代表だいひょう取締役とりしまりやく

代表だいひょう取締役とりしまりやく（だいひょうとりしまりやく）は、株式会社かぶしきがいしゃを代表だいひょうする権限けんげん（代表だいひょう権けん）を有ゆうする取締役とりしまりやくをいう（会社かいしゃ法ほう第だい349条じょう）。

代表だいひょう取締役とりしまりやくは取締役とりしまりやく会かいの決議けつぎで取締役とりしまりやくの中なかから選任せんにんする。 以下いか本ほん項こうにおいて会社かいしゃ法ほう規定きていは条じょう名めいのみ記載きさいする。

権限けんげん

代表だいひょう取締役とりしまりやくは意思いし決定けってい機関きかんである株主かぶぬし総会そうかいや取締役とりしまりやく会かいの決議けつぎに基もとづき、単独たんどくで会社かいしゃを代表だいひょうして契約けいやく等とうの行為こういを行おこなうことができる。それとともに、代表だいひょう取締役とりしまりやくは会社かいしゃの業務ぎょうむを執行しっこうする。

日常にちじょう業務ぎょうむについては取締役とりしまりやく会かいからその決定けってい権限けんげんが委譲いじょうされていると考かんがえられており、自みずから決定けっていも行おこない執行しっこうする。

代表だいひょう取締役とりしまりやくは、業務ぎょうむに関かんする裁判さいばん外がい又または裁判さいばん上じょうの一切いっさいの行為こういをする権限けんげんを有ゆうする（349条じょう4項こう）が、内部ないぶ的てきに制限せいげんを設もうけること（一定いっていの行為こういに取締役とりしまりやく会かいの決議けつぎを必要ひつようとするなど）も可能かのうである。ただし、この内部ないぶ的てきな制限せいげんは制限せいげんがあることを知しらない第三者だいさんしゃ（善意ぜんいの第三者だいさんしゃ）に対抗たいこうすることはできず（349条じょう5項こう）、制限せいげんがあったことを理由りゆうに契約けいやくを反古ほごにするというようなことはできない。

代表だいひょう取締役とりしまりやくの設置せっち

取締役とりしまりやく会かいを設置せっちしている会社かいしゃにおいては、取締役とりしまりやくの中なかから代表だいひょう取締役とりしまりやくを選定せんていしなければならない（362条じょう3項こう）。

取締役とりしまりやく会かい非ひ設置せっち会社かいしゃにおいては、各かく取締役とりしまりやくが原則げんそくとして会社かいしゃの業務ぎょうむ執行しっこう権けんと代表だいひょう権けんを有ゆうする（348条じょう1項こう、349条じょう1項こう・2項こう）ため、必かならず取締役とりしまりやくの中なかから代表だいひょう取締役とりしまりやくを選定せんていしなければならないわけではない。この場合ばあい、各かく取締役とりしまりやくが同時どうじに代表だいひょう取締役とりしまりやくでもある。ただし、取締役とりしまりやく会かい非ひ設置せっち会社かいしゃでも、取締役とりしまりやくの中なかから代表だいひょう取締役とりしまりやくを選定せんていすることを定款ていかんで定さだめることができる。

代表だいひょう取締役とりしまりやくの数かずには制限せいげんはなく、1人ひとりとは限かぎらない。なお、取締役とりしまりやく会かい設置せっち会社かいしゃにおいて、取締役とりしまりやく全員ぜんいんを代表だいひょう取締役とりしまりやくに選定せんていすることはできる。

また、指名しめい委員いいん会かい等とう設置せっち会社かいしゃにおいては、取締役とりしまりやく会かいは業務ぎょうむの決定けっていと監督かんとくに専念せんねんし、業務ぎょうむの執行しっこう権限けんげんを持もたないことから、代表だいひょう権けんを有ゆうする役職やくしょくも代表だいひょう取締役とりしまりやくではなく代表だいひょう執行しっこう役やくとなる。代表だいひょう執行しっこう役やくは取締役とりしまりやく会かいの決議けつぎによって任免にんめんされる点てんが、従来じゅうらいの株式会社かぶしきがいしゃ組織そしき（監査かんさ役やくがおかれる株式会社かぶしきがいしゃ）の代表だいひょう取締役とりしまりやくと異ことなっている。

