児童じどう相談そうだん所しょ

日本にっぽんでの児童じどう相談そうだん所しょ（じどうそうだんじょ）は、児童じどう福祉ふくし法ほう第だい12条じょうに基もとづき、各かく都道府県とどうふけんに設もうけられた児童じどう福祉ふくしの専門せんもん機関きかん。児こ相しょうと略称りゃくしょうされる。すべての都道府県とどうふけんおよび政令せいれい指定してい都市とし（2006年ねん4月がつから、中核ちゅうかく市しにも設置せっちできるようになった）に最低さいてい1以上いじょうの児童じどう相談そうだん所しょが設置せっちされており、都道府県とどうふけんによってはその規模きぼや地理ちり的てき状況じょうきょうに応おうじて複数ふくすうの児童じどう相談そうだん所しょおよびその支所ししょを設置せっちしている。

また電話でんわ番号ばんごうの189番ばん（語呂合ごろあわせ：いちはやく）は、児童じどう相談そうだん所しょの全国ぜんこく共通きょうつうダイヤル（緊急きんきゅう通報つうほう用よう電話でんわ番号ばんごう）に設定せっていされている。2015年ねん7月がつ1日にちより運用うんようが開始かいしされ、24時じ間あいだ365日にち児童じどう虐待ぎゃくたいや子育こそだての相談そうだんを受うけ付つけている。2019年ねん12月3日にちより通話つうわ料りょう無料むりょう。児童じどう虐待ぎゃくたいを受うけたと思おもわれる児童じどうを発見はっけんした者ものは、速すみやかに警察けいさつ、市町村しちょうそん、福祉ふくし事務所じむしょまたは児童じどう相談そうだん所しょのいずれかに通告つうこくしなければならない。

業務ぎょうむの内容ないよう

児童じどうすなわち0歳さいから17歳さいの者もの（児童じどう福祉ふくし法ほう4条じょう）を対象たいしょうに以下いかのような業務ぎょうむ内容ないようを行おこなっている（児童じどう福祉ふくし法ほう11条じょう1項こう2号ごう）。

• 児童じどうに関かんする様々さまざまな問題もんだいについて、家庭かていや学校がっこうなどからの相談そうだんに応おうじること。
• 児童じどう及およびその家庭かていにつき、必要ひつような調査ちょうさ並ならびに医学いがく的てき、心理しんり学がく的てき、教育きょういく学がく的てき、社会しゃかい学がく的てき及および精神せいしん保健ほけん上うえの判定はんていを行おこなう。特別とくべつ児童じどう扶養ふよう手当てあて及および療育りょういく手帳てちょうの判定はんてい事務じむを含ふくむ。
• 児童じどう及およびその保護ほご者しゃにつき、前号ぜんごうの調査ちょうさ又または判定はんていに基もとづいて必要ひつような指導しどうを行おこなうこと。
• 児童じどうを一時いちじ保護ほご所しょに保護ほごし、その後ご親おやに戻もどすか、児童じどう養護ようご施設しせつなどに預あづけるか決定けっていする（一時いちじ保護ほごは2か月げつを超こえてはならない。しかし、必要ひつようがある場合ばあいは引ひき続つづき一時いちじ保護ほごを行おこなう。）。

相談そうだんの種類しゅるい

相談そうだんの種別しゅべつは、5つに大別たいべつされる。

• 養護ようご相談そうだん - 父母ちちははの家出いえで、死亡しぼう、離婚りこん、入院にゅういんなどによる養育よういく困難こんなん、被ひ虐待ぎゃくたい児じなど。
• 保健ほけん相談そうだん - 未熟みじゅく児じ、虚弱きょじゃく児じ、小児しょうに喘息ぜんそくなど。
• 心身しんしん障害しょうがい相談そうだん - 障害しょうがい児じ、発達はったつ障害しょうがい、重度じゅうどの心身しんしん障害しょうがい（身体しんたい障害しょうがい、精神せいしん障害しょうがい、知的ちてき障害しょうがい）など。
• 非行ひこう相談そうだん - 虚言きょげん、家出いえで、浪費ろうひ癖へき、性的せいてきな逸脱いつだつ、触法しょくほう行為こういなど。
• 育成いくせい相談そうだん - 性格せいかくや行動こうどう、不ふ登校とうこう。

