいしょうとう社員しゃいん告訴こくそする、家族かぞく人質ひとじちむねほのめかすひとし、リストラ工作こうさくのために脅迫きょうはく自主じしゅ退職たいしょくむケースも多々たたられるが、これらのケースでは、おおくは労働ろうどうしゃ告発こくはつした場合ばあい企業きぎょう名誉めいよ毀損きそんによる告訴こくそたてもと社員しゃいんくちふうじをおこなこと日常にちじょうてきおこなわれている。労働ろうどうしゃがわ不当ふとう解雇かいこにあわないよう、記録きろく日常にちじょうてき習慣しゅうかんをつけること肝要かんようである。また、会社かいしゃがわ解雇かいこおこなうには解雇かいこ正当せいとうせい説明せつめいできるように労働ろうどうしゃ日常にちじょうてき問題もんだい記録きろく習慣しゅうかんをつけること肝要かんようである。

適用てきよう除外じょがい

編集へんしゅう

だい21じょう  

前条ぜんじょう規定きていは、ひだり各号かくごういち該当がいとうする労働ろうどうしゃについては適用てきようしない。ただし、だい1ごう該当がいとうするものが1かげつえてつづ使用しようされるにいたりつた場合ばあいだい2ごうしくはだい3ごう該当がいとうするもの所定しょてい期間きかんえてつづ使用しようされるにいたりつた場合ばあいまただい4ごう該当がいとうするものが14にちえてつづ使用しようされるにいたりつた場合ばあいにおいては、このかぎりでない。
  1. 日日ひびやとれられるしゃ
  2. 2かげつ以内いない期間きかんさだめて使用しようされるしゃ
  3. ぶしてき業務ぎょうむに4かげつ以内いない期間きかんさだめて使用しようされるしゃ
  4. ためし使用しよう期間きかんちゅうもの

20じょう規定きてい以下いか労働ろうどうしゃには適用てきようされない。ただし以下いか適用てきよう除外じょがい解雇かいこ予告よこく義務ぎむ違反いはんによる刑事けいじ責任せきにん免除めんじょされるだけであり、民事みんじじょう責任せきにん民法みんぽう627じょう628じょう労働ろうどう契約けいやくほうによる中途ちゅうと解雇かいこ制限せいげん)をも免除めんじょされるわけではない(日雇ひやといはのぞく)。それぞれの期間きかんえてつづ使用しようされるにいたった場合ばあいは、解雇かいこ予告よこく規定きてい適用てきようされる。

  • 日々ひびやとれられるしゃ。(1かげつえてつづ使用しようされるにいたった場合ばあいのぞく。民事みんじじょう予告よこく義務ぎむもない。「1かげつ」は休日きゅうじつふくこよみがつである(昭和しょうわ24ねん2がつ5にちもとおさむ408ごう))
  • 2かげつ以内いない期間きかんさだ使用しようされるしゃ。(所定しょてい期間きかんえてつづ使用しようされるにいたった場合ばあいのぞく。民法みんぽう628じょうおよ労働ろうどう契約けいやくほう17じょうによる中途ちゅうと解約かいやく民事みんじ責任せきにんのこる)
  • ぶし業務ぎょうむに4かげつ以内いない期間きかんさだ使用しようされるしゃ。(同上どうじょう民法みんぽう628じょう
  • 試用しよう期間きかんなかもの。(使用しよう期間きかんにかかわらず、14にちえてつづ使用しようされるにいたった場合ばあいのぞく。期間きかんさだめのない雇用こよう契約けいやくであれば民事みんじじょう使用しようしゃは2週間しゅうかんまえ予告よこくをしなければならない)

年次ねんじ有給ゆうきゅう休暇きゅうかとの関係かんけい

編集へんしゅう

解雇かいこ予告よこくおこなわれると、最長さいちょうで30にち解雇かいことなるため、それまでの所定しょてい勤務きんむ日数にっすう相当そうとうする年次ねんじ有給ゆうきゅう休暇きゅうか保持ほじしている場合ばあいは、解雇かいこ期日きじつまで取得しゅとく可能かのうとなり、それを超過ちょうかするぶん法定ほうてい最低さいてい付与ふよぶんである場合ばあい無効むこうとなり、法定ほうてい以上いじょう付与ふよぶん買取かいとり可能かのうとなる。ただし、解雇かいこ予告よこく手当てあて支払しはらわれる場合ばあいは、解雇かいこ期日きじつ短縮たんしゅくされるため、年次ねんじ有給ゆうきゅう休暇きゅうか無効むこうとなる日数にっすうえる。解雇かいこ退職たいしょくちが労働ろうどうしゃ予期よきせぬことなのでよく、トラブルとなり法律ほうりつでの保護ほごなど、議論ぎろんんでいる。

