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地盤沈下 - Wikipedia

地盤じばん沈下ちんか(じばんちんか)とは、地盤じばん地表ちひょうめん)が収縮しゅうしゅく陥没かんぼつにより相対そうたいてきしず現象げんしょう[1][2]堆積たいせき盆地ぼんちおき積層せきそう[3]における地盤じばん沈下ちんか世界中せかいじゅうのどこでも発生はっせいする[4]

地盤じばん沈下ちんかれい
地盤じばん沈下ちんかであってもおもみずふくおびすいそう体積たいせきはそれほど変化へんかしない。地下水ちかすい過剰かじょうげによっておびすいそう(1)にせっする粘土ねんどそうのような強固きょうこ構造こうぞうたないなん透水とうすいそう(2)のなか地下水ちかすいおびすいそう移動いどうすることで、なん透水とうすいそう体積たいせき減少げんしょう地面じめん沈下ちんかする。
A:沈下ちんかりょう B:がりりょう

概要がいよう 編集へんしゅう

地盤じばんしず原因げんいんには自然しぜん現象げんしょうによるものと人類じんるい経済けいざい活動かつどうにもとづく人為じんいてき作業さぎょうによるものがある[1][2]建築けんちくもの農業のうぎょう被害ひがいける。地盤じばん沈下ちんかは、海抜かいばつゼロメートル地帯ちたい発生はっせいさせる広域こういき沈下ちんか現象げんしょうと、土木どぼく工事こうじとうによる局所きょくしょてき沈下ちんか現象げんしょうとがあり、一般いっぱんてきには広域こういき沈下ちんか現象げんしょうを、公害こうがいの1つとしている。

人為じんい作用さようによる広域こういき地盤じばん沈下ちんかは、工業こうぎょう用水ようすい[5]農業のうぎょう用水ようすい[5]しょうゆき用水ようすい[5]冷房れいぼう用水ようすいとう地下水ちかすい過剰かじょう揚水ようすい涵養かんようりょうえるげ)、天然てんねんガス[5]げ、鉱山こうざん坑道こうどう掘削くっさくなどがおも原因げんいんとなる。

地盤じばん沈下ちんか地下水ちかすい状況じょうきょう把握はあく現在げんざい水準すいじゅん測量そくりょうによる地盤じばん収縮しゅうしゅくじょうきょう地盤じばんだか測定そくてい国土こくど交通省こうつうしょう設置せっちする地下水ちかすい観測かんそくしょでの地下水ちかすい観測かんそくおこなわれている。局所きょくしょ地盤じばん沈下ちんかは、局所きょくしょてき揚水ようすいや、元々もともと水田すいでん軟弱なんじゃく地盤じばん)だった地域ちいき建築けんちくぶつ構築こうちくされたような場合ばあいの、たいりょくえて荷重におもされた場合ばあい発生はっせいする。両者りょうしゃともに沈下ちんか現象げんしょう発生はっせいメカニズムについては、あつみつこう参照さんしょう

自然しぜん現象げんしょうによる地盤じばん沈下ちんか 編集へんしゅう

自然しぜん現象げんしょうによる地盤じばん沈下ちんかには乾燥かんそうによる収縮しゅうしゅく地下水ちかすい変動へんどう地下ちか空洞くうどう陥没かんぼつなどがある[1]

地下ちか空洞くうどう 編集へんしゅう

石灰岩せっかいがん地帯ちたいでは堆積岩たいせきがん炭酸たんさんカルシウムがしてだい規模きぼ地下ちか空洞くうどう形成けいせいされ陥没かんぼつすることがある[1]

地震じしんによる地盤じばん沈下ちんか 編集へんしゅう

断層だんそう活動かつどうである地震じしんでは地殻ちかく変動へんどう結果けっかとして地表ちひょうめん隆起りゅうき沈降ちんこう変異へんいあらわれる場合ばあいがあり、また液状えきじょう現象げんしょうによる地盤じばん沈下ちんかしょうずる場合ばあいもある。

