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小脳 - Wikipedia

小脳しょうのう(しょうのう、えい: cerebellumラテン語らてんごで「ちいさなのう」を意味いみする)は、のう部位ぶい名称めいしょうのうがわからたときに大脳だいのうがわ位置いちし、外観がいかんカリフラワーじょうをし、脳幹のうかんうしろのほうからコブのようにしたちいさな器官きかんである。脳幹のうかん小脳しょうのうあいだにはだいよんのうしつ存在そんざいする。おもさは成人せいじんで120〜140グラムで、のう全体ぜんたいおもさの10%きょうをしめ、大脳だいのうよりもはるかにおおくの神経しんけい細胞さいぼうがある。

のう: 小脳しょうのう
のうじょうだん緑色みどりいろ小脳しょうのう
ヒトののう外側そとがわめん小脳しょうのうみぎ紫色むらさきいろしめ部分ぶぶん
のうないでの小脳しょうのう位置いち赤色あかいろしめ部分ぶぶん)。
ひだり側面そくめんから、みぎ正面しょうめんからたとき。
名称めいしょう
日本語にほんご 小脳しょうのう
英語えいご cerebellum
ラテン語らてんご cerebellum
略号りゃくごう Cb
関連かんれん構造こうぞう
上位じょうい構造こうぞう ひしのうこうのう
構成こうせい要素ようそ 小脳しょうのうむし小脳しょうのう半球はんきゅう小脳しょうのうへん小脳しょうのうかくなど
動脈どうみゃく うえ小脳しょうのう動脈どうみゃくぜんした小脳しょうのう動脈どうみゃくこうした小脳しょうのう動脈どうみゃく
画像がぞう
アナトモグラフィー さん次元じげんCG
Digital Anatomist 左側ひだりがわめん
右側みぎがわめん
内側うちがわめん
前方ぜんぽう
下方かほう
後方こうほう
脳幹のうかん
冠状かんじょうだん海馬かいばさい/のうゆみ
水平すいへいだん
はたじょうだん
関連かんれん情報じょうほう
IBVD 体積たいせき面積めんせき
Brede Database 階層かいそう関係かんけい座標ざひょう情報じょうほう
NeuroNames 関連かんれん情報じょうほう一覧いちらん
NIF 総合そうごう検索けんさく
MeSH Cerebellum
グレイ解剖かいぼうがく 書籍しょせきちゅう説明せつめい英語えいご
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概要がいよう 編集へんしゅう

のう神経しんけい細胞さいぼうだい部分ぶぶんは、小脳しょうのうにあり、そのかずは1000おく以上いじょうである。小脳しょうのう主要しゅよう機能きのう知覚ちかく運動うんどう機能きのう統合とうごうであり、平衡へいこうすじ緊張きんちょう随意筋ずいいきん運動うんどう調節ちょうせつなどをつかさどる。このため、小脳しょうのう損傷そんしょうけると、運動うんどう平衡へいこう感覚かんかく異常いじょうをきたし、精密せいみつ運動うんどうができなくなったりさけっているようなふらふらとした歩行ほこうとなることがある。小脳しょうのう損傷そんしょうされると、そうした症状しょうじょうきるが、意識いしき異常いじょうをきたしたり知覚ちかく異常いじょうこすことはない。このため、かつては高次こうじのう機能きのうには関係かんけいがなく、もっぱら運動うんどう巧緻こうちおこなうための調節ちょうせつ器官きかんだとみなされ、脳死のうし問題もんだいかんする議論ぎろんきたさいひと生死せいしには関係かんけいがないので、小脳しょうのう脳死のうし判定はんてい検査けんさ対象たいしょうからはずすべきと主張しゅちょうする学者がくしゃもいた。ところがその小脳しょうのうがもっと高次こうじ機能きのうゆうしているとかんがえられる現象げんしょう相次あいついで報告ほうこく[よう出典しゅってん]された。また、アルツハイマーびょう患者かんじゃのうPET調しらべたところ、頭頂とうちょう連合れんごうがわあたま連合れんごうまった機能きのうしていないにもかかわらず、小脳しょうのう活発かっぱつ活動かつどうしていることが判明はんめいした。アルツハイマーびょう患者かんじゃでは例外れいがいなく小脳しょうのう活動かつどうしており、通常つうじょうより強化きょうかされている。これは大脳だいのうからうしなわれたメンタルな機能きのう小脳しょうのう代替だいたいしているとかんがえられている。伊藤いとう正男まさおは、小脳しょうのう大脳だいのうシミュレーターであって、からだおぼえる記憶きおく表現ひょうげんした[1]

小脳しょうのう傷害しょうがい運動うんどう障害しょうがいこすことを最初さいしょしめしたのは、18世紀せいき生理学せいりがくしゃたちであった。その19世紀せいき初頭しょとう中盤ちゅうばんにかけて、実験じっけん動物どうぶつもちいた小脳しょうのう切除せつじょ病変びょうへん形成けいせい実験じっけんおこなわれ、小脳しょうのう傷害しょうがい異常いじょう運動うんどう異常いじょうあゆみさま筋力きんりょく低下ていか原因げんいんとなることがあきらかにされた。これらの研究けんきゅう成果せいかもとづき、小脳しょうのう運動うんどう制御せいぎょ重要じゅうよう役割やくわりたすという結論けつろんみちびかれたのである[2]

協調きょうちょう運動うんどう制御せいぎょのため、小脳しょうのう大脳だいのう運動うんどう情報じょうほう筋肉きんにく伝達でんたつ運動うんどうこさせる)および脊髄せきずい小脳しょうのう身体しんたい位置いち保持ほじのための固有こゆう受容じゅようフィードバックこす)をむすおおくの神経しんけい回路かいろ存在そんざいする。小脳しょうのう運動うんどうほろ調整ちょうせいするため体位たいいたいえずフィードバックをかけることで、これらの経路けいろ統合とうごうしている[2]

発生はっせい進化しんか 編集へんしゅう

 
小脳しょうのう位置いち様々さまざま角度かくどから動画どうがあかいところが小脳しょうのう
 
S. カハールによるニワトリ小脳しょうのうのスケッチ。その構造こうぞう構成こうせい細胞さいぼうは、ヒトをふく哺乳類ほにゅうるいとほとんど変化へんかい。左上ひだりうええる、じょう突起とっきばした細胞さいぼうがプルキンエ細胞さいぼうである。

のう発生はっせいは、はい発生はっせい早期そうきにおけるぜんのうちゅうのうひしのう形成けいせいからはじまる。ひしのうはいのうもっとがわ位置いちし、ここから小脳しょうのう発生はっせいこる。ひしのうから菱形ひしがた (rhombomeres) とばれる8つの隆起りゅうき形成けいせいされ、このうち神経しんけいかん最終さいしゅうてきのう脊髄せきずいになる)のつばさばん位置いちする2つから小脳しょうのう発生はっせいする。

小脳しょうのう構成こうせいする神経しんけい細胞さいぼうは2つの領域りょういきから発生はっせいするとかんがえられている。1つ領域りょういきだいよんのうしつ上方かみがた位置いちするのうしつたいである。この領域りょういきからは、小脳しょうのう皮質ひしつ主要しゅよう出力しゅつりょくニューロンであるプルキンエ細胞さいぼう深部しんぶ小脳しょうのうかく神経しんけい細胞さいぼうつくられる。2つ領域りょういきそと顆粒かりゅうそうとしてられる領域りょういきである。この細胞さいぼうそう小脳しょうのう外側そとがわおおい、顆粒かりゅう細胞さいぼうさんせいする。ヒトの場合ばあいそと顆粒かりゅうそう顆粒かりゅう細胞さいぼう出生しゅっしょう内側うちがわ移動いどうし、うち顆粒かりゅうそう到達とうたつする。この移動いどうにより、そと顆粒かりゅうそう成熟せいじゅくした小脳しょうのうでは消失しょうしつしている。これら2つの領域りょういきくわえ、小脳しょうのうはくただしからも神経しんけい細胞さいぼう発生はっせいがあるかについては統一とういつ見解けんかいられていない。

小脳しょうのう系統けいとう発生はっせいがくてき起源きげんは、皮質ひしつ (archipallium) とばれるもっと原始げんしてきのう構成こうせい領域りょういきの1つにまでさかのぼる。小脳しょうのう皮質ひしつ神経しんけい回路かいろは、魚類ぎょるいから哺乳類ほにゅうるいいた脊椎動物せきついどうぶつ全般ぜんぱんにほぼ共通きょうつうした構造こうぞうつ。これは小脳しょうのうぜん脊椎動物せきついどうぶつにおいて重要じゅうよう機能きのうたしていることの証拠しょうこであるとかんがえられている。

構造こうぞう機能きのう 編集へんしゅう

 
小脳しょうのう縦断じゅうだんめんしきしろしつ白色はくしょく部分ぶぶん)の分岐ぶんきによる小脳しょうのうかつじゅ構造こうぞう明瞭めいりょうである。

小脳しょうのうあたま方向ほうこう正中せいちゅう存在そんざいする小脳しょうのうむし左右さゆういちつい小脳しょうのう半球はんきゅうからっている。小脳しょうのう表面ひょうめんには横走よこはしりするみぞ小脳しょうのうみぞ)が存在そんざいし、小脳しょうのうみぞにより小脳しょうのうかいけられている。小脳しょうのううえ小脳しょうのうあし中小ちゅうしょうのうあししも小脳しょうのうあしによってそれぞれちゅうのうはし延髄えんずいむすばれていて、おおくの入出力にゅうしゅつりょく線維せんいかよっている。