年少ねんしょうしゃ帰郷ききょう旅費りょひ

編集へんしゅう

帰郷ききょう旅費りょひ

だい64じょう  

まん18さいたないもの解雇かいこから14にち以内いない帰郷ききょうする場合ばあいにおいては、使用しようしゃは、必要ひつよう旅費りょひ負担ふたんしなければならない。ただし、まん18さいたないものがそのめにすべき事由じゆうもとづいて解雇かいこされ、使用しようしゃがその事由じゆうについて行政ぎょうせい官庁かんちょう認定にんていけたときは、このかぎりでない。

64じょうは、解雇かいこされた年少ねんしょうしゃが、帰郷ききょう旅費りょひたないためにくずすことをふせ趣旨しゅしであり、戦前せんぜん工場こうじょうほう施行しこうれい27じょういだ規定きていである。「帰郷ききょう」とは、本人ほんにん住所じゅうしょかぎらず、父母ちちははその親族しんぞく保護ほごける場合ばあいはそのもの住所じゅうしょ場合ばあいふくむ。また「旅費りょひ」には就業しゅうぎょうのために移転いてんした家族かぞく旅費りょひふくまれる(昭和しょうわ22ねん9がつ13にちはつもと17ごう)。

19じょう、20じょう規定きていにより「天災てんさい事変じへんそのやむをない事由じゆうのため事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうとなった場合ばあいまたは「労働ろうどうしゃせめすべき事由じゆうもとづいて解雇かいこする場合ばあい」の行政ぎょうせい官庁かんちょう認定にんていけた場合ばあいは、帰郷ききょう旅費りょひ支給しきゅう除外じょがいについても認定にんていけたものとみなされる(施行しこう規則きそく7じょう年少ねんしょうしゃ労働ろうどう基準きじゅん規則きそく10じょう)。

なお、かつては「女子じょし帰郷ききょう旅費りょひ」の規定きていもあったが(改正かいせいまえの68じょう)、1986ねん昭和しょうわ61ねん)4がつ男女だんじょ雇用こよう機会きかい均等きんとうほう施行しこうにより廃止はいしされている。

雇用こよう保険ほけん給付きゅうふ

編集へんしゅう

雇用こよう保険ほけんほうにおける基本きほん手当てあて受給じゅきゅうたり、解雇かいこ自己じこめにすべき重大じゅうだい理由りゆうによるものをのぞく)により離職りしょくした労働ろうどうしゃは、「特定とくてい受給じゅきゅう資格しかくしゃ」(倒産とうさん解雇かいことうにより離職りしょくしたもの)としてあつかわれ、自己じこ都合つごう退職たいしょくひとしによる場合ばあいくらべ、所定しょてい給付きゅうふ日数にっすうおおくなる(雇用こよう保険ほけんほう23じょう)。また以下いかのような事情じじょうにより離職りしょくしたもの解雇かいことうによる離職りしょくとして同様どうようあつかいとなる(雇用こよう保険ほけんほう施行しこう規則きそく36じょう2ごう~11ごう)。

  • 労働ろうどう契約けいやく締結ていけつさい明示めいじされた労働ろうどう条件じょうけん事実じじついちじるしく相違そういしたこと
  • 賃金ちんぎん退職たいしょく手当てあてのぞく)のがくの3ぶんの1をえるがく支払しはらい期日きじつまでに支払しはらわれなかったこと
  • 賃金ちんぎんが、当該とうがい労働ろうどうしゃ支払しはらわれていた賃金ちんぎんくらべて85%未満みまん低下ていかした(また低下ていかすることとなった)こと(当該とうがい労働ろうどうしゃ低下ていか事実じじつについて予見よけんなかった場合ばあいかぎる。)
  • 離職りしょくぞくするつきぜん6がつのうちいずれか連続れんぞくした3かげつ以上いじょう期間きかんにおいて労働ろうどう基準きじゅんほうだい36じょう3こう規定きていする限度げんど時間じかん相当そうとうするときあいだすう当該とうがい受給じゅきゅう資格しかくしゃが、育児いくじ介護かいご休業きゅうぎょうほうだい17じょう1こう小学校しょうがっこう就学しゅうがく始期しきたっするまでの養育よういくする労働ろうどうしゃであってどうこう各号かくごうのいずれにも該当がいとうしないものである場合ばあいにあってはどうこう育児いくじ介護かいご休業きゅうぎょうほうだい18じょう1こうよう介護かいご状態じょうたいにある対象たいしょう家族かぞく介護かいごする労働ろうどうしゃであってどうこうにおいて準用じゅんようする育児いくじ介護かいご休業きゅうぎょうほうだい17じょう1こう各号かくごうのいずれにも該当がいとうしないものである場合ばあいにあってはどうこう規定きていする制限せいげん時間じかん相当そうとうするときあいだすう)をえて、時間じかんがい労働ろうどう休日きゅうじつ労働ろうどうおこなわれたこと
  • 離職りしょくぞくするつきぜん6がつのうちいずれかのつきにおいて1がつたり100時間じかん以上いじょう時間じかんがい労働ろうどう休日きゅうじつ労働ろうどうおこなわれたこと
  • 離職りしょくぞくするつきぜん6がつのうちいずれか連続れんぞくした2かげつ以上いじょう期間きかん時間じかんがい労働ろうどう時間じかん平均へいきんし1がつたり80あいだえて時間じかんがい労働ろうどう休日きゅうじつ労働ろうどうおこなわれたこと
  • 事業じぎょうぬし危険きけんしくは健康けんこう障害しょうがいしょうずるおそれがあるむね行政ぎょうせい機関きかんから指摘してきされたにもかかわらず、事業じぎょうしょにおいて当該とうがい危険きけんしくは健康けんこう障害しょうがい防止ぼうしするために必要ひつよう措置そちこうじなかったこと
  • 事業じぎょうぬし労働ろうどうしゃ職種しょくしゅ転換てんかんとうさいして、当該とうがい労働ろうどうしゃ職業しょくぎょう生活せいかつ継続けいぞくのために必要ひつよう配慮はいりょおこなっていないこと
  • 期間きかんさだめのある労働ろうどう契約けいやく更新こうしんにより3ねん以上いじょうつづ雇用こようされるにいたった場合ばあいにおいて当該とうがい労働ろうどう契約けいやく更新こうしんされないこととなったこと
  • 期間きかんさだめのある労働ろうどう契約けいやく締結ていけつさい当該とうがい労働ろうどう契約けいやく更新こうしんされることが明示めいじされた場合ばあいにおいて当該とうがい労働ろうどう契約けいやく更新こうしんされないこととなったこと
  • 事業主じぎょうぬしまた当該とうがい事業じぎょうぬし雇用こようされる労働ろうどうしゃから就業しゅうぎょう環境かんきょういちじるしくがいされるような言動げんどうセクシャルハラスメントパワーハラスメントひとし)をけたこと
  • 事業じぎょうぬしから退職たいしょくするよう勧奨かんしょうけたこと(解雇かいこ予告よこく(1ねん以内いない解雇かいこされる場合ばあいかぎる)通知つうちみずか離職りしょくした場合ばあいふくみ、従来じゅうらいから恒常こうじょうてきもうけられている「早期そうき退職たいしょく優遇ゆうぐう制度せいどとう応募おうぼして離職りしょくした場合ばあいは、該当がいとうしない)
  • 事業じぎょうしょにおいて使用しようしゃめにすべき事由じゆうによりおこなわれた休業きゅうぎょうつづき3かげつ以上いじょうとなったこと
  • 事業じぎょうしょ業務ぎょうむ法令ほうれい違反いはんしたこと
  • 事業じぎょうぬし法令ほうれい違反いはんし、妊娠にんしんちゅうもしくは出産しゅっさん労働ろうどうしゃまた養育よういくもしくは家族かぞく介護かいごおこな労働ろうどうしゃ就業しゅうぎょうさせ、もしくはそれらのもの雇用こよう継続けいぞくとうはかるための制度せいど利用りよう不当ふとう制限せいげんしたことまた妊娠にんしんしたこと、出産しゅっさんしたこともしくはそれらの制度せいど利用りようさるをし、もしくは利用りようしたこととう理由りゆうとして不利益ふりえきあつかいをしたこと

ユニオン・ショップ協定きょうていにおいて事業じぎょうぬしたいして労働ろうどうしゃせめすべき事由じゆうがないにもかかわらず労働ろうどう組合くみあいから除名じょめいされたために解雇かいこされた場合ばあいは、これらの基準きじゅん該当がいとうするものとしてあつかわれる。なお労働ろうどうしゃが、使用しようしゃ解雇かいこしてほしいと依頼いらいした結果けっか解雇かいことなった場合ばあい自己じこ都合つごう退職たいしょくじゅんじてあつかわれる。

高齢こうれいしゃ障害しょうがいしゃである労働ろうどうしゃ解雇かいこ

編集へんしゅう

事業じぎょうぬしは、その雇用こようするこう年齢ねんれいしゃとう常時じょうじ雇用こようする45さい以上いじょう65さい未満みまんものかぎる。以下いかおなじ)が解雇かいこ自己じこめにすべき理由りゆうによるものをのぞく。)そのこれにるいするものとして厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいさだめる理由りゆうにより離職りしょくする場合ばあいにおいて、当該とうがいだか年齢ねんれいしゃとうさい就職しゅうしょく希望きぼうするときは、求人きゅうじん開拓かいたくその当該とうがいだか年齢ねんれいしゃとうさい就職しゅうしょく援助えんじょかん必要ひつよう措置そちさい就職しゅうしょく援助えんじょ措置そち)をこうずるようにつとめなければならない公共こうきょう職業しょくぎょう安定あんていしょは、この規定きていにより事業じぎょうぬしこうずべきさい就職しゅうしょく援助えんじょ措置そちについて、当該とうがい事業じぎょうぬしもとめにおうじて、必要ひつよう助言じょげんその援助えんじょおこなうものとする(こう年齢ねんれいしゃとう雇用こよう安定あんていとうかんする法律ほうりつ15じょう)。