東北とうほく日本にっぽん 編集へんしゅう

2011ねん3月11にち東北とうほく地方ちほう太平洋たいへいようおき地震じしんにより、陸前高田りくぜんたかたの0.84m牡鹿半島おしかはんとうの1.2mを最大さいだい変動へんどうりょうとして岩手いわてけん宮城みやぎけん福島ふくしまけん太平洋たいへいようがんおおくの地点ちてん地盤じばん沈下ちんかこった[6][7]が、これは地殻ちかく変動へんどうによる沈降ちんこう地盤じばん沈下ちんかんでいる[8]一方いっぽう、この地震じしんでは千葉ちばけん浦安うらやすなど東京湾とうきょうわん沿岸えんがんで、液状えきじょうによる地盤じばん沈下ちんか広範囲こうはんい発生はっせいした[9]

西南せいなん日本にっぽん 編集へんしゅう

南海なんかいトラフ巨大きょだい地震じしんはプレート境界きょうかい衝上断層だんそうによる御前崎おまえざき潮岬しおのみさき室戸岬むろとみさきひとし隆起りゅうき高知平野こうちへいやなどの沈降ちんこう特徴とくちょうひとつである[10]

684ねん白鳳はくほう地震じしん - 『日本書紀にほんしょき』に土佐とさこくで50あまりまんころ田畑たはたうみぼっしたとある[11]
1099ねんかんかず地震じしん(1096ねん永長ながおさ地震じしんとのせつもある[12][13]。) - 『広橋ひろはしほんけんなかきょう』の紙背しはい文書ぶんしょ土佐とさこく作田さくたせんまちみなうみぼっしたとある[14]
1707ねん宝永ほうえい地震じしん - 『たにりょう』に土佐湾とさわん西部せいぶ沿岸えんがん各地かくち市井しせいうみぼっしたとあり、2 - 2.5m程度ていど沈降ちんこう推定すいていされている[15][16]
1854ねん安政あんせい南海なんかい地震じしん - 土佐湾とさわん西部せいぶ徳島とくしまけん沿岸えんがんで1 - 1.5m程度ていど沈降ちんこう推定すいていされている[17]
1946ねん昭和しょうわ南海なんかい地震じしん - 土佐湾とさわん西部せいぶ沿岸えんがんで1m前後ぜんご沈降ちんこうられた[18][19]

チリ 編集へんしゅう

1960ねんチリ地震じしんでは、海岸かいがんよりやや内陸ないりく広範囲こうはんい沈降ちんこうして沿岸えんがん市街地しがいち浸水しんすいし、沈降ちんこうりょうは2.7mにおよんだ[20][21]

北米ほくべい 編集へんしゅう

1700ねんカスケード地震じしんは、地質ちしつ調査ちょうさから2mにおよ沈降ちんこうによって沿岸えんがん森林しんりん潮間しおまたいしず枯死こししたベイスギ年輪ねんりんからほん地震じしんが1699ねんから1700ねんあいだ発生はっせいしたことが判明はんめいした[22]

人為じんいてき作業さぎょうによる地盤じばん沈下ちんか 編集へんしゅう

人為じんいてき作業さぎょうによる地盤じばん沈下ちんかには表面ひょうめん荷重かじゅう地下水ちかすい揚水ようすい地下ちか資源しげん採取さいしゅ干拓かんたく灌漑かんがいによるコラプス現象げんしょう地下ちか掘削くっさくによる陥没かんぼつなどがある[1]