職員しょくいん

各かく児童じどう相談そうだん所しょには、一般いっぱんの行政ぎょうせい職員しょくいん（国家こっか公務員こうむいんでいうところの事務じむ官かん）に加くわえ、精神せいしん衛生えいせいの知識ちしきのある医師いし、大学だいがくで心理しんり学がくを学まなんだ児童じどう心理しんり司し、また児童じどう福祉ふくし司し（2年ねん以上いじょうの実務じつむ経験けいけんか、資格しかく取得しゅとく後ご、2年ねん以上いじょう所員しょいんとして勤務きんむした経験けいけんが必要ひつよう）などの専門せんもん職員しょくいんがいる。専門せんもん職しょくは、国家こっか公務員こうむいんでいうところの技官ぎかんに相当そうとうする職種しょくしゅである。

児童じどう虐待ぎゃくたいなどの相談そうだんに関かんしては、本来ほんらいは専せん門もんの職員しょくいんが担当たんとうするべきだが、実際じっさいには一般いっぱん行政ぎょうせい職しょくの者ものを児童じどう福祉ふくし司しとして任用にんようしている自治体じちたいが少すくなくない。一般いっぱん行政ぎょうせい職しょくの職員しょくいんは、ソーシャルワークに関かんする専門せんもん教育きょういくを受うけていないことに加くわえ、異動いどうのサイクルが短みじかく、専門せんもん知識ちしきが蓄積ちくせきされない問題もんだいがある。

厚生こうせい労働省ろうどうしょうによると新生児しんせいじなどの新規しんき措置そちの場合ばあいに、乳児にゅうじ院いんへの措置そちの割合わりあいが著いちじるしく高たかい自治体じちたいが多おおく、新生児しんせいじなどからの里親さとおや委託いたくの取組とりくみが必要ひつようとされている。乳児にゅうじ院いん退すさ所しょ後ごの措置そち変更へんこう先さきでも、里親さとおやではなく100％児童じどう養護ようご施設しせつ入所にゅうしょ措置そちが取とられている自治体じちたいもある。また、児童じどう相談そうだん所しょの里親さとおや担当たんとう職員しょくいん及および、里親さとおや支援しえん機関きかん事業じぎょうにおける里親さとおや委託いたく等とう推進すいしん員いんの体制たいせいも自治体じちたいによりばらつきがある。児こ相しょうで里親さとおやや特別とくべつ養子ようし縁組えんぐみのアプローチがうまくいかない原因げんいんとして、専任せんにんの職員しょくいんの不足ふそくを指摘してきする声こえもある。

2017年ねん（平成へいせい29年ねん）4月がつ以降いこう、児童じどう虐待ぎゃくたい防止ぼうし法ほう改正かいせいにより、都道府県とどうふけんは、児童じどう相談そうだん所しょに、児童じどう心理しんり司し、医師いし又または保健ほけん師し、指導しどう・教育きょういく担当たんとうの児童じどう福祉ふくし司し（スーパーバイザー）を置おくとともに、弁護士べんごしの配置はいち又またはこれに準じゅんずる措置そちを行おこない態勢たいせい強化きょうかを図はかることとなった。また、2017年ねん（平成へいせい29年ねん）4月がつ1日にち現在げんざい全国ぜんこくの児童じどう相談そうだん所しょに、警察官けいさつかん29名めい、警察官けいさつかんOB162名めい、教員きょういん119名めい、教員きょういんOB124名めいが配置はいちされている。産経新聞さんけいしんぶんの調査ちょうさによると、2020年ねん現在げんざい、児童じどう相談そうだん所しょ（児こ相しょう）を設置せっちしている全国ぜんこくの72自治体じちたいの約やく6割わりが、児こ相しょうに現職げんしょく警察官けいさつかんを配置はいちしている。

毎日新聞まいにちしんぶんの調査ちょうさでは、2018年ねんの児童じどう福祉ふくし司しの精神せいしん疾患しっかんによる休職きゅうしょく率りつは教員きょういんの4倍ばいで、疲弊ひへいや心理しんり的てき負担ふたんで50人にんに1人ひとりになっている。

虐待ぎゃくたいに対たいして

虐待ぎゃくたいへの対応たいおうでは、動機どうきなきクライエントに介入かいにゅうし、限かぎられた情報じょうほうをもとに迅速じんそくかつ的確てきかくにリスクアセスメントを行おこなったり、適切てきせつな援助えんじょ関係かんけいを構築こうちくしたりするなど、高度こうどな専門せんもん性せいが要求ようきゅうされる。虐待ぎゃくたいへの対応たいおうに精通せいつうするには、専門せんもん職しょくとしての基本きほん的てきな見識けんしき・技術ぎじゅつに加くわえ、豊富ほうふな経験けいけんが不可欠ふかけつであり、最低さいてい5 年ねんから10 年ねん程度ていどの経験けいけんが必要ひつようであるとされている。よって、児童じどう福祉ふくし司しに専門せんもん職しょく任用にんようをすすめることが今後こんごの課題かだいである、という指摘してきがある。

