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薬物代謝 - Wikipedia

薬物やくぶつ代謝たいしゃ(やくぶつたいしゃ)とは動植物どうしょくぶつにおける代謝たいしゃ様式ようしきのひとつ。くすり毒物どくぶつなどの生体せいたいがい物質ぶっしつ(ゼノバイオティクス (Xenobiotics)、異物いぶつともいう)を分解ぶんかいあるいは排出はいしゅつするための代謝たいしゃ反応はんのう総称そうしょうである。これらをおこな酵素こうそ総称そうしょうして薬物やくぶつ代謝たいしゃ酵素こうそという。全体ぜんたいてきには対象たいしょう物質ぶっしつ親水しんすいせいたか分解ぶんかい排出はいしゅつしやすくする傾向けいこうがある。全般ぜんぱんてきに、生体せいたいたいするがい軽減けいげんする意味いみがあるとかんがえられるので解毒げどく代謝たいしゃともいうが、結果けっかてきにはかえって毒性どくせいすこともある。またなま体外たいがい物質ぶっしつのみでなく、生体せいたいない由来ゆらい不要ふようとなった物質ぶっしつステロイドホルモン甲状腺こうじょうせんホルモン胆汁たんじゅうさんビリルビンなど)も対象たいしょうとなる。

シトクロムP450オキシダーゼ。生体せいたいがい物質ぶっしつ代謝たいしゃ重要じゅうよう酵素こうそ

薬物やくぶつ代謝たいしゃというとおり、とく医薬品いやくひん代謝たいしゃ重要じゅうようであり、くすりのききめ副作用ふくさよう個人こじん複数ふくすうくすりあいだ相互そうご作用さようなどにおおきくかかわる。また薬物やくぶつ代謝たいしゃ関与かんよする酵素こうそには薬物やくぶつなどの投与とうよにより発現はつげん誘導ゆうどうされるものがおおく、生体せいたい有害ゆうがい物質ぶっしつたいする防御ぼうぎょ手段しゅだんとして重要じゅうようである。薬物やくぶつ代謝たいしゃ関与かんよする代謝たいしゃ経路けいろは、環境かんきょう科学かがくにおいて重要じゅうようられている。ある汚染おせん物質ぶっしつ環境かんきょうにおいてバイオレメディエーションにより分解ぶんかいされるか、残留ざんりゅうせい有機ゆうき汚染おせん物質ぶっしつとなるかは、微生物びせいぶつ異物いぶつ代謝たいしゃにより決定けっていされるからである。異物いぶつ代謝たいしゃする酵素こうそぐんとくグルタチオン-S-トランスフェラーゼるいは、殺虫さっちゅうざい除草じょそうざいへのたいせいあたえるので、農業のうぎょう分野ぶんや重要じゅうようである。

薬物やくぶつ代謝たいしゃだい1そうからだい3そう分類ぶんるいされる。だい1そうでは、シトクロムP450などの酵素こうそが、生体せいたいがい物質ぶっしつ反応はんのうせい官能かんのうもと極性きょくせいもと導入どうにゅうする。だい2そうでは、変換へんかんされた化合かごうぶつが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼのような転移てんい酵素こうそによって触媒しょくばいされ、極性きょくせい化合かごうぶつ結合けつごうする。だい3そうでは、極性きょくせい化合かごうぶつとの結合けつごうたいさら変換へんかんけ、排出はいしゅつトランスポーターにより認識にんしきされて細胞さいぼうからされる。

