(Translated by https://www.hiragana.jp/)
終止形 (文法) - Wikipedia

終止しゅうしがた(しゅうしけい)とは、日本語にほんご用言ようげんにおける活用かつようかたちひとつ。日本語にほんご動詞どうし形容詞けいようしなどは語形ごけい変化へんかこすが、その語形ごけいを6つに分類ぶんるいしたうちのひとつで、3番目ばんめかれるかたち

辞書じしょでは見出みだとして使つかわれるなど用言ようげん基本形きほんけいとしてあつかわれている。

終止しゅうしとはぶん終止しゅうしのことであり、文末ぶんまつでいいきさい語形ごけいをもとにつくられている。東条とうじょうよしもんの『和語わごせつ略図りゃくず』(1833ねん)では截断せつだんごととされていたが、黒川くろかわ真頼まよりしおり聞』(1890ねん)において終止しゅうしごととされた。[1]

文語ぶんごでは、動詞どうし終止しゅうしがただんおととなるが、「あり」などのラぎょう変格活用へんかくかつよう動詞どうしだんおとわる。また形容詞けいようしは「し」のかたちをとり、形容動詞けいようどうしは「なり・たり」のかたちる。終止しゅうしがた接続せつぞくする助詞じょし助動詞じょどうしとして「と」「とも」「な」「べし」「めり」「らむ」「なり」などがある。

現代げんだい口語こうごにおいては、動詞どうし形容詞けいようし終止しゅうしがた連体れんたいがた合流ごうりゅうしているとされることがおおい。一方いっぽうで、寺村てらむら秀夫ひでおは「連体れんたいがたはすでに上代じょうだい文末ぶんまつもちいられて余情よじょう詠嘆えいたんあらわれいられ、それが院政いんせい時代じだいからさかんになり、やがて中世ちゅうせい末期まっきにはほぼ完全かんぜん旧来きゅうらい終止しゅうしがたし」たとし(『日本語にほんごのシンタクスと意味いみ II』、p.31)、現代げんだい口語こうごでは『終止しゅうしがた』という活用かつようがたてる必要ひつようはないとしている。

文語ぶんご 口語こうご
品詞ひんし 活用かつよう種類しゅるい れい 語形ごけい 活用かつよう種類しゅるい れい 語形ごけい
動詞どうし よんだん活用かつよう かく -u だん活用かつよう かく -u
ぎょう変格活用へんかくかつよう あり あり -i
ぎょう変格活用へんかくかつよう しぬ -u
したいちだん活用かつよう ける -eる したいちだん活用かつよう ける うける -eる
しただん活用かつよう 受く うく -u
うえいちだん活用かつよう きる -iる うえいちだん活用かつよう きる おきる -iる
うえだん活用かつよう おこり おく -u
ぎょう変格活用へんかくかつよう -u ぎょう変格活用へんかくかつよう くる -uる
ぎょう変格活用へんかくかつよう -u ぎょう変格活用へんかくかつよう する する -uる
形容詞けいようし 活用かつよう なし なし   ない ない
シク活用かつよう うつく うつくし
形容動詞けいようどうし ナリ活用かつよう しずかなり しづかなり なり   しずかだ しずかだ
タリ活用かつよう 堂々どうどうたり だうだうたり たり

