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文化圏 - Wikipedia

文化ぶんかけん(ぶんかけん)とは、一定いってい文化ぶんか様式ようしきによってむすびつけられた地域ちいき。また一定いってい文化ぶんか様式ようしき特定とくてい地域ちいき想定そうていする学術がくじゅつ用語ようご。その領域りょういきないではある一定いってい文化ぶんか様式ようしき支配しはいてき影響えいきょうりょくち、その文化ぶんか様式ようしきによって一定いってい形式けいしきしたがった歴史れきし発展はってんがされる。もしくはそのような文化ぶんかけん想定そうていすることで、地域ちいきごとに独自どくじ歴史れきし発展はってん提示ていじする。したがって文化ぶんかけん想定そうていすることで、文化ぶんかじく地域ちいき構成こうせいすることが可能かのうとなり、文化ぶんかけんでは時間じかんじく中心ちゅうしんにした歴史れきしぞう記述きじゅつをすることが可能かのうである。日本にっぽん歴史れきしがくでは「地域ちいき世界せかい」もほぼ同義どうぎ使つかわれる。

歴史れきしがくにおける近代きんだい以前いぜん近代きんだい以後いご
1970年代ねんだい以後いご日本にっぽん歴史れきしがくでは、以前いぜん支配しはいてきであった古代こだい中世ちゅうせい近代きんだいさん区分くぶんほうにかわって、近代きんだい以前いぜん近代きんだい以後いごという区分くぶんほう主流しゅりゅうとなってきている。区分くぶんほうでは近代きんだい以前いぜん多様たよう文化ぶんかけん併存へいそんする世界せかいとしてえがき、文化ぶんかけんごとに独自どくじ展開てんかいする世界せかい時間じかんじくたてじく)を中心ちゅうしん記述きじゅつする。近代きんだい以後いごはその文化ぶんかけん緊密きんみつむすびついて一体化いったいかした、地球ちきゅう規模きぼのグローバルな世界せかい空間くうかんじくよこじく)を中心ちゅうしんとして記述きじゅつする傾向けいこうにあり、近代きんだい以前いぜん近代きんだい以後いご対比たいひ重視じゅうしされている

定義ていぎ特徴とくちょう

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文化ぶんかけん」のかたりは、ドイツの民族みんぞく学者がくしゃヴィルヘルム・シュミットの1924ねん著作ちょさくとなえられた"kulturkreis"の訳語やくごとされる[1]。「文化ぶんかけん」が重要じゅうよう用語ようごとなったのは、20世紀せいき以後いごのことで比較的ひかくてき最近さいきんである。近代きんだいヨーロッパ中心ちゅうしんてき歴史れきし認識にんしき限界げんかい指摘してきされるようになると、ヨーロッパ以外いがい地域ちいきごとに独自どくじ文化ぶんかてき発展はってんる「文化ぶんかけん」という地域ちいきてき世界せかい設定せっていされるようになった。とくに従来じゅうらい進歩しんぽ」したヨーロッパの対極たいきょくとして、「停滞ていたい」としてのアジア、「未開みかい」のアフリカというようないちめんてき歴史れきしぞうがヨーロッパ以外いがい地域ちいきしつけられていたが、それらの地域ちいき独自どくじの「文化ぶんかけん」を設定せっていすることで、アジア・アフリカないかくもろ民族みんぞくもろ国家こっかどうしの文化ぶんかてき相違そういもより具体ぐたいてき把握はあくされ、独自どくじ歴史れきし発展はってん想定そうていされるようになった。これは同時どうじにヨーロッパを「文化ぶんかけん」のひとつと位置いちづけることで相対そうたいすることにもつながった。

文化ぶんかけん」の背景はいけい

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西洋せいようてき歴史れきし認識にんしき

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日本にっぽん歴史れきしがく西欧せいおう近代きんだい歴史れきしがく直接的ちょくせつてき継受けいじゅのもとに成立せいりつし、西欧せいおう史学しがく歴史れきしかんをほとんどそのまま継承けいしょうした。とくにだい世界せかい大戦たいせん前後ぜんごにおいてはマルクス主義まるくすしゅぎ発展はってん段階だんかいせつ多大ただい影響えいきょうりょくち、ヨーロッパの歴史れきしかんもとづいた古代こだい中世ちゅうせい近代きんだい歴史れきしさん区分くぶんほうなど歴史れきし認識にんしきにおいてはヨーロッパの歴史れきし研究けんきゅう視点してんをそのままいでいた。日本にっぽん東洋とうよう分野ぶんやでもさん区分くぶんほうはそのまま導入どうにゅうされ、設定せっていされていたが、「それぞれの区分くぶん具体ぐたいてきにいつごろに設定せっていするか」をめぐって論争ろんそうえず、これらの分野ぶんやではかならずしも時代じだい区分くぶんについての共通きょうつう理解りかい確定かくていされているとはがたかった。

