(Translated by https://www.hiragana.jp/)
地底戦車 - Wikipedia

地底ちてい戦車せんしゃ(ちていせんしゃ)とは、SF作品さくひん登場とうじょうする架空かくう兵器へいき一種いっしゅで、先頭せんとうそなえたドリルなどをもちいて地盤じばん掘削くっさくし、地中ちちゅう自由じゆう行動こうどうできる車両しゃりょうのことである。作品さくひんによっては、地中ちちゅう戦車せんしゃ地下ちか戦車せんしゃドリル戦車せんしゃドリルタンク)などとも呼称こしょうされる。

映画えいが地底ちてい王国おうこく』に登場とうじょうするてつモグラ

概要がいよう

編集へんしゅう

先端せんたんドリル工作こうさくよう円柱えんちゅうじょうのものでなく、円錐えんすい螺旋らせんじょうがついたもの)または放射状ほうしゃじょう直線ちょくせんいたリーマそなえ、前方ぜんぽう土砂どしゃ掘削くっさくしながら前進ぜんしんするもので、整地せいち走行そうこうようキャタピラやオフロードタイヤで駆動くどうする。

キャタピラや装甲そうこうからの連想れんそうで「戦車せんしゃ」とばれることがあるが、敵陣てきじん地底ちていから突入とつにゅうする軍用ぐんよう車両しゃりょうばかりでなく、地底ちてい探検たんけん探索たんさくよう車輌しゃりょう地底ちていのこされた人々ひとびと救出きゅうしゅつするためのレスキュー車輛しゃりょう総称そうしょうしてばれる場合ばあいがある。

なお、艦船かんせん航空機こうくうき先端せんたんにドリルがいているものもあるが、便宜上べんぎじょうそれらの一部いちぶについても言及げんきゅうする。

地底ちてい世界せかい探検たんけんあこがれは19世紀せいきまつからあり、ジュール・ヴェルヌの『地底ちてい旅行りょこう』では洞窟どうくつをたどって地底ちてい探検たんけんおこなっている。能動のうどうてき掘削くっさくおこなうためのメカは、小説しょうせつでは『地底ちてい世界せかいペルシダー』(1922ねんエドガー・ライス・バロウズ)に「てつモグラ」 (Iron Mole) が登場とうじょうするなど、20世紀せいき初頭しょとうにはすでにられる。

ビジュアルめんにおいては、1933ねん昭和しょうわ8ねん)に『少年しょうねん倶楽部くらぶ』の付録ふろく画集がしゅう 未来みらいせん」にえがかれたもの(鈴木すずきみず)があり、国産こくさんではこれが最初さいしょのイラストレーションとなる。だい世界せかい大戦たいせん開戦かいせん1940ねん昭和しょうわ15ねん)には国防こくぼう科学かがく雑誌ざっし機械きかい』が創刊そうかんされ、小松崎こまつざきしげるなどによって局面きょくめん打開だかいのためのしん兵器へいきとして地底ちてい戦車せんしゃえがかれている[注釈ちゅうしゃく 1]

日本にっぽんぐんにち戦争せんそうにおいて旅順りょじゅん要塞ようさい攻略こうりゃくするために坑道こうどうすす坑道こうどうせんおこなって成功せいこうし、だいいち世界せかい大戦たいせんでも各国かっこく坑道こうどうせんおこなったが、坑道こうどうせんには長時間ちょうじかんようすることから坑道こうどう素早すばやすす兵器へいき実現じつげんのぞまれていた。実際じっさいに、日本にっぽんぐんでは潜行せんこうごう(SKという作業さぎょうしゃ(ただし、これはほんこうでいう「ドリル車両しゃりょう」ではなく、土木どぼく作業さぎょうしゃ)の研究けんきゅうおこなっている。また、ドイツぐん1934ねんにドリルを装備そうびした連結れんけつ戦車せんしゃミドガルドシュランゲ」の研究けんきゅうおこなったが、翌年よくねんには実用じつよう断念だんねんしている。イギリスもどう時期じきカルチベーター No.6試作しさくしたが、実戦じっせん投入とうにゅう見送みおくられた。

