18世紀 せいき にフェリックス・ヴィック・ダジール が発見 はっけん した。名前 なまえ はラテン語 らてんご の"coeruleus"と"locus"に由来 ゆらい する。これは”青 あお い点 てん ”を意味 いみ し、青 あお く染 そ まらない脳 のう 組織 そしき の中 なか で青 あお く見 み えるためである。青色 あおいろ はノルアドレナリン神経 しんけい 細胞 さいぼう 体内 たいない のメラニン 顆粒 かりゅう による。アルファベットのスペリングについては、caeruleus が古典 こてん ラテン語 らてんご のスペルであるが、 より現代 げんだい 的 てき なcoeruleus の方 ほう がよく用 もち いられる。二 に 重母音 じゅうぼいん を詰 つ めた形 かたち のceruleus はアメリカ英語 えいご におけるスペルである。
青 あお 斑 むら 核 かく は橋 はし 上部 じょうぶ 背 せ 側 がわ 、第 だい 4脳 のう 室 しつ 底 そこ の外側 そとがわ に位置 いち している。青 あお 斑 むら 核 かく は外 そと 背 せ 側 がわ 被 ひ 蓋 ぶた 野 の (アセチルコリン神経 しんけい )、腹 はら 側 がわ 被 ひ 蓋 ぶた 野 の (ドーパミン神経 しんけい )、結節 けっせつ 乳頭 にゅうとう 核 かく (ヒスタミン神経 しんけい )、背 せ 側 がわ 縫 ぬい 線 せん 核 かく (セロトニン神経 しんけい )、外側 そとがわ 視床 ししょう 下部 かぶ (オレキシン神経 しんけい )などと上 うえ 行 ぎょう 性 せい 網 もう 様 さま 体 たい 賦活 ふかつ 系 けい を形成 けいせい しており、大脳皮質 だいのうひしつ の覚醒 かくせい 状態 じょうたい を制御 せいぎょ している。
ヒト成人 せいじん の青 あお 斑 むら 核 かく は31,000から60,000μ みゅー ㎥のサイズのニューロン 22,000から51,000個 こ で構成 こうせい されている[2] 。
脊髄 せきずい 、脳幹 のうかん 、小脳 しょうのう 、視床 ししょう 下部 かぶ 、視床 ししょう 中継 ちゅうけい 核 かく 、扁 ひらた 桃 もも 体 たい 、終 おわり 脳 のう 、大脳皮質 だいのうひしつ などに広 ひろ く投射 とうしゃ している。青 あお 斑 むら 核 かく とノルアドレナリン に影響 えいきょう を受 う ける部位 ぶい はまとめてlocus coeruleus-noradrenalin systemまたはLC-NA systemと呼 よ ばれる[3] 。
青 あお 斑 むら 核 かく から皮質 ひしつ への投射 とうしゃ は、視床 ししょう 非 ひ 特殊 とくしゅ 核 かく を経由 けいゆ する背 せ 側 がわ 経路 けいろ と、前 ぜん 脳 のう 基底 きてい 核 かく を経由 けいゆ する腹 はら 側 がわ 経路 けいろ が知 し られている。
出力 しゅつりょく に比 くら べると入力 にゅうりょく は限 かぎ られている
Nucleus paragigantocellularis
Nucleus prepositus hypoglossi:注視 ちゅうし に関係 かんけい
内側 うちがわ 前 ぜん 前頭葉 ぜんとうよう 皮質 ひしつ :興奮 こうふん 性 せい の投射 とうしゃ であり、個体 こたい の活性 かっせい レベルをあげる
外側 そとがわ 視床 ししょう 下部 かぶ :オレキシン を分泌 ぶんぴつ し、青 あお 斑 むら 核 かく を興奮 こうふん させる
帯状 おびじょう 回 かい や扁 ひらた 桃 もも 体 たい
小脳 しょうのう と縫 ぬい 線 せん 核 かく
LCから分泌 ぶんぴつ されるノルアドレナリンは多 おお くの脳 のう のニューロンを活性 かっせい 化 か させる。
ラットにおける細胞 さいぼう 外 がい 記録 きろく 法 ほう では、青 あお 斑 むら 核 かく ニューロンは覚醒 かくせい 時 じ に持続 じぞく 的 てき な発射 はっしゃ をし、徐 じょ 波 なみ 睡眠 すいみん で発射 はっしゃ は減 げん 弱 じゃく 、レム睡眠 すいみん で活動 かつどう を停止 ていし する。そのため覚醒 かくせい に関連 かんれん していると考 かんが えられている。尻尾 しっぽ をピンセットでつまむ、体 からだ に息 いき を吹 ふ きかける等 とう の感覚 かんかく 入力 にゅうりょく で興奮 こうふん する。また、注意 ちゅうい 行動 こうどう 時 じ に活動 かつどう が興奮 こうふん し、皮質 ひしつ を賦活 ふかつ させる。軸 じく 索 さく から細胞 さいぼう 体 たい に側 がわ 枝 えだ を伸 の ばしており、細胞 さいぼう 体 たい に存在 そんざい するα あるふぁ 2受容 じゅよう 体 たい を介 かい して自己 じこ 抑制 よくせい をかけている。
