訪問ほうもん看護かんご

訪問ほうもん看護かんご（ほうもんかんご、英えい: Health Visiting, Visiting Nursing）とは看護かんご師し（准じゅん看護かんご師しを含ふくむ）などが療養りょうようを必要ひつようとする者ものの自宅じたくや老人ろうじんホームなどの施設しせつを訪問ほうもんすること。またはその訪問ほうもん時じに行おこなわれるサービスのこと。在宅ざいたく医療いりょうの一ひとつ。

定義ていぎ

介護かいご保険ほけん法ほう第だい8条じょう4項こう^[1]において訪問ほうもん看護かんごは以下いかに定義ていぎされる。

居宅きょたく要よう介護かいご者しゃ（主治しゅじの医師いしがその治療ちりょうの必要ひつようの程度ていどにつき厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいで定さだめる基準きじゅんに適合てきごうしていると認みとめたものに限かぎる。）について、その者ものの居宅きょたくにおいて看護かんご師しその他た厚生こうせい労働ろうどう省令しょうれいで定さだめる者ものにより行おこなわれる療養りょうよう上じょうの世話せわ又または必要ひつような診療しんりょうの補助ほじょ

また、指定してい居宅きょたくサービス等とうの事業じぎょうの人員じんいん、設備せつび及および運営うんえいに関かんする基準きじゅん（以下いか、居宅きょたく運営うんえい基準きじゅん）第だい59条じょう^[2]において、

指定してい居宅きょたくサービスに該当がいとうする訪問ほうもん看護かんご（以下いか「指定してい訪問ほうもん看護かんご」という。）の事業じぎょうは、要よう介護かいご状態じょうたいとなった場合ばあいにおいても、その利用りよう者しゃが可能かのうな限かぎりその居宅きょたくにおいて、その有ゆうする能力のうりょくに応おうじ自立じりつした日常にちじょう生活せいかつを営いとなむことができるよう、その療養りょうよう生活せいかつを支援しえんし、心身しんしんの機能きのうの維持いじ回復かいふく及および生活せいかつ機能きのうの維持いじ又または向上こうじょうを目指めざすものでなければならない。

