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青斑核 - Wikipedia

あおむらかく(せいはんかく)は、脳幹のうかんにあるノルアドレナリン作動さどうせいニューロンふく神経しんけいかくである。モノアミン含有がんゆうニューロンの分類ぶんるいでは、A6細胞さいぼうぐん[1]ともばれる。覚醒かくせい注意ちゅうい情動じょうどう関与かんよしている。

のう: あおむらかく
ノルアドレナリン神経しんけい分布ぶんぷ画像がぞう中央ちゅうおう緑色みどりいろ楕円だえんがたあおむらかく。"Locus coeruleus" とかれている。
名称めいしょう
日本語にほんご あおむらかく
英語えいご Locus ceruleus
ラテン語らてんご Locus caeruleus, Locus coeruleus
略号りゃくごう LC
関連かんれん構造こうぞう
上位じょうい構造こうぞう 脳幹のうかんはし (のう)はしぶた
画像がぞう
Digital Anatomist 水平すいへいだんくろしつ
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Brede Database 階層かいそう関係かんけい座標ざひょう情報じょうほう
NeuroNames 関連かんれん情報じょうほう一覧いちらん
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MeSH Locus+Coeruleus
グレイ解剖かいぼうがく 書籍しょせきちゅう説明せつめい英語えいご
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発見はっけん

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18世紀せいきフェリックス・ヴィック・ダジール発見はっけんした。名前なまえラテン語らてんごの"coeruleus"と"locus"に由来ゆらいする。これは”あおてん”を意味いみし、あおまらないのう組織そしきなかあおえるためである。青色あおいろはノルアドレナリン神経しんけい細胞さいぼう体内たいないメラニン顆粒かりゅうによる。アルファベットのスペリングについては、caeruleus古典こてんラテン語らてんごのスペルであるが、 より現代げんだいてきcoeruleusほうがよくもちいられる。重母音じゅうぼいんめたかたちceruleusはアメリカ英語えいごにおけるスペルである。

解剖かいぼう

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あおむらかくはし上部じょうぶがわだい4のうしつそこ外側そとがわ位置いちしている。あおむらかくそとがわぶた(アセチルコリン神経しんけい)、はらがわぶた(ドーパミン神経しんけい)、結節けっせつ乳頭にゅうとうかく(ヒスタミン神経しんけい)、がわぬいせんかく(セロトニン神経しんけい)、外側そとがわ視床ししょう下部かぶ(オレキシン神経しんけい)などとうえぎょうせいもうさまたい賦活ふかつけい形成けいせいしており、大脳皮質だいのうひしつ覚醒かくせい状態じょうたい制御せいぎょしている。

ヒト成人せいじんあおむらかくは31,000から60,000μみゅー㎥のサイズのニューロン22,000から51,000構成こうせいされている[2]

神経しんけい回路かいろ

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脊髄せきずい脳幹のうかん小脳しょうのう視床ししょう下部かぶ視床ししょう中継ちゅうけいかくひらたももたいおわりのう大脳皮質だいのうひしつなどにひろ投射とうしゃしている。あおむらかくノルアドレナリン影響えいきょうける部位ぶいはまとめてlocus coeruleus-noradrenalin systemまたはLC-NA systemとばれる[3]あおむらかくから皮質ひしつへの投射とうしゃは、視床ししょう特殊とくしゅかく経由けいゆするがわ経路けいろと、ぜんのう基底きていかく経由けいゆするはらがわ経路けいろられている。

出力しゅつりょくくらべると入力にゅうりょくかぎられている

  • Nucleus paragigantocellularis
  • Nucleus prepositus hypoglossi:注視ちゅうし関係かんけい
  • 内側うちがわぜん前頭葉ぜんとうよう皮質ひしつ興奮こうふんせい投射とうしゃであり、個体こたい活性かっせいレベルをあげる
  • 外側そとがわ視床ししょう下部かぶオレキシン分泌ぶんぴつし、あおむらかく興奮こうふんさせる
  • 帯状おびじょうかいひらたももたい
  • 小脳しょうのうぬいせんかく

LCから分泌ぶんぴつされるノルアドレナリンはおおくののうのニューロンを活性かっせいさせる。 ラットにおける細胞さいぼうがい記録きろくほうでは、あおむらかくニューロンは覚醒かくせい持続じぞくてき発射はっしゃをし、じょなみ睡眠すいみん発射はっしゃげんじゃく、レム睡眠すいみん活動かつどう停止ていしする。そのため覚醒かくせい関連かんれんしているとかんがえられている。尻尾しっぽをピンセットでつまむ、からだいききかけるとう感覚かんかく入力にゅうりょく興奮こうふんする。また、注意ちゅうい行動こうどう活動かつどう興奮こうふんし、皮質ひしつ賦活ふかつさせる。じくさくから細胞さいぼうたいがわえだばしており、細胞さいぼうたい存在そんざいするαあるふぁ2受容じゅようたいかいして自己じこ抑制よくせいをかけている。