青 あお 斑 むら 核 かく を含 ふく む上 うえ 行 ぎょう 性 せい 網 もう 様 さま 体 たい 賦活 ふかつ 系 けい が抑制 よくせい されるとノンレム睡眠 すいみん が発現 はつげん する。
LCはストレス時 じ の多 おお くの交感神経 こうかんしんけい の反応 はんのう を仲介 ちゅうかい するのに重要 じゅうよう な役割 やくわり を担 にな っている。この核 かく はストレスで活性 かっせい 化 か され、ノルアドレナリン を分泌 ぶんぴつ することで反応 はんのう する。それにより前 ぜん 前頭 まえがしら 皮質 ひしつ を介 かい して認知 にんち 機能 きのう を変 か え、nucleus accumbensを介 かい してモチベーションをあげ、視床 ししょう 下部 かぶ ー下垂 かすい 体 たい ー副腎 ふくじん 系 けい を活性 かっせい 化 か し、脳幹 のうかん を介 かい して交感神経 こうかんしんけい の活動 かつどう を上 あ げ、副 ふく 交感神経 こうかんしんけい の活動 かつどう を抑制 よくせい する。視床 ししょう 下部 かぶ ー下垂 かすい 体 たい ー副腎 ふくじん 系 けい の活性 かっせい 化 か に特異 とくい 的 てき に、ノルアドレナリンは視床 ししょう 下部 かぶ からのコルチコトロピン放出 ほうしゅつ 因子 いんし (CRH)、さらに下垂 かすい 体 たい からACTH の分泌 ぶんぴつ を刺激 しげき し、副腎 ふくじん でのコルチゾール の合成 ごうせい を促進 そくしん する。LCから放出 ほうしゅつ されたノルアドレナリン はその産 さん 生 せい を抑制 よくせい し、CRHはその産 さん 生 せい を抑制 よくせい するフィードバックを形成 けいせい する。一方 いっぽう LCにはノルアドレナリン 産 さん 生 せい を増加 ぞうか させる[4] 。
ストレス に関連 かんれん した認知 にんち 機能 きのう におけるLCの役割 やくわり は複雑 ふくざつ である。青 あお 斑 むら 核 かく から放出 ほうしゅつ されたノルアドレナリン (NE)はα あるふぁ 2受容 じゅよう 体 たい に作用 さよう し、working memory(ワーキングメモリー )を増加 ぞうか させるが、過剰 かじょう なNEは低 てい 親和 しんわ 性 せい α あるふぁ 1受容 じゅよう 体 たい を介 かい してworking memoryを減少 げんしょう させる[5] 。
精神 せいしん 医学 いがく 的 てき 研究 けんきゅう では、LCから起 お こり扁 ひらた 桃 もも 体 たい のbasolateral nucleusに終 お わる神経 しんけい 回路 かいろ (brain circuit)においてノルアドレナリンシナプス後 ご の反応 はんのう が、多 おお くのストレス誘発 ゆうはつ 性 せい 恐怖 きょうふ 疾患 しっかん や特 とく に外傷 がいしょう 後 ご ストレス障害 しょうがい (PTSD )の病態 びょうたい 生理 せいり に大 おお きく関 かか わっている。"Combat-related PTSD (2005年 ねん の第 だい 2次 じ 世界 せかい 戦争 せんそう からの減少 げんしょう するアメリカ軍隊 ぐんたい のベテラン研究 けんきゅう )では死後 しご に右側 みぎがわ のLCニューロンの数 かず が減少 げんしょう していることを示 しめ している[6] 。
LCは鬱 うつ 病 びょう 、パニック障害 しょうがい 、不安 ふあん に関係 かんけい している。ノルアドレナリン再 さい 取 と り込 こ み阻害 そがい 剤 ざい (レボキセチン、アトモキセチン)、セロトニン-ノルアドレナリン再 さい 取 と り込 こ み阻害 そがい 剤 ざい (ヴェンラファキシン)、ノルアドレナリン-ドーパミン再 さい 取 と り込 こ み阻害 そがい 剤 ざい (ブプロピオン)などの内服薬 ないふくやく はLCに対 たい して作用 さよう し効果 こうか を発揮 はっき すると考 かんが えられている。
青 あお 斑 むら 核 かく にはオピオイド受容 じゅよう 体 たい (μ みゅー 、κ かっぱ )が発現 はつげん している。オピオイドの鎮痛 ちんつう 作用 さよう の一部 いちぶ は青 あお 斑 むら 核 かく から下 した 行 ぎょう 性 せい 抑制 よくせい 性 せい 神経 しんけい 経路 けいろ を介 かい するものである[7] 。
