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自己免疫性小脳失調症 - Wikipedia

自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう

自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう(じこめんえきせいしょうのうしっちょうしょう、えい: autoimmune cerebellar ataxia)または免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう(immune-mediated cerebellar ataxia、IMCA)は免疫めんえきせいじょにより小脳しょうのう失調しっちょう症状しょうじょうしめ疾患しっかん総称そうしょうであり、様々さまざま疾患しっかんふくまれる。痙攣けいれんあたりえんけい脳炎のうえん眼球がんきゅう運動うんどう障害しょうがい、stiff-person症候群しょうこうぐん末梢まっしょう神経しんけい障害しょうがいなど小脳しょうのう以外いがい病変びょうへんによる症状しょうじょう合併がっぺいすることがある。自己じこ免疫めんえきてきじょ小脳しょうのうとその入出力にゅうしゅつりょくけい障害しょうがいされていることを証明しょうめいすることによって診断しんだんされる。免疫めんえき療法りょうほう適応てきおうとなるが、良好りょうこうなものから不良ふりょうなものまで様々さまざまである。ここでははた腫瘍しゅようせい神経しんけい症候群しょうこうぐんである腫瘍しゅよう随伴ずいはんせい免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう免疫めんえき介在かいざいせいじょでありふくめてべる。腫瘍しゅようせい自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうとしてよくられているのはこうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう高力こうりきがたこうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうがたていちからがた橋本はしもと脳症のうしょう小脳しょうのう失調しっちょうがたこうクリアジン抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう全身ぜんしんせいエリテマトーデスシェーグレン症候群しょうこうぐん神経しんけいベーチェットびょうなどである。自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうふくまれる疾患しっかん小脳しょうのう皮質ひしつプルキンエ細胞さいぼう変性へんせい主体しゅたいのものがおおい。

小脳しょうのう失調しっちょうしょう

編集へんしゅう

小脳しょうのう失調しっちょうしょうには様々さまざま疾患しっかんふくまれており[1]系統けいとう萎縮いしゅくしょう遺伝いでんせい脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょう皮質ひしつせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょう、その原因げんいん判明はんめいした症候しょうこうせい皮質ひしつせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょうふくまれる。症候しょうこうせい皮質ひしつせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょうには先天せんてん奇形きけいなど構造こうぞうてきなものや、腫瘍しゅようせいのものをはじめ、中毒ちゅうどく(アルコール、こうてんかんやくこううつやく、リチウム、こうがんざいなど)、代謝たいしゃ甲状腺こうじょうせん機能きのう低下ていかしょう、ビタミン欠乏けつぼう)、免疫めんえき介在かいざいせいこうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうこうグリアジン抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう)、はた腫瘍しゅようせいはた腫瘍しゅようせい神経しんけい症候群しょうこうぐんとくこう神経しんけい抗体こうたいとしてこうHu、Yo、Ri、Tr、CV2、Ma、PCA2などがられている)などすうおおくの原因げんいん報告ほうこくされている。以下いか成人せいじん発症はっしょう緩徐かんじょ進行しんこうせい小脳しょうのう失調しっちょうこす症候しょうこうせい皮質ひしつせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょうをまとめる。

鑑別かんべつすべき病態びょうたい 鑑別かんべつのポイント
腫瘍しゅようせい 腫瘍しゅようせい疾患しっかん 頭部とうぶMRIなど画像がぞう検査けんさ
中毒ちゅうどくせい アルコールせい 中毒ちゅうどくせい全体ぜんたいとして詳細しょうさい病歴びょうれき生活せいかつれきちゅう濃度のうどなど
薬剤やくざいせい こうてんかんやく睡眠薬すいみんやく鎮静ちんせいざいこううつやく、リチウム、こう悪性あくせい腫瘍しゅようやく使用しよう
重金属じゅうきんぞく 水銀すいぎんなまりなどの使用しようじょうきょう
化学かがく薬品やくひん 農薬のうやく溶剤ようざい使用しようじょうきょう
代謝たいしゃせい ビタミン欠乏症けつぼうしょう ちゅうビタミンの測定そくてい(Vt.E、B1、B6、B12)
甲状腺こうじょうせん機能きのう低下ていかしょう 甲状腺こうじょうせん機能きのう測定そくてい
免疫めんえき介在かいざいせい こうGAD抗体こうたい関連かんれん こうGAD抗体こうたい、てんかん、糖尿とうにょうびょう合併がっぺい
こうグリアジン抗体こうたい関連かんれん こうグリアジン抗体こうたい下痢げり体重たいじゅう減少げんしょう皮膚ひふえん合併がっぺい
橋本はしもと脳症のうしょう こう甲状腺こうじょうせん抗体こうたいこうNAE抗体こうたい軽度けいど認知にんち機能きのう障害しょうがい精神せいしん症状しょうじょう
はた腫瘍しゅようせい はた腫瘍しゅようせい神経しんけい症候群しょうこうぐん 全身ぜんしん腫瘍しゅよう検索けんさくこう神経しんけい抗体こうたい

免疫めんえきてきじょかいして小脳しょうのう失調しっちょう出現しゅつげんすることは1868ねんジャン=マルタン・シャルコー有名ゆうめい講演こうえんさかのぼる。ジャン=マルタン・シャルコー神経しんけいえん麻痺まひくわえ、小脳しょうのう失調しっちょうていした多発たはつせい硬化こうかしょう症例しょうれい報告ほうこくした[2]。この小脳しょうのう失調しっちょう企図きとたたかえだんつづりせい言語げんごであり、シャルコーの3ちょうとしてられる。1919ねんにはブローウェル(Brouwer)が小脳しょうのう失調しっちょう卵巣らんそう腫瘍しゅよう合併がっぺいした症例しょうれい報告ほうこくし、これがはた腫瘍しゅようせい小脳しょうのう変性へんせいしょう(paraneoplastic cerebellar degeneration、PCD)の最初さいしょ記載きさいとされている[3]。1980年代ねんだいになると2つのおおきな発展はってんがあった。ひとつは1983ねん卵巣らんそう腫瘍しゅよう合併がっぺいしたPCDでこうYo抗体こうたい発見はっけんされたことである[4]これを契機けいき腫瘍しゅよう種類しゅるい関連かんれんしめ自己じこ抗体こうたいであるこうHu抗体こうたいこうTr抗体こうたいこうCV2抗体こうたいこうRi抗体こうたいこうMa2抗体こうたいこうVGCC抗体こうたい見出みいだされた。これにより自己じこ抗体こうたい注目ちゅうもくして自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう診断しんだんするみちひらかれた。もうひとつは腫瘍しゅよう随伴ずいはんせい主要しゅような2つのやまいがた疾患しっかん概念がいねん確立かくりつしたことである。Hadjivassiliouらの体系たいけいてき研究けんきゅうによりグルテン感受性かんじゅせい誘因ゆういんこされるグルテン失調しっちょうしょう[5]一方いっぽうHonnoratらの報告ほうこくによってこうGAD抗体こうたい関連かんれん小脳しょうのう失調しっちょうしょう臨床りんしょうぞうあきらかになった[6]。 2010ねん以降いこうはこれらを体系たいけいするこころみがおこなわれるようになった[7][8][9][10][11][12][13][14]

分類ぶんるい

編集へんしゅう

自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう分類ぶんるいはまだ十分じゅうぶん合意ごういられていない。2016ねんにSociety for Research on Cerebellum and Ataxia(SRCA)によるconsensus paperではじめて分類ぶんるい提唱ていしょうされた。SRCA consensus paper 2016分類ぶんるいには3つの特徴とくちょうられている[8]。1つ自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうせい小脳しょうのう障害しょうがいおもとするものと様々さまざま部位ぶい障害しょうがいされ小脳しょうのう障害しょうがいはそのひとつとするものに分類ぶんるいしたことである。後者こうしゃには多発たはつせい硬化こうかしょうSLEなどのにかわばらびょうふくまれる。2つとして、小脳しょうのう障害しょうがいおもとするものを自己じこ免疫めんえき誘因ゆういん明確めいかくなものと自己じこ免疫めんえき誘因ゆういん明確めいかくなものに分類ぶんるいしていることである。自己じこ免疫めんえき誘因ゆういんあきらかなものにはグルテン失調しっちょうしょう急性きゅうせい小脳しょうのうえん(acute cerebellitisまたは感染かんせん小脳しょうのうえん、post-infectious cerebellitis)、フィッシャー症候群しょうこうぐんはた腫瘍しゅようせい小脳しょうのう変性へんせいしょうげられる。自己じこ免疫めんえき誘因ゆういん明確めいかくなものにはこうGAD抗体こうたい関連かんれん小脳しょうのう失調しっちょうしょう橋本はしもと脳症のうしょうがあげられる。自己じこ免疫めんえき誘因ゆういん明確めいかく場合ばあい誘因ゆういん除去じょきょ治療ちりょうだいいち選択せんたくになるため、この分類ぶんるい治療ちりょう戦略せんりゃくもとづいた分類ぶんるいである。3つ特徴とくちょうとしてprimary autoimmune cerebellar ataxia(PACA)というやまいがたもうけていることである。PACAは自己じこ免疫めんえきじょ小脳しょうのう失調しっちょうおもしるしとするが上記じょうきやまいがた特徴とくちょうわないものの総称そうしょうである。既知きちやまいがたぞくさないが急性きゅうせい経過けいかで、小脳しょうのう失調しっちょう小脳しょうのう萎縮いしゅくしめし、自己じこ免疫めんえきせい疾患しっかん既往きおうがあり、免疫めんえき療法りょうほう反応はんのうせいしめ症例しょうれいがしばしば経験けいけんされる。ずいえき小脳しょうのう皮質ひしつ標的ひょうてきとする抗体こうたいがみられることもある。このような症例しょうれいはPACAという疾患しっかんスペクトラムのなか位置いちづけられる[15]。したがってPACAは複数ふくすう未知みちやまいがたふくんでいる。