小脳しょうのう大脳だいのうおなじく、はいしろしつはくただしつ。しろしつはその樹木じゅもく類似るいじした分岐ぶんき構造こうぞうから小脳しょうのうかつじゅ(arbor vitae、生命せいめい)とばれ、4つの深部しんぶ小脳しょうのうかくふくんでいる。小脳しょうのうおおまかな機能きのうもとづいて、3つの発生はっせいがくてき肉眼にくがんてきでもある)部位ぶいけられている。3そうから小脳しょうのう皮質ひしつには特徴とくちょうてき細胞さいぼうぐんられ、様々さまざま入出力にゅうしゅつりょく回路かいろ形成けいせいしている。酸素さんそふくんだ血液けつえきが、のうそこ動脈どうみゃく椎骨ついこつ動脈どうみゃくより分岐ぶんきする3ほん動脈どうみゃくえだから供給きょうきゅうされる。

区分くぶん 編集へんしゅう

小脳しょうのうは3つのことなる観点かんてん解剖かいぼうがく系統けいとう発生はっせいがくおよび機能きのう)から区分くぶんされる。

  • 解剖かいぼうがくてき区分くぶん

小脳しょうのう肉眼にくがんてきに、かた小節しょうせつぜん小脳しょうのうだいいちきれの吻側)、後葉こうよう小脳しょうのうだいいちきれがわ)の3部位ぶい区分くぶんされる。こうしゃ正中せいちゅうせん位置いちする小脳しょうのうむしと、外側そとがわ小脳しょうのう半球はんきゅうにさらにけられる。

  • 系統けいとう発生はっせいがくてき機能きのうてき

小脳しょうのう系統けいとう発生はっせいがくてき、あるいは機能きのうてき区分くぶんもとづいて3つに分類ぶんるいすることができる(下表かひょう参照さんしょう)。小脳しょうのう機能きのうおおくは、小脳しょうのう傷害しょうがい病変びょうへん罹患りかんした患者かんじゃからのデータ分析ぶんせき、あるいは動物どうぶつ実験じっけんによって理解りかいされてきた。小脳しょうのう機能きのうてきには前庭ぜんてい小脳しょうのう脊髄せきずい小脳しょうのう大脳だいのう小脳しょうのうという3つの領域りょういき区分くぶんされそれぞれことなる種類しゅるい引導いんどう関与かんよしている。

機能きのうてき名称めいしょう
系統けいとう発生はっせいがくてき名称めいしょう
解剖かいぼうがくてき部位ぶい 役割やくわり
前庭ぜんてい小脳しょうのう
小脳しょうのう
かた小節しょうせつ小脳しょうのうむし隣接りんせつする) 身体しんたい平衡へいこう眼球がんきゅう運動うんどう調節ちょうせつする。はんぶんまわしかん前庭ぜんてい神経しんけいかくからの入力にゅうりょく信号しんごうり、前庭ぜんてい神経しんけい外側そとがわかく内側うちがわかく出力しゅつりょくする。また、上丘かみおか視覚しかくからの視覚しかく信号しんごう入力にゅうりょく後者こうしゃはしかく経由けいゆする)をる。前庭ぜんてい小脳しょうのう傷害しょうがいは、平衡へいこうあゆみさま異常いじょうこす。
脊髄せきずい小脳しょうのう
きゅう小脳しょうのう
小脳しょうのうむしおよび小脳しょうのう半球はんきゅうなかあいだ部分ぶぶん ("paravermis") からだみき四肢しし運動うんどう制御せいぎょする。三叉みつまた神経しんけい視覚しかくけい聴覚ちょうかくけいおよび脊髄せきずいさく脊髄せきずい小脳しょうのうふくむ)からの固有こゆう受容じゅよう信号しんごう受信じゅしんする。深部しんぶ小脳しょうのうかくへと出力しゅつりょくされた信号しんごう大脳皮質だいのうひしつ脳幹のうかんたっし、下位かい運動うんどうけい調節ちょうせつする。脊髄せきずい小脳しょうのうには感覚かんかく地図ちず存在そんざいし、身体しんたい部位ぶい空間くうかんてき位置いちデータをっている(小脳しょうのうむしからだみき四肢ししきんくらい、paravermisは四肢ししとおくらい)。運動うんどう最中さいちゅうに、身体しんたいのある部位ぶいがどこへうごくかを予測よそくするため、固有こゆう受容じゅよう入力にゅうりょく信号しんごう詳細しょうさい調節ちょうせつおこなうことができる。
大脳だいのう小脳しょうのう
しん小脳しょうのう
小脳しょうのう半球はんきゅう側面そくめん部分ぶぶん 運動うんどう計画けいかく感覚かんかく情報じょうほう評価ひょうかおこな[3]大脳皮質だいのうひしつとく頭頂とうちょう)からのぜん入力にゅうりょくを、はしかく経由けいゆしてり、おも視床ししょうはら外側そとがわ出力しゅつりょくする。信号しんごうぜん運動うんどういち運動うんどうおよびあかかくたっし、しもオリーブかくとおってふたた小脳しょうのう半球はんきゅうへとリンクする。

前庭ぜんてい小脳しょうのう 編集へんしゅう

前庭ぜんてい小脳しょうのうかた小節しょうせつからなり、小脳しょうのうなかもっと原始げんしてき部位ぶいであり、すでに魚類ぎょるいにもみられる。前庭ぜんてい小脳しょうのう前庭ぜんてい入力にゅうりょく視覚しかく入力にゅうりょくけ、前庭ぜんてい神経しんけいかく投射とうしゃし、平衡へいこう調節ちょうせつ前庭ぜんてい反射はんしゃ眼球がんきゅう運動うんどう関与かんよする。

脊髄せきずい小脳しょうのう 編集へんしゅう

脊髄せきずい小脳しょうのうむし半球はんきゅう中間なかまからなり系統けいとう発生はっせいてきには前庭ぜんてい小脳しょうのうよりもあたらしい。脊髄せきずい小脳しょうのうばれる理由りゆう脊髄せきずいからからだせい感覚かんかく入力にゅうりょく固有こゆう感覚かんかく入力にゅうりょくけるからである。むし頭部とうぶきんたい幹部かんぶからからだせい感覚かんかく入力にゅうりょくのほか、視覚しかく入力にゅうりょく聴覚ちょうかく入力にゅうりょく前庭ぜんてい感覚かんかく入力にゅうりょくける。またしついただきかく経由けいゆして大脳皮質だいのうひしつおよび脳幹のうかん領域りょういき出力しゅつりょくし、ここからからだみき四肢ししきんすじぐん制御せいぎょする内側うちがわ下降かこうけいしょうじる。むし隣接りんせつする半球はんきゅう中間なかま四肢ししからのからだせい感覚かんかく入力にゅうりょくける。半球はんきゅう中間なかまニューロン中位ちゅういかく球状きゅうじょうかくせんじょうかくふくむ)に投射とうしゃし、これが外側そとがわ皮質ひしつ脊髄せきずいけいあかかく脊髄せきずいけい修飾しゅうしょくし、よりとおくらいゆびすじ制御せいぎょする。

大脳だいのう小脳しょうのう 編集へんしゅう

大脳だいのう小脳しょうのう半球はんきゅう外側そとがわからなる。大脳だいのう小脳しょうのう系統けいとう発生はっせいがくてきもっとあたらしく、ヒトや類人猿るいじんえんではさるねこくらべてはるかにおおきく発達はったつしている。大脳だいのう小脳しょうのう入力にゅうりょくもと出力しゅつりょくさきだい部分ぶぶん大脳皮質だいのうひしつである。大脳だいのう小脳しょうのう出力しゅつりょくじょうかく経由けいゆして運動うんどう運動うんどう前野まえの前頭まえがしら前野まえのおくられる。大脳だいのう半球はんきゅう運動うんどう計画けいかく実行じっこう関与かんよする。ワーキングメモリーのように運動うんどう計画けいかく直接ちょくせつむすびつかない認知にんち機能きのうにも関与かんよしている可能かのうせいがある。

深部しんぶ小脳しょうのうかく 編集へんしゅう

 
はしにおける横断おうだんめんだい4のうしつがわ深部しんぶ小脳しょうのうかくみとめる。

小脳しょうのう中心ちゅうしんしろしつ内部ないぶに4つい神経しんけいかく深部しんぶ小脳しょうのうかく存在そんざいする。これらの神経しんけいかく小脳しょうのう皮質ひしつプルキンエ細胞さいぼうから抑制よくせいせい入力にゅうりょく信号しんごうGABA介在かいざいせい)を、こけじょう線維せんいからは興奮こうふんせい信号しんごうグルタミン酸ぐるたみんさん介在かいざいせい)をる。小脳しょうのう出力しゅつりょく線維せんい大半たいはん小脳しょうのうかくからおこりはじめする。例外れいがいてきに、かた小節しょうせつからの線維せんい小脳しょうのうかく経由けいゆすることなく、直接ちょくせつ前庭ぜんてい神経しんけいかくにシナプスを形成けいせいする。脳幹のうかんにあるこの前庭ぜんてい神経しんけいかくは、こけじょう線維せんいプルキンエ細胞さいぼうからの入力にゅうりょく信号しんごう両方りょうほうるというてんで、深部しんぶ小脳しょうのうかく類似るいじした構造こうぞうである。

