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生酛 - Wikipedia

なま(きもと)とは、日本酒にほんしゅ製法せいほう用語ようごひとつで、現存げんそんする酒造さけづくりの技法ぎほうなかでもっとも伝統でんとうてきつくかたである。たいへんな労働ろうどう必要ひつようとするため、しだいに工程こうてい省略しょうりゃくする手法しゅほう探究たんきゅうされ、明治めいじ時代じだいやまはい酛(やまはいもと)が、ついでそく醸酛(そくじょうもと)が考案こうあんされた。一時期いちじきなまづくりはほとんどおこなわれなくなったが、近年きんねん伝統でんとうさい評価ひょうかながれのなかでふたたび脚光きゃっこうびつつある。

背景はいけい特徴とくちょう

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日本酒にほんしゅは、もろみ仕込しこまえに、まず「酛」とばれるさけはは酵母こうぼ培養ばいようする。そのとき培養ばいようをしているタンクの上蓋あげぶたけたままおこなわざるをえないので、どうしても空気くうきちゅうから雑菌ざっきん野生やせい酵母こうぼ混入こんにゅうしてくる。そのため、それらを駆逐くちくする目的もくてき乳酸にゅうさんくわえられる。

このときに、あらかじめべつつくっておいた乳酸にゅうさんくわえるのでなく、もともとそのぞう自然しぜんのなかに生息せいそくしている天然てんねん乳酸菌にゅうさんきんんで、それが生成せいせいする乳酸にゅうさん雑菌ざっきん野生やせい酵母こうぼ死滅しめつしつかつさせるのが、なま酛系(きもとけい)のさけははつくかた基本きほんてき特徴とくちょうである。

さけははづくおおきくけてなま酛系はや醸系に、さらになま酛系のさけははは、なま酛とやまはい酛にけられる。

なまづくりの概要がいよう

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なま酛系のさけははづくりは、なが歳月さいげつのあいだに日本人にっぽんじん自然しぜんかい法則ほうそくたくみに利用りようして完成かんせいさせてきた、以下いかのような酵母こうぼ純粋じゅんすい培養ばいよう技術ぎじゅつである。

なま酛系のさけははなかでは、じつに多様たようきん次々つぎつぎ活動かつどうして生存せいぞん競争きょうそうひろげる。どのようなライバルのきんがタンクのなか同居どうきょしているか、また生育せいいく環境かんきょうpHはどれほどか、などによってそれぞれのきん最適さいてき生存せいぞん環境かんきょうことなるため、きんたちの勢力せいりょく序列じょれつ刻々こくこく推移すいいするのである。

はじめは硝酸しょうさん還元かんげんきん野生やせい酵母こうぼさんまく酵母こうぼ隆盛りゅうせいきわめるが、さけははづくの5にちごろをさかいにそれらは乳酸菌にゅうさんきんによって駆逐くちくされ急減きゅうげんしていく。

一口ひとくち乳酸菌にゅうさんきんといっても多様たよう種類しゅるいがあり、おおきくたまがたと稈型にけられるが、12にちごろはたまがた乳酸菌にゅうさんきんが、15にちごろには稈型乳酸菌にゅうさんきん隆盛りゅうせいのピークをむかえる。しかしそれぞれのピークは、それらもやがてみずからの生成せいせいしたさんによって死滅しめつしていく。

このころにさけはは乳酸にゅうさんをたっぷりふくんだヨーグルトのような状態じょうたいとなっており、もはや雑菌ざっきん野生やせい酵母こうぼはいめる余地よちはない。それを見極みきわめると杜氏とうじは、乳酸にゅうさんつよ清酒せいしゅ酵母こうぼ本来ほんらいぞうみついている「ぞうつき酵母こうぼ」「いえつき酵母こうぼ」)を投入とうにゅうし、じわじわと増殖ぞうしょく培養ばいようさせていくのである。