事業じぎょうぬしは、その雇用こようするこう年齢ねんれいしゃとうのうち5にん以上いじょうもの解雇かいことうにより離職りしょくする場合ばあいには、原則げんそくとして当該とうがい届出とどけでかか離職りしょくの1かげつまえまでに、そのむね公共こうきょう職業しょくぎょう安定あんてい所長しょちょうとどなければならない多数たすう離職りしょくとどけこう年齢ねんれいしゃとう雇用こよう安定あんていとうかんする法律ほうりつ16じょう)。事業じぎょうぬしは、厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいさだめるところにより、解雇かいことうにより離職りしょくすることとなっているこう年齢ねんれいしゃとう希望きぼうするときは、その円滑えんかつさい就職しゅうしょく促進そくしんするため、当該とうがいだか年齢ねんれいしゃとう職務しょくむ経歴けいれき職業しょくぎょう能力のうりょくその当該とうがいだか年齢ねんれいしゃとうさい就職しゅうしょくする事項じこう解雇かいことう理由りゆうのぞく。)として厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいさだめる事項じこうおよ事業じぎょうぬしこうずるさい就職しゅうしょく援助えんじょ措置そちあきらかにする書面しょめん求職きゅうしょく活動かつどう支援しえんしょ)を作成さくせいし、当該とうがいだか年齢ねんれいしゃとう交付こうふしなければならない(こう年齢ねんれいしゃとう雇用こよう安定あんていとうかんする法律ほうりつ17じょう)。

事業じぎょうぬしは、障害しょうがいしゃである労働ろうどうしゃ解雇かいこする場合ばあい労働ろうどうしゃめにすべき理由りゆうにより解雇かいこする場合ばあいまた天災てんさい事変じへんそのやむをない理由りゆうのために事業じぎょう継続けいぞく不可能ふかのうとなったことにより解雇かいこする場合ばあいのぞく)には、すみやかにそのむね公共こうきょう職業しょくぎょう安定あんてい所長しょちょうとどなければならない。この届出とどけでがあったときは、公共こうきょう職業しょくぎょう安定あんていしょは、この届出とどけでかか障害しょうがいしゃである労働ろうどうしゃについて、すみやかに求人きゅうじん開拓かいたく職業しょくぎょう紹介しょうかいひとし措置そちこうずるようにつとめるものとする(障害しょうがいしゃ雇用こよう促進そくしんとうかんする法律ほうりつ81じょう)。

解雇かいこ無効むこう金銭きんせん解決かいけつ制度せいど

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解雇かいこ無効むこうとされ、地位ちい確認かくにん請求せいきゅう認容にんようする判決はんけつ確定かくていしても、現実げんじつもと職場しょくば復帰ふっきできる労働ろうどうしゃおおくない。労働ろうどうしゃ法的ほうてき正当せいとうせいみとめられていも、使用しようしゃ心理しんりてき労働ろうどうしゃれにくいし、労働ろうどうしゃもまた復帰ふっきするには相当そうとう覚悟かくご必要ひつようだからである。解雇かいこ訴訟そしょう和解わかいおおくは労働ろうどうしゃ退職たいしょく一定いってい解決かいけつきん支払しはらいを内容ないようとする)で終了しゅうりょうすることがおお原因げんいんもここにある[8]