と定義ていぎされる。

人員じんいん: 病院びょういん又または診療しんりょう所しょ以外いがいの指定してい訪問ほうもん看護かんご事業じぎょう所しょで保健ほけん師し、看護かんご師し又または准じゅん看護かんご師しは常勤じょうきん換算かんさん方法ほうほうで、2.5人にん以上いじょうが必要ひつようであり、理学りがく療法りょうほう士し、作業さぎょう療法りょうほう士し又または言語げんご聴覚ちょうかく士しは指定してい訪問ほうもん看護かんごステーションの実情じつじょうに応おうじた適当てきとう数すうでよい（居宅きょたく運営うんえい基準きじゅん第だい60条じょう^[3]）。
管理かんり者しゃ: 指定してい訪問ほうもん看護かんご事業じぎょう者しゃは、指定してい訪問ほうもん看護かんごステーションごとに専もっぱらその職務しょくむに従事じゅうじする常勤じょうきんの管理かんり者しゃを置おかなければならない。ただし、指定してい訪問ほうもん看護かんごステーションの管理かんり上じょう支障ししょうがない場合ばあいは、当該とうがい指定してい訪問ほうもん看護かんごステーションの他ほかの職務しょくむに従事じゅうじし、又または同どう一いち敷地しきち内ないにある他ほかの事業じぎょう所しょ、施設しせつ等とうの職務しょくむに従事じゅうじすることができる、そして管理かんり者しゃは保健ほけん師し又または看護かんご師しでなければならない。ただし、やむを得えない理由りゆうがある場合ばあいは、この限かぎりでない（居宅きょたく運営うんえい基準きじゅん第だい61条じょう^[4]）。
運営うんえい: 指定してい訪問ほうもん看護かんご事業じぎょう者しゃは、利用りよう申込もうしこみ者しゃの病状びょうじょう、当該とうがい指定してい訪問ほうもん看護かんご事業じぎょう所しょの通常つうじょうの事業じぎょうの実施じっし地域ちいき等とうを勘案かんあんし、自みずから適切てきせつな指定してい訪問ほうもん看護かんごを提供ていきょうすることが困難こんなんであると認みとめた場合ばあいは、主治しゅじの医師いし及および居宅きょたく介護かいご支援しえん事業じぎょう者しゃへの連絡れんらくを行おこない、適当てきとうな他ほかの指定してい訪問ほうもん看護かんご事業じぎょう者しゃ等とうを紹介しょうかいする等ひとしの必要ひつような措置そちを速すみやかに講こうじなければならない（居宅きょたく運営うんえい基準きじゅん第だい63条じょう^[5]）。; 指定してい訪問ほうもん看護かんご事業じぎょう者しゃは、指定してい訪問ほうもん看護かんごを提供ていきょうするに当あたっては、居宅きょたく介護かいご支援しえん事業じぎょう者しゃその他た保健ほけん医療いりょうサービス又または福祉ふくしサービスを提供ていきょうする者ものとの密接みっせつな連携れんけいに努つとめなければならない、また指定してい訪問ほうもん看護かんごの提供ていきょうの終了しゅうりょうに際さいしては、利用りよう者しゃ又またはその家族かぞくに対たいして適切てきせつな指導しどうを行おこなうとともに、主治しゅじの医師いし及および居宅きょたく介護かいご支援しえん事業じぎょう者しゃに対たいする情報じょうほうの提供ていきょう並ならびに保健ほけん医療いりょうサービス又または福祉ふくしサービスを提供ていきょうする者ものとの密接みっせつな連携れんけいに努つとめなければならない。（居宅きょたく運営うんえい基準きじゅん第だい64条じょう^[6]）。; 指定してい訪問ほうもん看護かんご事業じぎょう者しゃは、指定してい訪問ほうもん看護かんごの提供ていきょうの開始かいしに際さいし、主治しゅじの医師いしによる指示しじを文書ぶんしょで受うけなければならない、また主治しゅじの医師いしに訪問ほうもん看護かんご計画けいかく書しょ及および訪問ほうもん看護かんご報告ほうこく書しょを提出ていしゅつし、指定してい訪問ほうもん看護かんごの提供ていきょうに当あたって主治しゅじの医師いしとの密接みっせつな連携れんけいを図はからなければならない（居宅きょたく運営うんえい基準きじゅん第だい69条じょう^[7]）。この訪問ほうもん看護かんご計画けいかく書しょは利用りよう者しゃの希望きぼう、主治しゅじの医師いしの指示しじ及および心身しんしんの状況じょうきょう等とうを踏ふまえて、療養りょうよう上じょうの目標もくひょう、当該とうがい目標もくひょうを達成たっせいするための具体ぐたい的てきなサービスの内容ないよう等とうを記載きさいしたものであり、既すでに居宅きょたくサービス計画けいかく等とうが作成さくせいされている場合ばあいは、当該とうがい計画けいかくの内容ないように沿そって、作成さくせいに当あたっては、その主要しゅような事項じこうについて利用りよう者しゃ又またはその家族かぞくに対たいして説明せつめいし、利用りよう者しゃの同意どういを得えて、作成さくせいした際さいには、当該とうがい訪問ほうもん看護かんご計画けいかく書しょを利用りよう者しゃに交付こうふしなければならない（居宅きょたく運営うんえい基準きじゅん第だい70条じょう^[8]）。; 指定してい訪問ほうもん看護かんご事業じぎょう者しゃは、看護かんご師し等とうにその同居どうきょの家族かぞくである利用りよう者しゃに対たいする指定してい訪問ほうもん看護かんごの提供ていきょうをさせてはならない（居宅きょたく運営うんえい基準きじゅん第だい71条じょう^[9]）。; 指定してい訪問ほうもん看護かんご事業じぎょう者しゃは、利用りよう者しゃに対たいする指定してい訪問ほうもん看護かんごの提供ていきょうに関かんする、主治しゅじの医師いしによる指示しじの文書ぶんしょ、訪問ほうもん看護かんご計画けいかく書しょ、訪問ほうもん看護かんご報告ほうこく書しょなどの記録きろくを整備せいびし、その完結かんけつの日ひから二に年間ねんかん保存ほぞんしなければならない（居宅きょたく運営うんえい基準きじゅん第だい71条じょう^[10]）。

