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王と鳥 - Wikipedia

おうとり

1980ねん公開こうかいのフランスのアニメーション映画えいが

おうとり』(おうととり、Le Roi et l'Oiseau)は1980ねん公開こうかいフランスアニメーション映画えいがである。監督かんとくポール・グリモー脚本きゃくほんジャック・プレヴェール原作げんさくは、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの「ひつじむすめ煙突えんとつ掃除そうじじん」。日本にっぽんではながく、改作かいさくまえの『やぶにらみの暴君ぼうくん』(La Bergère et le Ramoneur)としてられた。『おうとり』として改作かいさくされてからは、『王様おうさま幸運こううんとり』という邦題ほうだいもあった。

おうとり
Le Roi et l'Oiseau
監督かんとく ポール・グリモー
脚本きゃくほん ジャック・プレヴェール
原作げんさく ハンス・クリスチャン・アンデルセン
ひつじむすめ煙突えんとつ掃除そうじじん
音楽おんがく ジョゼフ・コズマ
ヴォイチェフ・キラール
上映じょうえい時間じかん 87ふん
製作せいさくこく フランスの旗 フランス
言語げんご フランス語ふらんすご
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概要がいよう

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1952ねんに『やぶにらみの暴君ぼうくん』として公開こうかいされた。名画めいがとして評価ひょうかたか映画えいが天井てんじょう桟敷さじき人々ひとびと』のスタッフとキャストの参加さんかて、たか芸術げいじゅつせい当時とうじめずらしい大人おとな鑑賞かんしょうえうるアニメとして、日本にっぽんはじ[1]世界せかいてき評価ひょうかけ、1952ねんヴェネツィア国際こくさい映画えいがさい審査しんさいん特別とくべつ大賞たいしょう受賞じゅしょうした。ただし、フランス国内こくないでは批評ひひょうてきには賛否さんぴ両論りょうろんで、興行こうぎょうもぱっとしないものであり、早々そうそうわすられた[2]

この1952ねんの『やぶにらみの暴君ぼうくん』としての公開こうかいは、監督かんとくポール・グリモー沿わないかたちで、共同きょうどう製作せいさくしゃアンドレ・サリュのによりなされたものだった。製作せいさく開始かいしから4ねんっても完成かんせいしなかったことで、資金しきん回収かいしゅうはかるためだった。

その民事みんじ裁判さいばんて、1967ねんにグリモーは作品さくひん権利けんりとネガをもどし、製作せいさく資金しきんを10ねんがかりであつめ、『やぶにらみの暴君ぼうくん』を『おうとり』として改作かいさくすることにした。大幅おおはば変更へんこう追加ついかさいに、オリジナルスタッフが高齢こうれいになっていたり死亡しぼうしていたりしたため[3]技量ぎりょうひくわかいアニメーターによる新規しんき作画さくがおこなわれた[4][5]。またピエール・ブラッスールフェルナン・ルドゥーといったフランスの名優めいゆうばれる俳優はいゆうたちによってまれたこえ音楽おんがくとミックスされた音声おんせいしかのこっておらず、これもまたあらたにべつ声優せいゆうによってえられた。音楽おんがくジョゼフ・コスマきょくのこっているものの、あらたにヴォイチェフ・キラール起用きようし、オリジナルのきょくが3きょくえることになった。

1979ねんに『おうとり』は完成かんせいした。よく1980ねん公開こうかいされ、フランス国内こくない批評ひひょうでは絶賛ぜっさんけ、興行こうぎょうてきにも成功せいこうおさめ、同年どうねんルイ・デリュックしょう受賞じゅしょうしている[6]

こうした経緯けいいから、『やぶにらみの暴君ぼうくん』はグリモーの意思いし封印ふういんされ、プリントやビデオも回収かいしゅうされた[7]正規せいきのルートでは鑑賞かんしょうできない状態じょうたいにあるが、テクニカラーによるネガをグリモーが保存ほぞんしているという[8]

アニメ史上しじょうはつ搭乗とうじょうがた巨大きょだいロボット登場とうじょうする作品さくひんわれる[9]

日本にっぽんでの評価ひょうか

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やぶにらみの暴君ぼうくん

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1953ねんはつ公開こうかい文部省もんぶしょう選定せんてい優秀ゆうしゅう映画えいが鑑賞かんしょうかい推薦すいせんけ、映画えいが雑誌ざっしキネマ旬報きねまじゅんぽう』の外国がいこく映画えいがベストテンの6入賞にゅうしょうするなどこう評価ひょうかとなった。アニメが映画えいがとして評価ひょうかされることのない時代じだいに、これはきわめて異例いれいなことだった。