欧米おうべい諸国しょこくならって日本にっぽんでも不当ふとう解雇かいこ直面ちょくめんした労働ろうどうしゃ救済きゅうさい方法ほうほうとして、企業きぎょうによる一定いっていがく補償ほしょうきん支払しはらいを条件じょうけん労働ろうどう契約けいやく解消かいしょうみとめる金銭きんせん解決かいけつ制度せいど導入どうにゅうとく経営けいえいがわからつよもとめられている[9][10][11]一方いっぽう労働ろうどうがわは、金銭きんせん解決かいけつではなく労働ろうどうしゃ就労しゅうろう請求せいきゅうけんみとめることにより労働ろうどうしゃ現職げんしょく復帰ふっきしやすい条件じょうけんととのえることのほうが重要じゅうようであると[12][13][14][15]厚生こうせい労働省ろうどうしょうの「透明とうめいかつ公正こうせい労働ろうどう紛争ふんそう解決かいけつシステムとうかたかんする検討けんとうかい」(2017ねん5がつ報告ほうこくしょ公表こうひょう[16]議論ぎろんされたさいには「金銭きんせん救済きゅうさい制度せいどについては、ほう技術ぎじゅつてき論点ろんてん金銭きんせん水準すいじゅん金銭きんせんてき時間じかんてき予見よけん可能かのうせい現行げんこう労働ろうどう紛争ふんそう解決かいけつシステムにたいする影響えいきょうとうふくめ、労働ろうどう政策せいさく審議しんぎかいにおいて、有識者ゆうしきしゃによるほう技術ぎじゅつてき論点ろんてんについての専門せんもんてき検討けんとうくわえ、さら検討けんとうふかめていくことが適当てきとう」とされ、さらなる議論ぎろんふかめるために「解雇かいこ無効むこう金銭きんせん救済きゅうさい制度せいどかかほう技術ぎじゅつてき論点ろんてんかんする検討けんとうかい」(2022ねん4がつ報告ほうこくしょ公表こうひょう[17]ひらかれた。ただ、依然いぜん労使ろうし意見いけんへだたりがおおきく、現時点げんじてん制度せいど目途もくとはたっていない。

労働ろうどう基準きじゅんほうには、解雇かいこ手続てつづきの要件ようけん(30にち以上いじょうまえ予告よこくする、または同日どうじつすうふん以上いじょう平均へいきん賃金ちんぎん(12じょう)をはらう)が「労働ろうどうしゃせめすべき事由じゆう」があれば免除めんじょされるとある(20じょう)。これを解釈かいしゃくすると「30にちぶん平均へいきん賃金ちんぎんはらえば、とく理由りゆうくても解雇かいこできる」となる。これは当初とうしょ解雇かいこについて一般いっぱんてき見解けんかいであった。これにしたがって、「解雇かいこ自由じゆう」を支持しじする判例はんれい[ちゅう 7]されている。

しかし、1950年代ねんだい下級かきゅう裁判所さいばんしょにおいて判例はんれいかさねた法体ほうたいけいができあがっていくなかで、裁判所さいばんしょ労働ろうどうしゃたい様々さまざま法的ほうてき保護ほごあたえていき、この結果けっか、「解雇かいこ自由じゆう」は「解雇かいこ制限せいげん」へとわっていった[18]。 20じょう解釈かいしゃくめぐって、裁判官さいばんかんあいだにあった2つのせつ[18]

正当せいとう事由じゆうせつ
20じょう明文めいぶん要件ようけんとはべつに、解雇かいこには正当せいとう事由じゆうがなければならない」とする不文ふぶん要件ようけんがあるとして、正当せいとう事由じゆうのない解雇かいこ無効むこうとするせつ
権利けんり濫用らんようせつ
企業きぎょう解雇かいこけんは20じょうによってみとめられているが、権利けんり濫用らんようした場合ばあい民法みんぽう1じょう3こう)には解雇かいこ無効むこうとするせつ濫用らんようについては、だい世界せかい大戦たいせんまえにはすでに法体ほうたいけいとして確立かくりつしていたが、解雇かいこかんしては適用てきようがいとされていた。戦後せんごはいり、解雇かいこ適用てきようされるというかんがえがてくる。
1950年代ねんだい前半ぜんはん東京とうきょう地裁ちさい労働ろうどうがこのかんがえをリードし、判例はんれい蓄積ちくせきにより裁判所さいばんしょ基本きほんてきにこの立場たちば優位ゆういとなっていく(日本にっぽん食塩しょくえん事件じけんさいはんあきら50.4.25や、高知放送こうちほうそう事件じけんさいはんあきら52.1.31など)。

その、2008ねん労働ろうどう契約けいやくほう制定せいていにおいて、基準きじゅん明確めいかくされた。

欧米おうべいにおける解雇かいこ

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随意ずいい雇用こよう原則げんそく

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アメリカには日本にっぽん解雇かいこけん濫用らんよう法理ほうりにあたる法理ほうりがなく、随意ずいい雇用こよう原則げんそく(at-will employment doctrine)が確立かくりつされてきた[19]きょうによる雇用こようりょう過剰かじょうたいしてレイオフによって迅速じんそく人員じんいん削減さくげんをするのがアメリカ企業きぎょう手法しゅほうであり、解雇かいこ立法りっぽう規制きせい判例はんれい法理ほうり発達はったつ限定げんていてきである。

随意ずいい雇用こよう原則げんそくがある一方いっぽうで、伝統でんとうてきには労働ろうどう協約きょうやくによって解雇かいことする正当せいとう事由じゆうさだめるなど、労働ろうどう協約きょうやく組合くみあいいんである被用者ひようしゃ解雇かいこ規制きせいしてきた[19]。しかし、労働ろうどう組合くみあい組織そしきりつ低下ていかともない、労働ろうどう協約きょうやくによる規制きせいりょく縮小しゅくしょうし、これに呼応こおうして1960年代ねんだい以降いこう差別さべつ規制きせい法制ほうせいとおして解雇かいこふくめた労働ろうどう条件じょうけん規制きせいされるようになった[19]

