準則じゅんそく主義しゅぎ

準則じゅんそく主義しゅぎ（じゅんそくしゅぎ、英語えいご: Normative System、ドイツ語ご: System der Normativbestimmungen）とは、団体だんたいが法人ほうじん格かくを取得しゅとくする際さいに、法律ほうりつに定さだめる一定いっていの要件ようけんを満みたせば、行政ぎょうせい官庁かんちょうの許可きょかや認可にんかがなくても、法人ほうじん格かくが付与ふよされる（その団体だんたいが法人ほうじんとされる）主義しゅぎをいう。他たの主義しゅぎとして、特許とっきょ主義しゅぎ、許可きょか主義しゅぎ、認可にんか主義しゅぎ、認証にんしょう主義しゅぎ、自由じゆう設立せつりつ主義しゅぎなどがある。

歴史れきし

17世紀せいき以降いこう、ヨーロッパで会社かいしゃ制度せいどが盛さかんとなるが、会社かいしゃが濫設され、詐欺さぎを行おこなう者ものも出でてきた結果けっか、18世紀せいき初頭しょとうに大だい恐慌きょうこうを惹ひき起おこすこととなった。そこで、各国かっこく政府せいふは、株式会社かぶしきがいしゃが設立せつりつされる度たびに法律ほうりつを定さだめ、その特許とっきょ法規ほうきにより会社かいしゃを規律きりつする方式ほうしきとして、株式会社かぶしきがいしゃの設立せつりつに当あたり国家こっかの特許とっきょを必要ひつようとするようになった。

19世紀せいきには、商法しょうほうにおいて、株式会社かぶしきがいしゃに関かんする一般いっぱん規定きていを設もうけるようになり、認可にんかのための行政ぎょうせい処分しょぶんとして、国家こっかの免許めんきょを必要ひつようとするようになり、国家こっかの免許めんきょを必要ひつようとすることとした。ただし、これを徹底てっていするために、その時ときの経済けいざい現象げんしょうからその組織そしきの定款ていかん・資本しほんまで、精密せいみつな審査しんさをした上うえでの免許めんきょの許否きょひを決きめるのは困難こんなんであり、形式けいしき上じょうの審査しんさによって免許めんきょの諾否だくひを決きめるようになったために、結果けっかとして会社かいしゃの設立せつりつを不当ふとうに阻害そがいしたり経済けいざい社会しゃかいの発達はったつに悪影響あくえいきょうを及およぼすようになった。

そして、18世紀せいき末まつから19世紀せいきにかけて台頭たいとうしたレッセフェールの考かんがえ方かたが社会しゃかい制度せいどに反映はんえいされたこともあり、準則じゅんそく主義しゅぎの考かんがえが生うまれた。

準則じゅんそく主義しゅぎを最初さいしょに定さだめた法律ほうりつは、1811年ねんにアメリカのニューヨーク州しゅうで制定せいていされた「製造せいぞう会社かいしゃ法ほう（Act Relative to Incorporations for Manufacturing Purposes）」とされている。また、イギリスでは、1844年ねんに成立せいりつした「株式会社かぶしきがいしゃ法ほう（Joint Stock Companies Act）」および1845年ねんに成立せいりつした「有限ゆうげん責任せきにん法ほう（Limited Liability Act）」で、準則じゅんそく主義しゅぎを定さだめた。これらにより、株式会社かぶしきがいしゃは政府せいふの免許めんきょなしに設立せつりつすることが認みとめられ、他国たこくでもこの主義しゅぎが採用さいようされていった。

日本にっぽんでは、1899年ねんの商法しょうほう改正かいせいにより、準則じゅんそく主義しゅぎが導入どうにゅうされた。

法人ほうじんの設立せつりつ

日本にっぽんの会社かいしゃ法ほうでは、会社かいしゃが法人ほうじん格かくを取得しゅとくするための要件ようけんが定さだめられており、その要件ようけんを満みたしたときにおいて、行政ぎょうせい官庁かんちょうの免許めんきょの取得しゅとくなどを必要ひつようとせず、法人ほうじん格かくが認みとめられる。

具体ぐたい的てきには、株式会社かぶしきがいしゃは、定款ていかんの作成さくせい、出資しゅっし、設立せつりつ時じ役員やくいん等とうの選任せんにんなどを経へて、株式会社かぶしきがいしゃとしての実体じったいが形成けいせいされると、設立せつりつの登記とうきにより、その株式会社かぶしきがいしゃは法人ほうじん格かくを取得しゅとくすることとなる。合名ごうめい会社かいしゃは、社員しゃいんとなる者もの1人にん以上いじょうが定款ていかんを作成さくせいし、設立せつりつの登記とうきをすることによって成立せいりつする。合資ごうし会社かいしゃは、無限むげん責任せきにん社員しゃいんとなる者ものと有限ゆうげん責任せきにん社員しゃいんとなる者ものそれぞれ1人にん以上いじょうが合意ごういして定款ていかんを作成さくせいし、設立せつりつの登記とうきをすることによって成立せいりつする。合同ごうどう会社かいしゃは、有限ゆうげん責任せきにん社員しゃいんとなる者もの1人にん以上いじょうが定款ていかんを作成さくせいし、設立せつりつの登記とうきをすることによって成立せいりつする。

参考さんこう文献ぶんけん

• 佐々ささ穆きよし『各国かっこく比較ひかく会社かいしゃ法論ほうろん 株式会社かぶしきがいしゃ及および有限ゆうげん責任せきにん会社かいしゃ』清水しみず書店しょてん、1930年ねん8月がつ18日にち。NDLJP:1280116 NDLJP:1281395。 
• 小野おの伸一しんいち「企業きぎょうと経済けいざい発展はってん ―株式会社かぶしきがいしゃをはじめとする事業じぎょう組織そしきの生成せいせいと普及ふきゅう―」『立法りっぽうと調査ちょうさ』第だい311号ごう、参議院さんぎいん事務じむ局きょく、2010年ねん12月1日にち、95-108頁ぺーじ、NAID 40017382913。 
• 神田かんだ秀樹ひでき『会社かいしゃ法ほう』（第だい22版はん）弘文こうぶん堂どう〈法律ほうりつ学がく講座こうざ双書そうしょ〉、2020年ねん3月がつ15日にち。ISBN 9784335315510。 

関連かんれん項目こうもく

• 特許とっきょ (行政ぎょうせい法ほう)
• 許可きょか
• 認可にんか

外部がいぶリンク

• 『準則じゅんそく主義しゅぎ』 - コトバンク