面白おもしろ半分はんぶん

『面白おもしろ半分はんぶん』（おもしろはんぶん）は、佐藤さとう嘉よしみ尚なおが1971年ねんに興おこした株式会社かぶしきがいしゃ面白おもしろ半分はんぶんが発行はっこうした月刊げっかん誌し。初代しょだいの編集へんしゅう長ちょうに吉行よしゆき淳之介じゅんのすけを迎むかえ、同年どうねん12月がつに創刊そうかん号ごう（1972年ねん1月がつ号ごう）を出だした。編集へんしゅう長ちょうは人気にんき作家さっかが（原則げんそく）半年はんとし毎ごとに交代こうたいしていた。1980年ねんに倒産とうさんして廃刊はいかんとなった。

経緯けいい

吉行よしゆき淳之介じゅんのすけが『朝日新聞あさひしんぶん』に掲載けいさいしたエッセイで「『日本にっぽん軽薄けいはく派は』という雑誌ざっしを作つくってみたい」と書かいていた。これを聞きいた大光たいこう社しゃの佐藤さとう嘉よしみ尚なおが雑誌ざっしの出版しゅっぱんを企画きかくした。タイトルは、宮武みやたけ外骨がいこつの雑誌ざっし『面白おもしろ半分はんぶん』に触発しょくはつされたものである。吉行よしゆきの協力きょうりょくを取とり付つけるが、所属しょぞくしていた大光たいこう社しゃが閉鎖へいさされたため、株式会社かぶしきがいしゃ城南しろみなみ洋紙ようし店てんの社長しゃちょう・青沼あおぬま繁しげる汎ひろしの援助えんじょを得えて、株式会社かぶしきがいしゃ面白おもしろ半分はんぶんを設立せつりつ。「面白おもしろくてタメにならない雑誌ざっし」として刊行かんこうした。創刊そうかん号ごうは96ページ、150円えん、3万まん部ぶ発行はっこう。

編集へんしゅう長ちょうは吉行よしゆきの後のち、野坂のさか昭あきら如、開高かいこう健けん、五木いつき寛之ひろゆき、藤本ふじもと義一ぎいち、金子かねこ光晴みつはる、井上いのうえひさし、遠藤えんどう周作しゅうさく、田辺たなべ聖子せいこ、筒井つつい康隆やすたか、半村はんむら良りょう、田村たむら隆一りゅういち等ひとしが交代こうたいで務つとめた。

野坂のさか編集へんしゅう長ちょう時代じだいの1972年ねんに永井ながい荷風かふう作さくと言いわれる春本しゅんぽん「四畳半よじょうはん襖ふすまの下した張ちょう」を全文ぜんぶん掲載けいさいし、わいせつ図書としょで摘発てきはつされた（四畳半よじょうはん襖ふすまの下した張ちょう事件じけん）。これについて裁判さいばん特集とくしゅう臨増号ごう4冊さつ（通巻つうかん23、35、55、60号ごう）を発行はっこうして世論せろんに訴うったえた。

この他ほかにも臨時りんじ増刊ぞうかん号ごうで「井上いのうえひさしと藤本ふじもと義一ぎいち」（1974年ねん）、「佐藤さとう愛子あいこと田辺たなべ聖子せいこ」「金子かねこ光晴みつはる（追悼ついとう）」（1975年ねん）、「有吉ありよし佐和子さわこ」（1976年ねん）、「開高かいこう健けん」「野坂のさか昭あきら如」（1978年ねん）、「吉行よしゆき淳之介じゅんのすけ」「五木いつき寛之ひろゆき」「田村たむら隆一りゅういち」「遠藤えんどう周作しゅうさく」（1979年ねん）、「水上みずかみ勉つとむ」（1980年ねん）などを刊行かんこう。

1980年ねんに発行はっこう人じんの佐藤さとうが編集へんしゅう長ちょうとなる。同年どうねん7月がつ5日にちに負債ふさい9200万まん円えんで倒産とうさんし、9月がつ号ごう以降いこうは休刊きゅうかん。「四畳半よじょうはん襖ふすまの下した張ちょう事件じけん」の最高裁さいこうさい判決はんけつを受うけて、12月号ごうを「臨終りんじゅう号ごう」として刊行かんこうした。