外側そとがわから中央ちゅうおうにかけ、じょうかくせんじょうかく球状きゅうじょうかくしついただきかくの4つの深部しんぶ小脳しょうのうかく位置いちする。一部いちぶ動物どうぶつしゅではせんじょうかく球状きゅうじょうかく区別くべつ不明瞭ふめいりょうで、わりに挿入そうにゅうかくばれる単一たんいつ神経しんけいかくつ。せんじょうかく球状きゅうじょうかく明瞭めいりょうかれている動物どうぶつしゅにおいても、挿入そうにゅうかくという用語ようごかくをまとめた意味いみでしばし ば使用しようされる。

一般いっぱんてきに、どの神経しんけいかく小脳しょうのう解剖かいぼうがくてき区分くぶん関連かんれんしている。じょうかく小脳しょうのう半球はんきゅう外側そとがわ深部しんぶにあり、挿入そうにゅうかくちゅうあいだたいに、しついただきかく小脳しょうのうむし位置いちする。これらの構造こうぞうてき関連かんれんせいは、神経しんけいかく小脳しょうのう皮質ひしつ神経しんけい回路かいろにおいて維持いじされている。すなわち、じょうかく小脳しょうのう半球はんきゅう外側そとがわからの神経しんけい刺激しげき大半たいはんり、挿入そうにゅうかくしついただきかくはそれぞれちゅうあいだたいむしからの信号しんごうのほとんどを担当たんとうしている。

小脳しょうのうあし 編集へんしゅう

 
小脳しょうのうあし走行そうこうしめしたしき小脳しょうのうは3種類しゅるい小脳しょうのうあしによってちゅうのうきょう延髄えんずいむすばれている。

小脳しょうのう両側りょうがわ半球はんきゅうとそれを中央ちゅうおう結合けつごうするむしからなり、3ついのうあしたばじょう神経しんけい線維せんい小脳しょうのうあし)により脳幹のうかん結合けつごうしている。それぞれの小脳しょうのうあしうえ小脳しょうのうあし結合けつごううで)・中小ちゅうしょうのうあしはしうで)・しも小脳しょうのうあしさくじょうからだ)とばれる。結合けつごううえ小脳しょうのうあしちゅうのうと、中小ちゅうしょうのうあしはしと、しも小脳しょうのうあし延髄えんずい結合けつごうしている。

小脳しょうのうあし名称めいしょう 機能きのう
うえ小脳しょうのうあし (superior peduncle) 小脳しょうのう主要しゅよう出力しゅつりょく経路けいろで、あかかく視床ししょう外側そとがわはらがわかく/ぜんはらがわかく延髄えんずいなどと連絡れんらくする。大半たいはんじょうかくからおこりはじめする遠心えんしんせい線維せんいからるが、ぜん脊髄せきずい小脳しょうのうから小脳しょうのうぜんへとつながる求心きゅうしんせい線維せんい一部いちぶが、うえ小脳しょうのうあし経由けいゆしている。「じょうかくあかかく視床ししょうぜん運動うんどう皮質ひしつ」と「小脳しょうのう視床ししょうぜん運動うんどう皮質ひしつ」の2経路けいろが、うえ小脳しょうのうあしとおおもなルートであり、運動うんどう立案りつあん重要じゅうよう役割やくわりたす。
中小ちゅうしょうのうあし (middle peduncle) 最大さいだい小脳しょうのうあしであり、「大脳皮質だいのうひしつはし小脳しょうのう」をむす壮大そうだい経路けいろ一部いちぶす。すべきょうかくおこりはじめする遠心えんしんせい線維せんい構成こうせいされる。この経路けいろ大脳だいのうしん皮質ひしつ感覚かんかく運動うんどうからしたぎょうする。
しも小脳しょうのうあし (inferior peduncle) 様々さまざま種類しゅるい出入でいりりょく線維せんいふくむ。平衡へいこう姿勢しせい保持ほじなど、運動うんどう前庭ぜんてい機能きのうともな固有こゆう感覚かんかく入力にゅうりょく統合とうごうに、おも関与かんよする。全身ぜんしんからの固有こゆう情報じょうほうこう脊髄せきずい小脳しょうのうつうじてしも小脳しょうのうあし伝達でんたつされ、きゅう小脳しょうのうにシナプスを形成けいせいする。前庭ぜんてい情報じょうほう小脳しょうのういたる。したオリーブかくからおこりはじめするとうじょう線維せんいしも小脳しょうのうあしとおりプルキンエ細胞さいぼうのデンドライトにシナプス結合けつごうし、また、プルキンエ細胞さいぼうからの情報じょうほうを、脳幹のうかんがわ位置いちする前庭ぜんてい神経しんけいかくおく役割やくわりつ。
 
延髄えんずい横断おうだんめんしたオリーブかくした小脳しょうのうあし、オリーブ小脳しょうのうふくむ。

小脳しょうのう入力にゅうりょく信号しんごうおくるルートにこけじょう線維せんいとうじょう線維せんいがある。こけじょう線維せんいおもはしかくはじまり、たいがわ大脳皮質だいのうひしつからの情報じょうほう伝達でんたつするが、脊髄せきずい小脳しょうのうからおこりはじめどうがわ脊髄せきずいからの情報じょうほうつたえるものもある。とうじょう線維せんいしもオリーブかく由来ゆらいする。1個いっこプルキンエ細胞さいぼうじょう突起とっきにつき、1ほんとうじょう線維せんい興奮こうふんせいシナプスを形成けいせいする。

小脳しょうのうからの出力しゅつりょく信号しんごうのほとんどは、小脳しょうのうあしおくられるまえ小脳しょうのうかく経由けいゆする。重要じゅうよう例外れいがいルートとして、プルキンエ細胞さいぼうによる前庭ぜんてい神経しんけいかく直接ちょくせつ抑制よくせいがある。

うえ小脳しょうのうあし 編集へんしゅう

おも小脳しょうのうから伝導でんどう通過つうかちゅうのう連絡れんらくする。じょうかくあかかく視床ししょうじょうかくからうえ小脳しょうのうあし通過つうかじょう小脳しょうのうあし交叉こうさ交叉こうさし、体側たいそくあかかく視床ししょうかう)がちゅうのうあいだのうにむかう。深部しんぶ小脳しょうのうかくからの出力しゅつりょく線維せんいだい部分ぶぶんうえ小脳しょうのうあしとおる。

うえ小脳しょうのうあし萎縮いしゅくしめ疾患しっかん進行しんこうせいかくうえせい麻痺まひマチャド・ジョセフびょうじょうかくあかかくあわあおだまルイからだ萎縮いしゅくしょうなどがられている。系統けいとう萎縮いしゅくしょううえ小脳しょうのうあし萎縮いしゅくしめさないのが通常つうじょうであるため、進行しんこうせいかくうえせい麻痺まひ系統けいとう萎縮いしゅくしょう鑑別かんべつでしばしば利用りようされる所見しょけんになる。

中小ちゅうしょうのうあし 編集へんしゅう

おも大脳皮質だいのうひしつなどのあたらしい部分ぶぶんからの興奮こうふん小脳しょうのうつたえる入力にゅうりょく線維せんいはし小脳しょうのうちゅう小脳しょうのうあしとおる。はしかくから神経しんけい線維せんいはし交叉こうさしてたいがわなか小脳しょうのうあしとおり、たいがわ小脳しょうのう半球はんきゅう連絡れんらくする。

MRIで中小ちゅうしょうのうあし病変びょうへんしめ疾患しっかん多岐たきにわたる。トルエン中毒ちゅうどく系統けいとう萎縮いしゅくしょう脆弱ぜいじゃくX関連かんれんせん運動うんどう失調しっちょう症候群しょうこうぐん脳幹のうかん腫瘍しゅよう浸潤しんじゅんウィルソンびょうのほか各種かくしゅ炎症えんしょうせい疾患しっかんでも異常いじょう信号しんごういきみとめられることがある。

しも小脳しょうのうあし 編集へんしゅう

おも脊髄せきずい延髄えんずいなど系統けいとう発生はっせいてきふる部分ぶぶんから小脳しょうのうはい伝導でんどうとおる。すなわちオリーブ小脳しょうのうこう脊髄せきずい小脳しょうのう前庭ぜんてい小脳しょうのうとおる。深部しんぶ小脳しょうのうかくからの出力しゅつりょく線維せんいだい部分ぶぶんうえ小脳しょうのうあしとおるが、例外れいがいてきかた小節しょうせつのプルキンエ細胞さいぼう一部いちぶしも小脳しょうのうあしかいして出力しゅつりょく線維せんい脳幹のうかん前庭ぜんてい神経しんけいかくおくっている。