SRCA consensus paper 2016をたたきだいにして、その若干じゃっかん修正しゅうせい提唱ていしょうされている。オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群しょうこうぐん自己じこ免疫めんえき誘因ゆういん明確めいかく自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう位置いちづけられている[11][12][13]橋本はしもと脳症のうしょう単一たんいつやまいがたとすることに欧米おうべいでは異論いろんつよく、PACAのなかにステロイド反応はんのうせいめすれいとして位置いちづけられることがおお[9]橋本はしもと脳症のうしょうはその定義ていぎから幅広はばひろ症例しょうれいふくまれ、こうGAD抗体こうたい関連かんれん小脳しょうのう失調しっちょうしょうやグルテン失調しっちょうしょうなどやまいがたともかさなりい、臨床りんしょうてき均一きんいつではないのが理由りゆうである。PACAの診断しんだん基準きじゅんはSRCAから提唱ていしょうされている[16]

primary autoimmune cerebellar ataxia(PACA)

編集へんしゅう

2020ねんのTask Force paperでPACAの診断しんだん基準きじゅん提唱ていしょうされた[17]。これはよくられた自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう除外じょがい下記かきの3項目こうもくのうち2項目こうもくをみたすこと、小脳しょうのう失調しっちょうしょう否定ひていからなる。3項目こうもくのう脊髄せきずいえき細胞さいぼうすうぞうおおまたはオリゴクローナルバンド陽性ようせい自己じこ免疫めんえきせい疾患しっかん既往きおうあるいは家族かぞくれきこう甲状腺こうじょうせん抗体こうたいなど自己じこ免疫めんえき状態じょうたいしめ自己じこ抗体こうたい合併がっぺいである。またPACAではミコフェノールさんモフェチル有効ゆうこうせい報告ほうこくされている[18]

疫学えきがく

編集へんしゅう

Hadjivassiliouらは英国えいこくで1500れい進行しんこうせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう原因げんいん精査せいさした[19]家族かぞくせい発症はっしょう遺伝子いでんし異常いじょうしめすものが30%、系統けいとう萎縮いしゅくしょうが9%であり、自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうせいが25%であった。自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうせい従来じゅうらいかんがえられていたよりもこう頻度ひんどであることがあきらかになった。自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうやまいがたとしてはグルテン失調しっちょうしょうが20%ともっとおおく、PCDが2%、急性きゅうせい小脳しょうのうえんが1%であった。

診断しんだん

編集へんしゅう

急性きゅうせいから慢性まんせい小脳しょうのう失調しっちょうで、とく歩行ほこう失調しっちょう顕著けんちょ場合ばあい自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうせいうたが[8][13]小脳しょうのう失調しっちょうしゅしるしであるが、神経しんけい症候しょうこうともなうこともある。ずいえき細胞さいぼうぞうやオリゴクローナルバンドをみとめる場合ばあいもある。MRIではやまい相当そうとうした小脳しょうのう萎縮いしゅくみとめる。確定かくてい診断しんだんには原因げんいん除外じょがいすること、自己じこ免疫めんえきじょ背景はいけい存在そんざいすることを確認かくにんすることが肝要かんようである。自己じこ免疫めんえきじょ存在そんざい自己じこ免疫めんえき疾患しっかん合併がっぺいおも小脳しょうのうたいする自己じこ抗体こうたい存在そんざい推定すいていされる。小脳しょうのうたいする自己じこ抗体こうたいおおくのものがられている。これらは3種類しゅるい分類ぶんるいされる[20]1つ特定とくていやまいがたしめすwell characterized autoantibodies、2つ自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうふく様々さまざま免疫めんえきせい疾患しっかん合併がっぺいするautoantibodies、3つ少数しょうすうれい自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうにしか報告ほうこくされておらず、その性状せいじょうがまだ不明ふめいなautoantibodiesである。

自己じこ抗体こうたい意義いぎ

編集へんしゅう

自己じこ抗体こうたい原因げんいんであるのかそれとも結果けっかであるのかという議論ぎろんはしばしばおこる。自己じこ抗体こうたい原因げんいんという場合ばあい以下いかの3つの条件じょうけん実験じっけんしめ必要ひつようがある[21]

accessibilityの証明しょうめい

抗体こうたい抗原こうげんにアクセスできること

pathogenic actionの証明しょうめい

抗体こうたい神経症しんけいしょうじょう発症はっしょうできることを細胞さいぼう神経しんけい回路かいろレベルでしめすこと

passive transferの証明しょうめい

抗体こうたい動物どうぶつ注入ちゅうにゅうすることで症状しょうじょう再現さいげんされること

この3つの条件じょうけんたすれいすくない、とくはた腫瘍しゅようせい神経しんけい症候群しょうこうぐん抗原こうげん細胞さいぼうないにある場合ばあいはpassive transferの証明しょうめいができないことがおおい。こうHu抗体こうたいこうYo抗体こうたいではpassive transferは証明しょうめいされていない。上記じょうき3つをたすものは2013ねん現在げんざい腫瘍しゅよう随伴ずいはんせいではこうVGCC抗体こうたいこうmGluR抗体こうたいであり腫瘍しゅよう随伴ずいはんせいではこうGAD抗体こうたいだけである。こうGAD抗体こうたい細胞さいぼうないまれてGABAの放出ほうしゅつ抑制よくせいする作用さようがある。証明しょうめいされた3つの抗体こうたいはいずれも抗体こうたいがシナプス伝達でんたつ作用さようしている。一方いっぽうでGrausやDalmauらはこうGAD抗体こうたい病原びょうげん抗体こうたいではないと主張しゅちょうしている[21]

Daniel B Drachmanが提唱ていしょうした病原びょうげん自己じこ抗体こうたいの5つの条件じょうけん[22]対象たいしょうとなる自己じこ抗体こうたい患者かんじゃ検出けんしゅつされる、自己じこ抗体こうたいがターゲットとなる抗原こうげん反応はんのうする、自己じこ抗体こうたい投与とうよによって病態びょうたい再現さいげんされる、対応たいおうする抗原こうげん免疫めんえきにより疾患しっかんモデルが発現はつげんされる、自己じこ抗体こうたいちから低下ていかによって病態びょうたい改善かいぜんするである。上記じょうき条件じょうけんとは若干じゃっかんことなる。臨床りんしょう医学いがく証明しょうめいするべき内容ないよう患者かんじゃからの抗体こうたい検出けんしゅつ治療ちりょうによる抗体こうたい減少げんしょうであり、それ以外いがい実験じっけんしつ証明しょうめいする内容ないようである。

治療ちりょう

編集へんしゅう

自己じこ免疫めんえきじょ明確めいかく場合ばあいは、まずはこれをのぞき、抗原こうげん刺激しげき回避かいひすることが優先ゆうせんされる。抗原こうげん刺激しげき回避かいひとはグルテン失調しっちょうしょう場合ばあいグルテンしょくであり、はた腫瘍しゅようせい小脳しょうのう変性へんせいしょう場合ばあい腫瘍しゅよう治療ちりょうである[9][11][13]。これが無効むこう場合ばあい、あるいは自己じこ免疫めんえきじょ明確めいかく場合ばあい免疫めんえき療法りょうほう導入どうにゅうされる。免疫めんえきグロブリン大量たいりょう療法りょうほうステロイド免疫めんえき抑制よくせいやくアフェレーシスリツキシマブ単独たんどくあるいはわせて実施じっしされる。寛解かんかい導入どうにゅう療法りょうほうでは小脳しょうのう失調しっちょう可能かのうかぎ改善かいぜんさせるような積極せっきょくてき治療ちりょうおこなわれることがおおい。その再発さいはつをふせぐ目的もくてき維持いじ療法りょうほうおこなわれる。やまいがたによって選択せんたくされる方法ほうほう若干じゃっかんことなる。

免疫めんえき療法りょうほう経過けいか完全かんぜん寛解かんかい部分ぶぶん寛解かんかい不変ふへん再発さいはつ緩徐かんじょ増悪ぞうあく急速きゅうそく増悪ぞうあくの6種類しゅるい分類ぶんるいされる。急性きゅうせい小脳しょうのうえんグルテン失調しっちょうしょう急性きゅうせいこうGAD抗体こうたい関連かんれん小脳しょうのう失調しっちょうしょう比較的ひかくてき免疫めんえき療法りょうほう反応はんのうする。慢性まんせいこうGAD抗体こうたい関連かんれん小脳しょうのう失調しっちょうしょうはた腫瘍しゅようせい小脳しょうのう変性へんせいしょう免疫めんえき療法りょうほう抵抗ていこうせいである。とくはた腫瘍しゅようせい小脳しょうのう変性へんせいしょう免疫めんえき療法りょうほう反応はんのうするのは10%以下いかかんがえられている。小脳しょうのうには中枢ちゅうすう神経しんけい部位ぶい比較ひかくしてもつよ自己じこ代償だいしょう修復しゅうふく機能きのうそなわっている[23]したがってこの予備よびのう(cerebellar reserve)が維持いじされているあいだ治療ちりょう介入かいにゅうし、病勢びょうせい進行しんこうめたうえで、回復かいふくにつなげることが治療ちりょう目標もくひょうとなる[24]

