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財政赤字 - Wikipedia

財政ざいせい赤字あかじ(ざいせいあかじ)は、政府せいふ地方ちほう公共こうきょう団体だんたい歳入さいにゅう歳出さいしゅつ下回したまわった状態じょうたいのことであり、それをおぎなうために公債こうさい国債こくさい地方ちほうさい)が発行はっこうされる。バブル経済けいざい崩壊ほうかい以降いこう日本にっぽん財政ざいせい赤字あかじ公債こうさい残高ざんだか大幅おおはば拡大かくだいしている。そうした財政ざいせい赤字あかじ公債こうさい残高ざんだか拡大かくだいは、長期ちょうきにわたる景気けいきよわさや社会しゃかい保障ほしょう費用ひよう増加ぞうかなどを背景はいけいとした収入しゅうにゅう低迷ていめい支出ししゅつ増加ぞうかによってもたらされている。

日本にっぽん財政ざいせい赤字あかじ

編集へんしゅう

90年代ねんだい大幅おおはば拡大かくだいした財政ざいせい赤字あかじ

編集へんしゅう

日本にっぽん財政ざいせい収支しゅうしは、バブル経済けいざい崩壊ほうかい赤字あかじつづいている。くに地方ちほう社会しゃかい保障ほしょう基金ききんからなる一般いっぱん政府せいふ国民こくみん経済けいざい計算けいさん(SNA)ベースの財政ざいせい収支しゅうしは、99年度ねんどには、GDP7.4%の大幅おおはば赤字あかじとなった。一般いっぱん政府せいふのうち社会しゃかい保障ほしょう基金ききんについては、これまでのところ公的こうてき年金ねんきん保険ほけんりょう収入しゅうにゅう年金ねんきん給付きゅうふがく上回うわまわっているため、毎年まいとし黒字くろじとなっている。社会しゃかい保障ほしょう基金ききん黒字くろじがくは、近年きんねん徐々じょじょ縮小しゅくしょうしているが、99年度ねんどでもGDP0.8%の黒字くろじであった。社会しゃかい保障ほしょう基金ききん黒字くろじは、将来しょうらい高齢こうれいによる年金ねんきん給付きゅうふ増大ぞうだいそなえたぶんとらえられるものであるため、くに政府せいふ財政ざいせい赤字あかじをみるさいに、財政ざいせい黒字くろじぶんとしてくのは適当てきとうではない。そこで、社会しゃかい保障ほしょう基金ききんのぞいたくに地方ちほう財政ざいせい収支しゅうしをみると、99年度ねんどで8.2%の赤字あかじである。

財政ざいせい収支しゅうしくに地方ちほうとにけてみた場合ばあいくに財政ざいせい収支しゅうしは、消費しょうひ税率ぜいりつとうにより赤字あかじはば一時いちじてき縮小しゅくしょうした97年度ねんどのぞき、バブル崩壊ほうかいの92年度ねんど以降いこう一貫いっかんして赤字あかじ拡大かくだいつづけている。99年度ねんどくに財政ざいせい赤字あかじは、GDP6.8%となっている。

くに公債こうさい発行はっこうがくは、97年度ねんどに18.5ちょうえんとなったのち、98~2000年度ねんどは30ちょうえんおおきく上回うわまわり(かく年度ねんどとも決算けっさん)、2001年度ねんど当初とうしょ予算よさんでも28.3ちょうえん発行はっこう見込みこまれている。国民こくみん経済けいざい計算けいさんベースのくに財政ざいせい赤字あかじ大宗たいそう一般いっぱん会計かいけいのものであり、また、うえたように、くに地方ちほうわせた財政ざいせい赤字あかじ大宗たいそうは、くに赤字あかじなので、国民こくみん経済けいざい計算けいさんベースのくに地方ちほう財政ざいせい収支しゅうしは、2000年度ねんど、2001年度ねんどともに、依然いぜん大幅おおはば財政ざいせい赤字あかじつづいているとえる。