小脳しょうのう皮質ひしつ 編集へんしゅう

小脳しょうのう表面ひょうめんは、小脳しょうのう皮質ひしつばれるはいしろしつおおっており、3そうそう構造こうぞうしめす。表層ひょうそうからじゅん分子ぶんしそうプルキンエ細胞さいぼうそう顆粒かりゅうそうの3そうである。皮質ひしつ機能きのうは、深部しんぶ小脳しょうのうかくへとおくられる情報じょうほう制御せいぎょすることである。こけじょう線維せんいとうじょう線維せんいしもオリーブかくからおこりはじめ)によって深部しんぶ小脳しょうのうかく伝達でんたつされた感覚かんかく運動うんどう情報じょうほうは、そこから様々さまざま運動うんどうへと転送てんそうされ、運動うんどう出力しゅつりょくとタイミングを制御せいぎょする。こけじょう線維せんいとうじょう線維せんいはさらに、この情報じょうほう小脳しょうのう皮質ひしつにもおくみ、プルキンエ細胞さいぼうの「発火はっか」を調節ちょうせつする。プルキンエ細胞さいぼう強力きょうりょく抑制よくせいせいシナプスをつうじて、小脳しょうのうかくへのフィードバックをおこなう。この抑制よくせい刺激しげきこけじょう線維せんいとうじょう線維せんい活性かっせいできる小脳しょうのうかく範囲はんい調節ちょうせつし、小脳しょうのう運動うんどう機能きのうたす最終さいしゅうてき効果こうかをコントロールしている。小脳しょうのう皮質ひしつのシナプスのつよさは、その可塑かそせいにあることがしめされている。これにより小脳しょうのう皮質ひしつ回路かいろ常時じょうじ適切てきせつたもたれ、出力しゅつりょくほろ調整ちょうせいし、運動うんどう学習がくしゅう協調きょうちょう基礎きそ形成けいせいすることが可能かのうとなっている。小脳しょうのう皮質ひしつのどのそうにも、この回路かいろ構成こうせいする様々さまざま細胞さいぼうふくまれている。

顆粒かりゅうそう (granular layer) 編集へんしゅう

 
マウス小脳しょうのう皮質ひしつきょう焦点しょうてん顕微鏡けんびきょう画像がぞう。プルキンエ細胞さいぼうそうには、洋梨ようなしじょうのプルキンエ細胞さいぼうGFPにより緑色みどりいろ蛍光けいこうはっしている)がいちれつならんでいる。これより上方かみがたの、じょう突起とっきびている部分ぶぶん分子ぶんしそう下方かほうくら領域りょういき顆粒かりゅうそうである。顆粒かりゅうそうのさらにしたよこ方向ほうこう線維せんい走行そうこうしている部位ぶい画像がぞうのほぼ中央ちゅうおう)がしろしつにあたる。

最深さいしん顆粒かりゅうそう入力にゅうりょくそう膨大ぼうだいかずやく1000おく)の顆粒かりゅう細胞さいぼうがある。顆粒かりゅう細胞さいぼう染色せんしょく切片せっぺん標本ひょうほんではちいさくみつならしみされるかくとしてみられる。顆粒かりゅうそうには少数しょうすうおおきなゴルジ細胞さいぼう (Golgi cell) もあり、一部いちぶ小脳しょうのう領域りょういきには、少数しょうすうのルガロ細胞さいぼう (Lugaro cell) 、たん極性きょくせい刷毛ばけ細胞さいぼう (unipolar brush cell) 、シャンデリア細胞さいぼう (chandelier cell) などのニューロンもある。小脳しょうのうへの2つの主要しゅよう求心きゅうしんせい入力にゅうりょくのうちの1つであるこけじょう線維せんいは、顆粒かりゅうそう終止しゅうしする。球形きゅうけいのシナプス終末しゅうまつをもつこけじょう線維せんい小脳しょうのういと球体きゅうたい (cerebellar glomerulus) というシナプスふく合体がったいにおいて顆粒かりゅう細胞さいぼうとゴルジ細胞さいぼう興奮こうふんさせる。ゴルジ細胞さいぼうはんかいせいループをつくり顆粒かりゅう細胞さいぼう抑制よくせいする。ヒトの小脳しょうのうには600〜800おくもの顆粒かりゅう細胞さいぼう存在そんざいし、これはのう脊髄せきずいにあるぜん神経しんけい細胞さいぼうの、じつに7わりめている。

プルキンエ細胞さいぼうそう (Purkinje cell layer) 編集へんしゅう

ちゅうあいだプルキンエ細胞さいぼうそう小脳しょうのう出力しゅつりょくそうであり、細胞さいぼうたい直径ちょっけいが50〜80μみゅーmもあるプルキンエ細胞さいぼうが1そうならんでいる。プルキンエ細胞さいぼう上方かみがたかって扇状せんじょうひろがったじょう突起とっき分子ぶんしそうして、興奮こうふんせいおよび抑制よくせいせい介在かいざいせいニューロンからの入力にゅうりょく小脳しょうのうへの主要しゅよう求心きゅうしんせい線維せんいであるとうじょう線維せんいからの入力にゅうりょくける。プルキンエ細胞さいぼう小脳しょうのう皮質ひしつ代表だいひょうする統合とうごうてきニューロンであり、小脳しょうのうからの出力しゅつりょく信号しんごうはっする唯一ゆいいつ神経しんけい細胞さいぼうである。その細胞さいぼうたいからはじょう突起とっきばれる突起とっき分子ぶんしそうび、すうひゃくにおよぶ分岐ぶんきつ。じょう突起とっきかた平面へいめんてきであり、となり同士どうしじょう突起とっき平行へいこうかさなりうような構造こうぞうをとっている。顆粒かりゅう細胞さいぼうからびる平行へいこう線維せんいとは直角ちょっかくまじわる。プルキンエ細胞さいぼうはGABA作動さどうせいであり、深部しんぶ小脳しょうのうかくおよび脳幹のうかん前庭ぜんてい神経しんけいかく抑制よくせいせいシナプスを形成けいせいする。1つのプルキンエ細胞さいぼうが、およそ10まん〜20まんほん平行へいこう線維せんいからの興奮こうふんせい刺激しげきる。

分子ぶんしそう (molecular layer) 編集へんしゅう

もっと外側そとがわにある分子ぶんしそう小脳しょうのう皮質ひしつ情報処理じょうほうしょりおこな重要じゅうようそうである。分子ぶんしそうにはよく発達はったつしたプルキンエ細胞さいぼうじょう突起とっきほかに、かご細胞さいぼう (basket cell) とほしじょう細胞さいぼう (stellate cell) の2種類しゅるい抑制よくせいせい介在かいざいニューロンがある。分子ぶんしそうには顆粒かりゅう細胞さいぼうじくさくもあり、しょうちょうじくたいして平行へいこう走行そうこうするため平行へいこう線維せんい (parallel fiber)といわれる。空間くうかんてき極性きょくせいをもつプルキンエ細胞さいぼうじょう突起とっき前後ぜんご方向ほうこうにはよくひろがっているが、内側うちがわ外側そとがわ方向ほうこうにはごくせま範囲はんいにしかひろがっていない。平行へいこう線維せんい内側うちがわ外側そとがわ方向ほうこうはしっているため、プルキンエ細胞さいぼうじょう突起とっきたいして直行ちょっこうするきになる。そのため個々ここ顆粒かりゅう細胞さいぼうは、多数たすうのプルキンエ細胞さいぼうのそれぞれと少数しょうすうシナプスを形成けいせいすることができるが、そのじくさくうえぎょうして分子ぶんしそういたるときには、少数しょうすうのプルキンエ細胞さいぼうと、よりみつにシナプス結合けつごう形成けいせいする。

求心きゅうしんせい線維せんい 編集へんしゅう

小脳しょうのうへの主要しゅよう求心きゅうしんせい線維せんいであるこけじょう線維せんいとうじょう線維せんいは、いずれも小脳しょうのうのニューロンと興奮こうふんせいシナプスを形成けいせいするが、小脳しょうのう皮質ひしつことなるそう終止しゅうしして、プルキンエ細胞さいぼうことなるパターンの発火はっか活動かつどう誘発ゆうはつするためことなる機能きのうになっているとかんがえられる。