病態びょうたい生理せいり

編集へんしゅう

細胞さいぼうせい免疫めんえきかいするもの

編集へんしゅう

細胞さいぼうせい免疫めんえきかいする自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうせいはた腫瘍しゅようせい小脳しょうのう変性へんせいしょう代表だいひょうれいである。病理びょうり学的がくてきにはリンパだま(T細胞さいぼう、B細胞さいぼう)、形質けいしつ細胞さいぼうミクログリアまたはマクロファージ血管けっかん周囲しゅういから小脳しょうのう皮質ひしつ浸潤しんじゅんし、プルキンエ細胞さいぼう広範こうはん脱落だつらくする[25]。YoやHuなどonconeural antigensは腫瘍しゅよう細胞さいぼう神経しんけい細胞さいぼう細胞さいぼうしつ存在そんざいすることから。細胞さいぼうせい免疫めんえきかいするじょ推定すいていされている[26]実際じっさいにこれらの抗体こうたい投与とうよやペプチドによるimmunizationをおこなっても、実験じっけん動物どうぶつ失調しっちょう症状しょうじょう発症はっしょうせず、passive transferは証明しょうめいされていない[27]こうYo(cdr2)抗体こうたい陽性ようせいはた腫瘍しゅようせい小脳しょうのう変性へんせいしょう患者かんじゃ血清けっせいずいえきにはcdr2特異とくいてきなリンパだま存在そんざい[28]、これらの血清けっせいずいえきリンパだま、そして腫瘍しゅよう組織そしきないリンパだまおなじクローン由来ゆらいである[29]小脳しょうのう皮質ひしつ浸潤しんじゅんするリンパだまはCD8陽性ようせい、CD3陽性ようせいリンパだまおおく、一部いちぶにCD4陽性ようせいリンパだまみとめられる。これらのことから、つぎのような3つの段階だんかいじょ推定すいていされる[30]

まずは末梢まっしょうリンパぶしにおいて、じょう細胞さいぼうにより抗原こうげん提示ていじされたonconeural antigen(cdr2など)によりナイーブCD4陽性ようせいリンパだまかんさくされ、抗原こうげん特異とくいてきなTh1細胞さいぼう、濾胞ヘルパーT細胞さいぼう分化ぶんかする。前者ぜんしゃによりCD8陽性ようせい細胞さいぼう活性かっせいされ、標的ひょうてきがん細胞さいぼうはFas受容じゅようたいやgranzyme-B/perforinをかいしたアポトーシスで細胞さいぼういたる。また後者こうしゃによりBリンパだま/形質けいしつ細胞さいぼう活性かっせいされ、こうYo(cdr2)抗体こうたいなどの自己じこ抗体こうたい産出さんしゅつされる。
つぎになんらかのじょでこれらのリンパだま自己じこ抗体こうたい血液けつえきのう関門かんもんからのうない浸潤しんじゅんする。
小脳しょうのうではCD4陽性ようせいリンパだまはTh1に分化ぶんかしIFN-γがんま/TNF-αあるふぁ分泌ぶんぴつする。これにより活性かっせいされたCD8陽性ようせいリンパだま標的ひょうてき神経しんけい細胞さいぼう接着せっちゃくし、末梢まっしょうおなついアポトーシス誘発ゆうはつする。

しかし、ほとんどの腫瘍しゅよう細胞さいぼうがcdr2やHuなどのonconeural antigensを発現はつげんしているにもかかわらず、はた腫瘍しゅようせい小脳しょうのう変性へんせいしょうきわめてまれであり、また患者かんじゃ由来ゆらいのリンパだま実験じっけん動物どうぶつ末梢まっしょう投与とうよしてもプルキンエ細胞さいぼう障害しょうがい観察かんさつされない[31]。このことは、生体せいたいでは神経しんけい細胞さいぼうのonconeural antigensにたいする寛容かんようつよいことを示唆しさしている。免疫めんえきてき寛容かんよう破綻はたんさせてCD8陽性ようせいT細胞さいぼう活性かっせいさせる仕組しくみを今後こんごあきらかにする必要ひつようがある[31]

自己じこ抗体こうたい作用さようによるもの

編集へんしゅう

自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうのいくつかのやまいがたでは自己じこ抗体こうたい病因びょういん小脳しょうのうせい運動うんどう失調しっちょうきることがin vitroとin vivoの実験じっけんけいもちいて証明しょうめいされている[10]。これらの実験じっけん結果けっかから自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうでは自己じこ抗体こうたいがシナプス伝達でんたつ阻害そがいすることで小脳しょうのうせい運動うんどう失調しっちょうこるとかんがえられている。さらにその自己じこ抗体こうたい放出ほうしゅつ機構きこう、シナプス構成こうせい蛋白たんぱく受容じゅようたいを3つのうちのどれかを標的ひょうてきにすることがあきらかになった。自己じこ免疫めんえきせいあたりえんけい脳炎のうえん病因びょういん自己じこ抗体こうたい同様どうよう放出ほうしゅつ機構きこう、シナプス構成こうせい蛋白たんぱく受容じゅようたいの3つのうちどれかを標的ひょうてきとする。これらの自己じこ抗体こうたい受容じゅようたい抗体こうたい結合けつごうすると細胞さいぼうないまれる内在ないざいこるてん特徴とくちょうである。

放出ほうしゅつ機構きこう標的ひょうてきとする抗体こうたい

編集へんしゅう
こうGAD抗体こうたい

GAD(glutamic acid decarboxylase)は興奮こうふんせい伝達でんたつ物質ぶっしつであるグルタミン酸ぐるたみんさんからGABAを合成ごうせいする酵素こうそである。GADには分子ぶんしりょうことなる2種類しゅるいアイソタイプ存在そんざいする[32]分子ぶんしりょう65のGAD65はおも神経しんけい終末しゅうまつのシナプスしょう胞に存在そんざいしており、抑制よくせいせい神経しんけい伝達でんたつ物質ぶっしつであるGABA合成ごうせい関与かんよするとかんがえられている[33]一方いっぽう、GAD67は細胞さいぼうしつ全体ぜんたい存在そんざいし、細胞さいぼうないのGABA生成せいせいしている[34]こうGAD抗体こうたい認識にんしきするのはGAD65である。

患者かんじゃずいえきちゅうのIgGやモノクローナルのこうGAD抗体こうたい抑制よくせいせいニューロンからのGABA放出ほうしゅつ減少げんしょうさせる[35][36][37]一方いっぽう患者かんじゃずいえきちゅうのIgGやモノクローナルのこうGAD抗体こうたいをマウス、ラットに投与とうよすると、失調しっちょうさま歩行ほこう小脳しょうのうによる運動うんどう制御せいぎょ障害しょうがい認知にんち機能きのう障害しょうがい再現さいげんされる[37][38]

このことからこうGAD抗体こうたい原因げんいんであることが示唆しさされたが、つぎのようなシナプスレベルの障害しょうがいあきらかになった。こうGAD抗体こうたいはGABA放出ほうしゅつ抑制よくせいする。ずいえきこうGAD抗体こうたい吸着きゅうちゃくした場合ばあい、あるいは、GAD65ノックアウトマウス(GAD67が代償だいしょうてき抑制よくせいせい伝達でんたつになっている)で検証けんしょうした場合ばあい、これらの作用さよう観察かんさつされなかった[37][39]。これはGAD65とこうGAD抗体こうたい結合けつごうによって、病因びょういんてき作用さようこることをしめしている[37]こうGAD抗体こうたいしょう胞が開口かいこうしてGABAを放出ほうしゅつするときにしょう胞内にまれる。開口かいこうにはしょう胞の外側そとがわ重合じゅうごうしていたGAD65はなんらかのじょしょう胞内に抗体こうたい結合けつごう部位ぶい露出ろしゅつするとかんがえられており、このときにGAD65とこうGAD抗体こうたい結合けつごうする可能かのうせいかんがえられている。こうGAD抗体こうたいは、合成ごうせいされたGABAのしょう胞へのpackagingとrelease sitesへの輸送ゆそう過程かていというGAD65の機能きのう障害しょうがいし、これによりGABAの放出ほうしゅつ減少げんしょうする。

これらの作用さようはエピトープ特異とくいてきであり、糖尿とうにょうびょう患者かんじゃみとめられるこうGAD抗体こうたいでは発現はつげんしない[37]。また、小脳しょうのうせい運動うんどう失調しっちょうしょうけいれんスティッフパーソン症候群しょうこうぐんこうGAD抗体こうたいあいだでもエピトープのしめされておりエピトープ特異とくいてき神経症しんけいしょうじょう発症はっしょうする可能かのうせい示唆しさされている。GABAはプルキンエ細胞さいぼうへの抑制よくせいせい作用さようしめすのみならず、シナプス間隙かんげきから拡散かくさん周囲しゅうい興奮こうふんせいシナプスに作用さようグルタミン酸ぐるたみんさん放出ほうしゅつ抑制よくせいする[40]。したがってGABAの放出ほうしゅつ減少げんしょうすると、抑制よくせいせいシナプスの抑制よくせいのみならず、興奮こうふんせいシナプスの増強ぞうきょう同時どうじきてしまう。このGABAとグルタミン酸ぐるたみんさんいちじるしい均衡きんこうのため、プルキンエ細胞さいぼう顕著けんちょ興奮こうふんしめすことが予想よそうされる。剖検ぼうけんれいではプルキンエ細胞さいぼう広範こうはん消失しょうしつしていた[41]機能きのう障害しょうがいから細胞さいぼうやまい変化へんかする[35]