とうさく鑑賞かんしょうがきっかけで、高畑たかはたいさお芝山しばやまつとむといったのち日本にっぽんのアニメかいささえる人材じんざいがアニメのみちこころざした。宮崎駿みやざきはやおとうさく感銘かんめいけた1人ひとりであり、宮崎みやざき監督かんとく作品さくひんルパンさんせい カリオストロのしろ』などへの影響えいきょうられることが指摘してきされている[10][11][12]

1956ねん2がつ26にちには、NHK総合そうごうテレビジョンにて日本語にほんご吹替ばんでの放送ほうそうおこなわれている[13]

おうとり

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1985ねん広島ひろしま国際こくさいアニメーションフェスティバル日本にっぽん国内こくないはつ上映じょうえいおこなわれたが評判ひょうばんわるく、漫画まんが手塚てづか治虫おさむ[14]、アニメ評論ひょうろんもり卓也たくや[15]おかだえみこ[16]小野おの耕世こうせい[17]渡辺わたなべやすし[18]、アニメーターのうつのみや[19]らが改作かいさくまえの「やぶにらみの暴君ぼうくん」のほうすぐれているとしている。

アンケートで世界せかいのアニメのランキングを決定けっていした書籍しょせき世界せかい日本にっぽんのアニメーションベスト150』で5はいっているが、「やぶにらみの暴君ぼうくん」としてであった。映画えいが雑誌ざっしキネマ旬報きねまじゅんぽう』でも同様どうよう企画きかく「ジャンルべつオールタイムベスト・テン アニメーション」が2004ねん8がつ下旬げじゅんごうおこなわれ、こちらでは10だったが、同様どうように「やぶにらみの暴君ぼうくん」として、品田しなだ雄吉ゆうきち、おかだえみこ、望月もちづき信夫しのぶらが投票とうひょうしている。

2006ねんとうさくスタジオジブリなどによって日本にっぽんミニシアター劇場げきじょう公開こうかいされ[20]高畑たかはたいさおほんさくかんする書籍しょせき発表はっぴょうした。

砂漠さばくなかそび孤城こじょうに、ひとりのおうんでいた。そのも、国王こくおうシャルル5+3+8=16せい。わがままで疑心暗鬼ぎしんあんきおうは、手元てもとのスイッチひとつで、さわ臣下しんか次々つぎつぎに「処分しょぶん」していった。

のぞみさえすれば、なにものでもれることが出来できるはずのおうシャルルは、ひとりのうつくしいひつじむすめ片思かたおもいをしている。

しろ最上階さいじょうかいかくされた秘密ひみつ部屋へやかべかったいちまいなかにそのむすめはいて、隣合となりあわせた額縁がくぶちなか煙突えんとつ掃除屋そうじや少年しょうねんふかあいっていた。

嫉妬しっとくるおうのちに、ふたりはなかからし、いちのふしぎなとりたすけをりてしろからの脱出だっしゅつこころみる。

結末けつまつ変更へんこう

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『やぶにらみの暴君ぼうくん』と『おうとり』は、場面ばめんのカットりなどこまかなてんふくめば、きりがないほど内容ないようちがいがある。音楽おんがくければ『やぶにらみの暴君ぼうくん』の楽曲がっきょくは、躍動やくどうかんのある迫力はくりょく音楽おんがく展開てんかいげているが、対照たいしょうてきに『おうとり』の楽曲がっきょく監督かんとくであるグリモーの作家さっかせいがよりつよ内容ないようわせてか、しずかな印象いんしょうける。セリフも「ですます調ちょう」にされている。ストーリーも大筋おおすじながれはているものの結末けつまつおおきくことなったなものになった。

  • 『やぶにらみの暴君ぼうくん』では、しろまち崩壊ほうかいして(おそらくすうヶ月かげつったころ)、残骸ざんがいにもたれるようにすわっているロボットのちかくにちいさなむらができており、ひつじいの少女しょうじょ煙突えんとつ掃除そうじ少年しょうねん動物どうぶつたちや盲目もうもくおとことう記念きねん撮影さつえいのためにむら広場ひろばあつまり、笑顔えがおなかとりがカメラのシャッターをろしたところでエンディングロールがながれた。
  • おうとり』では、しろまち崩壊ほうかいしたのち、ロボットが残骸ざんがい腰掛こしかけてかんがえるひとのようなポーズですわっており、(登場とうじょう人物じんぶつたちはっていったのか)おおくの足跡あしあと地面じめんのこっていた。わなかごから脱出だっしゅつこころみていた子鳥あとりがロボットの足元あしもとたとき、(操縦そうじゅうしゃ不明ふめいだが)突然とつぜんうごしたロボットがかごけて小鳥ことりがし、かごこわしたところでエンディングロールがながれた。