こけじょう線維せんい(たいじょうせんい、mossy fiber) 編集へんしゅう

はしかくしゅとして大脳皮質だいのうひしつとく前頭葉ぜんとうよう頭頂とうちょうからの運動うんどうかんする入力にゅうりょくけ(皮質ひしつきょう)る。はしかくじくさく中小ちゅうしょうのうあしおおきなふくらみとなり、こけじょう線維せんいとなってたいがわ小脳しょうのう皮質ひしつ投射とうしゃされ、大脳皮質だいのうひしつからの情報じょうほう末梢まっしょうからの感覚かんかく情報じょうほう小脳しょうのうつたえる。こけじょう線維せんい顆粒かりゅうそう顆粒かりゅう細胞さいぼうじょう突起とっき興奮こうふんせいシナプスを形成けいせいする。1個いっこ顆粒かりゅう細胞さいぼう少数しょうすうこけじょう線維せんいからしか入力にゅうりょくけないが、顆粒かりゅう細胞さいぼうじくさくである平行へいこう線維せんいなが距離きょり走行そうこうするため、個々こここけじょう線維せんい多数たすうのプルキンエ細胞さいぼう情報じょうほうつたえることになる。こけじょう線維せんい入力にゅうりょくおおくの細胞さいぼう収束しゅうそくしている。これは1個いっこのプルキンエ細胞さいぼうが20〜100まん顆粒かりゅう細胞さいぼうじくさくとシナプス形成けいせいをしているからである。こけじょう細胞さいぼうからだせい感覚かんかく情報じょうほう平行へいこう線維せんいかいして生体せいたい左右さゆう方向ほうこうおくはたらきがある。

とうじょう線維せんい(とじょうせんい、climbing fiber) 編集へんしゅう

とうじょう線維せんい延髄えんずいしもオリーブかくおこりはじめする。したオリーブかくへの入力にゅうりょく脊髄せきずい脊髄せきずいオリーブ)、運動うんどう上丘かみおか前庭ぜんていかく三叉みつまた神経しんけいかくぶた前野まえの非常ひじょう多彩たさいである。末梢まっしょう大脳皮質だいのうひしつから感覚かんかくせい情報じょうほう運動うんどうせい情報じょうほうつたわる。したオリーブかくからしも小脳しょうのうあし形成けいせいとうじょう線維せんいとなる。とうじょう線維せんいという名称めいしょうは、個々ここ線維せんいがブドウのづるからみつくようにしてプルキンエ細胞さいぼう細胞さいぼうからだきんじゅじょう突起とっきかこみ、多数たすうのシナプスを形成けいせいしていることに由来ゆらいする。1ほんとうじょう線維せんいは1〜10のプルキンエ細胞さいぼうとシナプスを形成けいせいするが1個いっこのプルキンエ細胞さいぼうは1ほんとうじょう線維せんいとしかシナプスはつくらない。とうじょう線維せんいしもオリープかく周期しゅうきてき活動かつどうをプルキンエ細胞さいぼう前後ぜんご方向ほうこう出力しゅつりょくしている。平行へいこう線維せんいによるからだせい感覚かんかく位置いち情報じょうほう左右さゆう方向ほうこう入力にゅうりょくと、とうじょう線維せんいによる時間じかんてき情報じょうほう前後ぜんご方向ほうこう入力にゅうりょくからプルキンジェ細胞さいぼうにおいて協調きょうちょう運動うんどうとき空間くうかんてき制御せいぎょがおこなわれているとかんがえられている[4]

遠心えんしんせい線維せんい 編集へんしゅう

小脳しょうのう皮質ひしつからの主要しゅよう出力しゅつりょくはプルキンエ細胞さいぼうである。プルキンエ細胞さいぼう小脳しょうのう深部しんぶかくぐんしついただきかく中位ちゅういかくじょうかくなどに出力しゅつりょくする。前庭ぜんてい小脳しょうのうのプルキンエ細胞さいぼうからの出力しゅつりょく小脳しょうのう深部しんぶかくぐんではなく前庭ぜんてい神経しんけいかく直接ちょくせつ連絡れんらくしている。脊髄せきずい小脳しょうのうではむしのプルキンエ細胞さいぼうしついただきかく前庭ぜんてい神経しんけいかく連絡れんらくする。半球はんきゅう中間なかまのプルキンエ細胞さいぼう球状きゅうじょうかくせんじょうかく連絡れんらくする。大脳だいのう小脳しょうのうのプルキンエ細胞さいぼうじょうかく連絡れんらくする。うえ小脳しょうのうあし深部しんぶ小脳しょうのうかくから出力しゅつりょく線維せんいだい部分ぶぶん通過つうかする。

小脳しょうのう髄質ずいしつ 編集へんしゅう

小脳しょうのう皮質ひしつしたは、小脳しょうのう髄質ずいしつばれるしろしつである。小脳しょうのう内部ないぶ小脳しょうのう髄質ずいしつ構成こうせいされ、中心ちゅうしんにはしついただきかく球状きゅうじょうかくせんじょうかくがある。小脳しょうのう髄質ずいしつ小脳しょうのうかいしろしつ突起とっきをだす(小脳しょうのうかつじゅ)。一部いちぶ線維せんいどうがわ半球はんきゅうあいだ連合れんごう線維せんいであるが、たいがわ半球はんきゅう同様どうよう部位ぶい結合けつごうする交連線維せんいうえ小脳しょうのうあし中小ちゅうしょうのうあししも小脳しょうのうあし構成こうせいする投射とうしゃせい線維せんいである。

血液けつえき供給きょうきゅう 編集へんしゅう

うえ小脳しょうのう動脈どうみゃくぜんした小脳しょうのう動脈どうみゃくこうした小脳しょうのう動脈どうみゃくの3種類しゅるい動脈どうみゃくが、小脳しょうのう血液けつえき供給きょうきゅうしている。

うえ小脳しょうのう動脈どうみゃく (SCA)

のうそこ動脈どうみゃく側面そくめんこう大脳だいのう動脈どうみゃくつながる部分ぶぶん下流かりゅうから分岐ぶんきする。はし経由けいゆして小脳しょうのう到達とうたつする。SCAは小脳しょうのう皮質ひしつ小脳しょうのうかくうえ小脳しょうのうあし中小ちゅうしょうのうあし使つかわれる血液けつえき大半たいはん供給きょうきゅうする。

ぜんした小脳しょうのう動脈どうみゃく (AICA)

のうそこ動脈どうみゃく側面そくめん椎骨ついこつ動脈どうみゃくとの接続せつぞく上流じょうりゅうから分岐ぶんきする。はし下部かぶ小脳しょうのうきょうかく通過つうかして小脳しょうのういたる。小脳しょうのうぜん下部かぶのほか、顔面がんめん神経しんけい内耳ないじ神経しんけいにも血液けつえき供給きょうきゅうする。AICAの損傷そんしょう不全ふぜん麻痺まひ麻痺まひ顔面がんめん感覚かんかく喪失そうしつ、さらには聴覚ちょうかく障害しょうがい原因げんいんとなる。小脳しょうのうきょうかく梗塞こうそくきると、あぶみほねすじ顔面がんめん神経しんけい支配しはいける)の機能きのう障害しょうがいによる聴覚ちょうかく過敏かびんや、うちリンパりゅう加速かそく内耳ないじ神経しんけい影響えいきょうける)によるめまい発症はっしょうする。

こうした小脳しょうのう動脈どうみゃく (PICA)

のうそこ動脈どうみゃく側面そくめん椎骨ついこつ動脈どうみゃくとの接続せつぞく下流かりゅうから分岐ぶんきする。小脳しょうのう後部こうぶ表層ひょうそうたっするまえ延髄えんずいでも分岐ぶんきし、いくつかの脳神経のうしんけいかくにも血液けつえきおくむ。PICAは小脳しょうのう下部かぶのほか、しも小脳しょうのうあしうたぐかく迷走めいそう神経しんけい運動うんどうかく三叉みつまた脊髄せきずいかくたばかく内耳ないじ神経しんけいかくへの血液けつえき供給きょうきゅうになう。

機能きのう障害しょうがい 編集へんしゅう

運動うんどう失調しっちょう小脳しょうのう損傷そんしょうけた場合ばあいにしばしばられる症状しょうじょうで、一般いっぱんてきには協調きょうちょう運動うんどう欠如けつじょによる複雑ふくざつ病態びょうたいである。小脳しょうのう異常いじょうつけるために、あゆみさま姿勢しせい検査けんさふく神経しんけいがくてき検査けんさおこなわれる。出血しゅっけつ梗塞こうそく腫瘍しゅよう変性へんせいなどの構造こうぞうてき異常いじょうは、断層だんそう撮影さつえいあきらかになることもある。小脳しょうのう検査けんさには、MRI検査けんさほうCTスキャンよりも感受性かんじゅせいつよいとされる[5]

小脳しょうのう症候しょうこう 編集へんしゅう

小脳しょうのう失調しっちょうかんがえるうえ理解りかいする必要ひつようがある小脳しょうのう運動うんどう機能きのうは2つである。1つは意図いとする運動うんどう全体ぜんたい企画きかくやプランの具体ぐたいてき実行じっこう司令しれい作成さくせいするということである。目的もくてき運動うんどう達成たっせいするためにはどの筋肉きんにくをどの順番じゅんばんうごかせばよいかというような意識いしきのぼらない実行じっこう司令しれい作成さくせいである。2つ運動うんどう実行じっこう司令しれい実際じっさい運動うんどうとの補正ほせいである。これはこってしまった運動うんどうだけではなくこりつつあると予想よそうされる運動うんどう補正ほせいふくまれる。運動うんどう補正ほせいかんしては小脳しょうのうのfunctional unitの関与かんよがわかっている。このユニットへの情報じょうほう入力にゅうりょく中小ちゅうしょうのうあしした小脳しょうのうあしかいしており出力しゅつりょくけいはプルキンエ細胞さいぼうである。プルキンエ細胞さいぼうでは入力にゅうりょくされた様々さまざま情報じょうほう処理しょりされて実行じっこう司令しれい小脳しょうのうかくからうえ小脳しょうのうあしかいして大脳だいのうおくっている。小脳しょうのう徴候ちょうこう実行じっこう司令しれい不良ふりょう補正ほせい不良ふりょう場合ばあいがほとんどである。古典こてんてき神経しんけい診断しんだんがくでは小脳しょうのう症候しょうこう小脳しょうのう遠心えんしんけい障害しょうがい小脳しょうのうじょうかく障害しょうがい中小ちゅうしょうのうあし障害しょうがい分類ぶんるいすることはほとんどできない。おおくの小脳しょうのう症候しょうこう深部しんぶ感覚かんかく障害しょうがい麻痺まひきり体外たいがい障害しょうがいでもみられる。しかし異常いじょうのパターンが病態びょうたいによってことなる。