選定せんてい手続てつづき等とう

• 取締役とりしまりやく会かい設置せっち会社かいしゃにおいては、代表だいひょう取締役とりしまりやくは取締役とりしまりやく会かいの決議けつぎにより選定せんていされる（362条じょう3項こう、旧きゅう商法しょうほう第だい261条じょう1項こうと同様どうよう）。
• 取締役とりしまりやく会かい非ひ設置せっち会社かいしゃにおいては、定款ていかんに代表だいひょう者しゃが定さだめられている場合ばあいはその者ものがなり、定款ていかんで選任せんにん方法ほうほうが定さだめられている場合ばあいは取締役とりしまりやくの互選ごせん又または株主かぶぬし総会そうかいの決議けつぎのいずれかのうち定款ていかんで定さだめた方法ほうほうにより代表だいひょう取締役とりしまりやくを定さだめることができる（349条じょう3項こう）。
• 欠員けついんを生しょうじた場合ばあい。

  員数いんずうが欠かけた場合ばあいには、任期にんきの満了まんりょう又または辞任じにんにより退任たいにんした代表だいひょう取締役とりしまりやくは、新あらたに選定せんていされた代表だいひょう取締役とりしまりやくが就任しゅうにんするまで、なお代表だいひょう取締役とりしまりやくとしての権利けんり義務ぎむを有ゆうする（351条じょう1項こう）。

  必要ひつようがあると認みとめるときは、利害りがい関係かんけい人じんの申立もうしたてにより、裁判所さいばんしょは、一時いちじ代表だいひょう取締役とりしまりやく代行だいこう者しゃを選任せんにんする（2項こう）。

役付やくづき取締役とりしまりやくと代表だいひょう権けん

社長しゃちょうや会長かいちょう、副ふく社長しゃちょう、専務せんむ、常務じょうむ等とうの肩書かたがきを有ゆうする取締役とりしまりやく、いわゆる役付やくづき取締役とりしまりやくは代表だいひょう権けんを持もつ（つまり代表だいひょう取締役とりしまりやくである）ことが多おおい。しかし、これらの役職やくしょく名めいは法律ほうりつ上じょうに規定きていされたものではなく、必かならずしも代表だいひょう取締役とりしまりやくであるとは限かぎらない。特とくに常務じょうむについては代表だいひょう取締役とりしまりやくでない場合ばあいも多おおい（ただし、下記かきの表おもて見み代表だいひょう取締役とりしまりやくに当あたりうる）。会長かいちょうについても代表だいひょう権けんがある場合ばあいと代表だいひょう権けんがない（名誉めいよ職しょくとしての会長かいちょう）場合ばあいとがある。

極きわめて稀まれであるが、社長しゃちょうに代表だいひょう権けんがない場合ばあいもある。主おもな例れいとして以下いかのものがある。

• ライブドア事件じけん後のちにライブドア（現げん・LDH）の執行しっこう役員やくいん社長しゃちょうに就任しゅうにんした平松ひらまつ庚かのえ三さん
• 東京とうきょうメトロポリタンテレビジョン（TOKYO MX）の取締役とりしまりやく社長しゃちょうを務つとめた後藤ごとう亘わたる（詳細しょうさいは東京とうきょうメトロポリタンテレビジョン#開局かいきょくから経営けいえい権けん移行いこうの経緯けいいを参照さんしょう）

表おもて見み代表だいひょう取締役とりしまりやく

表おもて見み（ひょうけん）代表だいひょう取締役とりしまりやくの制度せいどとは、代表だいひょう取締役とりしまりやくでない取締役とりしまりやくに、社長しゃちょう、副ふく社長しゃちょうその他た代表だいひょう権けんを持もつと誤解ごかいされるような肩書かたがきを与あたえた場合ばあい、その取締役とりしまりやくの行為こういは、代表だいひょう権けんがないことを知しらなかった第三者だいさんしゃ（善意ぜんいの第三者だいさんしゃ）に対たいしては代表だいひょう権けんがあったものとして扱あつかわれ、会社かいしゃは責任せきにんを負おうことになるというものである（354条じょう、旧きゅう商法しょうほう262条じょう）。これにより、相手あいてに会社かいしゃを代表だいひょうする権限けんげんがあると信しんじて取引とりひきをした者ものが保護ほごされ、取引とりひきの安全あんぜんが図はかられる（権利けんり外観がいかん理論りろん）。