1941ねん昭和しょうわ16ねん)に海野うみの十三じゅうざ発表はっぴょうした少年しょうねんけSF作品さくひん未来みらい地下ちか戦車せんしゃちょう』は、地底ちてい戦車せんしゃ作中さくちゅうでは地下ちか戦車せんしゃ)の開発かいはつ目指めざ少年しょうねん技師ぎし数々かずかず困難こんなんえていくもので、地底ちてい戦車せんしゃ問題もんだいてん後述こうじゅつ)がすでに指摘してきされている。

戦後せんごになると自由じゆうなSF作品さくひん日本にっぽんでも発表はっぴょうされるようになり、小松崎こまつざきは『地球ちきゅうSOS』を発表はっぴょうし、そのなか地底ちてい戦車せんしゃをイラストとともに登場とうじょうさせている。また、本格ほんかくてき特撮とくさつ使用しようしたSF映画えいが製作せいさくされるようになり、東宝とうほう小松崎こまつざきをコンセプトデザインにむかえ、『地球ちきゅう防衛ぼうえいぐん』や『海底かいてい軍艦ぐんかん』を製作せいさくする。これらに登場とうじょうした地底ちてい戦車せんしゃがたロボット怪獣かいじゅうモゲラ」やうみそら併用へいよう潜水せんすいかんとどろきたかしごう」はリメイク作品さくひんにも登場とうじょうするほか、テレビアニメ『氷河ひょうが戦士せんしガイスラッガー』のソロンごう特撮とくさつアニメドラマ『恐竜きょうりゅう大戦たいせんそうアイゼンボーグ』のアイゼンボーグごうなど、ドリル航空機こうくうき分類ぶんるいされる亜種あしゅをもしている。

1960年代ねんだいまではあまり外国がいこく作品さくひんには登場とうじょうしてこなかったが、1966ねん放送ほうそうされたイギリスの『サンダーバード』では「モグラー」 (Mole) が登場とうじょうし、今井いまい科学かがくから「ジェットモグラ」の商品しょうひんめい発売はつばいされたプラモデルとともに人気にんきはくした。なお、1976ねんに『地底ちてい世界せかいペルシダー』が『地底ちてい王国おうこく』とだいして映画えいがされたさいには、製作せいさくに『サンダーバード』のきゅうスタッフが参加さんかしたことから、ジェットモグラに酷似こくじしたてつモグラが登場とうじょうしている。それとどう時期じきみどり商会しょうかい発売はつばいした「地中ちちゅう戦車せんしゃモグラスシリーズ」はオリジナルデザインの地底ちてい戦車せんしゃであり、前述ぜんじゅつのジェットモグラとともにプラモデル業界ぎょうかいにおける地底ちてい戦車せんしゃブームをになうこととなる。

その円谷つぶらやプロウルトラシリーズでは『ウルトラマン』のペルシダーや『ウルトラセブン』のマグマライザーなどの車両しゃりょう登場とうじょうするが、1971ねんの『かえってきたウルトラマン以後いご作品さくひんでは単発たんぱつ出演しゅつえんしか用意よういされない状態じょうたいつづく。また、1970年代ねんだい中盤ちゅうばん以降いこう巨大きょだいロボットアニメブームでは『ゲッターロボ』のゲッター2が片腕かたうでにドリルを装備そうびして自由じゆう地中ちちゅうすす描写びょうしゃがされており、これ以後いごも『ちょう電磁でんじロボ コン・バトラーV』や『超人ちょうじん戦隊せんたいバラタック』など、ロボットがそれまでの戦車せんしゃわる役割やくわりたしている。

なお、地底ちてい戦車せんしゃ登場とうじょう作品さくひんについてはリンクもと参照さんしょう

実用じつようせい問題もんだいてん

編集へんしゅう

柳田やなぎだ理科りかゆう著書ちょしょ空想くうそう科学かがく読本とくほん」などで、地底ちてい戦車せんしゃ構造こうぞうじょう欠陥けっかん問題もんだいてんについていくつか指摘してきされている。