測定そくてい障害しょうがい (dysmetria)

目的もくてきぶつめがけて運動うんどうしているときに、目的もくてきぶつ空間くうかんてき位置いちたいする実行じっこう司令しれい障害しょうがいされており目的もくてきぶつ到着とうちゃくしないことである。空間くうかんてき位置いちかんする実行じっこうプランの不良ふりょうである。目的もくてきぶつとおぎる測定そくてい過大かだい (hypermetria) と手前てまえまる測定そくてい過小かしょう (hypometria) がある。測定そくてい過大かだい小脳しょうのう症候しょうこうとして特徴とくちょうてきである。麻痺まひ深部しんぶ感覚かんかく障害しょうがいきり体外たいがい障害しょうがいでも測定そくてい障害しょうがいみとめられる。深部しんぶ感覚かんかく障害しょうがいでは測定そくてい過大かだい測定そくてい過小かしょうともにみとめられミスの仕方しかた一貫いっかんせいがない。きり体外たいがい障害しょうがいでは測定そくてい過小かしょう麻痺まひでは測定そくてい過大かだいおおい。被験者ひけんしゃ測定そくてい過大かだいすることを見越みこして運動うんどうすることもあるが、素早すばやおこなわせるとこの補正ほせいかなくなるので検査けんさはすばやく運動うんどうさせることも重要じゅうようである。

運動うんどう分解ぶんかい (decomposition) と共同きょうどう運動うんどう障害しょうがい (dyssynergia)

運動うんどうがスムーズにおこなえず、ひとひとつに分解ぶんかいされてしまうことをいう。

変換へんかん運動うんどう障害しょうがい (dysdiadochokinesis)

ある運動うんどうかえおこなうことがむずかしく、リズムがみだれたり(時間じかんてきみだれる)、運動うんどうそのものが空間くうかんてきみだれたりする現象げんしょうである。この障害しょうがい原因げんいん時間じかん測定そくてい障害しょうがい (dyschronometria) とかんがえられている。麻痺まひ深部しんぶ感覚かんかく障害しょうがいきり体外たいがい障害しょうがいでもみとめられるが、小脳しょうのう症候しょうこうでは運動うんどうはやくすると悪化あっかし、ゆっくりすると改善かいぜんする傾向けいこうがある。

時間じかん測定そくてい障害しょうがい (dyschronometria)

運動うんどうはじめようとしたとき開始かいしおそくなるという所見しょけんとしてあらわれる。

筋肉きんにくのトーヌスの低下ていか (hypotonus)

小脳しょうのうすじ紡錘ぼうすいへの制御せいぎょ異常いじょうしょうじてすじトーヌスがるとされている。

眼球がんきゅう運動うんどう障害しょうがい

測定そくてい過大かだい眼球がんきゅう運動うんどうにもみとめられocular dysmetriaといわれる。小脳しょうのう特有とくゆうのものはすくなく、rebound nystagmusが比較的ひかくてき特有とくゆうである。これは注視ちゅうししたのち正中せいちゅうもどしたときぎゃくきにみとめられるである。また小脳しょうのうへん病変びょうへんではdown beat nystagmusがみとめられる。

随意ずいい運動うんどう

随意ずいい運動うんどうとしては口蓋こうがいせん口蓋こうがいミオクローヌス)とaction myoclonusとaction tremorがられている。口蓋こうがいせん規則きそくてき軟口蓋なんこうがいうご病態びょうたいでありじょうかくオリーブ傷害しょうがいされるとみとめられる。action myoclonusとaction tremorは安静あんせいにはなに症状しょうじょうがないが運動うんどうはじめようとするとおおきな随意ずいい運動うんどう出現しゅつげんすることである。

上肢じょうし小脳しょうのう症候しょうこう診察しんさつ 編集へんしゅう

ゆびはなゆび試験しけん (finger-nose-finger test)

自分じぶんはなけんしゃゆび交互こうごにさわる検査けんさである。測定そくてい過大かだい運動うんどう分解ぶんかい評価ひょうかできる。深部しんぶ感覚かんかく障害しょうがいでは閉眼でおこなうと悪化あっかする視覚しかく補正ほせいがある。また深部しんぶ感覚かんかく障害しょうがいではずれかた傾向けいこうがない。小脳しょうのう失調しっちょうでは測定そくてい過大かだいとなり、パーキンソンびょうなどかたちぢみがある場合ばあい測定そくてい過小かしょうをおこす。軽度けいど麻痺まひでも異常いじょうをしめす。

かいない試験しけん (hand pronation test)

閉眼した状態じょうたい両手りょうてかいがいきょじょうさせ、合図あいずとともにりょう上肢じょうしかいないさせる。小脳しょうのう失調しっちょうがあるとかいないしすぎてしまう。測定そくてい過大かだい時間じかんてき測定そくてい障害しょうがい評価ひょうかしている。

かいないかいがい試験しけん (hand pronation-supination test)

かいないかいがいかえ検査けんさである。変換へんかん障害しょうがい評価ひょうかするものである。小脳しょうのう障害しょうがいがあるとリズムがみだれ、おそくなり、運動うんどうおおきさも不規則ふきそくになる。片手かたてずつべつべつに検査けんさする。一般いっぱんにききてのほうがはや上手じょうずにできる。ゆびのタッピングも同様どうよう返還へんかん運動うんどう障害しょうがい試験しけんである。

holmes-stewart試験しけん
すじトーヌスの評価ひょうか

すじトーヌス評価ひょうかとしてかたすり試験しけんをおこなうこともある。

下肢かしからだみき小脳しょうのう症候しょうこう診察しんさつ 編集へんしゅう

かかとひざ試験しけん (heel knee test)

小脳しょうのう失調しっちょうでは運動うんどう分解ぶんかい測定そくてい過大かだいみとめられる。深部しんぶ感覚かんかく障害しょうがいではズレかたに一貫いっかんせいがない。

ひざたたき試験しけん (knee-tapping test)

ゆびのtapping試験しけん相当そうとうする。

あし到達とうたつ動作どうさ試験しけん

はは趾でけんしゃゆびさわるように指示しじする。

膝立ひざたて試験しけん

仰向あおむけに片足かたあしひざをたてる。両足りょうあしをつけずにたいがわあしおな角度かくどてるように指示しじする。深部しんぶ感覚かんかく障害しょうがいでは測定そくてい過大かだい測定そくてい過小かしょうどちらもしめすが小脳しょうのう失調しっちょうでは測定そくてい過大かだい目立めだつ。

病理びょうりがく 編集へんしゅう

小脳しょうのう皮質ひしつ病理びょうり 編集へんしゅう

よわいせい変化へんか 編集へんしゅう

小脳しょうのう脳幹のうかんとともに重量じゅうりょう減少げんしょう大脳だいのうくらべてちいさい、20さいだい平均へいきんのう重量じゅうりょうたいして100さいだいでは大脳だいのうは20〜25%減少げんしょうしているのにたいして小脳しょうのう脳幹のうかんは10〜15%程度ていど減少げんしょうとなる。肉眼にくがんてきにはよわいせい変化へんか小脳しょうのうむし顕著けんちょである。とく小脳しょうのうだいいちきれより上面うわつらぜんである中心ちゅうしんしょう山頂さんちょう目立めだつ。

マクロ病変びょうへん 編集へんしゅう

キアリ奇形きけいといった奇形きけいのうヘルニアや交叉こうさせい小脳しょうのう萎縮いしゅく (crossed cerebellar atrophy) がよくられたマクロ病変びょうへんである。遠隔えんかく機能きのう障害しょうがい (diaschisis) の一種いっしゅとしてしめされることもある。交叉こうさせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょうとは広範こうはんいちがわせい大脳だいのう病変びょうへんからなが年月としつき反対はんたいがわ小脳しょうのう萎縮いしゅくする現象げんしょうである。Urichらは病理びょうり発生はっせいじょ立場たちばから交叉こうさせい小脳しょうのう萎縮いしゅくを3つのタイプにけている。それは