シナプス構成こうせい蛋白たんぱく標的ひょうてきとする抗体こうたい

編集へんしゅう
こうGluRδでるた抗体こうたい

こうGluRδでるた抗体こうたい急性きゅうせい小脳しょうのうえん一部いちぶ症例しょうれいみとめられる[11]。GluRδでるたグルタミン酸ぐるたみんさん活性かっせいされず、ニューレキシン、CbLn1とふく合体がったい形成けいせいし、シナプスの形成けいせい維持いじ伝達でんたつ調節ちょうせつかかわるシナプス構成こうせい蛋白たんぱくである。GluRδでるた2の結合けつごう部位ぶい作用さようする抗体こうたいふくんだポリクローナルな抗体こうたいは、培養ばいよう細胞さいぼうAMPAがたグルタミン酸ぐるたみんさん受容じゅようたい内在ないざいする[42]。またこれをマウスずい腔に注入ちゅうにゅうすることで小脳しょうのうせい運動うんどう失調しっちょうしょうかんがえられる症状しょうじょう再現さいげんされる[42]。この病因びょういんてき作用さようは、患者かんじゃずいえきちゅう抗体こうたいもちいては証明しょうめいされていない。このてん今後こんご課題かだいである。

受容じゅようたい標的ひょうてきとする抗体こうたい

編集へんしゅう
こうmGluR1抗体こうたい

代謝たいしゃ調節ちょうせつがたグルタミン酸ぐるたみんさん受容じゅようたい1がたたいする抗体こうたいホジキンリンパしゅ合併がっぺいするはた腫瘍しゅようせい小脳しょうのう変性へんせいしょうとPACAにみとめられる[8][11]患者かんじゃずいえきのIgGによって培養ばいよう細胞さいぼうのイノシトールリンさん合成ごうせい減少げんしょうし、マウスずい腔に注入ちゅうにゅうすると失調しっちょうしょうさま症状しょうじょう再現さいげんされた[43]。また、患者かんじゃずいえきIgGはプルキンエ細胞さいぼうでの長期ちょうき抑圧よくあつ誘導ゆうどう阻害そがいし、眼球がんきゅう運動うんどう学習がくしゅう過程かてい障害しょうがいする[44]

こうNAE抗体こうたい

N末端まったん領域りょういきαあるふぁエノラーゼ抗体こうたいであるこうNAE抗体こうたい橋本はしもと脳症のうしょうバイオマーカーである。αあるふぁエノラーゼはプラスミノーゲン受容じゅようたいとして細胞さいぼうまく存在そんざいする。こうNAE抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうがた橋本はしもと脳症のうしょう患者かんじゃずいえきがラット小脳しょうのうスライスのシナプス伝達でんたつ抑制よくせいする[45]

各論かくろん

編集へんしゅう

はた腫瘍しゅようせい免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう

編集へんしゅう

悪性あくせい腫瘍しゅようの0.2%に小脳しょうのう症状しょうじょう出現しゅつげんすることがられている。その歴史れきしは1934ねんのGreenfieldの乳癌にゅうがん肺癌はいがんともなう「急性きゅうせい小脳しょうのう変性へんせいしょう」の記載きさいにさかのぼることができる。おおくは急性きゅうせい小脳しょうのうせい運動うんどう失調しっちょう出現しゅつげんし、すうしゅうから数ヶ月すうかげつ進行しんこうし、徐々じょじょ小脳しょうのう萎縮いしゅくしめす。小脳しょうのうせい運動うんどう失調しっちょう出現しゅつげんしたときには悪性あくせい腫瘍しゅようみとめず、やく1ねん以内いない悪性あくせい腫瘍しゅよう発見はっけんされることがおおい。その原因げんいんについては「遠隔えんかく効果こうか」という表現ひょうげん様々さまざま可能かのうせい議論ぎろんされてきたが1980年代ねんだい以降いこう腫瘍しゅよう神経しんけい細胞さいぼう共通きょうつう抗原こうげん関係かんけい注目ちゅうもくされるようになった。1983ねんにはGreenleeとBrashearが卵巣らんそう腫瘍しゅようともな小脳しょうのう失調しっちょう患者かんじゃにおいて、小脳しょうのうプルキンエ細胞さいぼう細胞さいぼうしつ反応はんのうし、さらに神経しんけい組織そしき免疫めんえきブロットで58kDaと34kDaに反応はんのうバンドがしょうじる抗体こうたい、すなわちこうYo抗体こうたい報告ほうこくした。これ以降いこう免疫めんえき組織そしき化学かがくほう免疫めんえきブロットほうもちいて様々さまざま抗体こうたい見出みいだされた。2004ねんにヨーロッパ神経しんけい学会がっかいではこれらの抗体こうたい生理せいりおこないwell characterized onconeural antibodyというものが定義ていぎされた。well characterized onconeural antibodyとは免疫めんえき組織そしき化学かがく患者かんじゃずいえき血清けっせい染色せんしょくパターンとリコンビナント蛋白たんぱく抗原こうげんとする染色せんしょくパターンが同一どういつ特異とくいせいがあること、腫瘍しゅよう関連かんれんして多数たすう報告ほうこくがあること、抗体こうたい関連かんれんして特徴とくちょうてき神経症しんけいしょうじょう発症はっしょうすること、腫瘍しゅようのない症例しょうれいでの陽性ようせいりつられていることの5つの条件じょうけんたす抗体こうたいである。これにぞくする急性きゅうせい小脳しょうのう変性へんせいしょう抗体こうたいこうYo抗体こうたいこうRi抗体こうたいこうHu抗体こうたいこうMa2抗体こうたいこうCRMP-5抗体こうたいである。ヨーロッパ神経しんけい学会がっかいのガイドラインでは急性きゅうせい小脳しょうのう変性へんせいしょうはた腫瘍しゅようせい神経しんけい症候群しょうこうぐんのclassical syndromeとして位置いちづけられている。したがって急性きゅうせい小脳しょうのう症状しょうじょうしめしかつ小脳しょうのう萎縮いしゅくしめした場合ばあいは、腫瘍しゅよう発見はっけんした場合ばあいこう神経しんけい抗体こうたい有無うむわず)に診断しんだんされる。腫瘍しゅよう発見はっけんされなかった場合ばあいでもwell characterized onconeural antibodyがみとめられれば診断しんだん確定かくていされる。悪性あくせい腫瘍しゅよう合併がっぺいのため不良ふりょうのことがおおい。早期そうき腫瘍しゅよう除去じょきょ免疫めんえき療法りょうほうおこなう。しかし抗原こうげん細胞さいぼうない存在そんざいする場合ばあい免疫めんえき療法りょうほう抵抗ていこうせい場合ばあいおおい。

細胞さいぼうしつ抗原こうげん蛋白たんぱく認識にんしきする抗体こうたい

編集へんしゅう

小脳しょうのう症状しょうじょうおもしめ場合ばあい小脳しょうのう症状しょうじょうくわ多彩たさい神経症しんけいしょうじょう合併がっぺいする場合ばあいがある。抗原こうげん蛋白たんぱく発生はっせい段階だんかい神経しんけい細胞さいぼう分化ぶんか関与かんよし、しょう脳神経のうしんけい回路かいろ発生はっせい維持いじ重要じゅうようなものがおおい。

おも小脳しょうのう症状しょうじょうしめすもの
編集へんしゅう
こうYo抗体こうたい

免疫めんえき組織そしきがくでは小脳しょうのうのプルキンエ細胞さいぼう顆粒かりゅう細胞さいぼうそう神経しんけい細胞さいぼう細胞さいぼうしつあさしょくせいしめす。認識にんしきする蛋白質たんぱくしつはcdr2であり、この蛋白たんぱくしょう脳神経のうしんけい細胞さいぼう分化ぶんか維持いじ関与かんよしている可能かのうせいがある。子宮しきゅうがん卵巣らんそうがん乳癌にゅうがん随伴ずいはん小脳しょうのう症状しょうじょうのみをしめすのが特徴とくちょうである。

こうZic抗体こうたい

はいしょう細胞さいぼうがん随伴ずいはん小脳しょうのう症状しょうじょうのみをしめす。

こうCARPⅧ抗体こうたい

悪性あくせい黒色こくしょくしゅ合併がっぺいする小脳しょうのう変性へんせいしょう記載きさいされた。

こうTr抗体こうたい

ホジキンびょう随伴ずいはん小脳しょうのう症状しょうじょうのみをしめす。

小脳しょうのう症状しょうじょうくわ多彩たさい神経症しんけいしょうじょうがみられるもの
編集へんしゅう
こうRi抗体こうたい

こうRi抗体こうたい小児しょうにでは神経しんけい細胞腫さいぼうしゅ成人せいじんでは乳癌にゅうがんはいしょう細胞さいぼうがん随伴ずいはんする。小脳しょうのう失調しっちょうしょうくわえ、オプソクローヌスやミオクローヌスをしめ