財政ざいせい赤字あかじ内訳うちわけ

編集へんしゅう

バブル崩壊ほうかい国民こくみん経済けいざい計算けいさんベースでくに地方ちほう赤字あかじ拡大かくだいした要因よういんを、収入しゅうにゅう支出ししゅつけるとつぎのようになる。以下いか検討けんとうから、90年代ねんだいは、直接ちょくせつぜい減少げんしょう主因しゅいん収入しゅうにゅう低調ていちょう推移すいいする一方いっぽう支出ししゅつ増加ぞうか傾向けいこうをたどっている結果けっか財政ざいせい赤字あかじ大幅おおはば拡大かくだいしていることが確認かくにんできる。

まず、収入しゅうにゅうめんでは、景気けいき動向どうこう敏感びんかん法人ほうじんぜいなどの直接ちょくせつぜいがGDPおおきく減少げんしょうしている。こうした直接ちょくせつぜい減少げんしょうは、バブル崩壊ほうかいによる個人こじん所得しょとく法人ほうじん所得しょとく企業きぎょう収益しゅうえき)の低迷ていめいくわえ、94ねんあき税制ぜいせい改革かいかくによる所得しょとくぜい恒久こうきゅう減税げんぜいや、98年度ねんどに2かい実施じっしされた特別とくべつ減税げんぜい、99年度ねんど以降いこう実施じっしされている所得しょとくぜい法人ほうじんぜい恒久こうきゅうてき減税げんぜいなどを反映はんえいしたものである。なお、直接ちょくせつぜいは、くに地方ちほうとも減少げんしょうしているが、くに直接ちょくせつぜい減少げんしょうほうおおきい。また、地方ちほうでは、くにからの地方ちほう交付こうふぜいなどの移転いてん収入しゅうにゅうが、バブルよりも増加ぞうかしている(だい3-1-2)。このようなくに地方ちほう状況じょうきょうちがいがしょうじるのは、くに収入しゅうにゅう税収ぜいしゅう中心ちゅうしんであり、長期ちょうきてき景気けいき低迷ていめい減税げんぜい影響えいきょうおおきくけるのにたいし、地方ちほう収入しゅうにゅうは、地方ちほう交付こうふぜい補助ほじょきんといったかたち安定あんていてきくにから収入しゅうにゅうるウェイトがたかいためである。

一方いっぽう支出ししゅつめんでは、くに公共こうきょう投資とうしが、バブル崩壊ほうかい度重たびかさなる経済けいざい対策たいさく実施じっし増加ぞうかしたのち最近さいきんでもたか水準すいじゅん維持いじされているのにたいし、地方ちほう公共こうきょう投資とうしは、90年代ねんだいなか以降いこうは、地方ちほう単独たんどく事業じぎょうくに補助ほじょきんがつかず、地方ちほう公共こうきょう団体だんたい独自どくじ財源ざいげん実施じっしする公共こうきょう事業じぎょう)を中心ちゅうしん抑制よくせいされ、やや減少げんしょうしている。政府せいふ消費しょうひについては、くに地方ちほうとも増加ぞうかしている。移転いてん支出ししゅつについては、くに移転いてん支出ししゅつ大幅おおはば拡大かくだいしてきている。くに移転いてん支出ししゅつ拡大かくだいしたのは、 (1)地方ちほう交付こうふぜい補助ほじょきん地方ちほうへの支払しはらい、 (2)高齢こうれいにより増大ぞうだいする社会しゃかい保障ほしょう費用ひよう公的こうてき年金ねんきん支払しはらいや医療いりょう)をまかなうための社会しゃかい保障ほしょう基金ききんへの支払しはらい、 (3)きゅう国鉄こくてつ長期ちょうき債務さいむ継承けいしょう破綻はたん金融きんゆう機関きかん処理しょりとうともな預金保険機構よきんほけんきこうへの資金しきん援助えんじょなどといった一般いっぱん政府せいふ以外いがいへの支払しはらい がおこなわれたことによる。