転写 てんしゃ 調節 ちょうせつ 因子 いんし MECP2 の遺伝 いでん 的 てき 欠損 けっそん がRett症候群 しょうこうぐん の原因 げんいん と考 かんが えられている[8] 。MECP2欠損 けっそん はマウスのモデルで自律 じりつ 神経 しんけい や交感神経 こうかんしんけい に関連 かんれん したカテコールアミン の機能 きのう 不全 ふぜん と関連 かんれん していると考 かんが えられている。LCは脳 のう 内 ない のノルアドレナリン 神経 しんけい の起源 きげん であり、吻側(大脳皮質 だいのうひしつ 、海馬 かいば 、視床 ししょう 下部 かぶ )や尾 お 側 がわ (小脳 しょうのう 、脳幹 のうかん 核 かく )に広 ひろ く投射 とうしゃ している[9] 。実際 じっさい 、この構造 こうぞう の変化 へんか はMECP2欠損 けっそん マウスで観察 かんさつ されるいくつかの症状 しょうじょう に関与 かんよ している。LCニューロンの細胞 さいぼう 体 たい の電気 でんき 生理学 せいりがく 的 てき 特性 とくせい の変化 へんか が示 しめ されている。過 か 興奮 こうふん 性 せい や機能 きのう 低下 ていか などである。
アルツハイマー病 びょう ではLCニューロンの最大 さいだい 70%が失 うしな われている[10] 。LC細胞 さいぼう から分泌 ぶんぴつ されるノルアドレナリン は、大脳皮質 だいのうひしつ や海馬 かいば のニューロン、グリア細胞 さいぼう 、血管 けっかん 周囲 しゅうい の微小 びしょう 環境 かんきょう における内因 ないいん 性 せい の抗 こう 炎症 えんしょう 物質 ぶっしつ を供給 きょうきゅう している[11] 。ノルアドレナリンはアミロイドβ べーた により誘導 ゆうどう されるサイトカインの産 さん 生 せい やアミロイドβ べーた の貪食 どんしょく を抑制 よくせい するマイクログリア を刺激 しげき する。それゆえ、LCの変性 へんせい がアルツハイマー病 びょう の脳 のう でのアミロイドβ べーた の沈着 ちんちゃく に関与 かんよ しているかもしれない。
自閉症 じへいしょう の子供 こども は発熱 はつねつ があると、その障害 しょうがい が少 すく なくなることが言 い われてきた。最近 さいきん の研究 けんきゅう では自閉症 じへいしょう の行動 こうどう はLC-NA系 けい の機能 きのう 不全 ふぜん によるもので、発熱 はつねつ が一時 いちじ 的 てき にこの系 けい を再 さい 賦活 ふかつ するという仮説 かせつ がある。さらにLC-NA系 けい が機能 きのう 的 てき に維持 いじ されていることは、少 すく なくともいくつかの自閉症 じへいしょう のスペクトラムの疾患 しっかん は可逆 かぎゃく 性 せい であることを示 しめ している。さらにこれらの疾患 しっかん の原因 げんいん を追求 ついきゅう し、生物 せいぶつ 学 がく 的 てき テストを行 おこな い、LC-NA系 けい に焦点 しょうてん を当 あ てた内服薬 ないふくやく の研究 けんきゅう が行 おこな われている。
^ Dahlstroem, A; Fuxe, K (1964). “Evidence for the existence of monoamine-containing neurons in the central nervous system. I. Demonstration of monoamines in the cell bodies of brain stem neurons”. Acta Physiol Scand Suppl SUPPL 232 : 1-55. PMID 14229500 .
^ Mouton, PR; Pakkenberg, B; Gundersen, HJ; Price, DL (1994). “Absolute number and size of pigmented locus coeruleus neurons in young and aged indivisuals.”. J Chem Neuroanat 7 (3): 185-90. PMID 7848573 .