近年きんねんは虐待ぎゃくたい通報つうほう数すうが急増きゅうぞうしているが、虐待ぎゃくたい対応たいおうだけが職員しょくいんの業務ぎょうむではない中なかで、専門せんもん性せいが必要ひつような虐待ぎゃくたい対応たいおうを行おこなう職員しょくいん数すうの不足ふそくも懸念けねんされている。児童じどう福祉ふくし司しは虐待ぎゃくたい通告つうこくへの初期しょき対応たいおうに振ふり回まわされ、虐待ぎゃくたい以外いがいの相談そうだんへの対応たいおうはおろか、虐待ぎゃくたい相談そうだんにおいてさえ、個々ここの事例じれいに丁寧ていねいに対応たいおうしかねているのが実情じつじょうである、という指摘してきもある。このような背景はいけいから、2004年ねん（平成へいせい16年ねん）度ど児童じどう福祉ふくし法ほう改正かいせいにより地方ちほう公共こうきょう団体だんたい（市区しく町村ちょうそん）も要よう保護ほご児童じどう対策たいさく地域ちいき協議きょうぎ会かい（児童じどう福祉ふくし法ほう25条じょうの2）を通つうじて虐待ぎゃくたいを受うけた要よう保護ほご児童じどうへの支援しえんを行おこなう機関きかんに加くわえられた。児童じどう相談そうだん所しょは、市区しく町村ちょうそんの業務ぎょうむの支援しえんも行おこなうものとされる（児童じどう福祉ふくし法ほう12条じょう2項こう）。

福岡ふくおか市しでは「泣なき声ごえ通告つうこく」後ごの確認かくにんをNPOに委託いたくしており、「市しから委託いたくされた見守みまもり訪問ほうもんで来きた」と訪おとずれることにより、その後ごの支援しえんにつなげていっている。また市しの児童じどう家庭かてい支援しえんセンターと補完ほかんしあうことにより、土日どにちの出勤しゅっきんの必要ひつよう性せいをなくし、職員しょくいんのバーンアウトを防ふせいでいる。また同市どうしでは2017年度ねんど現在げんざい弁護士べんごしが常勤じょうきん職員しょくいんで課長かちょうを務つとめている。児童じどう相談そうだん所しょが関係かんけいして0歳さいと2歳さいのネグレクトを受うけて汚物おぶつまみれになっていた児童じどうを保護ほごして救出きゅうしゅつした事例じれいもあれば、高知こうち県けん南国なんこく市しで起おこった事件じけんでは小学しょうがく5年生ねんせいの男子だんしが母ははの内縁ないえんの夫おっとにより殺害さつがいされている。なお、その弟おとうとは一時いちじ保護ほごを経へて児童じどう養護ようご施設しせつに入所にゅうしょしていため無事ぶじだった。

千葉ちば県けん

2020年ねん1月がつに千葉ちば県けん市原いちはら市しで起おきた生後せいご10か月げつの次女じじょを衰弱すいじゃく死しさせた母親ははおやの保護ほご責任せきにん者しゃ遺棄いき事件じけんにおいて、千葉ちば県けんでは野田のだ市しの小しょう4女児じょじ虐待ぎゃくたい死し事件じけんでの行政ぎょうせいが情報じょうほうを出だし過すぎたとの見解けんかいから、新あらたに虐待ぎゃくたい死し事件じけんが発生はっせいした場合ばあいには県けんは個人こじん情報じょうほう保護ほごの観点かんてんから児童じどう相談そうだん所しょの関かかわりを含ふくめ、一切いっさい情報じょうほうを公表こうひょうしない方針ほうしんを決きめていたことが判明はんめいし、報道ほうどう各社かくしゃより抗議こうぎされた。市原いちはら市しでは死亡しぼう女児じょじの兄あにや姉あねが通かよっていた幼稚園ようちえん・保育園ほいくえんから「妹いもうとの姿すがたが見みえない」と通報つうほうされたがその事実じじつを否定ひていし、後のちに一転いってんして認みとめ市長しちょうが児こ相しょうに通告つうこくしなかったなどの対応たいおうを謝罪しゃざいのうえ、第三者だいさんしゃ委員いいん会かいを設置せっちすると報告ほうこくしている。同市どうしでは2014年生ねんせい後ご8か月げつの男児だんじが死亡しぼうし父親ちちおやが傷害しょうがい致死ちしの罪つみで有罪ゆうざい判決はんけつを受うけた虐待ぎゃくたい事件じけんがあった。児こ相しょうが骨折こっせつした男児だんじを一時いちじ保護ほごしながら、虐待ぎゃくたいと断定だんていできず「母方ははかたの祖父母そふぼ宅たくでの同居どうきょ」を一時いちじ保護ほご解除かいじょの条件じょうけんに親元おやもとに帰かえしたが男児だんじは約やく1か月げつ後ごに頭部とうぶ外傷がいしょうにより死亡しぼうした。2020年ねん6月がつの市議会しぎかい教育きょういく民生みんせい常任じょうにん委員いいん会かいでは市しに対たいし過去かこの目視もくし確認かくにんの反省はんせいが生いかされなかったことが批判ひはんされている 。子こども虐待ぎゃくたい・性せい犯罪はんざいをなくす会かいのThink kisdでは2019年ねん2月がつに、千葉ちば県内けんないで起おきた虐待ぎゃくたい事件じけんの千葉ちば県けんの児童じどう相談そうだん所しょの対応たいおうについて警察けいさつと事案じあん全ぜん件けん共有きょうゆうなどの改善かいぜんを促うながす要望ようぼうを提案ていあんしていた。