  • 岩盤がんばん掘削くっさくにドリルが回転かいてんしながら前進ぜんしんするさいには、掘削くっさく抵抗ていこうがそのままバックトルクとなるため、車体しゃたいぎゃく方向ほうこう回転かいてんしてしまう。たとえるならテールロータをうしなったヘリコプターのように、ドリルと車体しゃたいたがいにぎゃく回転かいてんするため、推進すいしんりょくうしなわれてしまう。これらの問題もんだい前述ぜんじゅつの『未来みらい地下ちか戦車せんしゃちょう』で提起ていきされており、どう作品さくひんではその解決かいけつさくとして3れんドリルを装備そうびした改良かいりょうがた登場とうじょうさせている。
  • だい2の問題もんだいとして、「とどろきたかしごう」や「マグマライザー」など、いくつかのメカはのバランスじょうから車体しゃたいよりもドリルのほうがちいさくデザインされているものがあり、掘削くっさくしたあな通過つうかできない。これは「とどろきたかしごう」をデザインした小松崎こまつざき演出えんしゅつ円谷つぶらや英二えいじ承知しょうちしており、あくまでも映像えいぞう表現ひょうげん一部いちぶっている。
  • だい3の問題もんだいとして、掘削くっさくした後方こうほう排出はいしゅつする方法ほうほうには車体しゃたい側面そくめんにキャタピラや後方こうほうけの噴射ふんしゃ装置そうちもうける、などのあんもちいられているが、すすんだ部分ぶぶんまえからおくられた土砂どしゃふたたまってしまう危険きけんせいがある。『未来みらい地下ちか戦車せんしゃちょう』では車体しゃたい後方こうほうながれしずくがたにすることであつ発生はっせいさせて後方こうほう土砂どしゃす、との描写びょうしゃがあるが、実際じっさい進行しんこう速度そくど勘案かんあんした場合ばあいあつ発生はっせいいたらない可能かのうせいたかい。
  • だい4の問題もんだいとして、地盤じばん圧力あつりょくのため、土砂どしゃをそのまますすんでっただけではトンネルの強度きょうど不十分ふじゅうぶんであり、落盤らくばん事故じこ発生はっせいする危険きけんがある。現実げんじつのトンネル工事こうじでは、掘削くっさくすみやかにコンクリートや鉄骨てっこつによる補強ほきょうおこなわれる。
  • だい5の問題もんだいとして、岩盤がんばんねつとおしにくいため、ドリルが岩盤がんばんけずったさい摩擦まさつねつとエンジンから発生はっせいしたねつ地上ちじょうものことなり、空気くうきちゅうがせない。この対策たいさくとして、「とどろきたかしごう」はドリルの先端せんたんかんたい冷却れいきゃくよう瞬間しゅんかん冷凍れいとうガス噴出ふんしゅつ装置そうち装備そうびされている(作品さくひんちゅうでは怪獣かいじゅうとの対決たいけつよう武器ぶきとして使用しよう)が、ねつ力学りきがくじょうでは冷却れいきゃくガスを発生はっせいさせるためにねつ交換こうかん必要ひつようであるうえ、高熱こうねつ発生はっせいしてしまい、問題もんだい解決かいけつしない[注釈ちゅうしゃく 2]
  • 以上いじょうしめしたとおり、実際じっさいのトンネル工事こうじなどの作業さぎょうは「掘削くっさく」「排出はいしゅつ」「補強ほきょう」の工程こうてい並列へいれつおこなっており、映像えいぞう作品さくひんられるような、時速じそくすう10キロメートル以上いじょう高速こうそくでの進行しんこう物理ぶつりてき不可能ふかのうであるといえる。なお、ロードヘッダ(後述こうじゅつ)の最大さいだい掘削くっさく作業さぎょう実績じっせきは1あいだあたり200立方りっぽうメートルであり、時速じそく換算かんさんで8メートル相当そうとうとなる[注釈ちゅうしゃく 3]
  • 構造こうぞうじょう問題もんだい以外いがいでは、緊急きんきゅうにおける乗員じょういん脱出だっしゅつ救助きゅうじょ非常ひじょう困難こんなんともなうであろうことが予想よそうされる。

実在じつざいのドリルがた機械きかい

編集へんしゅう

シールドマシン、トンネルボーリングマシン

編集へんしゅう

現在げんざいトンネル工事こうじ主流しゅりゅうとなっているのは、ボーリングビットをそなえた円盤えんばん回転かいてんしながら前進ぜんしんし、同時どうじにトンネルのむくろたい工事こうじすすめるシールドマシントンネルボーリングマシンである。『サンダーバード』のリメイクばんである劇場げきじょうよう映画えいがには、現実げんじつのボーリングマシンにかたじょうちか円盤えんばんじょうのボーリングビットをそなえたジェットモグラが登場とうじょうしている。