地下水ちかすい過剰かじょう揚水ようすいによる地盤じばん沈下ちんか 編集へんしゅう

地盤じばん沈下ちんか原因げんいんとして、地下水ちかすい過剰かじょう揚水ようすいげられる[23]地下水ちかすい過剰かじょう揚水ようすい地下水ちかすい低下ていかこすが、これにより土中どちゅう間隙かんげきすい由来ゆらい水圧すいあつによる浮力ふりょくちいさくなり、有効ゆうこう応力おうりょく増大ぞうだいすることで地層ちそう圧縮あっしゅくされる[23]軟弱なんじゃく地盤じばん三角州さんかくす平野へいやにおいて顕著けんちょ発生はっせいする[24]

東京とうきょう 編集へんしゅう

東京とうきょう下町したまち低地ていちでは水運すいうん便びんがよいこと、あつ地下水ちかすい豊富ほうふ工業こうぎょうよう使用しよう可能かのうであったことから工業こうぎょうすすんでいたが、工業こうぎょう活動かつどうのための地下水ちかすい過剰かじょう揚水ようすい地盤じばん沈下ちんかこし、この結果けっか海抜かいばつゼロメートル地帯ちたい形成けいせいされた[25]

日本にっぽんにおいて地盤じばん沈下ちんか注目ちゅうもくされたのは、寺田てらだ寅彦とらひこ物理ぶつり学者がくしゃ)が、陸地りくち測量そくりょうげん国土こくど地理ちりいん相当そうとう)による測量そくりょう記録きろく参照さんしょうして、東京とうきょう下町したまち低地ていちで1ねんあたり7.5ミリメートルの地盤じばん沈下ちんか発生はっせいしている事実じじつを1915ねん大正たいしょう4ねん)に指摘してきしたのが最初さいしょである[26]。その関東大震災かんとうだいしんさい以降いこう測量そくりょう記録きろくによりおおきく注目ちゅうもくされた[27]とく下町したまち低地ていち隅田川すみだがわ荒川あらかわはさまれた地域ちいきにおいて、関東大震災かんとうだいしんさい前後ぜんごでの地盤じばん沈下ちんかりょうおおきかったことから、当時とうじ地震じしんかんする地殻ちかく変動へんどうによるものとかんがえられていた[28][26]

東京とうきょうでも次第しだい被害ひがい範囲はんいひろがり、大阪おおさかでもおな現象げんしょうがみられた[29][27]観測かんそく水位すいい低下ていか根拠こんきょに、地盤じばん沈下ちんか原因げんいんあつ地下水ちかすい水位すいい低下ていかというせつ提唱ていしょうされた[27]ものの、当時とうじ支持しじられなかった[30]。しかし、だい世界せかい大戦たいせん末期まっき地下水ちかすい揚水ようすい中断ちゅうだん地盤じばん沈下ちんかおさまることで、地下水ちかすい過剰かじょう揚水ようすい地盤じばん沈下ちんか原因げんいんであることが支持しじされるようになった[30][27]。1955ねん以降いこう日本にっぽん各地かくち沈下ちんか報告ほうこくされている[27][31]

戦後せんご、1950ねん以降いこう復興ふっこうにより地下水ちかすい低下ていかし、地盤じばん沈下ちんかふたた進行しんこうした[32][27]。この影響えいきょう工業こうぎょう用水ようすいほう建築けんちくぶつよう地下水ちかすい採取さいしゅ規制きせいかんする法律ほうりつなど地下水ちかすい揚水ようすい制限せいげんする法律ほうりつ整備せいびされるようになり、地盤じばん沈下ちんか沈静ちんせいした[32]一方いっぽう、1975ねんごろからは地下水ちかすい上昇じょうしょうともな地盤じばん隆起りゅうき発生はっせいしている[33]

地下水ちかすい揚水ようすい制限せいげんにより首都しゅとけん問題もんだい緩和かんわされたものの、積雪せきせつ地域ちいきにおいてはしょうゆきのために地下水ちかすいげが必要ひつようとなり[34]とく新潟にいがたけん[5]では1955ねんごろより深刻しんこく農業のうぎょう被害ひがいしょうじた[27][35]一方いっぽう東京とうきょうでは地盤じばん沈下ちんかふせぐために取水しゅすい制限せいげんんだ結果けっか水位すいい回復かいふくしてきているが、一方いっぽう予想よそう以上いじょう回復かいふくにより、今度こんど地下ちか建造けんぞうぶつ中心ちゅうしん漏水ろうすい頻発ひんぱつするなど、あらたなトラブルが急増きゅうぞうしている[36]