言語げんごがくから終止しゅうしがた

編集へんしゅう

語形ごけい変化へんか屈折くっせつ)のあるかたりにおいて変化へんか部分ぶぶん語幹ごかんばれ、それに付加ふかされることで語形ごけい変化へんかをもたらし、文法ぶんぽうてき機能きのうにな部分ぶぶん語尾ごびぶ。形態けいたいろんにより日本語にほんご語形ごけい音素おんそレベルまで分析ぶんせきすると、動詞どうし子音しいん語幹ごかん動詞どうし母音ぼいん語幹ごかん動詞どうしけられる。子音しいん語幹ごかん動詞どうしよんだん動詞どうし変動へんどう変動へんどうのことをいい、nom-u、nom-e、nom-oo、noN-da、nom-eba…のように変化へんかしない語幹ごかん部分ぶぶん子音しいんわっている。一方いっぽう母音ぼいん語幹ごかん動詞どうし一段いちだん動詞どうしだん動詞どうしである。ただし、現代げんだい口語こうごにおいては母音ぼいん交替こうたいこらず語幹ごかん一定いっていであるが(tabe-ru、tabe-ro/jo、tabe-joo、tabe-ta、tabe-reba…)、文語ぶんごにおいては語幹ごかん母音ぼいん母音ぼいん交替こうたいこして2とおりの語形ごけいをもっている(tabu-0、tabu-ru、tabe-jo、tabe-mu、tabe-tar-i、tabu-reba…)。なおいわゆるサ変さへん動詞どうし変動へんどう不規則ふきそく変化へんかをする不規則ふきそく動詞どうしである。

このようにとき終止しゅうしがたあらわす-uや-iといった語尾ごびは、ぶん子音しいんわらせず、日本語にほんごひらき音節おんせつ構造こうぞうまも役割やくわりたしている。子音しいん語幹ごかん動詞どうしは-uを挿入そうにゅうさせているが、「あり」のみ不規則ふきそくで-iが挿入そうにゅうされている。一方いっぽう母音ぼいん語幹ごかん動詞どうしでは母音ぼいん語幹ごかんを/u/に母音ぼいん交換こうかんさせて子音しいん語幹ごかん動詞どうしとの関連かんれんせいたもっている。ただし、「る」や「る」などは語幹ごかんがki、keと1音節おんせつでしかないため、その語幹ごかん変化へんかさせないまま-ruが増加ぞうかさせられている。また形容詞けいようしにおいては-iが挿入そうにゅうされるが語幹ごかんのkがsに交換こうかんされ、またそのことによってkのまえ音節おんせつがsiの音節おんせつである場合ばあいおな音節おんせつかさなるのをけて1つに省略しょうりゃくされる。形容動詞けいようどうし場合ばあい語幹ごかん語尾ごびとのあいだに-ar-(あり)がはいっているので、子音しいん語幹ごかん動詞どうし「あり」に準拠じゅんきょして「~なり」となる。なお語尾ごびの「と」などのまえでもこの語形ごけいになるが、これは「と」が引用いんようあらわすためである。

一方いっぽう、「べし」「めり」「らむ」「らし」「なり(伝聞でんぶん)」などのまえだんおとになるのは、子音しいん語幹ごかん子音しいんはじまる語尾ごび結合けつごうするさい子音しいん連続れんぞくするのをけるために-u-のおと母音ぼいん挿入そうにゅうしたためである。たとえば、「紅葉こうようみだれてながれるめり」のような「ながれるめり」であればnagaru-mer-iとなるが、「しょくめり」であれば、kak-u-mer-iというように-u-が挿入そうにゅうされる。この場合ばあいは「あり」もぶん終止しゅうしとはことなり、ウだんおん「ある」で「あるめり(ar-u-mer-i)」のようになる。ただし、-u-が挿入そうにゅうされずにrが鼻音びおん子音しいん同化どうかし、「あんめり(am-meri)」のようになることもおおい。表記ひょうきとしては「あめり」「あなり」のように「ん」がかれないこともおおかった。

また形容詞けいようし形容動詞けいようどうしはカリ活用かつようやナリ活用かつようによって「~かるべし」「~なるめり」と活用かつようするが、これは語幹ごかん語尾ごびとのあいだに-ar-(あり)がはいったことによる。「あり」は単体たんたいでは存在そんざいあらわかたりであるが、語尾ごびとして使つかわれると指定してい措定そてい文法ぶんぽう機能きのうたしている。よって子音しいん語幹ごかん動詞どうし「あり」とおなじような活用かつようをするが、ここでも「かめり」といったようにrが後続こうぞく鼻音びおん同化どうかする現象げんしょうられる。

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう