映画版『子連れ狼』シリーズ最終作。原作者の小池一雄に代わり、本作では中村務が脚本を担当した。シリーズお馴染みの手押し車(乳母車)を橇に仕立て、雪山でのダイナミックなスキースタントを決行した、それまで以上に大がかりなアクション満載の荒唐無稽な作品となっている。
中村によると、シリーズも6作目に及び、原作準拠とはいえ、さすがに人間ドラマにも尽き、アクション主体の構成とせざるを得なかったという。監督は三隅研次に依頼されたが、三隅は「こんなんようやらん、こんなん西部劇やないか」と難色を示し、引き受けなかった。が、若山は手押し車を橇にした雪山のアクションがどうしてもやりたいと熱望した[1]。これを受けて、「アクションが撮れる監督を」と、黒田義之にメガホンが渡された。三隅に頭が上がらない若山にしてみれば、黒田監督とのコンビになる本作は、シリーズ最後で初めて誰にも遠慮なく、思い通りのアクションを演じられた作品ではないかと中村は語っている。
雪山のロケは、1ヶ月半かけて蔵王のスキー場で行われた。スキースタントは当初、殺陣師の宍戸大全が後輩の1級のスキーヤーを100人ほど呼び寄せて撮入したが、手押し車の橇を主体にしたアクションがうまくいかず、地元のプロスキーヤーにスタントを切り替えて、ジャンプ台を使った防御型の殺陣に変更された。棒高跳びの要領で一刀を襲う柳生先陣のスタントも、宍戸が棒高跳びの選手を呼んで撮影した。
撮影は雪中で行われたが、機材のバッテリーが気温が零下20度を超すと放電してしまい、撮影続行不能となった。が、当初は原因が分からず、何度も撮影を中断する羽目となったという。
若山版のシリーズは本作が最終作となったため、拝一刀と宿敵柳生烈堂との決着はつけられないまま、未完となった。
- ^ a b フジテレビトリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 6』講談社、2004年。