フィリピン 編集へんしゅう

フィリピン北部ほくぶ沿岸えんがん地域ちいき付近ふきん島々しまじまでは、地下水ちかすいのくみげにより毎年まいとし4~6センチの地盤じばん沈下ちんかきており住民じゅうみんすうせんにん退去たいきょした[37]

地下ちか資源しげん採取さいしゅによる地盤じばん沈下ちんか 編集へんしゅう

石炭せきたん金属きんぞく鉱物こうぶつ石材せきざいなどの採取さいしゅのため掘削くっさくした地下ちか空洞くうどう原因げんいん地盤じばん沈下ちんか発生はっせいすることがある[1]

1989ねん2がつ10日とおかと3がつ5にちには大谷石おおやいし採石さいせきじょうあと陥没かんぼつ発生はっせい民家みんか3けん地下ちか30mまでんだ[1]

被害ひがい 編集へんしゅう

 
不同ふどう沈下ちんかれい:家屋かおく一部いちぶ沈下ちんかし、煉瓦れんがかべへいくずれかかっている(イギリス)
 
がりのれい:周囲しゅうい田畑たはた沈下ちんかする一方いっぽう倉庫そうこ基礎きそくいしずまず露出ろしゅつしてしまっている(佐賀さがけん白石しらいしまち

地盤じばん沈下ちんか発生はっせいする現象げんしょうにより、おも以下いか被害ひがい発生はっせいする。

  1. 建物たてものとう構造こうぞうぶつ破損はそん一部いちぶ破損はそん
  2. ライフライン(地中ちちゅうのガスかんとう)の破損はそん一部いちぶ破損はそん
  3. 津波つなみ高潮こうちょうたいする脆弱ぜいじゃくせい

広域こういきてき被害ひがい 編集へんしゅう

地盤じばん沈下ちんか広域こういきすることにより、局所きょくしょてき被害ひがいくわえて、被害ひがいがさらに拡大かくだいすることに問題もんだいがある。また一度いちど沈下ちんかすれば、ほとんど回復かいふく地盤じばん上昇じょうしょう)することはないことから、潜在せんざいてき被害ひがい発生はっせい固定こていされてしまうことも、問題もんだい深刻しんこくさせている。

ゼロメートル地帯ちたい
ゼロメートル地帯ちたいとは、平均へいきん潮位ちょういどうじ、もしくはさらひく標高ひょうこう地域ちいきのことをう。広域こういき地盤じばん沈下ちんかにより発生はっせいする。海抜かいばつゼロメートルをしたことからばれる。とく海岸かいがん河川かせん沿いなどの沖積ちゅうせき低地ていちひろ発生はっせいする。このためゼロメートル地帯ちたいでは、地盤じばん沈下ちんかとともに堤防ていぼうたかさが水面すいめんたいしてひくくなったり、水面すいめん地盤じばん標高ひょうこう相対そうたいてきたかくなることにより、高潮こうちょうどき被害ひがいだい規模きぼする。対症療法たいしょうりょうほうとして、堤防ていぼうのかさげがおこなわれる。