こうHu抗体こうたい

歴史れきしてきにははいしょう細胞さいぼうがんともな急性きゅうせい感覚かんかくせい末梢まっしょう神経しんけい障害しょうがいにおいて報告ほうこくされたが、そのはいしょう細胞さいぼうがんともな小脳しょうのう変性へんせいしょうこうプルキンエ細胞さいぼう抗体こうたいtypeⅡa抗体こうたい同一どういつのものであると判明はんめいした。こうHu抗体こうたいはいしょう細胞さいぼうがんのほかに前立腺ぜんりつせんがんはいせんがん副腎ふくじんがん神経しんけい細胞腫さいぼうしゅ随伴ずいはんする小脳しょうのう失調しっちょうでも報告ほうこくされている。また小脳しょうのう症状しょうじょうのみならずあたりえんけい脳炎のうえん脳幹のうかん脳炎のうえん脊髄せきずいしょうなど多彩たさい症状しょうじょうしめす。

こうMa抗体こうたい

こうMa抗体こうたい中枢ちゅうすう神経しんけいけいのほとんどの神経しんけい細胞さいぼうかく小体こてい免疫めんえき組織そしき化学かがく染色せんしょくせいしめしMa1、Ma2、Ma3すべての蛋白たんぱく認識にんしきする。こうMa抗体こうたい合併がっぺいする小脳しょうのう変性へんせいしょう精巣せいそうがん合併がっぺいすることがおおいが、肺癌はいがん乳癌にゅうがん報告ほうこくされている。一方いっぽう、Ma2のみを認識にんしきするこうMa2抗体こうたいあたりえんけい脳炎のうえん脳幹のうかん脳炎のうえん出現しゅつげんする。この場合ばあい小脳しょうのう症状しょうじょうしめすことがある。

こうCRMP-5/CV-2抗体こうたい

こうCRMP-5(CV-2)抗体こうたいとぼし突起とっきにかわ細胞さいぼう細胞さいぼうしつ結合けつごうする抗体こうたい免疫めんえき組織そしき化学かがくでは小脳しょうのう分子ぶんしそう脳幹のうかん脊髄せきずいしろしつ染色せんしょくせいみとめられる。はいしょう細胞さいぼうがんむね腺腫せんしゅ随伴ずいはんし、小脳しょうのう変性へんせいしょう末梢まっしょう神経しんけい障害しょうがいをほぼおな頻度ひんどしめす。また舞踏ぶとうびょう、ジストニア、パーキンソン症候群しょうこうぐん視神経ししんけいえん嗅覚きゅうかく障害しょうがい味覚みかく障害しょうがい脳神経のうしんけい症状しょうじょうなど多彩たさい神経症しんけいしょうじょうしめすことも特徴とくちょうである。

こうANNA-3抗体こうたい

プルキンエ細胞さいぼうとゴルジ細胞さいぼう染色せんしょくせいしめし170kDaの神経しんけい蛋白たんぱく認識にんしきする抗体こうたいである おおくははいしょう細胞さいぼうがん合併がっぺい小脳しょうのう変性へんせいしょうしめすが、あたりえんけい脳炎のうえん感覚かんかくせい発作ほっさ脳幹のうかん脳炎のうえん脊髄せきずいしょう末梢まっしょう神経しんけい障害しょうがいていする。

こうPCA-2抗体こうたい

プルキンエ細胞さいぼう染色せんしょくせいしめし280kDaの神経しんけい蛋白たんぱく認識にんしきする抗体こうたいである。はいしょう細胞さいぼうがん合併がっぺいし、小脳しょうのう変性へんせいしょうしめす。またあたりえんけい脳炎のうえん脳幹のうかん脳炎のうえんランバート・イートン症候群しょうこうぐん合併がっぺいすることもある。

細胞さいぼうまく抗原こうげん蛋白たんぱく認識にんしきする抗体こうたいやまいがた

編集へんしゅう
こうVGCC抗体こうたい

はいしょう細胞さいぼうがん随伴ずいはんするランバート・イートン症候群しょうこうぐん出現しゅつげんし、アセチルコリンの放出ほうしゅつ阻害そがいすることでえき疲労ひろうせい筋力きんりょく低下ていか末梢まっしょう神経しんけい反復はんぷく刺激しげき漸増ぜんぞう現象げんしょう(waxing)をしめす。ランバート・イートン症候群しょうこうぐんやく9%に小脳しょうのう変性へんせいしょう合併がっぺいすることがあきらかになっている。

こうmGluR抗体こうたい

こう代謝たいしゃ調節ちょうせつがたグルタミン酸ぐるたみんさん受容じゅようたい(mGluR)抗体こうたいホジキンびょう緩解かんかい小脳しょうのう失調しっちょうしょう発症はっしょうした2症例しょうれい報告ほうこくされている。

急性きゅうせい小脳しょうのうえん

編集へんしゅう

急性きゅうせい小脳しょうのうえん(acute cerebellitis)あるいは感染かんせん小脳しょうのうえん(post-infectious cerebellitis)はウイルス感染かんせんあるいは細菌さいきん感染かんせん惹起じゃっきされた免疫めんえき応答おうとう小脳しょうのう炎症えんしょうきるものである。小脳しょうのう直接ちょくせつおかせかさねによる炎症えんしょうふくまない。小児しょうにおおいが成人せいじんにも発症はっしょうする。水痘すいとう帯状疱疹たいじょうほうしんウイルスEBウイルスおおい。1994ねんのConnollyらによる報告ほうこくでは、70%の患者かんじゃ先行せんこう感染かんせんがある[46]軽度けいど認知にんち機能きのう障害しょうがいしめすことがおおく、ずいえき検査けんさではたんかくだま増加ぞうかみとめられる。治療ちりょうとしてはこうウイルスやく投与とうよしながら経過けいか観察かんさつし、症状しょうじょう持続じぞくする、あるいは悪化あっかする場合ばあいはステロイド、免疫めんえきグロブリン大量たいりょう療法りょうほうアフェレーシス検討けんとうする。

自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう

編集へんしゅう

自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう症候しょうこうせい皮質ひしつせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょうのひとつであるが治療ちりょう可能かのうであるてん非常ひじょう重要じゅうようである。脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょう鑑別かんべつにあがる。40〜50さいだい発症はっしょうし、歩行ほこう障害しょうがいていするものの小脳しょうのう萎縮いしゅく軽度けいどから正常せいじょうであり、脳幹のうかん萎縮いしゅくみとめられない場合ばあいとく自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう可能かのうせいたかい。鑑別かんべつおこなうには小脳しょうのう症状しょうじょう特徴とくちょう性別せいべつ全身ぜんしん症状しょうじょう神経しんけい所見しょけんわせが重要じゅうようである。眼球がんきゅう運動うんどう障害しょうがいではグルテン運動うんどう失調しっちょうしょうでは出現しゅつげん頻度ひんどたかいが橋本はしもと脳症のうしょうでは頻度ひんどひくい。こうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうでは女性じょせい割合わりあいがあたかく、臓器ぞうき特異とくいてき自己じこ免疫めんえきせい疾患しっかん合併がっぺい家族かぞくれきしめすものがおおい。高力こうりきあたいぐんでは糖尿とうにょうびょう先行せんこうすることがおおく、こうグリアジン抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうでは吸収きゅうしゅう障害しょうがいによる下痢げり合併がっぺいすることがある。またこうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうでは痙攣けいれんstiff-person症候群しょうこうぐんこうグリアジン抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうでは末梢まっしょう神経しんけい障害しょうがいこう甲状腺こうじょうせん抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうでは軽度けいど精神せいしん症状しょうじょう認知にんち機能きのう障害しょうがい合併がっぺいすることがある。治療ちりょう効果こうかでは高力こうりきあたいがたこうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうでは治療ちりょう抵抗ていこうせいしめし、小脳しょうのう萎縮いしゅく運動うんどう失調しっちょう進行しんこうするがこう甲状腺こうじょうせん抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうはステロイドで軽快けいかいする。ていちからこうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうこうグリアジン抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうでは両者りょうしゃなかあいだしめす。脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょう自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう鑑別かんべつ頭部とうぶMRIのVBMまたはのうりゅうシンチが有効ゆうこうという報告ほうこくもある。脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょうでは対称たいしょう萎縮いしゅくりゅう低下ていかしめすが自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうでは非対称ひたいしょう分布ぶんぷしめすことがおおい。HLA-DQ2やこう小脳しょうのう抗体こうたい自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうのマーカーになる可能かのうせいがあるという報告ほうこくもある[47]以下いか代表だいひょう疾患しっかんべる。