仕事しごと内容ないよう

訪問ほうもん看護かんごにおいて提供ていきょうされる主おもなサービスとしては、以下いかのようなものがある。

療養りょうよう上じょうの世話せわ - 身体しんたいの清きよし拭ぬぐえ、洗髪せんぱつ、入浴にゅうよく介助かいじょ、食事しょくじや排泄はいせつなどの介助かいじょ・指導しどう、褥しとね瘡かさ予防よぼうの指導しどう等とう
医師いしの指示しじによる医療いりょう処置しょち
病状びょうじょうの観察かんさつ - 病気びょうきや障害しょうがいの状態じょうたい、血圧けつあつ・体温たいおん・脈拍みゃくはくなどのチェック
医療いりょう機器ききの管理かんり - 在宅ざいたく酸素さんそ、人工じんこう呼吸こきゅう器きなどの管理かんり
ターミナルケア - 在宅ざいたく看取みとり、エンゼルケア、グリーフケア
在宅ざいたくでのリハビリテーション - 拘かかわ縮ちぢみ予防よぼうや機能きのうの回復かいふく、嚥下えんか機能きのう訓練くんれん等とう
家族かぞく等とうへの介護かいご支援しえん・相談そうだん - 介助かいじょ方法ほうほうの指導しどう、相談そうだん対応たいおう、精神せいしん的てき支援しえん
介護かいご予防よぼう
意思いし決定けってい支援しえん
在宅ざいたく支援しえんチーム内ないの調整ちょうせい - 医師いし、介護かいご職しょく、行政ぎょうせい等とう他た職種しょくしゅとの連絡れんらく調整ちょうせい

特記とっきすべき病院びょういんと在宅ざいたくにおける看護かんごの違ちがいとしては、

訪問ほうもん時じにトラブルが発生はっせいしても相談そうだんできる人ひとが近ちかくにいないこと
訪問ほうもん時間じかんが限定げんていされること
看護かんご職員しょくいんなどの人的じんてき資源しげん（マンパワー）が乏とぼしいこと
治療ちりょう機器きき、薬剤やくざいや看護かんご用品ようひんといった物的ぶってき資源しげんが乏とぼしいこと

などが特徴とくちょうとしてあげられ、訪問ほうもん看護かんごに携たずさわる者ものには医学いがくの総合そうごう的てきな知識ちしき、主治医しゅじい、介護かいご支援しえん専門せんもん員いん（ケアマネージャー）などの他た職種しょくしゅとの調整ちょうせい能力のうりょく、患者かんじゃ家族かぞくとのコミュニケーション能力のうりょく、入浴にゅうよく介助かいじょやリハビリテーションなどの看護かんご技術ぎじゅつと転倒てんとうや疾患しっかん予防よぼうなどの病気びょうき予測よそく力りょくや指導しどう力りょく、緊急きんきゅう時じの現場げんばでの判断はんだん力りょくなどより高たかい専門せんもん性せいが求もとめられる。

