犯罪はんざい心理しんり学がく

犯罪はんざい心理しんり学がく（はんざいしんりがく、英語えいご：criminal psychology）は、犯罪はんざい行為こういやそれをとりまく周辺しゅうへん事象じしょうの理解りかいに心理しんり学がく的てき方法ほうほう論ろんを用もちいて明あきらかにする学問がくもん体系たいけいである。

概要がいよう

研究けんきゅうの対象たいしょうは幅広はばひろく、犯罪はんざいに関連かんれんする人間にんげんの行動こうどう、犯罪はんざいの発生はっせい機き序じょや意味いみ、捜査そうさ手法しゅほう、犯罪はんざいに至いたった者もの（被疑ひぎ者しゃ・非行ひこう少年しょうねん・触法しょくほう精神せいしん障害しょうがい者しゃを含ふくむ）や被害ひがい者しゃ等とうの諸しょ特徴とくちょうや行動こうどう予測よそく、法廷ほうていでの証言しょうげんや鑑定かんてい、犯罪はんざい者しゃや非行ひこう少年しょうねん等とうに対たいする治療ちりょう的てき・教育きょういく的てき処遇しょぐうの効果こうか、一般いっぱん市民しみんの犯罪はんざい及および犯罪はんざい者しゃ（非行ひこう少年しょうねん）に対たいする態度たいどや感情かんじょう、社会しゃかいにおける防犯ぼうはん策さくなどである。

犯罪はんざい心理しんり学がくの研究けんきゅう領域りょういきは、犯罪はんざい精神せいしん医学いがく、犯罪はんざい社会しゃかい学がく、刑事けいじ政策せいさくなどと重かさなる部分ぶぶんも多おおく、犯罪はんざい学がく（犯罪はんざい生物せいぶつ学がく）の一いち部門ぶもんと捉とらえることもできる。

責任せきにん能力のうりょくや訴訟そしょう能力のうりょくに関かんする精神せいしん鑑定かんていの基礎きそとなる犯罪はんざい精神せいしん医学いがくとは対象たいしょう領域りょういきを異ことにするが、マスメディアなどでは区別くべつなく用もちいられることも多おおく、また、両方りょうほうの分野ぶんやで活躍かつやくする研究けんきゅう者しゃも少すくなくない。

歴史れきし

日本にっぽんの近代きんだい司法しほうに関かかわった犯罪はんざい心理しんり学者がくしゃの第一人者だいいちにんしゃとして、寺田てらだ精一せいいちが挙あげられる。寺田てらだは、日本にっぽんで初はじめて犯罪はんざい心理しんり学がくの分野ぶんやを開拓かいたくし、刑務所けいむしょにいる囚人しゅうじんの調査ちょうさ研究けんきゅうに基もとづき、多おおくの犯罪はんざい心理しんり学がくの著書ちょしょや論文ろんぶんを発表はっぴょうした。内務省ないむしょうでは多おおくの心理しんり職員しょくいんを嘱託しょくたくとして採用さいようしていたが、やがて正式せいしきの職員しょくいんとして採用さいようするようになった。この時期じき、石井いしい俊しゅん瑞みず、吉益よします脩おさむ夫おっと、高瀬たかせ貞さだ安やす、青木あおき誠まこと四郎しろう、近藤こんどう貞次ていじ、塚田つかだ毅あつし、平尾ひらお靖やすし、入澤いりさわ壽夫としお、菊池きくち省三しょうぞう、栗原くりはら泰次郎たいじろう、島田しまだ五郎ごろう、玉生たまにゅう道どう経けいといった人物じんぶつが活躍かつやくした。戦後せんごになると、最高裁判所さいこうさいばんしょ、法務省ほうむしょう、警察庁けいさつちょうや児童じどう相談そうだん所しょに心理しんり職しょくが設もうけられ、その結果けっか、心理しんり学がく関連かんれんの学部がくぶを持もつ大学だいがくが増ふえた。このような流ながれを受うけて、1963年ねんには日本にっぽん犯罪はんざい心理しんり学会がっかいが発足ほっそくした。