局所きょくしょてき被害ひがい 編集へんしゅう

不同ふどう沈下ちんか
ある施設しせつにおいて、場所ばしょによって沈下ちんかりょうことなる地盤じばん沈下ちんか不同ふどう沈下ちんか(ふどうちんか)しくは不等ふとう沈下ちんか(ふとうちんか)という。このような場合ばあい建物たてものかたむいたり路面ろめん凹凸おうとつ亀裂きれつしょうじるなど、地盤じばん沈下ちんかもっと問題もんだいとなる。具体ぐたいてきには、建物たてものかたむけば、住人じゅうにんにとって不便ふべんであり不快ふかいであるし、空港くうこう滑走かっそうであれば、離着陸りちゃくりく安全あんぜんせい問題もんだいしょうじる。
不同ふどう沈下ちんか事例じれいとしてもっと有名ゆうめい建物たてものとしてイタリアピサだい聖堂せいどう鐘楼しゅろうピサのはすとうがある。
がり
くい基礎きそもちいた建物たてものにあっては、地盤じばん沈下ちんか関係かんけいのない(地下水ちかすい変動へんどう影響えいきょうけない)支持しじそうによってささえられていることがおおく、周囲しゅうい地盤じばん沈下ちんかするが、支持しじそうささえられている建物たてもの沈下ちんかしないため、周辺しゅうへん地盤じばんより相対そうたいてきたか位置いちになるがりこす。なお地震じしんとう地盤じばんれによる液状えきじょう現象げんしょうしょうじた場合ばあいにも、かけじょう同様どうようがり現象げんしょう発生はっせいする。
がり」問題もんだいは、建物たてものとう構造こうぞうぶつにとって深刻しんこく問題もんだいである。建物たてもの周辺しゅうへん埋設まいせつしてあるガスかん水道すいどうかんとう埋設まいせつかんは、地盤じばん沈下ちんかとともに挙動きょどうするが、建物たてものもと位置いちたもつため、埋設まいせつかん建物たてもの接合せつごう破断はだんする。よって建物たてもの機能きのうしなくなるおそれがある。
その
地盤じばん沈下ちんか現象げんしょうとはことなるが、河川かせん上流じょうりゅうからはこんだ土砂どしゃとう堆積たいせきして周囲しゅういより川底かわぞこたかくなる天井川てんじょうがわ(てんじょうがわ)の周囲しゅういも、ゼロメートル地帯ちたい状況じょうきょうになる。

地盤じばん沈下ちんかにより被害ひがい発生はっせいしている地域ちいき 編集へんしゅう

法令ほうれいとうにより、自治体じちたいをまたがって対策たいさくすすめられている地域ちいきと、局所きょくしょてき個別こべつ自治体じちたい対応たいおうしている地域ちいきとがある。

広域こういき地盤じばん沈下ちんか 編集へんしゅう

伊勢湾いせわん地域ちいき 編集へんしゅう

伊勢湾いせわん台風たいふう(1959ねん被害ひがいは、愛知あいちけんだけでも、死者ししゃ行方ゆくえ不明ふめいしゃ3,350にん負傷ふしょうしゃ31,000にん家屋かおく浸水しんすい125,000ぜん半壊はんかい家屋かおく93,000罹災りさいしゃやく80まんにん、という甚大じんだい被害ひがいした。この被害ひがい地盤じばん沈下ちんかによる堤防ていぼう能力のうりょく低下ていか背景はいけいにあった。このため海岸かいがん河川かせん堤防ていぼうたいして2mのかさげをおこなった。しかし継続けいぞくして発生はっせいした地盤じばん沈下ちんかにより、かさげをおこなった地域ちいきだい部分ぶぶん沈下ちんかしてしまい、場所ばしょによっては改修かいしゅうまえ状態じょうたいになってしまった地域ちいきもあった。

阪神はんしん地域ちいき 編集へんしゅう

だい2しつ台風たいふう(1961ねん被害ひがいしゃ死者ししゃ194めい行方ゆくえ不明ふめいしゃ8めい負傷ふしょうしゃ4,972めい、という甚大じんだい被害ひがいした。この被害ひがい地盤じばん沈下ちんかによる堤防ていぼう能力のうりょく低下ていか背景はいけいにあった。これをがねとして、工業こうぎょう用水ようすいほう強化きょうかと、建築けんちくぶつよう地下水ちかすい採取さいしゅ規制きせいかんする法律ほうりつ通称つうしょう、ビル用水ようすいほう)が制定せいていされた。

東京湾とうきょうわん沿岸えんがん地域ちいき 編集へんしゅう

東京とうきょう江東こうとう墨田すみだ江戸川えどがわ千葉ちばけん浦安うらやす行徳ぎょうとく市川いちかわ)のひろ一帯いったいは、天然てんねんガス開発かいはつ南関東みなみかんとうガス参照さんしょう)、および高度こうど成長せいちょう大量たいりょう地下水ちかすいげの影響えいきょうにより大幅おおはば地盤じばん沈下ちんかした。湾岸わんがんでは、ゼロメートル地帯ちたいした地域ちいきもある。法令ほうれいとう整備せいびにより沈下ちんか自体じたいちいさくなったものの、現在げんざいでも広範こうはんなゼロメートル地帯ちたい人口じんこう密集みっしゅうしており、高潮こうちょう洪水こうずい地震じしんによる堤防ていぼう崩壊ほうかい津波つなみなどの災害さいがい発生はっせいした場合ばあい対策たいさくとして、堤防ていぼうのかさげやこう規格きかく堤防ていぼう(スーパー堤防ていぼう)の設置せっちくに自治体じちたいによってすすめられている。

筑波つくば研究けんきゅう学園がくえん都市とし 編集へんしゅう

東京とうきょう都区とくやく半分はんぶん面積めんせき[38]筑波つくば研究けんきゅう学園がくえん都市とし(茨城いばらきけんつくば)一帯いったい分布ぶんぷする筑波つくば台地だいち比較的ひかくてき軟弱なんじゃく地盤じばんであり、都市とし建設けんせつ開始かいしされてから20ねん程度ていど経過けいかした1987ねんにおいても不同ふどう沈下ちんか発生はっせいつづけていた[39]

また、筑波つくば研究けんきゅう学園がくえん都市としないのペデストリアン(都市としない南北なんぼく貫通かんつうする自転車じてんしゃ歩行ほこうしゃ専用せんよう道路どうろ)では、不同ふどう沈下ちんかによる舗装ほそうめん破壊はかいによる自転車じてんしゃ走行そうこう環境かんきょう悪化あっか指摘してきされている[40]問題もんだい指摘してきされた背景はいけいには、つくばエクスプレス開業かいぎょうともな自転車じてんしゃ交通こうつうりょう増加ぞうかがある。

局所きょくしょ地盤じばん沈下ちんか 編集へんしゅう

局所きょくしょ沈下ちんかは、以下いかしめすもののほか各地かくち発生はっせいしている。

もも花台かだいニュータウンの沈下ちんか問題もんだい 編集へんしゅう

造成ぞうせいまえてられていたやわらかい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ撤去てっきょしなかったことから地盤じばん沈下ちんか発生はっせいし、販売はんばいした都市とし機構きこうがその建物たてものすうけんもどした。なおこの沈下ちんか現象げんしょうは、地下水ちかすい揚水ようすいによるものではなく、たいりょく上回うわまわうえ荷重かじゅうによるのである(詳細しょうさいもも花台かだいニュータウンの「地盤じばん沈下ちんか参照さんしょう)。

新潟にいがた周辺しゅうへん 編集へんしゅう

1950年代ねんだいころから表面ひょうめん[5]新潟にいがたおきから岩船いわふねおきにかけては日本にっぽん屈指くっし天然てんねんガス埋蔵まいぞうされており、地下水ちかすいともにこのガスを抽出ちゅうしゅつすることができた。しかしそれによって新潟にいがた市内しない一部いちぶ越後線えちごせん白山はくさんえき北西部ほくせいぶ亀田かめださと北西ほくせい現在げんざい近江おうみ新和しんわ地域ちいき西部せいぶ大堀おおほり幹線かんせん周辺しゅうへん)で地盤じばん沈下ちんかき、天然てんねんガスのげが禁止きんしされた。