^ Mehler,Mark F; Dominick P (2009). “Autism, fever, epigenetics and the locus coeruleus (http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/SO165017308001379).”.+ Brain Research Reviews 59 (2): 388-392.
^ Benarroch, EE (2009). “The locus ceruleus norepinephrine system:functional organization and potential clinical significance.”. Neurology 73 (20): 1699-704.
^ Ramos, BP; Arnsten, AF (2007). “Adrenergic pharmacology and cognition:focus on the prefrontal cortex.”. Pharmacol Ther (113): 523-536. PMID 16387990 (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16387990 ).
^ Bracha, HS; Garcia-Rill, E; Mrak, RE; Skinner, R (2005). “Postmortem locus coerulesu neuron count in three American veterans with probable or possible war-related PTSD”. The Journal of neuropsychiatry and clinical neurosciences doi :10.1176/appi neuropsych.17.5.503 17 (4): 503-9. PMID 16387990 (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16387990 ).
^ Lutz PE, Kieffer BL (2013). Trends Neuroscience 36 : 195-206.
^ Amir, RE; Van den Veyver, IB; Wan, M; Tran, CQ; Francke, U; Zoghbi, HY (1999). “Rett syndrome is caused by mutations in X-linked MECP2, encoding methylCoG-binding protein 2.”. Nat Genet 23 (2): 185-8.
^ Hokfelt, T; Martensson, R; Bjorklund, A; Kleinau, S; Goldstein, M (1984). Distribution maps of tyrosine-hydroxylase-immunoreactive neurons in the rat brain.In2. Classical Transmitters in the CNS, PartI (A. Bjorklund and T.Hokfelt, eds). Elsevier, New York . pp. 277-379.
^ Bondareff, W; Mountjoy, CQ; Roth, M (1982). “Loss of neurons of origin of the adrenergic projections to cerebral cortex (nucleus locus ceruleus) in senile dementia.”. Neurology 32 (2): 164-8.
^ Heneka, MT; Radrigny, F; Regen, T; Martinez-Hernandez, A; Dumitrescu-Ozimek, L; Terwel, D; Jardanhazi-Kurutz, D; Walter, J (2010). “Locus ceruleus controls Alzheimer's disease pathology by modulating microglial functions through norepinephrine.(http://www.pnas.org.libproxy.ucl.ac.uk/content/107/13/6058.full.pdf)”.+ Proc Natl Acad Sci USA doi :10.1073/pnas.0909586107 (107): 6058-6063. PMID 20231476 .