やぶにらみの暴君ぼうくん

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おうとり

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  • 監督かんとく:ポール・グリモー
  • 原作げんさく:ハンス・クリスチャン・アンデルセン「ひつじむすめ煙突えんとつ掃除そうじじん
  • 脚本きゃくほん:ジャック・プレヴェール、ポール・グリモー
  • 音楽おんがく:ジョゼフ・コズマ、ヴォイチェフ・キラール
  • 上映じょうえい時間じかん:87ふん

こえ出演しゅつえん

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やぶにらみの暴君ぼうくん

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日本語にほんご吹替

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※テレビ放送ほうそうのもの[13]

おうとり

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  • とり:ジャン・マルタン
  • おう:パスカル・マゾッティ
  • 煙突えんとつ掃除そうじ少年しょうねん:ルノー・マルクス
  • ひつじいの少女しょうじょ:アニエス・ヴィアラ
  • 警察けいさつ長官ちょうかん:レイモン・ビュッシエール

日本語にほんご吹替

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レーザーディスクはん役名やくめい表記ひょうきはその解説かいせつしょった。

  • 1986ねんポニーからビデオソフト・レーザーディスク発売はつばいされた(カラー・スタンダード・サイズ、収録しゅうろく時間じかん85ふんカ国かこく製造せいぞう発売はつばいもと株式会社かぶしきがいしゃポニー/LD:G88F0108)。このときの作品さくひんタイトルは「王様おうさま幸運こううんとり」で、日本語にほんご吹替ばん収録しゅうろくされている。2000ねんには『おうとり』としてDVDが発売はつばいされているが、収録しゅうろく言語げんごフランス語ふらんすごのみで、日本語にほんご吹替は収録しゅうろくされていない。

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 高畑たかはたいさお漫画まんが映画えいがこころざし―「やぶにらみの暴君ぼうくん」と「おうとり」』(岩波書店いわなみしょてん、2007ねん
  • 世界せかい日本にっぽんのアニメーションベスト150』(ふゅーじょんぷろだくと、2003ねん
  • おかだえみこ「おうとり」『キネマ旬報きねまじゅんぽう』2006ねん9がつ上旬じょうじゅんごうキネマ旬報社きねまじゅんぽうしゃ
  • おかだえみこ『歴史れきしをつくったアニメ・キャラクターたち ディズニー、手塚てづかからジブリ、ピクサーへ』(キネマ旬報社きねまじゅんぽうしゃ、2006ねん

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 高畑たかはた(2007)、pp.4-10
  2. ^ 高畑たかはた(2007)、pp.15、44
  3. ^ 高畑たかはた(2007)、p.147
  4. ^ おかだ(2006)、p.92
  5. ^ 高畑たかはた(2007)、p.151
  6. ^ 高畑たかはた(2007)、p.60
  7. ^ もり卓也たくや映画えいがこのはなしたっけ』ワイズ出版しゅっぱん、1998ねん、p.205
  8. ^ 高畑たかはた(2007)、pp.217-218
  9. ^ 歴史れきしをつくったアニメ・キャラクターたち』p.90。
  10. ^ 高畑たかはた(2007)、p.12
  11. ^ 大塚おおつか康生やすおもりゆうつくえ大塚おおつか康生やすおインタビュー アニメーション縦横無尽じゅうおうむじん実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ、2006ねん、p51
  12. ^ ササキバラ・ゴウ『<美少女びしょうじょ>の現代げんだいえ」とキャラクター』講談社こうだんしゃ講談社こうだんしゃ現代新書げんだいしんしょ、2004ねん、p117、p124
  13. ^ a b 番組ばんぐみひょう検索けんさく結果けっか詳細しょうさい”. NHKクロニクル. 2020ねん12月30にち閲覧えつらん
  14. ^ 『ある手塚てづか治虫おさむ 56にんえがかたるとっておきのあのふゅーじょんぷろだくと、1999ねん、p158
  15. ^ もり卓也たくや定本ていほんアニメーションのギャグ世界せかい』アスペクト、2009ねん、p.412
  16. ^ 歴史れきしをつくったアニメ・キャラクターたち』p.92。
  17. ^ 小野おの耕世こうせい世界せかいのアニメーション作家さっかたち』人文書院じんぶんしょいん、2006ねん、p.274
  18. ^ 『キネしゅんムック オールタイム・ベスト 映画えいが遺産いさん アニメーションへんキネマ旬報きねまじゅんぽう特別とくべつ編集へんしゅうキネマ旬報社きねまじゅんぽうしゃ、2010ねん、p.124
  19. ^ 「もっとアニメをよう だい17かい うつのみやのベスト20(1)」 WEBアニメスタイル 2005ねん3がつ25にち
  20. ^ 劇場げきじょうでは公開こうかいだったが、ビデオ発売はつばいすでにされていた。

外部がいぶリンク

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やぶにらみの暴君ぼうくん

おうとり