覚醒かくせい

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あおむらかくふくうえぎょうせいもうさまたい賦活ふかつけい抑制よくせいされるとノンレム睡眠すいみん発現はつげんする。

LCはストレスおおくの交感神経こうかんしんけい反応はんのう仲介ちゅうかいするのに重要じゅうよう役割やくわりになっている。このかくはストレスで活性かっせいされ、ノルアドレナリン分泌ぶんぴつすることで反応はんのうする。それによりぜん前頭まえがしら皮質ひしつかいして認知にんち機能きのうえ、nucleus accumbensをかいしてモチベーションをあげ、視床ししょう下部かぶ下垂かすいたい副腎ふくじんけい活性かっせいし、脳幹のうかんかいして交感神経こうかんしんけい活動かつどうげ、ふく交感神経こうかんしんけい活動かつどう抑制よくせいする。視床ししょう下部かぶ下垂かすいたい副腎ふくじんけい活性かっせい特異とくいてきに、ノルアドレナリンは視床ししょう下部かぶからのコルチコトロピン放出ほうしゅつ因子いんし(CRH)、さらに下垂かすいたいからACTH分泌ぶんぴつ刺激しげきし、副腎ふくじんでのコルチゾール合成ごうせい促進そくしんする。LCから放出ほうしゅつされたノルアドレナリンはそのさんせい抑制よくせいし、CRHはそのさんせい抑制よくせいするフィードバックを形成けいせいする。一方いっぽうLCにはノルアドレナリンさんせい増加ぞうかさせる[4]

ストレス関連かんれんした認知にんち機能きのうにおけるLCの役割やくわり複雑ふくざつである。あおむらかくから放出ほうしゅつされたノルアドレナリン(NE)はαあるふぁ受容じゅようたい作用さようし、working memory(ワーキングメモリー)を増加ぞうかさせるが、過剰かじょうなNEはてい親和しんわせいαあるふぁ受容じゅようたいかいしてworking memoryを減少げんしょうさせる[5]

精神せいしん医学いがくてき研究けんきゅうでは、LCからこりひらたももたいのbasolateral nucleusにわる神経しんけい回路かいろ(brain circuit)においてノルアドレナリンシナプス反応はんのうが、おおくのストレス誘発ゆうはつせい恐怖きょうふ疾患しっかんとく外傷がいしょうストレス障害しょうがいPTSD)の病態びょうたい生理せいりおおきくかかわっている。"Combat-related PTSD (2005ねんだい世界せかい戦争せんそうからの減少げんしょうするアメリカ軍隊ぐんたいのベテラン研究けんきゅう)では死後しご右側みぎがわのLCニューロンのかず減少げんしょうしていることをしめしている[6]

LCはうつびょうパニック障害しょうがい不安ふあん関係かんけいしている。ノルアドレナリンさい阻害そがいざい(レボキセチン、アトモキセチン)、セロトニン-ノルアドレナリンさい阻害そがいざい(ヴェンラファキシン)、ノルアドレナリン-ドーパミンさい阻害そがいざい(ブプロピオン)などの内服薬ないふくやくはLCにたいして作用さよう効果こうか発揮はっきするとかんがえられている。

疼痛とうつう

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あおむらかくにはオピオイド受容じゅようたいμみゅーκかっぱ)が発現はつげんしている。オピオイドの鎮痛ちんつう作用さよう一部いちぶあおむらかくからしたぎょうせい抑制よくせいせい神経しんけい経路けいろかいするものである[7]

Rett症候群しょうこうぐん

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転写てんしゃ調節ちょうせつ因子いんしMECP2遺伝いでんてき欠損けっそんがRett症候群しょうこうぐん原因げんいんかんがえられている[8]。MECP2欠損けっそんはマウスのモデルで自律じりつ神経しんけい交感神経こうかんしんけい関連かんれんしたカテコールアミン機能きのう不全ふぜん関連かんれんしているとかんがえられている。LCはのうないノルアドレナリン神経しんけい起源きげんであり、吻側(大脳皮質だいのうひしつ海馬かいば視床ししょう下部かぶ)やがわ小脳しょうのう脳幹のうかんかく)にひろ投射とうしゃしている[9]実際じっさい、この構造こうぞう変化へんかはMECP2欠損けっそんマウスで観察かんさつされるいくつかの症状しょうじょう関与かんよしている。LCニューロンの細胞さいぼうたい電気でんき生理学せいりがくてき特性とくせい変化へんかしめされている。興奮こうふんせい機能きのう低下ていかなどである。