随意ずいい雇用こよう原則げんそく差別さべつ禁止きんし法制ほうせいのほか、報復ほうふくとしての解雇かいこ内部ないぶ告発こくはつしゃたいする解雇かいこ陪審ばいしんいん兵役へいえきさらに選挙せんきょけん行使こうし理由りゆうとする解雇かいこなどが制定せいていほう禁止きんしされている[19]。また、随意ずいい雇用こよう原則げんそく先述せんじゅつ労働ろうどう協約きょうやくさだめる正当せいとう事由じゆう(just cause)のない解雇かいこにあたる場合ばあい制限せいげんされ、労働ろうどう協約きょうやくによる苦情くじょう処理しょり仲裁ちゅうさい手続てつづきによる救済きゅうさいもとめることができる[19]。このほか各州かくしゅうのコモンローによる制約せいやくがある[19]たとえば、カリフォルニアしゅうでは雇用こよう契約けいやくは「at will」すなわち相互そうご自由じゆう意志いしもとづくものとされ、期間きかんさだめのない雇用こよう契約けいやくでは使用しようしゃ判断はんだん特段とくだん理由りゆうなしにいつでも労働ろうどうしゃ解雇かいこできる[20]。ただし解雇かいこ予告よこく手当てあて相当そうとうするものの支払しはらいは必要ひつようとされる。

企業きぎょうないADR

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雇用こよう関係かんけい規制きせい増加ぞうか複雑ふくざつともない、個別こべつ企業きぎょうないにおける裁判さいばんがい代替だいたいてき紛争ふんそう処理しょり(alternative dispute resolution:ADR)も発達はったつしてきている[19]

イギリスでは、余剰よじょう人員じんいんであること(Redundancy)、および個人こじん能力のうりょく資格しかく行動こうどう起因きいんする解雇かいこ公正こうせい(Fair)とされる[21]余剰よじょう人員じんいん理由りゆう場合ばあいには、ビジネスじょう解雇かいこけがたいことを証明しょうめいする必要ひつようはない[21]

イタリアでは、やむをない経営けいえいじょう理由りゆう、および従業じゅうぎょういん個人こじん重大じゅうだい契約けいやく違反いはんといった、正当せいとう理由りゆうもしくは正当せいとう動機どうきのみFairとされる[22]余剰よじょう人員じんいん理由りゆう解雇かいこまえには、敗者はいしゃ復活ふっかつせん社内しゃないべつポジションに異動いどうさせる)がひろ判例はんれいもとめられている[22]レイオフものには6かげつあいだ優先ゆうせんてきさい雇用こようけんがある[22]

なお人種じんしゅ宗教しゅうきょう性別せいべつ労働ろうどう組合くみあい活動かつどうなどといった、差別さべつ反映はんえいした解雇かいこはUnfairとされる[22]

スペインでは法律ほうりつにより労働ろうどうしゃ解雇かいこきびしい制約せいやくがかかっている。そのため、外国がいこく企業きぎょう投資とうし敬遠けいえん外国がいこくじん労働ろうどうしゃ流入りゅうにゅうといった事態じたいまねいている、という指摘してきがある[23]

オランダでは、経済けいざいてき余剰よじょう人員じんいんであること、および個人こじん行動こうどう能力のうりょく不足ふそく理由りゆうとした解雇かいこはFairである[24]経済けいざいてき理由りゆう場合ばあいは、会社かいしゃ財務ざいむデータと人員じんいん余剰よじょうである根拠こんきょしめ必要ひつようがあり、具体ぐたいてきには26週間しゅうかん以内いないべつ適切てきせつなポジションを用意よういできないことが条件じょうけんである[24]余剰よじょう人員じんいん選定せんていは、社歴しゃれきおよび年齢ねんれいもとづいておこなわれる[24]

個別こべつてき理由りゆうであっても、以下いか条件じょうけんにおいて無期むき雇用こよう解雇かいこすることができる[24]

  • 従業じゅうぎょういん満足まんぞくのいく方法ほうほう仕事しごとをできなくなっ、もしくは仕事しごと不向ふむきの場合ばあい[24]
  • 従業じゅうぎょういん自分じぶん仕事しごと良心りょうしんてき拒否きょひもうて、会社かいしゃわりの仕事しごと用意よういできない場合ばあい[24]
  • 従業じゅうぎょういん雇用こようぬし深刻しんこく対立たいりつがある[24]
  • 従業じゅうぎょういん長期間ちょうきかん仕事しごとをすることができない[24]
  • 勤務きんむちゅう盗難とうなん泥酔でいすいなど、不適切ふてきせつ行動こうどうをとった場合ばあい[24]