GDP130%にたっするくに地方ちほう長期ちょうき債務さいむ残高ざんだか

編集へんしゅう

こうした財政ざいせい赤字あかじつづいているため、公債こうさいとう長期ちょうき債務さいむ残高ざんだか増加ぞうかしている。財務省ざいむしょう(2001)によると、くに地方ちほうわせた政府せいふ長期ちょうき債務さいむ残高ざんだかは、91年度ねんどまつ実績じっせきで278ちょうえん程度ていど(GDPやく60%)であったのが、99年度ねんどまつ実績じっせきで600ちょうえん程度ていどどうやく120%)となっている。2001年度ねんどまつには、666ちょうえん程度ていどどうやく130%)となることが見込みこまれている。

構造こうぞうてき赤字あかじ水準すいじゅん財政ざいせい赤字あかじ維持いじ可能かのうせい

編集へんしゅう

循環じゅんかんてき赤字あかじ構造こうぞうてき赤字あかじ

編集へんしゅう

財政ざいせい赤字あかじ景気けいきとの関係かんけいからとらえると、税収ぜいしゅう失業しつぎょう給付きゅうふ増減ぞうげんつうじて景気けいきこう不況ふきょうおうじて変動へんどうする「循環じゅんかんてき部分ぶぶん循環じゅんかんてき財政ざいせい赤字あかじ)と、こうした「循環じゅんかんてき部分ぶぶん実際じっさい財政ざいせい収支しゅうしからのぞいた「構造こうぞうてき部分ぶぶん構造こうぞうてき財政ざいせい赤字あかじ)のふたつにけることができる。つまり、構造こうぞうてき財政ざいせい赤字あかじとは、景気けいきくなってもなくならない財政ざいせい赤字あかじ意味いみする。以下いかでは、90年代ねんだいはじ以降いこう財政ざいせい赤字あかじ循環じゅんかんてき財政ざいせい赤字あかじ構造こうぞうてき財政ざいせい赤字あかじとにけて推計すいけいし、財政ざいせい赤字あかじ拡大かくだい要因よういん分析ぶんせきする。それによると、つぎのようなてんあきらかになる。

  1. 構造こうぞうてき財政ざいせい赤字あかじは、度重たびかさなる経済けいざい対策たいさく社会しゃかい保障ほしょう費用ひよう増加ぞうかなどによって大幅おおはばになってきており、最近さいきんねんでは、実際じっさい財政ざいせい赤字あかじ(99年度ねんどGDP7.4%)の8わり以上いじょう構造こうぞうてき赤字あかじ(GDP6%程度ていど)となっている。
  2. 循環じゅんかんてき財政ざいせい赤字あかじは、バブル崩壊ほうかいの90年代ねんだいはじめに景気けいきよわさから増加ぞうかした。90年代ねんだいなかばは、景気けいき回復かいふくともなってやや改善かいぜんしたが、97年度ねんどからふたた赤字あかじ拡大かくだいし、98~2000年度ねんどはGDP0.8%程度ていど赤字あかじとなっている。
  3. 2001年度ねんどは、構造こうぞうてき財政ざいせい赤字あかじつづ大幅おおはばなものとなっている。かりに2001年度ねんど経済けいざい成長せいちょうりつ実質じっしつでゼロ%、名目めいもくでマイナス1%だとすると、循環じゅんかんてき財政ざいせい赤字あかじ若干じゃっかん拡大かくだいし、景気けいき自動じどう安定あんてい機能きのうはたらいている。

以下いかでは、これらのてんくわしくみていく。

まず、だいしょうでの産出さんしゅつりょうギャップ推計すいけいをもとに、一般いっぱん政府せいふ財政ざいせい収支しゅうしを、循環じゅんかんてき財政ざいせい収支しゅうし構造こうぞうてき財政ざいせい収支しゅうしける。これによると、バブル経済けいざい崩壊ほうかいをはさんだ90年度ねんどから93年度ねんどあいだに、循環じゅんかんてき財政ざいせい収支しゅうし構造こうぞうてき財政ざいせい収支しゅうしはともに赤字あかじ拡大かくだいした。GDPで、循環じゅんかんてき財政ざいせい収支しゅうしは1.6%増加ぞうかして0.7%の赤字あかじに、構造こうぞうてき財政ざいせい収支しゅうしも3.2%赤字あかじ拡大かくだいして1.5%の赤字あかじとなった。94年度ねんど以降いこうは、循環じゅんかんてき財政ざいせい赤字あかじが96年度ねんど景気けいき回復かいふくしたことにより一時いちじ減少げんしょうしたものの、97年度ねんどふたた赤字あかじ拡大かくだいし、98年度ねんど以降いこうGDP0.8%程度ていど推移すいいしてきている。一方いっぽう構造こうぞうてき財政ざいせい赤字あかじは、減税げんぜいふく度重たびかさなる経済けいざい対策たいさく実施じっしや、社会しゃかい保障ほしょう費用ひよう医療いりょう公的こうてき年金ねんきん給付きゅうふなど)の増大ぞうだいのために増加ぞうか傾向けいこうにあり、最近さいきんではGDPやく6%とこうまりしている。

さらに、2001年度ねんどについては、大幅おおはば構造こうぞうてき財政ざいせい赤字あかじつづなかで、かり経済けいざい成長せいちょうりつ実質じっしつでゼロ%、名目めいもくでマイナス1%とくと、循環じゅんかんてき赤字あかじ若干じゃっかん拡大かくだいする。なお、成長せいちょうりつ仮定かていをプラス・マイナス1%程度ていどえても、推計すいけい結果けっかおおきくはわらない。

循環じゅんかんてき財政ざいせい赤字あかじ拡大かくだいは、景気けいきわるくなると税収ぜいしゅう減少げんしょうしたり、失業しつぎょう給付きゅうふなどの政府せいふ支出ししゅつ拡大かくだいするという財政ざいせい自動じどう安定あんてい機能きのうビルト・イン・スタビライザー)がはたらいていることを意味いみしている。一方いっぽう構造こうぞうてき財政ざいせい赤字あかじ拡大かくだいは、景気けいき情勢じょうせいおうじて、財政ざいせい支出ししゅつ減税げんぜい拡大かくだいする裁量さいりょうてき経済けいざい政策せいさくなどを反映はんえいしている。90年代ねんだい景気けいき低迷ていめい対応たいおうした政府せいふ積極せっきょくてき景気けいき対策たいさく実施じっし社会しゃかい保障ほしょう費用ひよう増加ぞうかなどの結果けっか、92年度ねんど以降いこう、2001年度ねんどまつまでの構造こうぞうてき財政ざいせい赤字あかじ累計るいけいやく200ちょうえんで、2001年度ねんどのGDPのやくわりとなっている。短期たんきてき景気けいきしもささえを目的もくてきとした財政ざいせい政策せいさくは、結局けっきょく持続じぞくてき成長せいちょうにはつながらず、大幅おおはば構造こうぞうてき赤字あかじのこったとかんがえられる。今後こんご日本にっぽん経済けいざい潜在せんざい成長せいちょうりつ復帰ふっきし、循環じゅんかんてき財政ざいせい赤字あかじがなくなったとしても、抜本ばっぽんてき財政ざいせい構造こうぞう改革かいかく実施じっししなければ、GDPやく6%の構造こうぞうてき赤字あかじのこると見込みこまれる。財政ざいせい再建さいけんたすためには、財政ざいせい赤字あかじだい部分ぶぶんめる構造こうぞうてき赤字あかじ削減さくげんたいする積極せっきょくてき取組とりくみが必要ひつようである。