このように投入とうにゅうされた清酒せいしゅ酵母こうぼなかでも、生命せいめいりょくよわいものは途中とちゅう淘汰とうたされていく。生存せいぞん競争きょうそういた強健きょうけん酵母こうぼだけをじっくりとそだて、またそのとし気候きこうさけまい状態じょうたいなどを考慮こうりょし、最適さいてきおもわれる系統けいとうだけ選抜せんばつ育成いくせいしてもろみ醗酵はっこうもちいることになる。

せいなりしゅ特長とくちょう

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なま酛においては、きん酵母こうぼ生存せいぞん競争きょうそうなが時間じかんをかけておこなわれるぶん、のこった酵母こうぼ生命せいめいりょくつよい。そのため、吟醸ぎんじょうづく低温ていおん環境かんきょうにおいても、最後さいごまでしっかりとあじしきる。

また醗酵はっこうちゅう、あるいはその末期まっきもろみ末期まっき)の死滅しめつりつは、方法ほうほう培養ばいようされた酵母こうぼよりひくい。それゆえ死滅しめつした酵母こうぼから余分よぶんアミノ酸あみのさんすくなくなるので、結果けっかてきせいけいさけ肌理きめ(きめ)がこまかく、まったりとした吟味ぎんみし、熟成じゅくせいさせてもこしくずれないさけになる。

さけちゅう生成せいせいされるさんもじつに多様たようで、健全けんぜん醗酵はっこうによって生成せいせいされたさんはきれいな旨味うまみもととなるが、不健全ふけんぜん醗酵はっこうによって生成せいせいされたさん不快ふかい酸味さんみ苦味にがみ、エグあじ原因げんいんとなる。なまづくりが失敗しっぱいすると、もろみなかにこのようなまずいさんおおくなり、ねずみわた(ねずみわたり)とばれるくさみやつこ寸前すんぜん出来上できあがりとなることもおおい。

なま酛とやまおろし

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やまおろし(やまおろし)とは、なまづくりの工程こうてい一部いちぶで、半切はんせつおけ(はんぎりおけ)に仕込しこんださけははあらかい(あらがい)をれて作業さぎょうのことである。この作業さぎょうは、こうじ酵素こうそ作用さようふけまいデンプン糖化とうかするのをたすけ、あつしでキレのさけつく目的もくてきおこなわれる。

しかし、むかしから「かいでつぶすな、こうじかせ」とわれるように非常ひじょうにデリケートなちから加減かげんようする高度こうどわざで、しかもさむふゆ深夜しんやいちばんちゅう丹念たんねんかいつづけなければならない重労働じゅうろうどうであったので、むかしから蔵人くろうどたちに敬遠けいえんされてきた。

そのため、このやまおろし作業さぎょう省略しょうりゃくすることを前提ぜんていとするやまおろし廃止はいしやまはい酛)が、1909ねん明治めいじ42ねん)に国立こくりつ醸造じょうぞう試験しけんしょ開発かいはつされた。今日きょう、「やまはいづくり」としてられる技法ぎほう基礎きそである。

なま酛・やまはいそく醸酛の関係かんけい

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なま酛からやまおろしだけ省略しょうりゃくすれば自然しぜんやまはい酛になるのではない。

やまおろし省略しょうりゃくすれば、それに付随ふずいして工程こうていのさまざまなこまかいてんわってくる。

現在げんざい一般いっぱん流布るふしているつぎのようなざんざんのような関係かんけいは、ほとんどただしいとはいえない。

  • なま酛からやまおろしはぶけばやまはいやまはい効率こうりつすればはや醸酛じゅんべいしゅじゅんべいしゅにアルコールを添加てんかすれば三増みませしゅ
  • アルコール添加てんかをしなければじゅんべいしゅじゅんべいしゅ乳酸にゅうさん添加てんかしなければやまはいやまはいやまおろしせばなま酛。

関連かんれん項目こうもく

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