  • 前頭まえがしらがわあたまきょう病巣びょうそうつづいてこるはしかく順行じゅんこうせいけいニューロン変性へんせい中小ちゅうしょうのうあし萎縮いしゅくによる小脳しょうのう皮質ひしつ病変びょうへんともなわない小脳しょうのう半球はんきゅう萎縮いしゅく
  • 反対はんたいがわはしかく順行じゅんこうせいけいニューロン変性へんせいによる顆粒かりゅう細胞さいぼうそう萎縮いしゅく顕著けんちょ小脳しょうのう萎縮いしゅく
  • てんかん発作ほっさによるとかんがえられる小脳しょうのう萎縮いしゅく

びまんせいのミクロ病変びょうへん 編集へんしゅう

大脳皮質だいのうひしつ同様どうよう小脳しょうのう皮質ひしつそう強調きょうちょうされた変化へんかしめす。プルキンエ細胞さいぼう変化へんか中心ちゅうしんとなることがおおく、変性へんせい疾患しっかんでは小脳しょうのう側部そくぶむしはたむし半球はんきゅう病変びょうへん強調きょうちょうされる傾向けいこうがある。

分子ぶんしそう

分子ぶんしそうはHE染色せんしょくではエオジンにまるこまかい網目あみめじょうのニューロピルと小型こがたかご細胞さいぼう (basket cells) 、ほしじょう細胞さいぼう (stellate cells) からなる。プルキンエ細胞さいぼうじょう突起とっき顆粒かりゅう細胞さいぼうじくさくが鍍銀染色せんしょく確認かくにんできる。分子ぶんしそうでは固有こゆう疾患しっかんられていない。前述ぜんじゅつのプルキンエ細胞さいぼうじょう突起とっき顆粒かりゅう細胞さいぼうじくさくがあるためプルキンエ細胞さいぼうそう顆粒かりゅう細胞さいぼうそう変化へんかしょうじると分子ぶんしそうでアストログリアが造成ぞうせいすることがおおい。プルキンエ細胞さいぼうじょう突起とっき限局げんきょくせいふくらみ突起とっきているようにえるカクタスがみとめられることもある。カクタスは代謝たいしゃせい疾患しっかん発達はったつ障害しょうがい有名ゆうめいだが系統けいとう萎縮いしゅくしょう皮質ひしつせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょう、CJDなどでみとめられ疾患しっかん特異とくいせいはない。

プルキンエ細胞さいぼうそう

分子ぶんしそう下端かたんおおきなフラスコがた細胞さいぼうが1れつならんだプルキンエ細胞さいぼうそうがある。そのじょう突起とっき分子ぶんしそうなかおうぎのように平面へいめんてき枝分えだわかれする。そのめん小脳しょうのうかいたいしてほぼ直角ちょっかくである。プルキンエ細胞さいぼうきょたいして非常ひじょう脆弱ぜいじゃく細胞さいぼうであるため、死後しご変化へんかせん浮腫ふしゅかどうかを区別くべつするためにベルグマングリア(小脳しょうのうのアストログリア)の増殖ぞうしょく確認かくにんする。死後しご変化へんかせん浮腫ふしゅではプルキンエ細胞さいぼうそう海綿かいめんじょうはなれひらきし、プルキンエ細胞さいぼう消失しょうしつしているが、アストログリアの反応はんのうはみられない。

プルキンエ細胞さいぼうの胞体は分子ぶんしそうにあるかご細胞さいぼう突起とっきによってかこまれている。正常せいじょうではその神経しんけい線維せんい同時どうじまるためバスケットの部分ぶぶんはわかりにくいがプルキンエ細胞さいぼう脱落だつらくするとempty basketsという所見しょけん確認かくにんができる。トルペドはプルキンエ細胞さいぼうもっときんじくさくしょうじたスフェロイドであり顆粒かりゅう細胞さいぼうそうないみとめられる。プルキンエ細胞さいぼう障害しょうがい示唆しさする所見しょけんだが疾患しっかん特異とくいせいはない。系統けいとう萎縮いしゅくしょうでは多数たすうみとめられることがあるが遺伝いでんせい脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょうでは遭遇そうぐうすることはまれである。

皮質ひしつせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょう病理びょうり学的がくてきにはしもオリーブかく-小脳しょうのうむしというとうじょう線維せんいけい限局げんきょくする病変びょうへんしめす。系統けいとう萎縮いしゅくしょうマチャド・ジョセフびょうではしゅたる病変びょうへん小脳しょうのう入力にゅうりょくするこけじょう線維せんいけい変性へんせいであること、病変びょうへんがそれ以外いがいにも複数ふくすう部位ぶいみとめられるてん皮質ひしつせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょうとはことなる。またアルコールせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょう自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうはた腫瘍しゅようせい神経しんけい症候群しょうこうぐんでは病巣びょうそう不連続ふれんぞくてき、あるいは解剖かいぼうがくてき部位ぶい無関係むかんけい病変びょうへん強弱きょうじゃくみとめられる。

顆粒かりゅう細胞さいぼうそう

皮質ひしつなかもっとあつえるそう顆粒かりゅう細胞さいぼうそうである。円形えんけいでクロマチンに小型こがた細胞さいぼうかく密集みっしゅうしているため、HE染色せんしょく標本ひょうほんじゃく拡大かくだいぞうでは顆粒かりゅうそう全体ぜんたいあお紫色むらさきいろにみえる。顆粒かりゅう細胞さいぼう脱落だつらくする場合ばあいしろしつがわから消失しょうしつすることがおおい。

限局げんきょくせいのミクロ病変びょうへん 編集へんしゅう

小脳しょうのう限局げんきょくせい病変びょうへんでは梗塞こうそくおおい。

小脳しょうのう髄質ずいしつ病理びょうりがく 編集へんしゅう

変性へんせい疾患しっかんはくただしジストロフィー、だつずいせい疾患しっかん腫瘍しゅよう小脳しょうのう髄質ずいしつはくただし)に病変びょうへんみとめられる。

変性へんせい疾患しっかん 編集へんしゅう

系統けいとう萎縮いしゅくしょう小脳しょうのうわりめんしろしつ萎縮いしゅくつよいため皮質ひしつ相対そうたいてきおおきくえる。これははしかくこけじょう線維せんいけい)のみならずしもオリーブかくとうじょう線維せんいけい)から小脳しょうのうはい神経しんけい線維せんい変性へんせいがプルキンエ細胞さいぼうからじょうかくかう神経しんけい線維せんい変性へんせい凌駕りょうがしているからとかんがえられている。その小脳しょうのうしろしつわりめん非常ひじょう特徴とくちょうてきであり肉眼にくがんてきには境界きょうかい不鮮明ふせんめいまだらじょうしろ部分ぶぶんとやや褐色かっしょくびた部分ぶぶん混在こんざいしている。系統けいとう萎縮いしゅくしょうでは変性へんせいじょうかくえることはない。一方いっぽうマチャド・ジョセフびょうではじょうかくもんからうえ小脳しょうのうあし線維せんいせいグリオーシスがひろがる。

はくただしジストロフィー 編集へんしゅう

副腎ふくじんしろしつジストロフィーでは病変びょうへん小脳しょうのうしろしつからはし底部ていぶ中小ちゅうしょうのうあししもオリーブかくしも小脳しょうのうあしなどに左右さゆう対称たいしょうせいにひろがる。アレキサンダーびょうではローゼンタール線維せんい出現しゅつげんする。

だつずいせい疾患しっかん 編集へんしゅう

多発たはつせい硬化こうかしょうなどでだつずいせい病変びょうへんともなうことがある。

腫瘍しゅよう 編集へんしゅう

小児しょうに腫瘍しゅよう小脳しょうのう髄質ずいしつこりやすい。ずいしゅ小脳しょうのうちゅう部下ぶかめんこうはっする。

小脳しょうのうかく病理びょうりがく 編集へんしゅう

小脳しょうのうかくだいよんのうしつ天井てんじょう付近ふきんしついただきかく球状きゅうじょうかくせんじょうかくじょうかくの4つの神経しんけいかくがあり、発生はっせい学的がくてきにはしもオリーブかくおな起源きげんである。プルキンエ細胞さいぼうはこの小脳しょうのうかくのいずれかに投射とうしゃ線維せんいおくる。じょうかくもっとおおきく、じょうかく以外いがい選択せんたくてき障害しょうがいしめ疾患しっかんられていないため神経しんけい病理びょうりがくではじょうかく注目ちゅうもくする。じょうかく入力にゅうりょく線維せんい外側そとがわからはいる。じょうかく内側うちがわうえ小脳しょうのうあしかってじょうかくもんひらいており、じょうかく出力しゅつりょく線維せんいじょうかくもんうえ小脳しょうのうあしとおる。

血管けっかん障害しょうがい 編集へんしゅう

じょうかく循環じゅんかん障害しょうがい影響えいきょうけやすい。てい酸素さんそ脳症のうしょうではじょうかく脱落だつらくみとめられる。小脳しょうのう出血しゅっけつこうはつ部位ぶいでもある。あかかくどうがわしもオリーブかく、それに反対はんたいがわ小脳しょうのうむすんだせんをギラン・モラレの三角さんかくという。この三角さんかく一部いちぶ梗塞こうそく外傷がいしょう切断せつだんされるとしもオリーブかく肥大ひだいしょうじることがある。とくに病巣びょうそうじょうかくふくまれているとき観察かんさつされることがおおい。