歴史れきし

訪問ほうもん看護かんごは1900年ねん前後ぜんごに始はじまった派出はしゅつ看護かんご（はしゅつかんご）がもとであるといわれている。派出はしゅつ看護かんごとは、訓練くんれんを受うけた看護かんご婦ふが患家かんかと契約けいやくを結むすんで病院びょういんや患者かんじゃの自宅じたくにおいて看護かんごを提供ていきょうすることであった。1884年ねんに有志ゆうし共立きょうりつ東京とうきょう病院びょういん(現在げんざいの東京慈恵会医科大学とうきょうじけいかいいかだいがく)が上流じょうりゅう階級かいきゅう家庭かていを対象たいしょうに始はじめたとされる。その後ご1891年ねんに鈴木すずき雅みやびが慈善じぜん看護かんご婦ふ会かい(後ごの東京とうきょう看護かんご婦ふ会かい)を創設そうせつ、困窮こんきゅう者しゃへ無料むりょうで派出はしゅつ看護かんごを行おこなった。1894年ねんの日にち清しん戦争せんそう後ご、戦争せんそうにより急性きゅうせい伝染でんせん病びょうが蔓延まんえんしたことや、戦時せんじの活動かつどうにより看護かんご婦ふの存在そんざいが世間せけんに認知にんちされたことにより、派出はしゅつ看護かんご婦ふの需要じゅようが高たかまった。高度こうど成長せいちょう期きを迎むかえると、平均へいきん寿命じゅみょうの延長えんちょう、核かく家族かぞく化かの進行しんこう、それらに伴ともなう一人暮ひとりぐらしの高齢こうれい者しゃの増加ぞうか、寝ねたきり高齢こうれい者しゃの増加ぞうかなどが社会しゃかい問題もんだいとなった。それを受うけて在宅ざいたく患者かんじゃへの継続けいぞく看護かんごの一環いっかんとして、1970年ねんごろから病院びょういん・診療しんりょう所しょ、自治体じちたいからの訪問ほうもん看護かんごが行おこなわれるようになった。^{[要よう出典しゅってん]}

1888年ねん11月に、鈴木すずき雅子まさこが、東京とうきょう本郷ほんごうで最初さいしょの派出はしゅつ看護かんご婦ふ会かいを開設かいせつした^[11]。
1982年ねん老人ろうじん保健ほけん法ほう成立せいりつ。退院たいいん患者かんじゃへの継続けいぞく看護かんご・指導しどう料りょうが適用てきようされるようになった。
1990年ねん社会しゃかい福祉ふくし8法ほう改正かいせい。在宅ざいたく福祉ふくしサービスの積極せっきょく的てき推進すいしん、社会しゃかい福祉ふくし事業じぎょう法ほう改正かいせいによる社会しゃかい福祉ふくし事業じぎょうへの追加ついか、在宅ざいたく福祉ふくしサービスを施設しせつ福祉ふくしサービスの市町村しちょうそんへの一元化いちげんか、市町村しちょうそん及および都道府県とどうふけん老人ろうじん保健ほけん福祉ふくし計画けいかくの策定さくていの義務ぎむ化かがなされた。
1991年ねん老人ろうじん保健ほけん法ほう改正かいせい。老人ろうじん訪問ほうもん看護かんご制度せいどが創設そうせつ。
1994年ねん健康けんこう保険ほけん法ほう改正かいせい。在宅ざいたく医療いりょうの位置いちづけが明文化めいぶんかされ、それまで高齢こうれい者しゃが対象たいしょうであった訪問ほうもん看護かんごは、在宅ざいたくで医療いりょう・療養りょうようを受うけるすべての人ひとを対象たいしょうとするものへと変かわった。
2000年ねん介護かいご保険ほけん法ほう成立せいりつ。訪問ほうもん看護かんごステーションが明文化めいぶんかされた。このころから病院びょういんにおける患者かんじゃの在院ざいいん日数にっすうの短縮たんしゅく化かの流ながれが起おこり、人工じんこう呼吸こきゅう器きによる呼吸こきゅう器き療法りょうほうや中心ちゅうしん静脈じょうみゃく栄養えいよう法ほうといった、これまで専もっぱら病院びょういん内ないで行おこなわれてきた医療いりょう処置しょちを自宅じたくで行おこなう在宅ざいたく患者かんじゃが増加ぞうかした。