透過とうか障壁しょうへき解毒げどく

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生体せいたい生体せいたいがい物質ぶっしつからけるストレスのおも特徴とくちょうは、生体せいたいがさらされる化合かごうぶつ種類しゅるい予測よそく不能ふのうかつ長期ちょうきてきには多岐たきにわたるということである[1]生体せいたいがい物質ぶっしつ解毒げどくシステムが直面ちょくめんしている最大さいだい問題もんだいは、正常せいじょう代謝たいしゃかかわる化学かがく物質ぶっしつ複雑ふくざつ混合こんごうぶつから、ほとんど無制限むせいげんともえる種類しゅるい生体せいたいがい化合かごうぶつ除去じょきょしなければならないことである。この問題もんだいたいして、生物せいぶつ物理ぶつりてき障壁しょうへき特異とくいせいひく酵素こうそシステムの見事みごとわせを進化しんかさせた。 すべての生命せいめいたいは、内部ないぶ環境かんきょうへの物質ぶっしつ移動いどう制御せいぎょするための疎水そすいせい浸透しんとう障壁しょうへきとして細胞さいぼうまくっている。極性きょくせい化合かごうぶつ細胞さいぼうまくとおけて拡散かくさんすることはできず、特異とくいてき基質きしつ選択せんたくする輸送ゆそうタンパク質たんぱくしつ仲介ちゅうかいによって、有用ゆうよう分子ぶんしだけが混合こんごうぶつから細胞さいぼうないまれる。つまりこの選択せんたくてきみのために、ほとんどの親水しんすいせい分子ぶんしは、輸送ゆそうタンパク質たんぱくしつ認識にんしきされず細胞さいぼうないれない[2]一方いっぽう、これらの障壁しょうへき通過つうかする疎水そすいせい化合かごうぶつ細胞さいぼうないへの拡散かくさん制御せいぎょできないので、生命せいめいたいは、細胞さいぼうまくによる障壁しょうへきではあぶら溶性ようせい生体せいたいがい物質ぶっしつ排除はいじょできない。 しかし、浸透しんとう障壁しょうへきがあるので、生命せいめいたいまく透過とうかせい生体せいたいがい物質ぶっしつ共通きょうつう疎水そすいせい利用りようした異物いぶつ代謝たいしゃ機構きこう発達はったつさせることが可能かのうである。生命せいめいたいは、ほとんどあらゆる極性きょくせい化合かごうぶつ代謝たいしゃできるくらい、広範こうはん基質きしつ特異とくいせい獲得かくとくすることで、選択せんたくせい問題もんだい解決かいけつしている[1]有益ゆうえき代謝たいしゃ産物さんぶつ極性きょくせいで、一般いっぱんに1つ以上いじょう荷電かでんした官能かんのうもとつので排除はいじょされる。 正常せいじょう代謝たいしゃからしょうじた反応はんのうせいふく生成せいせいぶつは、正常せいじょう細胞さいぼう構造こうぞうたい誘導体ゆうどうたいであり、通常つうじょうその性質せいしついで極性きょくせいであるため、上述じょうじゅつのシステムによって解毒げどくされない。しかし、そのような化合かごうぶつ種類しゅるいすくないので、特定とくてい酵素こうそにより認識にんしきされ排除はいじょされる。反応はんのうせいのメチルグリオキサールを除去じょきょするグリオキサラーゼシステム[3]活性かっせい酸素さんそ化学かがくしゅ除去じょきょする様々さまざまこう酸化さんかシステム[4]がこのれいとしてげられる。

解毒げどく段階だんかい

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あぶら溶性ようせい生体せいたいがい物質ぶっしつ代謝たいしゃだい1そうだい2そう

生体せいたいがい物質ぶっしつ代謝たいしゃは、変性へんせい抱合ほうごう排出はいしゅつの3つのそうけられる。これらの反応はんのう細胞さいぼうない協奏きょうそうてきおこなわれ、生体せいたいがい物質ぶっしつ解毒げどく排除はいじょされる。

だい1そう変性へんせい

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だい1そうにおいて、様々さまざま酵素こうそはたらき、基質きしつ反応はんのうせいがあり極性きょくせい官能かんのうもと導入どうにゅうする。もっと一般いっぱんてき変性へんせいの1つは、シトクロムP450関与かんよするオキシダーゼ反応はんのうけい触媒しょくばいする水酸化すいさんかである。これらの酵素こうそふく合体がったいはたらきで、活性かっせい炭素たんそ酸素さんそ原子げんし付加ふかし、水酸基すいさんき導入どうにゅうされる、もしくはO-、N-、またはS-だつアルキルこる[5]。P-450オキシダーゼの反応はんのう下図したずしめされるように、シトクロームと結合けつごうした酸素さんそ還元かんげんこう反応はんのうせいオキソフェリルしゅ発生はっせい進行しんこうする[6]