ロードヘッダ、ブームヘッダー

編集へんしゅう

三井みつい三池みいけ製作所せいさくしょカヤバシステムマシナリーなどの土木どぼく機械きかいメーカーは、坑道こうどう掘削くっさくよう自由じゆう断面だんめん掘削くっさく(それぞれの商品しょうひんめいはロードヘッダ、ブームヘッダー)を開発かいはつしている。正面しょうめんからの外観がいかん螺旋らせんがたボーリングビットやキャタピラのためにまさに地底ちてい戦車せんしゃしかとしているが、側面そくめん外観がいかんはブームのながさから地底ちてい戦車せんしゃよりもメーサーころせじゅう光線こうせんしゃおもわせるものである。

ロックドリル

編集へんしゅう

古河ふるかわロックドリルのドリルジャンボ、ワークステーションはいくつもの可動かどうしきのアームをった掘削くっさく機械きかいで、掘削くっさくやシールドの設営せつえいなど作業さぎょうおうじてアームを使つかけている。縦坑たてこうようの3ブームシャフトジャンボはアニメ『機動きどう警察けいさつパトレイバー』に登場とうじょうする「ぴっけるくん」をおもわせる外観がいかんであったり、樋口ひぐちしんがワークステーションの作業さぎょう様子ようす特撮とくさつ映画えいがふう構成こうせいしたPVを監修かんしゅうしているなど、巨大きょだいロボしかとした外観がいかん特徴とくちょうである。

坑道こうどう掘削くっさく装置そうち

編集へんしゅう

陸上りくじょう自衛隊じえいたいは、ロードヘッダを坑道こうどう掘削くっさく装置そうち名称めいしょう配備はいびしている。てきへの地底ちていすす坑道こうどうせんおこなうための軍用ぐんよう重機じゅうき地底ちてい戦車せんしゃともべるものであるが、現代げんだいでは坑道こうどうせんおこなわれる可能かのうせいひくく、坑道こうどう掘削くっさくのための車両しゃりょう装備そうびしているぐんすくない。自衛隊じえいたい装備そうびも、坑道こうどうしき掩体作成さくせいおも用途ようとである。

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう

注釈ちゅうしゃく

編集へんしゅう
  1. ^ 昭和しょうわ18ねん11がつごうには、「戦車せんしゃ未来みらい」としてヘリコプターと合体がったいしたような飛行ひこう戦車せんしゃや、潜水せんすいかんにキャタピラをけたような水中すいちゅう戦車せんしゃともに、砲弾ほうだんがた前方ぜんぽうやく1/3がドリルとなり下部かぶにキャタピラを地底ちてい戦車せんしゃが、三村みつむらたけし名義めいぎえがかれている。また、昭和しょうわ16ねん11がつごう目次もくじカットには、前方ぜんぽうにドリルをつ「塹壕ざんごう掘鑿くっさく戰車せんしゃ」がえがかれている。
  2. ^ 開田かいだ裕治ゆうじは、SF雑誌ざっし宇宙船うちゅうせん』で特撮とくさつメカの解説かいせつおこなっており、とどろきたかし冷却れいきゃく問題もんだい解決かいけつ方法ほうほうとして、「揮発きはつせいたか薬品やくひん封入ふうにゅうしたマイクロカプセルこうあつガスとともに噴射ふんしゃし、その気化きかねつ冷却れいきゃくおこなっているのではないか」との考証こうしょうおこなっている。
  3. ^ ロードヘッダの前方ぜんぽう投影とうえい面積めんせきを、5メートル×5メートルの25平方へいほうメートルとした場合ばあい

出典しゅってん

編集へんしゅう

参考さんこう文献ぶんけん

編集へんしゅう
  • キャラクターエイジ vol.2『無敵むてき 空想くうそう科学かがく戦車せんしゃ逆襲ぎゃくしゅう学習研究社がくしゅうけんきゅうしゃ、2009ねん ISBN 978-4056054354
  • 柳田やなぎだ理科りかゆう空想くうそう科学かがく読本とくほん1メディアファクトリー、2006ねん ISBN 978-4840115650
  • スタジオ・ハードデラックス編著へんちょ機械きかい 小松崎こまつざきしげるちょう兵器へいき図解ずかい』 アーキテクト、2014ねん ISBN 978-4593320011

外部がいぶリンク

編集へんしゅう