財政ざいせい赤字あかじ維持いじ可能かのう

編集へんしゅう

政府せいふ税収ぜいしゅう以上いじょう支出ししゅつおこなうためには、資金しきん調達ちょうたつをしなければならず、財政ざいせい赤字あかじえることになる。財政ざいせい赤字あかじまかなうための公債こうさいきんのほとんどは国債こくさい発行はっこうかたち市場いちばにおいて資金しきん調達ちょうたつがなされるため、財政ざいせい赤字あかじ前提ぜんていとした財政ざいせい政策せいさくおこなうためには、市場いちばにおいて発行はっこうもと政府せいふ公債こうさい適切てきせつ値段ねだん必要ひつようがある。長期ちょうき金利きんりはさまざまな要素ようそにより決定けっていされるものの、これまでのところ、長期ちょうき国債こくさい金利きんり歴史れきしてきてい水準すいじゅんにあり、財政ざいせい赤字あかじ維持いじ可能かのうせいについては、市場いちばからある程度ていど信認しんにんられているものとかんがえられる。しかし、将来しょうらいにおいては、今後こんご財政ざいせい赤字あかじ公債こうさい残高ざんだか規模きぼ中長期ちゅうちょうき財政ざいせい運営うんえい方針ほうしんによっては、市場いちば政府せいふ償還しょうかん能力のうりょくうたがい、国債こくさい価格かかく急落きゅうらくして長期ちょうき金利きんり急騰きゅうとうする可能かのうせい排除はいじょできない。

今後こんご財政ざいせい赤字あかじ維持いじ可能かのうせいはかひとつの目安めやすとして、公債こうさい残高ざんだか名目めいもくGDP将来しょうらいにおいて増加ぞうかつづけ、発散はっさんしてしまうような財政ざいせい政策せいさくおこなっていないか、という基準きじゅんかんがえられる。債務さいむ残高ざんだかがGDP発散はっさんしないようにするためには、あらたな公債こうさい残高ざんだかりつ当該とうがい年度ねんど名目めいもくGDPのりつよりひくおさえる必要ひつようがある。これは、名目めいもく利子りしりつ名目めいもくGDP成長せいちょうりつひとしいという前提ぜんていてば、以下いか説明せつめいするプライマリー・バランスをゼロ(均衡きんこう)ないし黒字くろじとすることによって達成たっせいできる。

プライマリー・バランス(基礎きそてき財政ざいせい収支しゅうし)とは、「借入かりいれのぞ税収ぜいしゅうとう歳入さいにゅう」から、「過去かこ借金しゃっきんたいするもと利払りばらいをのぞいた歳出さいしゅつ」をいた財政ざいせい収支しゅうしのことである。プライマリー・バランスが均衡きんこうしている場合ばあいは、過去かこ国債こくさいもと利払りばら以外いがい出費しゅっぴは、税収ぜいしゅうとうまかな新規しんき国債こくさい発行はっこうたよらないということを意味いみする。つまり、あるとしあらたな国債こくさいは、過去かこ国債こくさい元利がんり支払しはらいのためだけに使つかわれる。もし名目めいもく経済けいざい成長せいちょうりつ名目めいもく利子りしりつひとしい状況じょうきょうつづけば、プライマリー・バランスの均衡きんこう維持いじすることによって、債務さいむ残高ざんだかとGDPの現行げんこう水準すいじゅんたもたれ、政府せいふ債務さいむ無限むげん発散はっさんしてしまうことはけられる。