 

だい1そう反応はんのう合成ごうせい反応はんのうともばれる)には、複数ふくすうのオキシダーゼが関与かんよする酸化さんか還元かんげん加水かすい分解ぶんかいたまきひらきたまき酸素さんそ原子げんし付加ふか水酸基すいさんきだつはなれふくまれ、おも肝臓かんぞうおこなわれる。これらの典型てんけいてき酸化さんかてき反応はんのうにはシトクロムP450モノオキシダーゼ(CYP)、NADPH、と酸素さんそ関与かんよしている。フェノチアジンるいアセトアミノフェンステロイドるいなどの医薬品いやくひんはこの方法ほうほう代謝たいしゃされる。だい1そう反応はんのうによる代謝たいしゃぶつ極性きょくせい十分じゅうぶんたかければ、すぐに排出はいしゅつされるが、おおくの代謝たいしゃぶつ即座そくざ除去じょきょされずに、つづ内因ないいんせい物質ぶっしつとの結合けつごう反応はんのうにより、こう極性きょくせいふく合体がったい形成けいせいしたのち排出はいしゅつされる。だい1そう酸化さんか反応はんのうではC-H結合けつごうのC-OH結合けつごうへの変換へんかん共通きょうつうしてこる。この反応はんのうにより、薬理やくりてき活性かっせい化合かごうぶつ(プロドラッグ)が薬理やくり活性かっせいしめ化合かごうぶつ変化へんかする場合ばあいがある。一方いっぽうで、無毒むどく分子ぶんし有毒ゆうどく分子ぶんし変換へんかんされることもある。での単純たんじゅん加水かすい分解ぶんかいは、通常つうじょう無害むがいであるが例外れいがいはある。たとえば、だい1そう代謝たいしゃでは、アセトニトリルはグリコニトリル (HOCH2CN)に変換へんかんされるが、即座そくざ有毒ゆうどくな2種類しゅるい化合かごうぶつホルムアルデヒドシアン化水素しあんかすいそ解離かいりする。

医薬品いやくひん候補こうほ化合かごうぶつだい1そう代謝たいしゃは、酵素こうそではない触媒しょくばいもちいて、実験じっけんしつ確認かくにんすることができる[7]。この生体せいたい反応はんのう模倣もほう反応はんのうでは、しばしばだい1そう代謝たいしゃぶつふく生成せいせいぶつあたえる。れいとして、胃腸いちょうやくトリメブチンのおも代謝たいしゃぶつ、デスメチルトリメブチン(ノルトリメブチン)、は市販しはんやく試験しけん管内かんない酸化さんかすることで効率こうりつてきられる。N-メチルもと水酸化すいさんかは、ホルムアルデヒド分子ぶんしだつはなれをもたらし、一方いっぽうO-メチルもと酸化さんかはそれほどこらない。

還元かんげん

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シトクロムP450レダクターゼ(別名べつめい、NADPH:ferrihemoprotein oxidoreductase、NADPH-ヘムタンパク質たんぱくしつレダクターゼ、NADPH:P450 oxidoreductase、P450 reductase、POR、CPR、CYPOR)はまく結合けつごうがた酵素こうそで、FADおよび FMN含有がんゆう酵素こうそNADPH-シトクロムP450レダクターゼからシトクロムP450 へ電子でんし伝達でんたつする。POR/P450システムにおける電子でんしながれは一般いっぱん以下いかとおり。

 

還元かんげん反応はんのうあいだ化学かがく物質ぶっしつ無益むえき回路かいろはいって電子でんしてフリーラジカルとなり、即座そくざ電子でんし酸素さんそわたしす(電子でんしった酸素さんそスーパーオキシドアニオンになる)。

加水かすい分解ぶんかい

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だい2そう抱合ほうごう

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そのだい2そう反応はんのうでは、活性かっせいされた生体せいたいがい物質ぶっしつ代謝たいしゃぶつは、グルタチオン(GSH)、グリシンまたはグルクロンさんのような電荷でんか化学かがくしゅ抱合ほうごうされる。薬物やくぶつ抱合ほうごう反応はんのうこる部位ぶいには カルボキシもと (-COOH)、ヒドロキシもと (-OH)、アミノもと (-NH2)、チオール (-SH)などがある。おおくの場合ばあい活性かっせい代謝たいしゃぶつ生成せいせいされるだい1そうはんおうとはことなり、抱合ほうごう反応はんのう生成せいせいぶつは、分子ぶんしりょう増加ぞうかし、基質きしつより活性かっせいになる傾向けいこうがある。GSHのようなおおきなかげイオンの付加ふかにより、反応はんのうせいもとめ電子でんしざい解毒げどくされ、より極性きょくせいたか細胞さいぼうまく通過つうかして拡散かくさんすることができない代謝たいしゃぶつとなり、積極せっきょくてき排出はいしゅつへと輸送ゆそうされる。

これらの反応はんのうは、ひろ特異とくいせい一群いちぐん転移てんい酵素こうそによって触媒しょくばいされる。これらの転移てんい酵素こうそわせによって、もとめかくせいもしくはもとめ電子でんしせい官能かんのうもとつほとんどの疎水そすいせい化合かごうぶつ代謝たいしゃすることができる[1] 。そのなかでもグルタチオン-S-トランスフェラーゼるいは、もっと重要じゅうよう酵素こうそぐんである。

機構きこう 酵素こうそ[8] 因子いんし[8] 場所ばしょ[8]
メチル メチルトランスフェラーゼ S-アデノシルメチオニン 肝臓かんぞう腎臓じんぞうはい中枢ちゅうすう神経しんけいけい
硫酸りゅうさん抱合ほうごう スルホトランスフェラーゼ 3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸りゅうさん 肝臓かんぞう腎臓じんぞうちょう
アセチル
  • N-アセチルトランスフェラーゼ
  • 胆汁たんじゅうさんCoA:アミノ酸あみのさんN-アシル転移てんい酵素こうそ(BAA)
アセチルCoA 肝臓かんぞうはい脾臓ひぞう粘膜ねんまく赤血球せっけっきゅう、リンパだま
グルクロンさん抱合ほうごう UDP-グルクロンさん転移てんい酵素こうそ UDP-グルクロンさん 肝臓かんぞう腎臓じんぞうちょうはい皮膚ひふ前立腺ぜんりつせんのう
グルタチオン抱合ほうごう グルタチオン-S-トランスフェラーゼ グルタチオン 肝臓かんぞう腎臓じんぞう
グリシン抱合ほうごう N-アセチルトランスフェラーゼ アセチルCoA 肝臓かんぞう腎臓じんぞう

だい3そう追加ついか変性へんせいおよ排出はいしゅつ

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だい2そう抱合ほうごうされた生体せいたいがい物質ぶっしつはさらに代謝たいしゃける場合ばあいがある。れいとしてグルタチオン抱合ほうごうたいがシステイン抱合ほうごうたいからメルカプツールさん英語えいごばんへと変換へんかんされる反応はんのうげられる[9] 。グルタチオン分子ぶんしグルタミン酸ぐるたみんさんざんもとグリシンざんもとγがんま-グルタミルトランスフェラーゼとジペプチダーゼによってのぞかれ、最終さいしゅう段階だんかいシステインざんもとアセチルされる。抱合ほうごうたいとその代謝たいしゃぶつ代謝たいしゃ過程かていだい3そうにおいて、Pとうタンパク質たんぱくしつファミリーの様々さまざままく輸送ゆそうたいたいして、かげイオンせい置換ちかんもと親和しんわせい標識ひょうしきとしてはたらき、細胞さいぼうから排出はいしゅつされる[10] 。これらのタンパク質たんぱくしつABC輸送ゆそうたいファミリーであり、非常ひじょう広範囲こうはんい疎水そすいせいかげイオンのATP依存いぞんせい輸送ゆそう触媒しょくばい[11]だい2そう生成せいせいぶつ細胞さいぼうがい移動いどうしてさらなる代謝たいしゃ排出はいしゅつシステムにせる役割やくわりたす[12]