広域こういき地盤じばん沈下ちんか対策たいさく 編集へんしゅう

広域こういき沈下ちんか発生はっせいさせない対策たいさくとしては、地下水ちかすい揚水ようすいりょう減少げんしょうさせることである。その対策たいさくは、以下いかの3つによりおこなわれている。

  • 揚水ようすいりょうそのものの規制きせい
  • 代替だいたいすい確保かくほ供給きょうきゅう
  • みず利用りよう合理ごうりてき利用りよう節水せっすい)の促進そくしん

これを実施じっししていくため、広域こういき地盤じばん沈下ちんか対策たいさくは、以下いか施策しさくすすめられている。

  1. 法令ほうれいとうによる地下水ちかすい採取さいしゅ地下水ちかすい揚水ようすい規制きせい
    • ほうによる規制きせい
    • 条例じょうれいとうによる規制きせい平成へいせい18ねん8がつ現在げんざい、27都道府県とどうふけん、245市町村しちょうそん
      • 条例じょうれいによる規制きせい
      • 指導しどう要綱ようこう(地盤じばん沈下ちんか防止ぼうしとう対策たいさく要綱ようこう)とうによる規制きせい
      • 公害こうがい防止ぼうし協定きょうていとうによる規制きせい
      • 自主じしゅ規制きせい
      • 一般いっぱん行政ぎょうせい指導しどう
  2. 代替だいたいすい供給きょうきゅう事業じぎょう
  3. みず利用りよう合理ごうり

これらの施策しさくにより揚水ようすいりょう徐々じょじょ減少げんしょうし、要綱ようこう指定してい3地域ちいきのうち南関東みなみかんとうのぞく2地域ちいき九州きゅうしゅう)では、目標もくひょう揚水ようすいりょう下回したまわるようになってきている。また要綱ようこう指定してい3地域ちいき以外いがい各地かくちでも地下水ちかすい上昇じょうしょうしてきている。しかし地域ちいきによっては、固定こていされた水利すいりけんにより代替だいたいすい確保かくほ困難こんなんなどの問題もんだいにより、対策たいさくすすみにくい地域ちいきもある。

広域こういき沈下ちんか対策たいさくによるあらたな問題もんだい発生はっせい 編集へんしゅう

地下水ちかすい揚水ようすい規制きせいにより、沈下ちんかおさえられてはいるものの、ぎゃく問題もんだい発生はっせいはじめた。代表だいひょうてきなものは地下水ちかすい上昇じょうしょうにより、地下ちかしつ浮上ふじょうし、建物たてものなどの破損はそんはじめたことである。たとえば東京とうきょうえきでは、地下ちかしつにおもりをれたり、地中ちちゅう深部しんぶへのアンカーにより地下ちかしつり、地下ちかしつ浮上ふじょうさえるなどの対策たいさくっている。

派生はせいてき用法ようほう 編集へんしゅう

比喩ひゆてき用法ようほうとして、政治せいじでの「選挙せんきょ大敗たいはいしたため、○○とう地盤じばん沈下ちんかきている」と表現ひょうげんしたり、経済けいざい基盤きばん変化へんかによる「工場こうじょう撤退てったいしたため○○経済けいざい地盤じばん沈下ちんかしている」などと、勢力せいりょくおとろえるような状況じょうきょうしょうじたさいもちいられることがおおい。