変性へんせい 編集へんしゅう

じょうかく変性へんせいには神経しんけい細胞さいぼうの膨化、グルモース変性へんせい神経しんけい細胞さいぼう変性へんせい脱落だつらくられている。ペラグラ脳症のうしょうクロイツフェルト・ヤコブびょうではじょうかくリポフスチン顆粒かりゅう沈着ちんちゃくがほとんどないにもかかわらず神経しんけい細胞さいぼうがふくらんでいることがある。日本にっぽんではグルモース変性へんせいといえば小脳しょうのうじょうかくにみられる変化へんかしめ場合ばあいおおい。HE染色せんしょくではこう酸性さんせいていするくもじょう構造こうぞうぶつ集積しゅうせきする。プルキンエ細胞さいぼうじくさく終末しゅうまつぜんシナプス変化へんかかんがえられており、小脳しょうのうじょうかく細胞さいぼう周囲しゅういじくさくまつはしずい線維せんい増加ぞうか発芽はつが)とかんがえられている。プルキンエ細胞さいぼう高度こうど脱落だつらくしている場合ばあいはグルモース変性へんせいみとめられない。小脳しょうのう遠心えんしんけい変性へんせいしめ所見しょけんであり進行しんこうせいかくうえせい麻痺まひじょうかくあかかくあわあおだまルイからだ萎縮いしゅくしょうなどで特徴とくちょうてきみとめられる。じょうかく神経しんけい細胞さいぼう変性へんせい脱落だつらくではじょうかく自体じたいしょうじるいちせい脱落だつらく小脳しょうのう皮質ひしつ病変びょうへんせい脱落だつらくけることができる。いちせい脱落だつらく進行しんこうせいかくうえせい麻痺まひじょうかくあかかくあわあおだまルイからだ萎縮いしゅくしょうフリードライヒ失調しっちょうしょうミトコンドリアびょうのMERRF、ラフォラ小体こていびょうなどでみられる。進行しんこうせいかくうえせい麻痺まひじょうかくあかかくあわあおだまルイからだ萎縮いしゅくしょうではグルモース変性へんせい非常ひじょう特徴とくちょうてきであるが、高度こうど神経しんけい細胞さいぼう脱落だつらくもおこる。ミエリンのあわあきらおもじょうかくもんしょうじ、線維せんいせいグリオーシスで置換ちかんされている。さらにじょうかくもんからうえ小脳しょうのうあしにもグリオーシスがみとめられる。マチャド・ジョセフびょうでは神経しんけい細胞さいぼう脱落だつらくくらべてミエリンのあわあきらじょうかく外側そとがわ内側うちがわ双方そうほうみとめられる。フリードライヒ失調しっちょうしょうじょうかく神経しんけい細胞さいぼう脱落だつらくうえ小脳しょうのうあし変性へんせいあわあおだまやルイからだ変性へんせいともなうことがある。またミトコンドリアびょうのMERRFでは小脳しょうのうじょうかくしもオリーブかくくろしつ基底きていかくなどにいちじるしい萎縮いしゅく神経しんけい細胞さいぼう脱落だつらくやグリオーシスがみられる。また大脳だいのう基底きていかく大脳だいのうしろしつ血管けっかん石灰せっかいしょうじる。ラフォラ小体こていびょう小脳しょうのうではプルキンエ細胞さいぼう顆粒かりゅう細胞さいぼう中等ちゅうとう脱落だつらくくわえてじょうかく神経しんけい細胞さいぼう高度こうど脱落だつらくする。せい脱落だつらく自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう皮質ひしつせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょう、アルコールせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょう系統けいとう萎縮いしゅくしょうなどでみられる。いちせい脱落だつらくくらべると神経しんけい細胞さいぼう脱落だつらく高度こうどではなく萎縮いしゅく中心ちゅうしんとなる。アストログリアの増殖ぞうしょくともなうが線維せんいせいグリオーシスが特徴とくちょうとされる。自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう皮質ひしつせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょう、アルコールせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょうなどプルキンエ細胞さいぼう標的ひょうてきとなっている疾患しっかんでは、プルキンエ細胞さいぼうじくさく変性へんせいじょうかく収斂しゅうれんするためじょうかくがい側部そくぶせっするしろしつにマクロファージがしゅうむらがする。とくはた腫瘍しゅようせい小脳しょうのう変性へんせいしょうではマクロファージがじょうかくがい側部そくぶのみならず途中とちゅうしろしつにもみられることがある。系統けいとう萎縮いしゅくしょうでもじょうかく萎縮いしゅく主体しゅたいである。じょうかくもんしろしつ病変びょうへんがおよぶことは非常ひじょうまれうえ小脳しょうのうあしたもたれる。

小脳しょうのう萎縮いしゅくのまとめ 編集へんしゅう

小脳しょうのう萎縮いしゅくには3つの表現ひょうげんがたられている。とく小脳しょうのう皮質ひしつ変性へんせい(プルキンエ細胞さいぼうがた)とじょうかく変性へんせいじょうかくがた)はあきらかに区別くべつできる。プルキンエ細胞さいぼうがた代表だいひょうれい系統けいとう萎縮いしゅくしょう (MSA-C) であり、小脳しょうのう半球はんきゅうはくただし、プルキンエ細胞さいぼう脱落だつらくし、じょうかくじょうかくもんたもたれる。顆粒かりゅう細胞さいぼうがた代表だいひょうれいメンケスびょう英語えいごばんやGM2ガングリオシドーシスといった代謝たいしゃせい疾患しっかんである。メンケスびょうどう細胞さいぼうない代謝たいしゃ障害しょうがいである。プルキンエ細胞さいぼう脱落だつらくするが顆粒かりゅう細胞さいぼう脱落だつらくいちじるしいのが特徴とくちょうである。MELASをはじめとしたミトコンドリアびょう小脳しょうのう萎縮いしゅくしめすことで有名ゆうめいである。画像がぞうじょう小脳しょうのう萎縮いしゅくしめすがあきらかな小脳しょうのうせい運動うんどう失調しっちょうみとめないこともおおい。顆粒かりゅう細胞さいぼうがたではプルキンエ細胞さいぼう限局げんきょくてきしゅたいしたカクタスやヒトデ小体こていみとめられることがある。ヒトデ小体こていじょう突起とっきとおくらいしゅだいであり分子ぶんしそうにみられるが、カクタスはプルキンエ細胞さいぼうそうみとめられる。じょうかくれい代表だいひょうれいマチャド・ジョセフびょうでありじょうかくじょうかくもんうえ小脳しょうのうあし脱落だつらくし、じょうかくはミクロてきにはグルモース変性へんせいぞうていする。プルキンエ細胞さいぼうたもたれる。グルモース変性へんせいではこう酸性さんせい、嗜銀せいのもやもやした構造こうぞう物質ぶっしつ顆粒かりゅうじょうあるいはリングじょう物質ぶっしつじょうかく神経しんけい細胞さいぼうたいじょう突起とっき周囲しゅういくものでプルキンエ細胞さいぼうじくさくまつはし変化へんかとされている。マチャド・ジョセフびょうではあわあおいたまないぶし萎縮いしゅく特徴とくちょうてきである。ミトコンドリアびょうのMERRFは小脳しょうのうじょうかくにもいちじるしい萎縮いしゅくがみられる。

病変びょうへん部位ぶい プルキンエ細胞さいぼうがた 顆粒かりゅう細胞さいぼうがた じょうかくがた
分子ぶんしそう ±〜+(ヒトデ小体こてい
プルキンエ細胞さいぼうそう ++(ベルグマングリアぞうせい ±〜+(カクタス)
顆粒かりゅう細胞さいぼうそう +〜++ ++
はくただし求心きゅうしん ++
はくただし遠心えんしん ++
じょうかく +〜++ ++(グルモース変性へんせい
代表だいひょうてき疾患しっかん MSA-C、きょせい脳症のうしょう、アルコール中毒ちゅうどく一部いちぶのSCA メンケスびょう、MELAS、一部いちぶ代謝たいしゃせい疾患しっかん DRPLA、MJD、PSP、CBD

出典しゅってん脚注きゃくちゅう 編集へんしゅう

  1. ^ 立花たちばなたかしのうきわめる』朝日あさひ文庫ぶんこ 2001ねん3がつ1にち
  2. ^ a b Fine EJ, Ionita CC, Lohr L (2002). “The history of the development of the cerebellar examination”. Semin Neurol 22 (4): 375-84. PMID 12539058. 
  3. ^ Kingsley, R. E. (2000). Consise Text of Neuroscience (2nd edition ed.). Lippincott Williams and Wilkins. ISBN 0-683-30460-7 
  4. ^ Yamamoto T,Fukuda M,Llinas R:Bilaterally synchronous complex spike Purkinje cell activity in the mammalian cerebellum. Eur J Neurosci 13:327-339,2001
  5. ^ Gilman S (1998). “Imaging the brain. Second of two parts”. NEJM. 338 (13): 889-96. PMID 9516225. 

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