内因ないいんせい毒素どくそ

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上述じょうじゅつのシステムでは、酸化さんかぶつ反応はんのうせいアルデヒドるいのような、内因ないいんせい反応はんのうせい代謝たいしゃぶつ解毒げどくできない場合ばあいがしばしばある。これはこれらの化学かがくしゅ正常せいじょう細胞さいぼう構成こうせいぶつ誘導体ゆうどうたいであり、通常つうじょうそのたか極性きょくせいいでいるためである。しかし、そのような化合かごうぶつ種類しゅるいすくないので、特定とくてい酵素こうそにより認識にんしきされ排除はいじょされる。したがって、有害ゆうがい分子ぶんし有用ゆうよう代謝たいしゃぶつ類似るいじしているため、それぞれの内因ないいんせい毒素どくそグループを代謝たいしゃするためにことなる解毒げどく酵素こうそ必要ひつようとされる。反応はんのうせいのメチルグリオキサールを除去じょきょするグリオキサラーゼシステムと活性かっせい酸素さんそ化学かがくしゅ除去じょきょする様々さまざまこう酸化さんかシステムが、この特異とくいてき解毒げどくシステムのれいとしてげられる。

代謝たいしゃ場所ばしょ

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すべての生物せいぶつ組織そしきがある程度ていど薬物やくぶつ代謝たいしゃする能力のうりょくそなえているが、肝臓かんぞう細胞さいぼうすべりめんしょう胞体量的りょうてき意味いみ薬物やくぶつ代謝たいしゃ主要しゅよう器官きかんである。肝臓かんぞうは、おおきな器官きかんであること、また消化しょうかかんから吸収きゅうしゅうされた化学かがく物質ぶっしつ最初さいしょ通過つうかする器官きかんであること、そして器官きかん比較ひかくして非常ひじょうこう濃度のうどおおくの薬物やくぶつ代謝たいしゃ酵素こうそ存在そんざいしていることから、薬物やくぶつ代謝たいしゃへの肝臓かんぞう寄与きよおおきい。ある薬物やくぶつ消化しょうかかんから吸収きゅうしゅうされ、もんみゃくつうじてかん循環じゅんかんへとはいると、薬物やくぶつ代謝たいしゃ作用さようけ、いわゆる初回しょかい通過つうか効果こうかしめす。その薬物やくぶつ代謝たいしゃ場所ばしょとして、消化しょうかかんはい肝臓かんぞう皮膚ひふ上皮じょうひ細胞さいぼうがある。通常つうじょうこれらの場所ばしょ局所きょくしょてき毒性どくせい反応はんのう対応たいおうする。