一方いっぽうで、児童じどう相談そうだん所しょがトラブルに巻まき込こまれる例れいも見みられ、千葉ちば県けん柏かしわ市しでは2020年ねんに、児童じどう相談そうだん所しょに火炎瓶かえんびんが投なげ付つけられたり、銃弾じゅうだんが送付そうふされるなどする事件じけんが相次あいついで発生はっせいした。当時とうじ子供こどもの一時いちじ保護ほごを巡めぐり児童じどう相談そうだん所しょとトラブルになっていた男性だんせいが、知しり合あいを使つかってこれらの犯行はんこうを行おこなわせていたと見みられている。

京都きょうと府ふ

京都きょうと市しでは、京都きょうと市し児童じどう相談そうだん所しょ勤務きんむの男性だんせい職員しょくいん（49）が2015年ねん児童じどう養護ようご施設しせつに入所にゅうしょする少女しょうじょの母親ははおやの性的せいてき虐待ぎゃくたいの相談そうだんが放置ほうちされているとして市しの公益こうえき通報つうほう外部がいぶ窓口まどぐちに通報つうほうしたが、その前まえに少女しょうじょに関かんする記録きろくを閲覧えつらん及および印刷いんさつして自宅じたくに持もち帰かえったりした行為こういのため、停職ていしょく3日にちの懲戒ちょうかい処分しょぶんを受うけた。この処分しょぶん取とり消けしを求もとめて男性だんせいが提訴ていそし一いち審しんでは男性だんせいが勝訴しょうそし、京都きょうと市しが控訴こうそしたが2020年ねん6月がつ大阪おおさか高裁こうさいで市しの控訴こうそが棄却ききゃくされた。市しの人事じんじ部長ぶちょうは市しの主張しゅちょうが認みとめられなかったことに対たいして遺憾いかんの意いを唱となえ上告じょうこくの方針ほうしんを示しめしている。滋賀しが県けん長浜ながはま市内しないのキャンプ場じょうにある宿泊しゅくはく施設しせつで、2014年ねん8月がつに児童じどう養護ようご施設しせつに入所にゅうしょしていた少女しょうじょ（17）にみだらな行為こういをしたとして、京都きょうと府警ふけい少年しょうねん課かと下鴨しもがも署しょは2015年ねん9月がつ児童じどう福祉ふくし法ほう違反いはんの疑うたがいで、京都きょうと市し左京さきょう区くの社会しゃかい福祉ふくし法人ほうじんの施設しせつ長ちょう（54）が逮捕たいほされている 。本件ほんけんに対たいする京都きょうと市しの主張しゅちょうとしては児童じどう相談そうだん所しょの対応たいおうに遅おくれや隠いんぺいと言いわれる事実じじつはなく、本件ほんけんに関かんする調査ちょうさは，プライバシーの保護ほごの徹底てっていを図はかるためのものであり、調査ちょうさや処分しょぶんは公益こうえき通報つうほうとは関係かんけいがなく公益こうえき通報つうほう者しゃ保護ほご法ほう上じょうも問題もんだいがないとの見解けんかいを示しめしている。