関連かんれん項目こうもく 編集へんしゅう

脚注きゃくちゅう 編集へんしゅう

  1. ^ a b c d e f g 石田いしだ哲朗てつろう. “地盤じばん沈下ちんか対策たいさく”. 東洋大学とうようだいがく理工学部りこうがくぶ都市とし環境かんきょうデザイン学科がっか. 2020ねん7がつ18にち閲覧えつらん
  2. ^ a b 日本にっぽん地下水ちかすい学会がっかい井田いだ徹治てつじちょ、『えない巨大きょだい水脈すいみゃく 地下水ちかすい科学かがく』、講談社こうだんしゃ、2009ねん5がつ20日はつかだい1さつ発行はっこうISBN 9784062576390
  3. ^ 藤井ふじい昭二しょうじ、「おき積層せきそう”と地盤じばん変動へんどう」 『だいよん研究けんきゅう』 1966ねん 5かん 3-4ごう p.103-112, doi:10.4116/jaqua.5.103
  4. ^ 石井いしいもとむ、「関東平野かんとうへいや(その 1) : 東京とうきょう地盤じばん沈下ちんか土質どしつこう学会がっかい論文ろんぶん報告ほうこくしゅう. 18(4) , NDLJP:10447265, NAID 110003914435
  5. ^ a b c d e f 青木あおきしげる, 上條かみじょう賢一けんいち、「新潟にいがた平野へいや地盤じばん沈下ちんか現況げんきょうについて日本にっぽん地質ちしつ学会がっかい学術がくじゅつ大会たいかい講演こうえん要旨ようしだい105ねん学術がくじゅつ大会たいかい(98松本まつもと) p.525-, doi:10.14863/geosocabst.1998.0_525
  6. ^ 平成へいせい23ねん(2011ねん東北とうほく地方ちほう太平洋たいへいようおき地震じしんともな地盤じばん沈下ちんか調査ちょうさ”. 国土こくど地理ちりいん (2011ねん4がつ14にち). 2011ねん4がつ16にち閲覧えつらん
  7. ^ 気象庁きしょうちょう発表はっぴょう読売新聞よみうりしんぶん2011ねん4がつ15にち13Sばん33めん
  8. ^ 宮城みやぎけん沿岸えんがんにおける地震じしんともな地盤じばん沈下ちんかについて”. 国土こくど交通省こうつうしょう (2011ねん5がつ26にち). 2012ねん1がつ28にち閲覧えつらん
  9. ^ 東京とうきょう湾岸わんがんにおける液状えきじょう現象げんしょう地盤じばん沈下ちんかりょうについて(だいほう”. 国土こくど地理ちりいん地理ちり地殻ちかく活動かつどう研究けんきゅうセンター (2011ねん9がつ8にち). 2012ねん7がつ11にち閲覧えつらん
  10. ^ 寒川さむかわあさひれる大地だいち 日本にっぽん列島れっとう地震じしん同朋どうほうしゃ出版しゅっぱん、1997ねん
  11. ^ 今村いまむら明恒あきつね(1941)、「白鳳はくほうだい地震じしん地震じしん だい1輯 1941ねん 13かん 3ごう p.82-86, doi:10.14834/zisin1929.13.82
  12. ^ 石橋いしばし克彦かつひこ(1999)、「文献ぶんけん史料しりょうからみた東海とうかい南海なんかいきょだい地震じしん地學ちがく雜誌ざっし 1999ねん 108かん 4ごう p.399-423, doi:10.5026/jgeography.108.4_399
  13. ^ O-1石橋いしばし克彦かつひこ (PDF) 「1099 ねんかんかず南海なんかい地震じしん実在じつざいせず、1096ねん永長ながおさ地震じしん東海とうかい南海なんかい地震じしんだった」という作業さぎょう仮説かせつ, だい32かい歴史れきし地震じしん研究けんきゅうかい, 口頭こうとう発表はっぴょうセッション1
  14. ^ 神田かんだしげる(1968): かんかず元年がんねん土佐とさにおけるだい地震じしん 地震じしん だい2輯 1968ねん 21かん 2ごう p.142-143, doi:10.4294/zisin1948.21.2_142
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参考さんこう文献ぶんけん 編集へんしゅう

外部がいぶリンク 編集へんしゅう