国民こくみん経済けいざい計算けいさんベースでみたくに地方ちほう合計ごうけいのプライマリー・バランスは、92年度ねんど以降いこう赤字あかじとなっており、かつその赤字あかじ拡大かくだい傾向けいこうにあり、99年度ねんどでGDPやく5%の赤字あかじとなっている(だい3-1-6)。なお、前述ぜんじゅつしたようにくに地方ちほう財政ざいせい赤字あかじ(GDP)は、99年度ねんどで8.2%であった。90年代ねんだいつうじてネットのはらいがGDPやく2~3%で安定あんていてき推移すいいしていたが、税収ぜいしゅうみと支出ししゅつ拡大かくだいで、プライマリー・バランスの赤字あかじ拡大かくだいしてきた。なお、90年代ねんだいはらい安定あんていしているのは、債務さいむ残高ざんだか増加ぞうかしているが、このあいだ名目めいもく金利きんり低下ていかしたためである。

さらには、98年度ねんど以降いこう長期ちょうき金利きんり水準すいじゅん低位ていい(1~2%程度ていど)で安定あんていする一方いっぽう名目めいもくGDP成長せいちょうりつがマイナスとなっており、長期ちょうき金利きんり成長せいちょうりつ上回うわまわっているため、現状げんじょうでは、かりにプライマリー・バランスが均衡きんこうしても、債務さいむ残高ざんだかのGDP増加ぞうかする状況じょうきょうにある。

地域ちいきべつにみた財政ざいせい支出ししゅつぜい負担ふたん

編集へんしゅう

行政ぎょうせいサービスの受益じゅえき負担ふたん

編集へんしゅう

90年代ねんだい以降いこう税収ぜいしゅう低調ていちょう推移すいいする一方いっぽうで、財政ざいせい支出ししゅつ増加ぞうか傾向けいこうをたどっている結果けっかくに地方ちほう財政ざいせい赤字あかじ拡大かくだいしてきている。そうしたくに地方ちほう財政ざいせい支出ししゅつ税収ぜいしゅう動向どうこう地域ちいきべつにみた場合ばあい、どのような特徴とくちょうがあるのだろうか。かく地域ちいき住民じゅうみんにとっては、くに地方ちほう公共こうきょう団体だんたい財政ざいせい支出ししゅつは、行政ぎょうせいサービスの「受益じゅえき」であり、国税こくぜい地方ちほうぜいぜい負担ふたんは、行政ぎょうせいサービスをけるための「負担ふたん」であるとかんがえられる。以下いかでは、47都道府県とどうふけんべつに、住民じゅうみんにんあたりの受益じゅえき負担ふたん定量ていりょうてき分析ぶんせきする。

地域ちいき住民じゅうみん受益じゅえき負担ふたん計測けいそく

編集へんしゅう

分析ぶんせき手法しゅほうは、つぎとおりである。まず、くに地方ちほう公共こうきょう団体だんたいおこな政府せいふ活動かつどうによってかく地域ちいき支出ししゅつされる財政ざいせい支出ししゅつがくを、地域ちいき住民じゅうみんけた行政ぎょうせいサービスからの「受益じゅえき」として推計すいけいした。その一方いっぽうで、くにおよ地方ちほう公共こうきょう団体だんたいたいして地域ちいき住民じゅうみん支払しはらっている税金ぜいきん使用しようりょう負担ふたんきんを、行政ぎょうせいサービスの「負担ふたん」として推計すいけいした。なお、国税こくぜいについては、ぜい徴収ちょうしゅう仕組しくじょう制約せいやくから都道府県とどうふけんごとの税収ぜいしゅう帰属きぞく正確せいかく把握はあくできず、個別こべつ税収ぜいしゅう総額そうがく一定いってい仮定かていもとづき配分はいぶんしている。こうした推計すいけいをもとに、「受益じゅえき超過ちょうか」(=「受益じゅえき」-「負担ふたん」)や「受益じゅえき負担ふたん比率ひりつ」(=「受益じゅえき」÷「負担ふたん」)を算出さんしゅつした。分析ぶんせきは、47都道府県とどうふけん地域ちいきべつおこない、ことなる都道府県とどうふけんあいだでの比較ひかくおこな観点かんてんから、人口じんこうにんあたりの受益じゅえき負担ふたんもちいている。分析ぶんせき対象たいしょう期間きかんは、80年度ねんど、85年度ねんど、90年度ねんど、95年度ねんど、98年度ねんどの5時点じてんをとり、かく地域ちいき受益じゅえき負担ふたん関係かんけい過去かこ20年間ねんかんで、どのように変化へんかしてきたかを検証けんしょうした。