なお、旧きゅう商法しょうほうにおいては、社長しゃちょう及および副ふく社長しゃちょうに加くわえて専務せんむ及および常務じょうむの肩書かたがきを付ふした場合ばあいについても規定きていされていたが、社会しゃかい通念つうねん上じょう、必かならずしも専務せんむ及および常務じょうむ取締役とりしまりやくが代表だいひょうであるとはいえないため、例示れいじとして不適切ふてきせつとの考かんがえから会社かいしゃ法ほうではこの二ふたつは表ひょう見み代表だいひょう取締役とりしまりやくの規定きていからは除外じょがいされた。会社かいしゃ法ほうにおいては354条じょうの例示れいじする社長しゃちょう及および副ふく社長しゃちょうの他ほか、会長かいちょう、頭取とうどり、総裁そうさい、理事りじ長ちょう、代表だいひょう取締役とりしまりやく代行だいこう等とうが該当がいとうする。

また、354条じょうは取引とりひき上じょうの正当せいとうな信頼しんらいを保護ほごする趣旨しゅしから認みとめられた制度せいどであるから、訴訟そしょう行為こういには適用てきようされない。

旧きゅう共同きょうどう代表だいひょう取締役とりしまりやく制度せいど

通常つうじょう、代表だいひょう権けんは単独たんどくで行使こうしできるが、それを数すう人にんで共同きょうどうしなければ行使こうしできないとするのが共同きょうどう代表だいひょう取締役とりしまりやくという制度せいどであった（旧きゅう商法しょうほう261条じょう2項こう）。しかし共同きょうどう代表だいひょうでは機動きどう性せいに欠かけ、また一人ひとりで代表だいひょう権けんを行使こうしできないとはすなわち半人前はんにんまえであることを公言こうげんするようなものであるという事情じじょうもあり、共同きょうどう代表だいひょう取締役とりしまりやくが実際じっさいにおかれることは稀まれである。立法りっぽう論ろんとしても削除さくじょされるべきとの考かんがえが強つよく、裁判さいばん上じょうも重視じゅうしされていない。そこで、2006年ねん5月がつ施行しこうの会社かいしゃ法ほうにおいて、共同きょうどう代表だいひょう取締役とりしまりやくの制度せいどは廃止はいしされた。しかし、よく間違まちがわれるのが代表だいひょう取締役とりしまりやくが複数ふくすういるケースで、これは共同きょうどう代表だいひょうとは言いわない。代表だいひょう取締役とりしまりやくが複数ふくすういるだけの話はなしで、この場合ばあい、その一人ひとりひとりが完全かんぜんな代表だいひょう権けんを持もっており、それぞれが自分じぶんの名前なまえだけで契約けいやくを結むすぶことができる。 現げん会社かいしゃ法ほう下かにおいても、定款ていかんで数すう人にんで共同きょうどうしなければ代表だいひょう権けんを行使こうしできないと定さだめること自体じたいは可能かのうであるが、善意ぜんいの第三者だいさんしゃには対抗たいこうすることができない（349条じょう5項こう）。

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• 役員やくいん (会社かいしゃ)
• 経営けいえい者しゃ革命かくめい
• 現場げんば代理人だいりにん - 建設けんせつ工事こうじの請負うけおい契約けいやくにおいて、受注じゅちゅう者しゃとしての立場たちばの請負人うけおいにんの契約けいやくの定さだめに基もとづく法律ほうりつ行為こういを、請負人うけおいにんに代かわって行使こうしする権限けんげんを授与じゅよされた者もの。法人ほうじんの場合ばあい、請負人うけおいにんは当該とうがい法人ほうじんの代表だいひょう取締役とりしまりやくを指さす。

外部がいぶリンク

• 『代表だいひょう取締役とりしまりやく』 - コトバンク