兵庫ひょうご県けん

兵庫ひょうご県けん明石あかし市しでは、2018年ねん8月がつに、市内しない在住ざいじゅうの両親りょうしんが、当時とうじ生後せいご2ヵ月かげつの男児だんじについて、児童じどう相談そうだん所しょから虐待ぎゃくたいを疑うたがわれて一時いちじ保護ほごされる事案じあんがあった。児童じどう相談そうだん所しょは、この男児だんじを乳児にゅうじ院いんに長期ちょうき入所にゅうしょさせるよう神戸こうべ家庭かてい裁判所さいばんしょ明石あかし支部しぶに申もうし立たてたが、2019年ねん8月がつに同どう支部しぶは「虐待ぎゃくたいとは言いえない」として申もうし立たてを退しりぞけ、さらに同年どうねん11月がつに大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょも児童じどう相談そうだん所しょの抗告こうこくを棄却ききゃくした。これを受うけて男児だんじは両親りょうしんの元もとに戻もどされたが、両親りょうしんは約やく1年ねん3ヵ月かげつ間あいだに亘わたり男児だんじと離はなれて暮くらすことを強しいられる形かたちとなった。同市どうしの泉いずみ房ぼう穂ほ市長しちょうは2020年ねん9月に両親りょうしんに会あって謝罪しゃざいし、第三者だいさんしゃ委員いいん会かいを設置せっちし問題もんだい点てんを検証けんしょうするとしている。兵庫ひょうご県けん明石あかし市しは2021年ねん4月がつから、個々ここの事案じあんごとに一時いちじ保護ほごの妥当だとう性せいをチェックする「子こどものための第三者だいさんしゃ委員いいん会かい」を創設そうせつし、全国ぜんこく初はつの仕組しくみとして保護ほごの直後ちょくごに弁護士べんごしらの委員いいんが全すべての子こどもと面会めんかい、2週間しゅうかん後ごには児こ相しょうの判断はんだんが覆くつがえる可能かのう性せいもある仕組しくみを開始かいしする。虐待ぎゃくたいの疑うたがいで児こ相しょうに一時いちじ保護ほごされた乳児にゅうじが、1年ねん以上いじょう両親りょうしんと面会めんかいできなかったが裁判さいばんで虐待ぎゃくたいが認みとめられなかったことを背景はいけいとして保護ほごの妥当だとう性せいのチェック制度せいどを策定さくていした。

大阪おおさか府ふ

• 2017年ねんに4人にん家族かぞくの父親ちちおやが当時とうじ生後せいご2ヶ月かげつの長男ちょうなんをあやしていたところ、長男ちょうなんの呼吸こきゅうが止とまり病院びょういんへ搬送はんそうされた。検査けんさで硬かた膜まく下か血腫けっしゅと眼底がんてい出血しゅっけつが見みつかった為ため、「揺ゆさぶられっ子こ症候群しょうこうぐん」(通称つうしょうSBS)を疑うたがい、虐待ぎゃくたいの可能かのう性せいが高たかいとして病院びょういんは児童じどう相談そうだん所しょに通報つうほうされた。これを受うけ児童じどう相談そうだん所しょは一時いちじ保護ほごをした。また、「ある程度ていどの硬かたさのあるもの（具体ぐたい的てきには手て拳けんも含ふくまれる）による、強つよい打撲だぼく作用さようにより形成けいせいされた可能かのう性せいを否定ひていすることはできない」との病院びょういんからの鑑定かんてい書しょを受うけて長男ちょうなんは4年間ねんかん一時いちじ保護ほごとなった。父親ちちおやは5ヶ月かげつ間あいだ拘留こうりゅうされ、保釈ほしゃく後ごも裁判所さいばんしょの命令めいれいや児童じどう相談そうだん所しょの指示しじで、家族かぞくとの別居べっきょを余儀よぎなくされた。後のちに大阪おおさか地方裁判所ちほうさいばんしょは「長男ちょうなんは先天せんてん性せいの疾患しっかんにより軽かるい力ちからで出血しゅっけつした可能かのう性せいがあり、動機どうきも認みとめられない」として、父親ちちおやに「無罪むざい」をい渡いわたし、判決はんけつは確定かくていした。
• 2018年ねん冬ふゆに、府内ふない在住ざいじゅうの女性じょせいが、当時とうじ生後せいご1ヵ月かげつの長女ちょうじょを誤あやまって床ゆかに落おとし、長女ちょうじょは骨折こっせつや出血しゅっけつが確認かくにんされたため、児童じどう相談そうだん所しょに一時いちじ保護ほごされたが、その後ご児童じどう相談そうだん所しょは、長女ちょうじょが虐待ぎゃくたいを受うけていた疑うたがいがあるとの鑑定かんてい書しょが出でたことを受うけ、乳児にゅうじ院いんに入所にゅうしょさせる必要ひつようがあるとして保護ほごの延長えんちょうを大阪おおさか家庭かてい裁判所さいばんしょに申もうし立たてた。2019年ねん3月がつに同どう家裁かさいは「事故じこの可能かのう性せいがある」と判断はんだんした上うえで、鑑定かんてい書しょを再さい検討けんとうするよう求もとめた。しかし児童じどう相談そうだん所しょはこれに従したがわず、乳児にゅうじ院いんへの入所にゅうしょ手続てつづきを両親りょうしんにも無断むだんで進すすめ、その後ご長女ちょうじょが自宅じたくに戻もどったのは約やく7ヵ月かげつ後ごで、その間あいだ両親りょうしんと長女ちょうじょは離はなれて暮くらすことを強しいられる形かたちとなった。女性じょせいは大阪おおさか地方裁判所ちほうさいばんしょに計けい500万まん円えんの損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめる訴訟そしょうを起おこし、同どう地裁ちさいは2022年ねん3月24日にちに「虐待ぎゃくたいの有無うむを十分じゅうぶんに検討けんとうせず保護ほごを継続けいぞくした」として、一時いちじ保護ほごを続つづけた児童じどう相談そうだん所しょの対応たいおうを違法いほうと認定にんていし、府ふに100万まん円えんの賠償ばいしょうを命めいじる判決はんけつをい渡いわたした。