ここでの分析ぶんせき結果けっか解釈かいしゃくする場合ばあいつぎのようなてん留意りゅういする必要ひつようがある。だい1に、行政ぎょうせいサービスのなかには、規模きぼ経済けいざいせいはたらいて、人口じんこう密度みつどたか大都市だいとしけんでは、地方ちほうけんよりも、住民じゅうみん1にんあたりについてひくいコストで、どういち水準すいじゅんのサービスを提供ていきょうすることができる場合ばあいがありうる。そのような行政ぎょうせいサービスについては、かり大都市だいとしけん住民じゅうみん地方ちほうけん住民じゅうみん同一どういつのサービスを受益じゅえきしていても、ここで推計すいけいされる1人ひとりあたり受益じゅえきがくは、大都市だいとしけんほう地方ちほうけんよりもちいさくなる。だい2に、地方ちほうけん立地りっちしている産業さんぎょう廃棄はいきぶつ処理しょりじょう発電はつでんしょ水源すいげんとしてのダムなどは、大都市だいとしけん住民じゅうみんおおきな便益べんえきをもたらしているが、ここではそうした意味いみでの受益じゅえき負担ふたん考慮こうりょしていない。だい3に、くに地方ちほう歳入さいにゅうには、税金ぜいきん使用しようりょう負担ふたんきんほかに、公債こうさい財産ざいさん収入しゅうにゅうなどのしょ収入しゅうにゅう前年度ぜんねんどからの繰越金くりこしきんなどがふくまれているが、それらの収入しゅうにゅうはここでは「負担ふたん」として計上けいじょうしていない。そのため、全国ぜんこくベースで受益じゅえき負担ふたん上回うわまわ傾向けいこうにあることに留意りゅういする必要ひつようがある。

受益じゅえき負担ふたん動向どうこう

編集へんしゅう

98年度ねんどにおける受益じゅえきがく都道府県とどうふけんべつにみると、受益じゅえきがくおおきい5けん平均へいきん(120まんえん)とちいさい5けん平均へいきん(76まんえん)との比率ひりつは、1.6ばいである。つぎに、負担ふたんがく都道府県とどうふけんべつにみると、負担ふたんがくおおきい5けん平均へいきん(86まんえん)とちいさい5けん平均へいきん(52まんえん)との比率ひりつは、1.7ばいである。

さらに、受益じゅえき超過ちょうか(=受益じゅえき負担ふたん)のがく都道府県とどうふけんべつにみると、上位じょういけん平均へいきんは63まんえんであり、47都道府県とどうふけんちゅう、45団体だんたいがプラスとなっている。受益じゅえき超過ちょうかがマイナスとなっている、すなわち受益じゅえきより負担ふたんほうおお負担ふたん超過ちょうかとなっているのは、2団体だんたいのみとなっている。

また、人口じんこう密度みつどたか大都市だいとしけんでは、規模きぼ経済けいざいにより1にんあたり行政ぎょうせいコストが割安わりやすになる一方いっぽう人口じんこう密度みつどひく地域ちいきにおいては割高わりだかになるため、全体ぜんたいてきにみると、1人ひとりあた県民けんみん所得しょとくたか地域ちいきほど、受益じゅえきすくなく、負担ふたんおおい、したがって、両者りょうしゃきである受益じゅえき超過ちょうか(=受益じゅえき負担ふたん)がすくなくなるという傾向けいこうがある。