こうGADこう体高たいこうりょくあたいがた こうGAD抗体こうたいていちからがた こうグリアジン抗体こうたい(グルテン運動うんどう失調しっちょうしょう こう甲状腺こうじょうせん抗体こうたい橋本はしもと脳症のうしょう
平均へいきん発症はっしょう年齢ねんれい 51さい 53さい 48さい 56さい
男女だんじょ 女性じょせい93% 女性じょせい83% 有意ゆういなし 女性じょせい61%
家族かぞくれき 報告ほうこくあり
合併症がっぺいしょう 1がた糖尿とうにょうびょう71%、慢性まんせい甲状腺こうじょうせんえん57% 1がた糖尿とうにょうびょう33%、シェーグレン症候群しょうこうぐん報告ほうこくあり 吸収きゅうしゅう障害しょうがい24%、慢性まんせい甲状腺こうじょうせんえんなど 慢性まんせい甲状腺こうじょうせんえん38%
小脳しょうのう失調しっちょう
歩行ほこう失調しっちょう 100% 100% 100% 100%
上肢じょうし失調しっちょう 86% 75% 69%
構音障害しょうがい 57% 66% 62%
眼球がんきゅう運動うんどう障害しょうがい 57% 84% 17%
神経症しんけいしょうじょう stiff-person症候群しょうこうぐん進行しんこうすると痙攣けいれん意識いしき障害しょうがい 報告ほうこくなし 末梢まっしょう神経しんけい障害しょうがい45% 軽度けいど意識いしき障害しょうがい精神せいしん症状しょうじょう認知にんち機能きのう障害しょうがい54%
頭部とうぶMRI 正常せいじょうから軽度けいど萎縮いしゅく 軽度けいど萎縮いしゅく100% 軽度けいど萎縮いしゅく79% 軽度けいど萎縮いしゅく38%
血清けっせい抗体こうたい こうGAD抗体こうたい(37200±30460U/ml) こうGAD抗体こうたい(19.2±24.8U/ml) こうグリアジン抗体こうたい(IgA、IgG) こうTPO抗体こうたいこうTg抗体こうたいこうNAE抗体こうたい(62%)
ずいえき抗体こうたい こうGAD抗体こうたい100% こうGAD抗体こうたい80% 測定そくていされていない こうNAE抗体こうたい33%
IgG index ぜんれいで>1.0 75%で>1.0
治療ちりょう ステロイドは効果こうかとぼしい、IVIgやや改善かいぜん、しかし効果こうかとぼしく進行しんこうする ステロイド、IVIgで改善かいぜん、しかしいちてき徐々じょじょ効果こうかがなくなる。ちょう綺麗きれいでも効果こうかあり グルテンしょく長期ちょうき改善かいぜん効果こうかがない場合ばあいはIVIgなど、長期ちょうきれいでも効果こうかあり ステロイド反応はんのう良好りょうこう、62%で完全かんぜん緩解かんかいまたは軽度けいど失調しっちょうのこるまでに改善かいぜん長期ちょうきれいでも効果こうかあり

Hadjivassiliouらは系統けいとう萎縮いしゅくしょう遺伝いでんせい脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょうのぞいたはつせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう320めい病因びょういん調しらべ、グルテン失調しっちょうしょうが37%、こうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうが2.6%であったことを報告ほうこくした[48]原因げんいん不明ふめい特発とくはつせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうの60%がこう小脳しょうのう抗体こうたい陽性ようせいで、自己じこ免疫めんえきせい疾患しっかん患者かんじゃは47%であった。自己じこ免疫めんえきせい疾患しっかんもっとおおかったのは甲状腺こうじょうせん疾患しっかん橋本はしもとびょうであった。原因げんいん明確めいかくでないものの自己じこ免疫めんえきじょ小脳しょうのう失調しっちょうかんがえられる疾患しっかんぐんをPACD(primary autoimmune cerebellar ataxia)とび、小脳しょうのう失調しっちょうしょうでは自己じこ免疫めんえきじょ疾患しっかん頻度ひんどたかいことを報告ほうこくした。また自己じこ抗体こうたい陽性ようせい皮質ひしつせい小脳しょうのう萎縮いしゅくしょう(cortical cerebellar atrophy、CCA)と陰性いんせいCCAでは陽性ようせいれいほうがADL低下ていかはやく、わるい。陽性ようせい抗体こうたいすう進行しんこう速度そくどりょう反応はんのう関係かんけいみとめられる[49]日本にっぽんでは南里なんりらが、系統けいとう萎縮いしゅくしょう遺伝いでんせい脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょう除外じょがいした特発とくはつせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう58れい病因びょういんかんして報告ほうこくしている[50]こうグリアジン抗体こうたいまたはだつアミドグリアジン抗体こうたい陽性ようせい患者かんじゃが24%、こうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう13%、こう甲状腺こうじょうせん抗体こうたい単独たんどく陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう17%と、半数はんすう以上いじょう小脳しょうのう失調しっちょうしょう関連かんれん自己じこ抗体こうたい陽性ようせいとなった。さらに抗体こうたい陽性ようせいしゃ22にん免疫めんえき療法りょうほうおこなったところ59%にあたる13めい失調しっちょう症状しょうじょう改善かいぜんみとめられた。これは特発とくはつせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうの22%以上いじょう免疫めんえき療法りょうほう有効ゆうこう可能かのうせい示唆しさする。さらに南里なんりらはこう甲状腺こうじょうせん抗体こうたい陽性ようせいのSCA3の患者かんじゃ免疫めんえき治療ちりょう失調しっちょう症状しょうじょう改善かいぜんしたれい報告ほうこくし、遺伝いでんせい脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょうであっても自己じこ免疫めんえき悪化あっか要因よういんになっている可能かのうせいがあると考察こうさつした[51]。さらに横田よこたらはSCA31と小脳しょうのう失調しっちょうがた橋本はしもと脳症のうしょう合併がっぺいれい報告ほうこくした[52]

自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうでは急性きゅうせい急性きゅうせい慢性まんせいのいずれの発症はっしょう様式ようしきがあり、回転かいてんせいめまいをうったえることがある。遺伝いでんせい脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょう緩徐かんじょ進行しんこうであり、回転かいてんせいめまいや症状しょうじょうきゅう悪化あっかしあたり、改善かいぜんすることはまれである。頭部とうぶMRIではVBMをおこなうと脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょうでは左右さゆう対称たいしょうはくただしはいしろしつ萎縮いしゅくしめすが自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうでは左右さゆう非対称ひたいしょうせいはいしろしつ萎縮いしゅくしめすことがおおく、はくただし萎縮いしゅくをきたすことはすくない。多発たはつせい硬化こうかしょう神経しんけいベーチェットびょうでは脳幹のうかんふくめた多彩たさい萎縮いしゅく所見しょけんみとめられる。

こうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう

編集へんしゅう

グルタミン酸ぐるたみんさんだつ炭酸たんさん酵素こうそ(GAD)は興奮こうふんせい神経しんけい伝達でんたつ物質ぶっしつであるグルタミン酸ぐるたみんさんから抑制よくせいせい伝達でんたつ物質ぶっしつGABA合成ごうせいする酵素こうそである。GAD65とGAD67の2種類しゅるい存在そんざい[53]こうGAD抗体こうたいはGAD65を認識にんしきする。こうGAD抗体こうたいは1がた糖尿とうにょうびょう新規しんき診断しんだんされる患者かんじゃの80%にみとめられると報告ほうこくされている。1がた糖尿とうにょうびょう患者かんじゃ自己じこ免疫めんえきせい甲状腺こうじょうせん疾患しっかん合併がっぺいした場合ばあいせんせい自己じこ免疫めんえき症候群しょうこうぐん定義ていぎたすので注意ちゅうい必要ひつようである。こうGAD抗体こうたいは1がた糖尿とうにょうびょうせんせい自己じこ免疫めんえき症候群しょうこうぐんなどの内分泌ないぶんぴつ疾患しっかんのみならずstiff-person症候群しょうこうぐん小脳しょうのう運動うんどう失調しっちょうしょうあたりえんけい脳炎のうえん難治なんじせいてんかん眼球がんきゅう運動うんどう障害しょうがいなどの神経しんけい疾患しっかんでもみとめられる[54]こうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうこうGAD抗体こうたい関連かんれん免疫めんえきせい神経しんけい疾患しっかんのなかではstiff-person症候群しょうこうぐんについで2ばんめにおおい。小脳しょうのうせい運動うんどう失調しっちょうしょうこうGAD抗体こうたい高力こうりきであるものとていちからであるものの2種類しゅるいられている。

こうGADこう体高たいこうりょくあたいがた

こうGAD抗体こうたいともな小脳しょうのうせい運動うんどう失調しっちょうしょう症例しょうれいは1988ねんのsolimenaによってはじめて記載きさいされ、1995ねんにHonnoratらによっても報告ほうこくされた[55]。2001ねんにHonnoratらにより欧州おうしゅうでの網羅もうらてき調査ちょうさ疾患しっかん概念がいねん明確めいかくにされた[56]。この調査ちょうさは9000症例しょうれい血清けっせい対称たいしょうにし、レトロスペクティブな解析かいせきおこなったものでこうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうが14症例しょうれい存在そんざいした。14れいちゅう13れい女性じょせいであり小脳しょうのう失調しっちょうしょう発症はっしょうなかあいだは51さいであった。10れいで1がた糖尿とうにょうびょう合併がっぺいしその発症はっしょう年齢ねんれい中央ちゅうおうは47さいであり小脳しょうのう失調しっちょう先行せんこうした。臓器ぞうき特異とくいてき自己じこ免疫めんえきせい疾患しっかん合併がっぺいし(57%で慢性まんせい甲状腺こうじょうせんえん重症じゅうしょうすじ無力むりょくしょう乾癬かんせんなど)、43%で血縁けつえんしゃ自己じこ免疫めんえきせい疾患しっかん既往きおう存在そんざいした。こうグリアジン抗体こうたい陽性ようせいれいも14めいちゅう2めいみとめられた。小脳しょうのう失調しっちょう歩行ほこう障害しょうがい顕著けんちょでありMRIでは小脳しょうのう軽度けいど萎縮いしゅくみとめることがおおく、脳幹のうかん萎縮いしゅくみとめられなかった。こうGAD抗体こうたい抗体こうたいは1がた糖尿とうにょうびょう抗体こうたいくらべていちじるしく高値たかねでありずいえきにもこうGAD抗体こうたい存在そんざいし、IgG indexの上昇じょうしょうがあり、ずい腔内抗体こうたい産出さんしゅつ示唆しさされている。その報告ほうこくもほぼ同様どうよう特徴とくちょうしめしていた[54]自己じこ免疫めんえきせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうであるが治療ちりょう効果こうか限定げんていてきである[57][58][59]。ステロイド、免疫めんえきグロブリン療法りょうほう報告ほうこくがある。また高力こうりきあたいがたこうGAD抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうにstiff-person症候群しょうこうぐん合併がっぺいするれい[60][61]末梢まっしょう神経しんけい障害しょうがいとこわばりを合併がっぺいするれい[56]重症じゅうしょうすじ無力むりょくしょう合併がっぺいするれい[62]報告ほうこくがある。原因げんいん不明ふめいのめまい、一過いっかせいふく一過いっかせいの構音障害しょうがい一過いっかせい失調しっちょう症状しょうじょう小脳しょうのう失調しっちょう発症はっしょう先行せんこうしてみられるれいがあり、早期そうき診断しんだんのためにも前駆症状ぜんくしょうじょうのみがみられる症例しょうれいにおいてこうGAD抗体こうたい積極せっきょくてき測定そくていするよう推奨すいしょうした報告ほうこくもある[63]