また、個人こじん能力のうりょく不足ふそくやパフォーマンス不足ふそく起因きいんする場合ばあい解雇かいこは、合理ごうりてき期間きかんないべつのポジションを用意よういできない場合ばあいにのみ可能かのうである[24]

ドイツでは、経済けいざいてき経営けいえいてき理由りゆう、および個人こじん資質ししつ(たとえばスキル不足ふそく能力のうりょく不足ふそく)による解雇かいこはFairであるが、裁判所さいばんしょはこの決定けっていについて、恣意しいてき不合理ふごうりではないか審議しんぎ可能かのうである[25]

余剰よじょう人員じんいん理由りゆう場合ばあいには、社会しゃかいてき理由りゆう社歴しゃれき年齢ねんれい扶養ふよう)を考慮こうりょする必要ひつようがあり、それがない解雇かいこはUnfairとされる[25]解雇かいこまえにはさい訓練くんれん試行しこうする必要ひつようがある[25]

ドイツ企業きぎょう雇用こよう調整ちょうせいは、日本にっぽん企業きぎょう解雇かいこ規制きせいきわめてつよい)とアメリカ企業きぎょう解雇かいこ自由じゆう建前たてまえ)の中間ちゅうかんにあるとされてきた。ドイツでは整理せいり解雇かいこについて日本にっぽんの「整理せいり解雇かいこよん要件ようけん」と同様どうよう要件ようけんされているが、人員じんいん整理せいり前提ぜんていとなる企業きぎょう縮小しゅくしょう合理ごうり措置そちなどについては、憲法けんぽうじょう保障ほしょうされた企業きぎょうぬしとしての決定けってい自由じゆう強調きょうちょうされ、それにたいする司法しほう審査しんさは、明白めいはく非合理ひごうりせいのないかぎりなじまないとされてきた[26]事実じじつじょう解雇かいこができなかった雇用こよう制度せいど改革かいかくするため、ゲアハルト・シュレーダー首相しゅしょう政策せいさく「アジェンダ2010」のした法律ほうりつあらため、解雇かいこをしやすくしたところ、ドイツ企業きぎょう競争きょうそうりょくもどすために相次あいついで大幅おおはば解雇かいこ実施じっしした。短期たんきてきには失業しつぎょうしゃが500まんにんえたが、長期ちょうきてきには、雇用こよう流動りゅうどうせいたかまり、ぎゃく労働ろうどう市場いちば拡大かくだいして失業しつぎょうしゃった。もっともシュレーダー首相しゅしょう国民こくみん不満ふまん一身いっしんびて退陣たいじん余儀よぎなくされた。

ノルウェーでは、経済けいざいてき理由りゆう事業じぎょうリストラ)および個別こべつてき理由りゆうによる解雇かいこがFairである[27]経済けいざいてき理由りゆう場合ばあい選択せんたく客観きゃっかんてき正当せいとうかたちおこな必要ひつようがあり、裁判所さいばんしょはその選択せんたくについて審議しんぎ可能かのうである[27]判例はんれいでは、社歴しゃれき年齢ねんれい資格しかく社会しゃかいてき配慮はいりょ選択せんたく基準きじゅんとなっている。レイオフ場合ばあいさい雇用こよう優先ゆうせんけんっており、その期間きかんは1年間ねんかんである[27]。 また個別こべつてき理由りゆう可能かのうであるが、雇用こよう契約けいやく重大じゅうだい違反いはん不誠実ふせいじつ,長期ちょうき欠勤けっきんなど)に限定げんていされる[27]

なお対象たいしょうしゃべつのポストが確保かくほ可能かのう場合ばあいには、経済けいざいてき理由りゆうによる解雇かいこはUnfairである[27]年齢ねんれい労働ろうどう組合くみあい活動かつどう兵役へいえき妊娠にんしん病気びょうき休暇きゅうかによる解雇かいこもUnfairである[27]

スウェーデン

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客観きゃっかんてき理由りゆうがない解雇かいこはUnfairとされ、その理由りゆうは2かげつ以上いじょうまえ存在そんざいしていた理由りゆうでなければならない[28][28]

個人こじんする理由りゆうでは、業務ぎょうむ能力のうりょく欠如けつじょ違法いほう行為こうい協業きょうぎょうじょう問題もんだい、ハラスメント、労働ろうどう拒否きょひ刑事けいじ犯罪はんざいなどが解雇かいこ理由りゆうとなる[28]年齢ねんれい病気びょうきなどによる能力のうりょく低下ていか場合ばあいは、雇用こようぬし転勤てんきんさい訓練くんれん仕事しごとへの異動いどうこころみる必要ひつようがある[28]