受益じゅえき負担ふたん地域ちいきあいだのばらつきの動向どうこう

編集へんしゅう

つぎに、こうしたかく地域ちいき受益じゅえき負担ふたん関係かんけいが、過去かこ20年間ねんかんでどのように変化へんかしてきたのかを受益じゅえき負担ふたん比率ひりつ(=受益じゅえき÷負担ふたん)でみてみる。

まず、全国ぜんこく平均へいきん受益じゅえき負担ふたん比率ひりつうごきをみると、くに地方ちほうをあわせた財政ざいせい収支しゅうし動向どうこう反映はんえいして、80年度ねんどからバブルの90年度ねんどにかけて37.0ポイント低下ていかしたが、90年代ねんだいはいるとぎゃくに33.9ポイント上昇じょうしょうしている。90年代ねんだい受益じゅえき負担ふたん比率ひりつ大幅おおはば上昇じょうしょうしたのは、国税こくぜい中心ちゅうしんとする税収ぜいしゅう大幅おおはばみにより負担ふたん減少げんしょうした一方いっぽうで、累次るいじ景気けいき対策たいさくとうによる地方ちほう公共こうきょう団体だんたい支出ししゅつ増加ぞうかや、くにから地方ちほうへの財政ざいせい移転いてん増加ぞうかにより、受益じゅえきがくが24.4%ぞう大幅おおはば増加ぞうかしたためである。

つぎに、これを地域ちいきべつにみると、受益じゅえき負担ふたん地域ちいきあいだのばらつきは90年代ねんだいはい拡大かくだいしたことがかる。受益じゅえき負担ふたん比率ひりつたかい5団体だんたいと、受益じゅえき負担ふたん比率ひりつひくい5団体だんたいうごきを比較ひかくしてみよう。なお、受益じゅえき負担ふたん比率ひりつたか団体だんたいは、相対そうたいてき1人ひとりあたり所得しょとくひく地域ちいきであり、受益じゅえき負担ふたん比率ひりつひく団体だんたい1人ひとりあたり所得しょとくたか地域ちいきである。

80年代ねんだいには、りょうグループの受益じゅえき負担ふたん比率ひりつはともに低下ていかしているものの、相対そうたいてき受益じゅえき負担ふたん比率ひりつたかい5団体だんたい低下ていかはばおおきい。90年代ねんだいには、受益じゅえき負担ふたん比率ひりつたかい5団体だんたい受益じゅえき負担ふたん比率ひりつ大幅おおはば上昇じょうしょうしたのにたいし、受益じゅえき負担ふたん比率ひりつひくい5団体だんたい受益じゅえき負担ふたん比率ひりつ上昇じょうしょうはば小幅こはばまり、90年代ねんだい後半こうはん(95~98年度ねんど)にはほぼよこばいで推移すいいしている。

さらに、このような地域ちいきあいだのばらつきの拡大かくだいが、受益じゅえき負担ふたんのどちらがわ要因よういんしょうじたのかをみてみよう。受益じゅえき負担ふたん比率ひりつたかい5団体だんたいでは、90年代ねんだい負担ふたん低下ていかしている一方いっぽう受益じゅえきびは、80年代ねんだいとほぼおな水準すいじゅん維持いじした。これにたいし、受益じゅえき負担ふたん比率ひりつひくい5団体だんたいでは、負担ふたんびが低下ていかするのにともなって、受益じゅえきびもおおきく低下ていかしており、90年代ねんだい後半こうはんにはマイナスのびになった。このことから、受益じゅえき負担ふたん比率ひりつたかい5団体だんたい受益じゅえき負担ふたん比率ひりつひくい5団体だんたいあいだにおいて、90年代ねんだい受益じゅえき負担ふたん地域ちいきあいだのばらつきが拡大かくだいしたのは、受益じゅえき負担ふたん比率ひりつたかい5団体だんたいにおける受益じゅえきびがたかかったためであることがかる。

出典しゅってん

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