日本にっぽん歴史れきしがくにおける歴史れきし認識にんしき転回てんかい

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ところが1960年代ねんだいになると、日本にっぽん中世ちゅうせい研究けんきゅう中国ちゅうごく研究けんきゅう画期的かっきてき学説がくせつ[ちゅう 1]提唱ていしょうされ、歴史れきしかん転換てんかんうながすこととなった。具体ぐたいてきには従来じゅうらい日本にっぽん東洋とうよう時代じだい区分くぶん論争ろんそう西洋せいようとの比較ひかくにおいてされていたのにたいし、これらの学説がくせつはそれぞれの領域りょういきにおいて固有こゆう発展形はってんけいしき示唆しさするもので、従来じゅうらい西洋せいようてき歴史れきし認識にんしきおおきな反省はんせいうながすものとなった。

歴史れきしてき個性こせいとして、「文化ぶんかけん」あるいは「地域ちいき世界せかい

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1970ねん高等こうとう学校がっこう学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう改訂かいていされ、高校こうこう教科書きょうかしょにおいて、近代きんだい以前いぜん歴史れきし世界せかい複数ふくすうの「文化ぶんかけん」を設定せっていし、かく地域ちいきごとに行動こうどう様式ようしき文化ぶんか様式ようしき歴史れきしてき発展はってん個性こせいてき性格せいかく想定そうていしてそれらを時間じかんじくにそって記述きじゅつすることがおこなわれるようになった。どう時期じき岩波いわなみ講座こうざ 世界せかい歴史れきし』(1969ねん1971ねん[ちゅう 2])が刊行かんこうされ、このシリーズにおいても近代きんだい以前いぜん複数ふくすうの「地域ちいき世界せかい」が設定せっていされ、やはりかく地域ちいき固有こゆう歴史れきしてき発展はってん記述きじゅつするようになった。1970年代ねんだい以降いこう日本にっぽん歴史れきしがくにおいて、地域ちいきをこえた統合とうごうかう近代きんだい以後いご世界せかい地域ちいきごとに独自どくじ発展はってんをする近代きんだい以前いぜん世界せかいという二分にぶんてき歴史れきしぞう主流しゅりゅうとなり、近代きんだい以前いぜんは「文化ぶんかけん」あるいは「地域ちいき世界せかい」を単位たんいとして歴史れきしぞう模索もさくがされるようになった。

展望てんぼう

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21世紀せいき現在げんざい、「文化ぶんかけん」あるいは「地域ちいき世界せかい」を中心ちゅうしんとした歴史れきし認識にんしきは、一部いちぶにおいて近代きんだい以後いご射程しゃていをのばそうとしている。とくに冷戦れいせん多元的たげんてき方向ほうこうかうかにえる国際こくさい情勢じょうせいEUによるヨーロッパの地域ちいき統合とうごうは、地域ちいきへの関心かんしんふかめ、歴史れきしてき個性こせいとしての「文化ぶんかけん」あるいは「地域ちいき世界せかい」に近代きんだい以後いご歴史れきし認識にんしきにおいても一定いってい価値かちみとめようといううごきをささえるものとなっている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 日本にっぽん中世ちゅうせいにおいては黒田くろだ俊雄としおによる権門けんもん体制たいせいろん中国ちゅうごくにおいては西嶋にしじまじょうせいさつふう体制たいせいろんが1960年代ねんだい提唱ていしょうされ、既存きそん歴史れきしかんからの転換てんかんおおきく影響えいきょうした。前者ぜんしゃ日本にっぽん固有こゆう中世ちゅうせい国家こっかぞう把握はあくおおきな転機てんきあたえ、後者こうしゃひがしアジア固有こゆう外交がいこう秩序ちつじょ文化ぶんか様式ようしき設定せっていするものであった。
  2. ^ 1997ねんから2000ねんにかけても、同名どうめいのシリーズが刊行かんこうされたため、区別くべつして1969ねんからのシリーズを「きゅう講座こうざ」、1997ねんからのを「しん講座こうざ」ということもある。

出典しゅってん

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  1. ^ 岡島おかじま昭浩あきひろ「『漢字かんじ文化ぶんかけん』とは」『2004-2005年度ねんど大阪大学おおさかだいがく大学院だいがくいん文学ぶんがく研究けんきゅう共同きょうどう研究けんきゅう報告ほうこくしょ 台湾たいわんにおける日本にっぽん文学ぶんがく国語こくごがくあらたな可能かのうせい所収しょしゅう

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 岡崎おかざき勝世まさよちょ世界せかいとヨーロッパ』講談社こうだんしゃ現代新書げんだいしんしょ、2003ねん
  • 山本やまもと雅男まさおちょ『ヨーロッパ「近代きんだい」の終焉しゅうえん講談社こうだんしゃ現代新書げんだいしんしょ、1992ねん
  • 網野あみの善彦よしひこちょ日本にっぽん中世ちゅうせい農業のうぎょうみん天皇てんのう岩波書店いわなみしょてん、1984ねん
  • 西嶋にしじまじょうせいちょ古代こだいひがしアジア世界せかい日本にっぽん岩波いわなみ現代げんだい文庫ぶんこ、2000ねん

関連かんれん項目こうもく

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