薬物やくぶつ代謝たいしゃ影響えいきょうする要因よういん

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ほとんどのあぶら溶性ようせい薬物やくぶつ薬学やくがくてき作用さよう持続じぞく時間じかん強度きょうどは、その薬物やくぶつ活性かっせい生成せいせいぶつ代謝たいしゃされる速度そくどによって決定けっていされる。その意味いみではシトクロムP450システムがもっと重要じゅうよう経路けいろであるといえる。一般いっぱんに、なんらかの要因よういん薬学やくがくてき活性かっせい化合かごうぶつ代謝たいしゃ速度そくど増加ぞうかすると、薬物やくぶつ作用さよう持続じぞく時間じかん強度きょうど減少げんしょうする(たとえば酵素こうそ誘導ゆうどう)。またぎゃく現象げんしょうこる(たとえば酵素こうそ阻害そがい)。しかし、プロドラッグ薬物やくぶつ変換へんかんされる酵素こうそ反応はんのうにおいては、反応はんのうつかさど酵素こうそ誘導ゆうどうによってプロドラッグの変換へんかん加速かそくされ、薬物やくぶつ活性かっせいレベルが上昇じょうしょうする。一方いっぽう潜在せんざいてき毒性どくせいしめ可能かのうせいがある。様々さまざまな’’生理学せいりがくてき’’および’’病理びょうり学的がくてき’’要素ようそ薬物やくぶつ代謝たいしゃ影響えいきょうする。生理学せいりがくてき要素ようそには、年齢ねんれい個人こじん(たとえば、ゲノム薬理やくりがく)、ちょうきも循環じゅんかん栄養えいようちょうない細菌さいきん性差せいさなどがふくまれる。一般いっぱん薬物やくぶつ代謝たいしゃは、ヒト動物どうぶつにおいて、胎児たいじ新生児しんせいじ高齢こうれいしゃ成人せいじんくらべておそい。遺伝いでんてき多様たようせいかた)は、薬物やくぶつ効果こうかにある程度ていどばらつきがられる原因げんいんとして重要じゅうようである。だい2そうのアセチル抱合ほうごう関与かんよする、N-アセチルもと転移てんい酵素こうそ(またはN-アセチルトランスフェラーゼ)のれいでは、遺伝いでんてき要因よういんによりヒトは、アセチルおそ体質たいしつはや体質たいしつ集団しゅうだんかれる。集団しゅうだん比率ひりつ人種じんしゅによってことなる。

代謝たいしゃおそ体質たいしつものは、用量ようりょう依存いぞんせい毒性どくせいたいしてより影響えいきょうけやすいので、遺伝いでんてき多様たようせいは、ときとしておもあつ結果けっかをもたらす。シトクロムP450酵素こうそぐんかんしても個人こじん人種じんしゅあいだがあり、1から30パーセントのひと欠損けっそんられる。’’病理びょうりがくてき要因よういん’’も肝臓かんぞう腎臓じんぞう心臓しんぞうでの薬物やくぶつ代謝たいしゃ影響えいきょうしうる。コンピュータじょうでのモデルやシミュレーションをもちいて、ヒトへの臨床りんしょう試験しけんおこなまえに、仮想かそう患者かんじゃ集団しゅうだんにおける薬物やくぶつ代謝たいしゃ反応はんのう予見よけんできる[13]。この方法ほうほうにより、薬害やくがい反応はんのうにさらされる危険きけんせいたか個人こじん特定とくていすることが可能かのうである。

ヒトが摂取せっしゅした物質ぶっしつ体内たいないでどのように変化へんかしてくかについての研究けんきゅうは、化学かがくしゃが、ベンズアルデヒドのような有機ゆうき化合かごうぶつ体内たいない酸化さんかされ、アミノ酸あみのさん抱合ほうごうされることを発見はっけんした19世紀せいき中頃なかごろはじまった[14] 。19世紀せいき後半こうはんには、メチルアセチル硫酸りゅうさん抱合ほうごうなどの基礎きそてき解毒げどく反応はんのう発見はっけんされた。20世紀せいきはじめになると、研究けんきゅうは、代謝たいしゃぶつ生成せいせいかかわる酵素こうそ反応はんのう経路けいろ調査ちょうさ移行いこうした。この分野ぶんやは、1947ねんにリチャード・T・ウィリアムズが「解毒げどくメカニズム」を出版しゅっぱんしたことをに、独立どくりつした研究けんきゅう分野ぶんやとして定義ていぎされるようになった[15]。この近代きんだいてき生化学せいかがくてき研究けんきゅうにより、1961ねんグルタチオン-S-トランスフェラーゼ同定どうていされ[16]、1962ねんにはシトクロムP450ぐん発見はっけんされた[17]。さらに1963ねんにはシトクロムP450が生体せいたいがい物質ぶっしつ代謝たいしゃにおいて中心ちゅうしんてき役割やくわりたしていることが見出みいだされた[18][19]

関連かんれん項目こうもく

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参考さんこう文献ぶんけん

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