設置せっちしている自治体じちたい

児童じどう相談そうだん所しょは、都道府県とどうふけん、指定してい都市とし（地方ちほう自治じち法ほう（昭和しょうわ22年ねん法律ほうりつ第だい67号ごう）第だい252条じょうの19第だい1項こうの指定してい都市としをいう。以下いか同おなじ。）及および児童じどう相談そうだん所しょ設置せっち市し（児童じどう福祉ふくし法ほう（昭和しょうわ22年ねん法律ほうりつ第だい164号ごう）第だい59条じょうの4第だい1項こうの児童じどう相談そうだん所しょ設置せっち市しをいう）に設置せっちされる。東京とうきょう23区くでは、法ほう改正かいせいにより設置せっちが可能かのうとなり、練馬ねりま区く以外いがいで開設かいせつが予定よていされている。中核ちゅうかく市しである明石あかし市しでは市議会しぎかいは全会ぜんかい一致いっちで賛成さんせいのうえ、児童じどう相談そうだん所しょを市しの中央ちゅうおうJR駅前えきまえに設置せっちし、個室こしつ風呂ふろ付づけの一時いちじ保護ほご所しょも設備せつびした。国くに基準きじゅんを上回うわまわる人員じんいんを配置はいちし、基準きじゅん以上いじょうの人件じんけん費ひは全すべて明石あかし市し負担ふたんとなっている。衆議院しゅうぎいん厚生こうせい労働ろうどう委員いいん会かいにおいて泉いずみ房ぼう穂ほ市長しちょうは職員しょくいんと財政ざいせい面めんでの問題もんだいがあるとしつつも、中核ちゅうかく市しに児童じどう相談そうだん所しょを設置せっちすることを決きめることが重要じゅうようと語かたっている。また金沢かなざわ市しや横須賀よこすか市しでは運営うんえい費ひに12億おくから13億おくかかり、国くにや県けんからの支援しえんが大体だいたい4億おく円えんぐらいあるといっても、差さし引ひくと8億おく円えん以上いじょうかかることも審議しんぎの中なかで中核ちゅうかく市しに児童じどう相談そうだん所しょが増ふえないネックとして挙あげられている。

「児童じどう相談そうだん所しょの一覧いちらん」も参照さんしょう

地方ちほう	都道府県とどうふけん（47）	指定してい都市とし（20）	中核ちゅうかく市し（3）
北海道ほっかいどう地方ちほう	北海道ほっかいどう	札幌さっぽろ市し
東北とうほく地方ちほう	青森あおもり県けん、岩手いわて県けん、宮城みやぎ県けん、秋田あきた県けん、山形やまがた県けん、 福島ふくしま県けん	仙台せんだい市し
関東かんとう地方ちほう	茨城いばらき県けん、栃木とちぎ県けん、群馬ぐんま県けん、埼玉さいたま県けん、千葉ちば県けん、 東京とうきょう都と、神奈川かながわ県けん	さいたま市し、千葉ちば市し、横浜よこはま市し、川崎かわさき市し、相模原さがみはら市し	横須賀よこすか市し
中部ちゅうぶ地方ちほう	新潟にいがた県けん、富山とやま県けん、石川いしかわ県けん、福井ふくい県けん、山梨やまなし県けん、 長野ながの県けん、岐阜ぎふ県けん、静岡しずおか県けん、愛知あいち県けん	新潟にいがた市し、静岡しずおか市し、浜松はままつ市し、名古屋なごや市し	金沢かなざわ市し
近畿きんき地方ちほう	三重みえ県けん、滋賀しが県けん、京都きょうと府ふ、大阪おおさか府ふ、兵庫ひょうご県けん、 奈良なら県けん、和歌山わかやま県けん	京都きょうと市し、大阪おおさか市し、堺さかい市し、神戸こうべ市し	明石あかし市し
中国ちゅうごく地方ちほう	鳥取とっとり県けん、島根しまね県けん、岡山おかやま県けん、広島ひろしま県けん、山口やまぐち県けん	岡山おかやま市し、広島ひろしま市し
四国しこく地方ちほう	徳島とくしま県けん、香川かがわ県けん、愛媛えひめ県けん、高知こうち県けん
九州きゅうしゅう地方ちほう	福岡ふくおか県けん、佐賀さが県けん、長崎ながさき県けん、熊本くまもと県けん、大分おおいた県けん、 宮崎みやざき県けん、鹿児島かごしま県けん	北九州きたきゅうしゅう市し、福岡ふくおか市し、熊本くまもと市し
沖縄おきなわ地方ちほう	沖縄おきなわ県けん

児童じどう相談そうだん所しょ建設けんせつ反対はんたい問題もんだい

大阪おおさか市しや東京とうきょう都と港みなと区くでは児童じどう相談そうだん所しょを建設けんせつするにあたり、住民じゅうみんの反対はんたい運動うんどうが起おこることがある。2016年ねんには大阪おおさかのタワーマンションに児童じどう相談そうだん所しょや一時いちじ保護ほご所しょの併設へいせつを予定よていしていた市しはマンションのアンケートで反対はんたいが多おおかったため計画けいかくを別べつの場所ばしょにした。

港みなと区くでは児童じどう相談そうだん所しょ・母子ぼし生活せいかつ支援しえん施設しせつを含ふくむ（仮称かしょう）港みなと区く子こども家庭かてい総合そうごう支援しえんセンターを令れい和わ3年ねん4月がつ開設かいせつ予定よていにしている。が、住民じゅうみん説明せつめい会かいで「ブランドが低下ていかする」などの意見いけんが出でて反対はんたいを受うけていると報ほうじられている。また、この複ふく合あい施設しせつの中なかで地元じもとの公立こうりつ小学校しょうがっこうに通かよう可能かのう性せいのある施設しせつは「母子ぼし生活せいかつ支援しえん施設しせつ」入所にゅうしょ児童じどうだけであり、同どう児童じどう相談そうだん所しょで保護ほごされている児童じどうは一時いちじ保護ほごであり基本きほん施設しせつ内ないで勉強べんきょうするが、児童じどう相談そうだん所しょの反対はんたい意見いけんとして、子こが経済けいざい格差かくさを感かんじ可哀想かわいそうなのではないかとの誤解ごかいに基もとづく発言はつげんもある。港みなと区くには今回こんかいの建設けんせつ予定よてい付近ふきんに「サンライズ青山あおやま」という母子ぼし生活せいかつ支援しえん施設しせつが2018年ねん（平成へいせい30年ねん）3月がつ末まつまであったが、築ちく50年ねんを超こえる施設しせつの老朽ろうきゅう化かと施設しせつ運営うんえいをしていた社会しゃかい福祉ふくし法人ほうじんの撤退てったいにより、保護ほごする母子ぼしの行ゆく先さきが無なくなり検討けんとう課題かだいとなっていた。2016年ねん（平成へいせい28年ねん）の港みなと区く議会ぎかい保健ほけん福祉ふくし常任じょうにん委員いいん会かいでは、保護ほごが必要ひつような母子ぼし相談そうだんは年とし3000件けんあり、ひとり親おやとなった母ははが、民間みんかん賃貸ちんたいの入居にゅうきょ審査しんさに断ことわられてアパート・マンションに入居にゅうきょできない、公営こうえい住宅じゅうたくに当とうせんしても連帯れんたい保証人ほしょうにんを頼たのめる親族しんぞくがいないから資格しかく審査しんさで無効むこうとなり、入居にゅうきょできない。急きゅうに夫おっとがいなくなったりして路頭ろとうに迷まようなど、これまで割わりといい暮くらしをしていた人ひとが落差らくさが激はげしくて、鬱うつになってしまうなどの問題もんだいを抱かかえて相談そうだんしていると語かたられている。

児童じどう虐待ぎゃくたい防止ぼうし法ほうにおける役割やくわり

児童じどう相談そうだん所しょ・児童じどう相談そうだん所長しょちょうは、児童じどう虐待ぎゃくたい防止ぼうし法ほうにおいて出頭しゅっとう要求ようきゅうや立入たちいり調査ちょうさなどの権限けんげんが規定きていされている。児童じどう虐待ぎゃくたいの防止ぼうし等とうに関かんする法律ほうりつ#概要がいようも参照さんしょう。

海外かいがいの類似るいじ機関きかん

• 児童じどう保護ほごサービス（Child protection service）- 米国べいこく
• Children and Family Court Advisory and Support Service（英語えいご版ばん） - イングランド・ウェールズ
• Bureau Jeugdzorg（オランダ語ご版ばん） - オランダ
• Raad voor de Kinderbescherming（オランダ語ご版ばん） - オランダ
• Jugendamt（ドイツ語ご版ばん） - ドイツ・オーストリア
• Patronato Nacional de la Infancia - コスタリカ
• Conselho Nacional dos Direitos da Criança e do Adolescente (Conanda) - ブラジル
• Child, Youth and Family（英語えいご版ばん） - ニュージーランド
• 衛生えいせい福利ふくり部ぶ社會しゃかい及家庭かてい署しょ（中国語ちゅうごくご版ばん） - 台湾たいわん（緊急きんきゅう通報つうほう用よう電話でんわ番号ばんごう：113番ばん）

海外かいがいでの虐待ぎゃくたい対応たいおう

アメリカロスアンゼルス郡ぐんでは虐待ぎゃくたい対応たいおう組織そしきはDCFS（Department of Children and Family Services）であり、全すべての人ひとに通報つうほうの義務ぎむがあり、通報つうほう後ごに深刻しんこく度どにより2時間じかん以内いない（通報つうほうを受うけたら直行ちょっこうする）、3日にち以内いない、5日にち以内いない（シビアな事例じれいではないが、調査ちょうさは必かならず行おこなう）に対応たいおうするレベル分わけがされる。虐待ぎゃくたい者しゃが援助えんじょプログラムに同意どういした場合ばあいには、カウンセリングなどのかかわりが開始かいしされる。一方いっぽうで虐待ぎゃくたいの事実じじつはあるが、虐待ぎゃくたい者しゃ同意どういしない場合ばあいにはDCFSが親おやを説得せっとくする事実じじつが必要ひつようであるため「戦略せんりゃく」と「ネゴシエーション（交渉こうしょう）」を続つづけるものの、最悪さいあくの場合ばあい子こどもが死しんでしまっても、親おやが同意どういしなかったということになり、DCFSの責任せきにんは問とわれないこととなっている。

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

• 斉藤さいとう幸芳ゆきよし、藤井ふじい常つね文ぶん『児童じどう相談そうだん所しょはいま―児童じどう福祉ふくし司しからの現場げんば報告ほうこく』ミネルみねるヴァ書房ぁしょぼう、2012年ねん。ISBN 4623062376。 
• 津崎つざき哲郎てつろう、橋本はしもと和明かずあき『最前線さいぜんせんレポート 児童じどう虐待ぎゃくたいはいま―連携れんけいシステムの構築こうちくに向むけて』ミネルみねるヴァ書房ぁしょぼう、2008年ねん。ISBN 4623051986。 
• 大久保おおくぼ真紀まき『ルポ児童じどう相談そうだん所しょ』朝日新聞あさひしんぶん出版しゅっぱん、2018年ねん。ISBN 9784022730930。 

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんの福祉ふくし
• 療育りょういく手帳てちょう
• 家庭かてい裁判所さいばんしょ/少年しょうねん法ほう/少年しょうねん保護ほご手続てつづき/触法しょくほう少年しょうねん/少年しょうねん鑑別かんべつ所しょ/少年院しょうねんいん
• 児童じどう福祉ふくし法ほう
• 児童じどう虐待ぎゃくたいの防止ぼうし等とうに関かんする法律ほうりつ
• 児童じどう精神せいしん医学いがく
  • 非行ひこう/行為こうい障害しょうがい
  • 児童じどう虐待ぎゃくたい/被ひ虐待ぎゃくたい児じ症候群しょうこうぐん
• 福祉ふくし事務所じむしょ
• 児童じどう委員いいん
• ドメスティックバイオレンス
• 子こどもシェルター
• 児童じどう相談そうだん所しょ一いち時じ保護ほご所しょ
• 児童じどう養護ようご施設しせつ
• 児童じどう保護ほごサービス
• 養子ようし縁組えんぐみ
• 里親さとおや
• 障害しょうがい者しゃ福祉ふくし

外部がいぶリンク

• 児童じどう相談そうだん所しょの概要がいよう｜厚生こうせい労働省ろうどうしょう
• 児童じどう福祉ふくし法ほう - e-Gov法令ほうれい検索けんさく
• 子こどもの虹にじ情報じょうほう研修けんしゅうセンター