剖検ぼうけん報告ほうこくではプルキンエ細胞さいぼう脱落だつらく、ベルグマングリアのぞうせい確認かくにんされているが炎症えんしょう細胞さいぼう浸潤しんじゅんみとめられなかった[64]

こうGAD抗体こうたいていちからがた

2012ねん東京とうきょう医大いだい南里なんりらが報告ほうこくした疾患しっかん単位たんいである[65]南里なんりらは6症例しょうれいをまとめてその特徴とくちょう以下いかのようにまとめている。こうGADこう体高たいこうりょくあたいがたとのちがいとしては、かならずしも1がた糖尿とうにょうびょう先行せんこうしないこと、小脳しょうのう失調しっちょう家族かぞくれきしめすことがあり遺伝いでんせい脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょう鑑別かんべつになること、こうGAD抗体こうたい血清けっせいていちから陽性ようせいでありかならずしもずい腔内で産出さんしゅつされていないこと、治療ちりょう効果こうか一過いっかせいであり治療ちりょうかえすうちに反応はんのうとぼしくなること、高力こうりきあたいがたよりも進行しんこう緩徐かんじょであり長期ちょうきけいよわいでも良好りょうこう反応はんのうしめれいがあることなどがしられている。6めいちゅう2めい(33%)で小脳しょうのう失調しっちょう家族かぞくれきがあり遺伝子いでんし検索けんさくでは脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょう診断しんだんできなかった。また甲状腺こうじょうせん自己じこ抗体こうたいが6れいちゅう2れい(33%)で陽性ようせいであった。

こうGAD抗体こうたい病因びょういんてき役割やくわり
編集へんしゅう

こうGAD抗体こうたいかんしては以下いかの2てんかんして議論ぎろんられている。まずだいいちこうGAD抗体こうたい標的ひょうてき抗原こうげん機能きのうてきあるいは器質きしつてき障害しょうがいするのか、すなわち病因びょういんとなりうるかというてんである。そしてだいにどのようなメカニズムによって様々さまざま神経しんけい疾患しっかんびょうがたをとるのかというてんである。

こうGAD抗体こうたい病因びょういんなのか?

臨床りんしょう観察かんさつでは、こうGAD抗体こうたい関連かんれん神経しんけい疾患しっかんおおくが免疫めんえき治療ちりょう抵抗ていこうせいしめすこと、血清けっせい抗体こうたいずいえき抗体こうたい疾患しっかん重症じゅうしょう関連かんれんせいがないことがられていた。また実験じっけん医学いがくてきにはGADは細胞さいぼうしつ蛋白質たんぱくしつであるため、抗体こうたい抗原こうげん結合けつごうすることが困難こんなんかんがえられたためこうGAD抗体こうたい病因びょういんてき役割やくわりがないと予想よそうされていた[66]。しかし三苫みとまらはじゅう染色せんしょくによる免疫めんえき組織そしき化学かがくほうもちいて、ずいえき抗体こうたいがプルキンエ細胞さいぼう投射とうしゃする抑制よくせいせい神経しんけい細胞さいぼう終末しゅうまつ結合けつごうしていることをあきらかにし、さらにスライス標本ひょうほんたいしてパッチクランプほうもちいてこうGAD抗体こうたい抑制よくせいせい神経しんけい細胞さいぼう終末しゅうまつ作用さようしてGABAの放出ほうしゅつ阻害そがいすることをあきらかにした[67][36][68]。これらによってpathogenic actionが証明しょうめいされた。さらに2007ねんにMantoらは患者かんじゃずいえきをラットの小脳しょうのうない注入ちゅうにゅうすると、小脳しょうのう刺激しげきによってしょうじる大脳だいのう運動うんどうたいする抑制よくせい阻害そがいされることから抗体こうたい投与とうよ症状しょうじょう再現さいげんされpassive transferが証明しょうめいされた。そしてこうGAD抗原こうげんエピトープはシナプスしょう開口かいこう放出ほうしゅつするさい一過いっかせい細胞さいぼう表面ひょうめん露出ろしゅつするため抗体こうたい反応はんのうするといったかんがかた、ラット小脳しょうのう器官きかん培養ばいよう実験じっけんにおいて、免疫めんえきグロブリンがプルキンエ細胞さいぼうまれること、こうGAD抗体こうたい陽性ようせいのstiff-person症候群しょうこうぐん患者かんじゃのIgGがin vitroでGAD酵素こうそ活性かっせい阻害そがいすることなどからaccessibilityの証明しょうめいもされつつある[69][70]以上いじょうからaccessibilityの証明しょうめい、pathogenic actionの証明しょうめい、passive transferの証明しょうめいがすべてたされ病因びょういんとして確立かくりつしたという意見いけんもある。しかしこうGAD抗体こうたい関連かんれん免疫めんえきせい疾患しっかんでは細胞さいぼう表面ひょうめん抗原こうげんたいする自己じこ抗体こうたい共存きょうぞんすることがある[71][72][73][74]細胞さいぼう表面ひょうめん抗原こうげんたいする自己じこ抗体こうたいゆうする疾患しっかんでは免疫めんえき治療ちりょう反応はんのうせいがよいれいおおく、自己じこ抗体こうたい病因びょういんてき役割やくわりたす可能かのうせいたか[75][76]。それをまえてこうGAD抗体こうたい関連かんれん疾患しっかんにおいても、こうGAD抗体こうたい自身じしんではなく、共存きょうぞんする神経しんけい細胞さいぼう表面ひょうめん抗原こうげんたいする自己じこ抗体こうたい病因びょういんてき役割やくわりをはたすのではないかというかんがかたてきているが、確定かくていてき実験じっけんてき証拠しょうこはない[77][78][79]。GrausやDalmauらはこうGAD抗体こうたい病原びょうげん抗体こうたいではないと主張しゅちょうしている[21]

様々さまざま神経しんけい疾患しっかんびょうがたをとるメカニズム

おなこうGAD抗体こうたい陽性ようせいであっても糖尿とうにょうびょう、stiff-person症候群しょうこうぐん小脳しょうのう運動うんどう失調しっちょうしょう症状しょうじょうことなる理由りゆう抗体こうたいのGADの認識にんしき部位ぶいちがいとかんがえられている。神経症しんけいしょうじょう発症はっしょうする抗体こうたいはGADのC末端まったん認識にんしきする。stiff-person症候群しょうこうぐんではGADの酵素こうそ活性かっせい抑制よくせいし、小脳しょうのう失調しっちょうしょうではGABAの放出ほうしゅつ抑制よくせいする。一方いっぽう糖尿とうにょうびょうみとめられる抗体こうたいはGADのmiddle portionを認識にんしきする。ポリクローナルに産出さんしゅつされるこうGAD抗体こうたいのサブタイプの割合わりあいによって臨床りんしょう症状しょうじょうことなるとかんがえられている[80]