アルツハイマーびょう

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アルツハイマーびょうではLCニューロンの最大さいだい70%がうしなわれている[10]。LC細胞さいぼうから分泌ぶんぴつされるノルアドレナリンは、大脳皮質だいのうひしつ海馬かいばのニューロン、グリア細胞さいぼう血管けっかん周囲しゅうい微小びしょう環境かんきょうにおける内因ないいんせいこう炎症えんしょう物質ぶっしつ供給きょうきゅうしている[11]。ノルアドレナリンはアミロイドβべーたにより誘導ゆうどうされるサイトカインのさんせいアミロイドβべーた貪食どんしょく抑制よくせいするマイクログリア刺激しげきする。それゆえ、LCの変性へんせいアルツハイマーびょうのうでのアミロイドβべーた沈着ちんちゃく関与かんよしているかもしれない。

自閉症じへいしょう

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自閉症じへいしょう子供こども発熱はつねつがあると、その障害しょうがいすくなくなることがわれてきた。最近さいきん研究けんきゅうでは自閉症じへいしょう行動こうどうはLC-NAけい機能きのう不全ふぜんによるもので、発熱はつねつ一時いちじてきにこのけいさい賦活ふかつするという仮説かせつがある。さらにLC-NAけい機能きのうてき維持いじされていることは、すくなくともいくつかの自閉症じへいしょうのスペクトラムの疾患しっかん可逆かぎゃくせいであることをしめしている。さらにこれらの疾患しっかん原因げんいん追求ついきゅうし、生物せいぶつがくてきテストをおこない、LC-NAけい焦点しょうてんてた内服薬ないふくやく研究けんきゅうおこなわれている。

文献ぶんけん

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  1. ^ Dahlstroem, A; Fuxe, K (1964). “Evidence for the existence of monoamine-containing neurons in the central nervous system. I. Demonstration of monoamines in the cell bodies of brain stem neurons”. Acta Physiol Scand Suppl SUPPL 232: 1-55. PMID 14229500. 
  2. ^ Mouton, PR; Pakkenberg, B; Gundersen, HJ; Price, DL (1994). “Absolute number and size of pigmented locus coeruleus neurons in young and aged indivisuals.”. J Chem Neuroanat 7 (3): 185-90. PMID 7848573. 
  3. ^ Mehler,Mark F; Dominick P (2009). “Autism, fever, epigenetics and the locus coeruleus (http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/SO165017308001379).”.+Brain Research Reviews 59 (2): 388-392. 
  4. ^ Benarroch, EE (2009). “The locus ceruleus norepinephrine system:functional organization and potential clinical significance.”. Neurology 73 (20): 1699-704. 
  5. ^ Ramos, BP; Arnsten, AF (2007). “Adrenergic pharmacology and cognition:focus on the prefrontal cortex.”. Pharmacol Ther (113): 523-536. PMID 16387990(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16387990). 
  6. ^ Bracha, HS; Garcia-Rill, E; Mrak, RE; Skinner, R (2005). “Postmortem locus coerulesu neuron count in three American veterans with probable or possible war-related PTSD”. The Journal of neuropsychiatry and clinical neurosciences doi:10.1176/appi neuropsych.17.5.503 17 (4): 503-9. PMID 16387990(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16387990). 
  7. ^ Lutz PE, Kieffer BL (2013). Trends Neuroscience 36: 195-206. 
  8. ^ Amir, RE; Van den Veyver, IB; Wan, M; Tran, CQ; Francke, U; Zoghbi, HY (1999). “Rett syndrome is caused by mutations in X-linked MECP2, encoding methylCoG-binding protein 2.”. Nat Genet 23 (2): 185-8. 
  9. ^ Hokfelt, T; Martensson, R; Bjorklund, A; Kleinau, S; Goldstein, M (1984). Distribution maps of tyrosine-hydroxylase-immunoreactive neurons in the rat brain.In2. Classical Transmitters in the CNS, PartI (A. Bjorklund and T.Hokfelt, eds). Elsevier, New York. pp. 277-379. 
  10. ^ Bondareff, W; Mountjoy, CQ; Roth, M (1982). “Loss of neurons of origin of the adrenergic projections to cerebral cortex (nucleus locus ceruleus) in senile dementia.”. Neurology 32 (2): 164-8. 
  11. ^ Heneka, MT; Radrigny, F; Regen, T; Martinez-Hernandez, A; Dumitrescu-Ozimek, L; Terwel, D; Jardanhazi-Kurutz, D; Walter, J (2010). “Locus ceruleus controls Alzheimer's disease pathology by modulating microglial functions through norepinephrine.(http://www.pnas.org.libproxy.ucl.ac.uk/content/107/13/6058.full.pdf)”.+Proc Natl Acad Sci USA doi:10.1073/pnas.0909586107 (107): 6058-6063. PMID 20231476. 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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