犯罪はんざい心理しんり学がくの理論りろん

犯罪はんざい心理しんり学がくの理論りろんとしては、次つぎのような理論りろんがある。

• 吉益よします脩おさむ夫おっとの犯罪はんざい曲線きょくせん - 初発しょはつ年齢ねんれい（早はや発はつ・遅おそ発はつ）、刑けいの反復はんぷくと間隔かんかく（持続じぞく型がた・弛緩しかん型がた・間欠かんけつ型がた・停止ていし型がた）、犯罪はんざいの方向ほうこう（財産ざいさん犯はん・暴力ぼうりょく犯はん・風俗ふうぞく犯はん・破壊はかい犯はん・逃走とうそう犯はん、同種どうしゅ方向ほうこう犯人はんにん・異種いしゅ方向ほうこう犯人はんにん・他た種たね方向ほうこう犯人はんにん）の組くみ合あわせによる分類ぶんるい。
• 安倍あべ淳あつし吉きちの社会しゃかい心理しんり学理がくり論ろん - 非行ひこう深化しんかの過程かていを、第だい一いち段階だんかい（保護ほご領域りょういき内ないの非行ひこう）・第だい二に段階だんかい（保護ほご領域りょういき外がいの非行ひこう）・第だい三さん段階だんかい（非行ひこうがセミプロ段階だんかい）・第だい四よん段階だんかい（非行ひこうがプロフェッショナル段階だんかい）と捉とらえ、社会しゃかい化か過程かてい非適応ひてきおう型がた（健全けんぜんな家庭かていの子弟していや平凡へいぼんなサラリーマンの犯行はんこう形成けいせい）・反はん社会しゃかい化か過程かてい非適応ひてきおう型がた（犯罪はんざい家庭かていの子この非行ひこう形成けいせいややくざの犯行はんこう形成けいせい）・価値かち基準きじゅん混濁こんだく型がた（過か保護ほご・放任ほうにん家庭かていの子この非行ひこう形式けいしきや勤務きんむ規律きりつの乱みだれたサラリーマンの企業きぎょう内ないの犯行はんこう形成けいせい）・価値かち適応てきおう硬直こうちょく型がた（厳格げんかくすぎる家庭かていに生育せいいくした子弟していの非行ひこう形成けいせいや，まじめすぎる男おとこが追おい詰つめられて手段しゅだんを見失みうしない行おこなう犯行はんこう、あるいは確信かくしん犯はん）に分類ぶんるいした。犯行はんこう手口てぐちは密行みっこう型がた・威力いりょく型がた・詐欺さぎ型がた・潜行せんこう型がたに分類ぶんるいした。
• 森もり武夫たけおの危機きき理論りろん - 「犯罪はんざい・非行ひこうを理解りかいするための枠組わくぐみ（類型るいけいなど）」と「犯罪はんざい・非行ひこうなどを説明せつめいするための仮説かせつ」からなる犯罪はんざい心理しんり学がく的てきな理論りろんである。ここでの危機ききとは個人こじんの耐たい性せいを超こえた状態じょうたいで、危機ききに対たいする反応はんのうには犯罪はんざい・非ひ社会しゃかい的てき不適ふてき応おう行動こうどう・精神せいしん症状しょうじょう・身体しんたい症しょうがある。

著名ちょめいな研究けんきゅう者しゃ

• 吉益よします脩おさむ夫おっと（精神せいしん医学いがく、心理しんり学がく）
• 福島ふくしま章あきら（精神せいしん医学いがく）
• 小田おだ晋すすむ（精神せいしん医学いがく）
• 森もり武夫たけお（心理しんり学がく）
• 村松むらまつ励（心理しんり学がく 元もと日本にっぽん犯罪はんざい心理しんり学会がっかい会長かいちょう）
• 影山かげやま任つとむ佐さ（精神せいしん医学いがく）
• 大渕おおふち憲一けんいち（心理しんり学がく）
• 作田さくた明あきら（精神せいしん医学いがく）
• 浜井はまい浩一こういち（心理しんり学がく、法学ほうがく）
• 桐生きりゅう正幸まさゆき（心理しんり学がく、犯罪はんざい者しゃプロファイリング）
• 原田はらだ隆之たかゆき（犯罪はんざい心理しんり学がく、臨床りんしょう心理しんり学がく）
• 越智おち啓あきら太ふとし （犯罪はんざい心理しんり学がく）

関連かんれん項目こうもく

• 犯罪はんざい精神せいしん医学いがく
• 司法しほう精神せいしん医学いがく
• プロファイリング
• 法ほう心理しんり学がく

外部がいぶリンク

• 日本にっぽん犯罪はんざい心理しんり学会がっかい
• 法政大学ほうせいだいがく文学部ぶんがくぶ心理しんり学科がっか犯罪はんざい心理しんり学がく研究けんきゅう室しつ - ウェイバックマシン（2019年ねん3月がつ30日にちアーカイブ分ぶん）