こう甲状腺こうじょうせん抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう橋本はしもと脳症のうしょう

編集へんしゅう

歴史れきしてきには1966ねん英国えいこくのBrainらが橋本はしもとびょうともない、意識いしき混濁こんだく幻覚げんかくかた麻痺まひ失語しつごなど精神せいしん神経症しんけいしょうじょうていした48さい男性だんせい患者かんじゃ報告ほうこくしたことにはじまる[81]。この患者かんじゃ甲状腺こうじょうせんホルモンの正常せいじょうであるにもかかわらず、精神せいしん神経症しんけいしょうじょうかえ症状しょうじょう変動へんどう関連かんれんしてサイロイドテストの異常いじょうずいわき蛋白たんぱく上昇じょうしょうみとめられた。甲状腺こうじょうせんせいけんでは橋本はしもとびょう特徴とくちょうてき病理びょうり所見しょけんられた。甲状腺こうじょうせんホルモンの補充ほじゅうでは症状しょうじょう改善かいぜんみとめられず粘液ねんえき水腫すいしゅせい脳症のうしょうとはことなる自己じこ免疫めんえきてきじょ背景はいけいとした脳症のうしょう存在そんざい示唆しさされた。1988ねんにBehanらが急性きゅうせい散在さんざいせいのう脊髄せきずいえん患者かんじゃ免疫めんえきがくてき解析かいせきし、橋本はしもとびょうともな自己じこ免疫めんえきせい脳症のうしょう一群いちぐんがあることをあらためて指摘してきした<。1991ねんにShawらがこう甲状腺こうじょうせん抗体こうたい陽性ようせいでステロイド反応はんのうせいゆうする5めい脳症のうしょう患者かんじゃ報告ほうこくした[82]。このときはじめて「Hashimoto encephalopathy」というあたらしい疾患しっかん概念がいねん提唱ていしょうされた。Shawらの基準きじゅん[82]では精神せいしん神経症しんけいしょうじょう脳症のうしょう)の存在そんざいこう甲状腺こうじょうせん抗体こうたい存在そんざい、ステロイドにたいする反応はんのうせいという3てん強調きょうちょうしている。この診断しんだん基準きじゅん問題もんだいてん甲状腺こうじょうせん自己じこ抗体こうたい疾患しっかん特異とくいせいである。こう甲状腺こうじょうせん抗体こうたい陽性ようせいりつ日本人にっぽんじん全体ぜんたいで5\25%にたっするため診断しんだん契機けいきになりえても確定かくてい診断しんだんになりえない。しかしこうNAE抗体こうたい橋本はしもと脳症のうしょう診断しんだん感度かんどは50%で特異とくいが91%であり感度かんど問題もんだいがある。こう甲状腺こうじょうせん抗体こうたい特徴とくちょう橋本はしもと脳症のうしょうでも小脳しょうのう失調しっちょうしめすものがられている。福井大学ふくいだいがく調査ちょうさでは16%が小脳しょうのう失調しっちょうがたである。Shawらの基準きじゅんたした小脳しょうのう失調しっちょうがた橋本はしもと脳症のうしょう13れい検討けんとうれい報告ほうこくがある[83]こうNAE抗体こうたい陽性ようせいれいは8れい陰性いんせいれいが5れいであった(陽性ようせいりつ62%)。62%が慢性まんせい進行しんこうせい経過けいかであり、半数はんすうでSPECTで小脳しょうのうりゅう低下ていかがあり脊髄せきずい小脳しょうのう変性へんせいしょうとの類似るいじてんみとめられた。が17%ととぼしく、小脳しょうのう萎縮いしゅくも38%ととぼしかった。免疫めんえきがくてき治療ちりょう効果こうかちょこうが4れい中等ちゅうとう効果こうかが4れい軽度けいど効果こうかが5れいであった。三苫みとまらはこうNAE抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうがた橋本はしもと脳症のうしょう患者かんじゃずいわきをラットの小脳しょうのうプルキンエ細胞さいぼうに灌流しパッチクランプほうもちいてプルキンエ細胞さいぼう伝達でんたつ阻害そがいあきらかにした[45]

こうグリアジン抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう(グルテン失調しっちょうしょう

編集へんしゅう

グリアジンとは小麦粉こむぎこふくまれている蛋白質たんぱくしつであり、グルテニンと結合けつごうグルテン形成けいせいしている。グルテンはねばりと弾性だんせい形成けいせいする成分せいぶんである。グリアジンにたいする抗体こうたい小麦こむぎアレルギー、小麦こむぎ依存いぞんせい運動うんどう誘発ゆうはつアナフィラキシー、セリアックびょうみとめられる。神経しんけい障害しょうがいについては大脳だいのう萎縮いしゅく認知にんち障害しょうがいてんかん末梢まっしょう神経しんけい障害しょうがい小脳しょうのうせい運動うんどう失調しっちょうなどが報告ほうこくされている。1998ねんと2003ねんにHadjivassiliouらはこうグリアジン抗体こうたい出現しゅつげん頻度ひんど検討けんとうし、正常せいじょう対称たいしょうぐんは1200れいちゅう149れい(12%)、家族かぞくせい失調しっちょうしょうでは59れいちゅう8れい(14%)、MSA-Cでは33れいちゅう5れい(15%)であったのにたいしてはつせい運動うんどう失調しっちょうしょうぐんでは132れいちゅう54れいの41%と有意ゆういたかいことを見出みいだした。これによりこうグルアジン抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのうせい運動うんどう失調しっちょうしょうは1つの疾患しっかん単位たんい推定すいていし、これをグルテン失調しっちょうしょう(またはグルテン運動うんどう失調しっちょう)とづけた[84][85]。 グルテン運動うんどう失調しっちょう臨床りんしょうぞう男女だんじょ有意ゆういはなく、慢性まんせい甲状腺こうじょうせんえん合併がっぺいしていることもある。また1がた糖尿とうにょうびょう合併がっぺいれい報告ほうこくもある。小脳しょうのう症状しょうじょう発症はっしょうした年齢ねんれい平均へいきんで48さいであり24%に吸収きゅうしゅう不良ふりょう合併がっぺいしていた。ほぼぜんれい歩行ほこう失調しっちょうしめし、眼球がんきゅう運動うんどう障害しょうがいも84%で頻度ひんどたかい、末梢まっしょう神経しんけい障害しょうがいじくさくニューロパチー)の合併がっぺいも45%にみられる。頭部とうぶMRIでは軽度けいど小脳しょうのう萎縮いしゅくしめすことがおおく、こうグリアジン抗体こうたい(IgGまたはIgA)陽性ようせいであることで診断しんだんされる。治療ちりょうグルテンしょくおこなわれ、おおくの症例しょうれいである程度ていど運動うんどう失調しっちょう改善かいぜんし、長期ちょうきてきにも効果こうか持続じぞくする[59]無効むこうれいには免疫めんえきグロブリン療法りょうほうおこなわれ有効ゆうこうれいもある。日本にっぽんではセリアックびょう頻度ひんどすくなくグルテン運動うんどう失調しっちょうしょう注目ちゅうもくされていなかった。しかし京都きょうと大学だいがく猪原いのはららは系統けいとう萎縮いしゅくしょう除外じょがいした14れい原因げんいん不明ふめい小脳しょうのうせい運動うんどう失調しっちょうしょうについてこうグリアジン抗体こうたい検査けんさおこない5れい(36%)で陽性ようせい正常せいじょうコントロールぐんでは2%の陽性ようせいであったと報告ほうこくした[86]。このことからもこうグリアジン抗体こうたい陽性ようせい小脳しょうのう失調しっちょうしょうまれ疾患しっかんではない可能かのうせいもある[87]日本にっぽんではこうグリアジンIgA抗体こうたい陽性ようせいれいおおい。

HLA-DQ2とHLA-DQ8とつよ関連かんれんしている。日本にっぽんではHLA-DQ2を保有ほゆうするひとは1%のみであり欧米おうべいとは遺伝いでんてき背景はいけいことなる。南里なんりらは日本にっぽんのグルテン失調しっちょうしょう治療ちりょう効果こうか剖検ぼうけんれいかんして報告ほうこくしている[88]。58めい特発とくはつせい小脳しょうのう失調しっちょうしょう患者かんじゃのうち14にん(24%)でこうグリアジン抗体こうたいまたはだつアミドこうグリアジン抗体こうたい陽性ようせいであった。免疫めんえき療法りょうほうは12れいちゅう7れい有効ゆうこうであった。

プルキンエ細胞さいぼう顆粒かりゅう細胞さいぼうグルテンペプチドの抗原こうげんせいエピトープでは、抗体こうたい交差こうさ反応はんのうがあることがられている。こうグリアジン抗体こうたいはプルキンエ細胞さいぼう反応はんのうする[89]病理びょうり報告ほうこく[89]では小脳しょうのう皮質ひしつ全域ぜんいきにPatchyなプルキンエ細胞さいぼう消失しょうしつ、Tリンパだま広範こうはん浸潤しんじゅんみとめられる。小脳しょうのうしろしつ脊髄せきずいのちさくにおもにTリンパだま少数しょうすうのBリンパだまやマクロファージなどの炎症えんしょう細胞さいぼう浸潤しんじゅんであるperivascular cuffingがみとめられた。また、小脳しょうのう脳幹のうかんこうTG6抗体こうたいIgAが沈着ちんちゃくしていた。

多発たはつせい硬化こうかしょう

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多発たはつせい硬化こうかしょうやく11〜33%に小脳しょうのう失調しっちょうみとめられる。小脳しょうのう皮質ひしつだつずい、プルキンエ細胞さいぼう脱落だつらく進行しんこう多発たはつせい硬化こうかしょうみとめられる[90]うえ小脳しょうのうあし中小ちゅうしょうのうあし脳幹のうかん小脳しょうのうしろしつ障害しょうがいともなう。

シェーグレン症候群しょうこうぐん

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シェーグレン症候群しょうこうぐん小脳しょうのう失調しっちょうしめれいがある。シェーグレン症候群しょうこうぐんではいくつかの神経しんけい組織そしきたいする自己じこ抗体こうたい報告ほうこくされており、プルキンエ細胞さいぼう反応はんのうする抗体こうたいふくまれているとかんがえられる[91]

全身ぜんしんせいエリテマトーデス患者かんじゃ小脳しょうのう失調しっちょうしめれいまれである。

HLA-B51関連かんれん小脳しょうのう萎縮いしゅくしょう神経しんけいベーチェットびょう

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慢性まんせい進行しんこうがた神経しんけいベーチェットびょうでは小脳しょうのう失調しっちょうしめれいがある。HLA-B51陽性ようせい粘膜ねんまく皮膚ひふ症状しょうじょう神経しんけいベーチェットびょうによる小脳しょうのう失調しっちょう可能かのうせいうたがう。

出典しゅってん脚注きゃくちゅう

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外部がいぶリンク

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