余剰よじょう人員じんいん理由りゆうである場合ばあいには、解雇かいこ不可欠ふかけつであることを証明しょうめいする必要ひつようはないが、従業じゅうぎょういんには以前いぜんしょく優先ゆうせんてきさい就職しゅうしょくする権利けんり最長さいちょう9カ月かげつあいだ勤続きんぞく12カ月かげつ以上いじょうもののみ)があたえられる[28]レイオフ人員じんいん選択せんたく社歴しゃれきみじかいものからである[28]

俗称ぞくしょう

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ただし芸能人げいのうじんやプロスポーツ選手せんしゅ専属せんぞく契約けいやく解除かいじょを、マスコミによる報道ほうどうや、なかには所属しょぞくしていた芸能げいのう事務所じむしょやスポーツチームのプレスリリースで「解雇かいこ」と表現ひょうげんされることがままある(芸能人げいのうじんやプロスポーツ選手せんしゅの「解雇かいこ」については「引退いんたい」を参照さんしょう)。
  2. ^ ただし、労働ろうどう契約けいやくほうには罰則ばっそくがないので、違反いはんしたとしてもけいしょされることはない。
  3. ^ 民法みんぽう626じょうでは、「雇用こよう期間きかんが5ねんえ、また雇用こよう当事とうじしゃ一方いっぽうしくは第三者だいさんしゃ終身しゅうしんあいだ継続けいぞくすべきときは、当事とうじしゃ一方いっぽうは、5ねん経過けいかしたのち、いつでも契約けいやく解除かいじょをすることができる」とさだめるが、そもそも労働ろうどう基準きじゅんほう14じょうにより3ねん特別とくべつ場合ばあいは5ねん)をえる契約けいやくはできず、民法みんぽう626じょう適用てきようされるのは、家事かじ使用人しようにんのような労働ろうどう基準きじゅんほう適用てきよう除外じょがいしゃかぎられる。もっと家事かじ使用人しようにんであっても労働ろうどう契約けいやくほう適用てきようされるので、実際じっさい家事かじ使用人しようにんたいしいつでも契約けいやく解除かいじょ出来できるとかんがえるのは妥当だとうではない。
  4. ^ 即時そくじ解雇かいこ通告つうこくまえ平均へいきん賃金ちんぎん正確せいかく算定さんていすることが実際じっさい問題もんだいとして不可能ふかのう場合ばあい解雇かいこ予告よこく手当てあて概算がいさんばらいとして即時そくじ解雇かいこ通告つうこくし、不足ふそくがくをそのすみやかに提供ていきょうする場合ばあいには、その即時そくじ解雇かいこ有効ゆうこうとなる(昭和しょうわ24ねん7がつ2にちもとおさむ2089ごう)。
  5. ^ 認定にんてい天災てんさい事変じへんとう場合ばあいには様式ようしきだい2ごう労働ろうどうしゃせめすべき事由じゆう場合ばあい様式ようしきだい3ごうによることとされる(施行しこう規則きそくだい7じょう)。
  6. ^ 西谷にしたにさとし労働ろうどうほうだい2はん』p.406では最高裁さいこうさいのこの立場たちばを「労働ろうどうしゃは、使用しようしゃが「即時そくじ解雇かいこ固執こしつ」したという、証明しょうめい困難こんなん場合ばあいにしか予告よこく手当てあて請求せいきゅうしえないことになる。」として批判ひはんし、下級かきゅうしん選択せんたくけんせつを「妥当だとう」としている。
  7. ^ たとえば、松山まつやま地裁ちさい判決はんけつ昭和しょうわ26ねん2がつ8にち

出典しゅってん

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  6. ^ a b 高橋たかはし裕次郎ゆうじろう 監修かんしゅう『すぐに役立やくだ労働ろうどうほうのしくみと手続てつづき』三修社さんしゅうしゃ、2002ねん、164ぺーじ
  7. ^ 西谷にしたにさとし労働ろうどうほうだい2はん』p.406~407
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  13. ^ 解雇かいこ金銭きんせん解決かいけつ制度せいどQ&A民主みんしゅ法律ほうりつ協会きょうかい
  14. ^ 解雇かいこ金銭きんせん解決かいけつ」は必要ひつようか?神奈川かながわ総合そうごう法律ほうりつ事務所じむしょ
  15. ^ 立憲りっけん政策せいさくがまるごとわかる政策せいさくしゅう立憲りっけん民主党みんしゅとう
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参考さんこう文献ぶんけん

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  • データブック国際こくさい労働ろうどう比較ひかく (Report). 労働ろうどう政策せいさく研究けんきゅう研修けんしゅう機構きこう. 2012ねん. ISBN 978-4-538-49040-3

関連かんれん項目こうもく

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解雇かいこ退職たいしょく関係かんけい