歴代れきだい編集へんしゅう長ちょう

1. 吉行よしゆき淳之介じゅんのすけ - 1972年ねん1月がつ号ごう - 6月がつ号ごう。（表紙ひょうし＝長尾ながおみのる）
2. 野坂のさか昭あきら如（1回かい目め） - 1972年ねん7月がつ号ごう - 12月号ごう。（表紙ひょうし＝長尾ながおみのる）
3. 開高かいこう健けん（1回かい目め） - 1973年ねん1月がつ号ごう - 6月がつ号ごう。（表紙ひょうし＝山崎やまざき英介えいすけ）
4. 五木いつき寛之ひろゆき - 1973年ねん7月がつ号ごう - 12月号ごう。（表紙ひょうし＝米倉よねくら斉ひとし加か年ねん）
5. 藤本ふじもと義一ぎいち - 1974年ねん1月がつ号ごう - 6月がつ号ごう。（表紙ひょうし＝金子かねこ光晴みつはる）
6. 金子かねこ光晴みつはる - 1974年ねん7月がつ号ごう - 12月号ごう。（表紙ひょうし＝滝田たきたゆう）
7. 井上いのうえひさし（1回かい目め） - 1975年ねん1月がつ号ごう - 6月がつ号ごう。（表紙ひょうし＝山下やました勇三ゆうぞう）
8. 野坂のさか昭あきら如（2回かい目め） - 1975年ねん7月がつ号ごう - 12月号ごう。（表紙ひょうし＝石山いしやま貴美子きみこ）
9. 遠藤えんどう周作しゅうさく - 1976年ねん1月がつ号ごう - 6月がつ号ごう。（表紙ひょうし＝長尾ながおみのる）
10. 開高かいこう健けん（2回かい目め） - 1976年ねん7月がつ号ごう - 12月号ごう。（表紙ひょうし＝伊東いとうひでお）
11. 田辺たなべ聖子せいこ - 1977年ねん1月がつ号ごう - 6月がつ号ごう。（表紙ひょうし＝鴨居かもい羊子ようこ）
12. 筒井つつい康隆やすたか - 1977年ねん7月がつ号ごう - 1978年ねん6月がつ号ごう。（表紙ひょうし＝杉村すぎむら篤あつし・アートディレクション&デザイン=首藤しゅどう進すすむ）
13. 半村はんむら良りょう - 1978年ねん7月がつ号ごう - 12月号ごう。（表紙ひょうし＝猫ねこ隣となり太郎たろう・アートディレクション&デザイン=首藤しゅどう進すすむ）
14. 井上いのうえひさし（2回かい目め） - 1979年ねん1月がつ号ごう - 6月がつ号ごう。（表紙ひょうし＝山やま藤ふじ章二しょうじ・アートディレクション&デザイン=首藤しゅどう進すすむ）
15. 田村たむら隆一りゅういち - 1979年ねん7月がつ号ごう - 12月号ごう。（表紙ひょうし＝古川ふるかわタク）
16. 佐藤さとう嘉よしみ尚なお - 1980年ねん1月がつ号ごう - 8月がつ号ごう。編集へんしゅう長ちょう交代こうたい制せい廃止はいし。（表紙ひょうし＝古川ふるかわタク）

各かく編集へんしゅう長ちょう時代じだい

• 吉行よしゆき淳之介じゅんのすけ（1972年ねん1月がつ号ごう-6月がつ号ごう）

作家さっからに1時じ間あいだほど話はなしてもらった内容ないようをリライトして「随ずい舌した」と称しょうした（「随筆ずいひつ」は原稿げんこう料りょうが高たかく付つくという吉行よしゆきの発案はつあんによる）。創刊そうかん号ごうは大岡おおおか昇平しょうへい、金子かねこ光晴みつはる、岡本おかもと太郎たろう、山やま藤ふじ章二しょうじ、開高かいこう健けんの「随ずい舌した」を掲載けいさい。この企画きかくは終おわり刊かんまで続つづいた。他たに「奇人きじん外伝がいでん」「変かわった人物じんぶつインタビュー」など掲載けいさい。

• 野坂のさか昭あきら如（1972年ねん7月がつ号ごう-12月号ごう）

7月がつ号ごうに「四畳半よじょうはん襖ふすまの下しも張はり」を掲載けいさい、発禁はっきん。佐藤さとう、野坂のさかが起訴きそされる。

1973年ねんに初はつ公判こうはん、1976年ねんに一いち審しんで有罪ゆうざい判決はんけつ。公判こうはんでは丸谷まるや才一さいいち、五木いつき寛之ひろゆき、井上いのうえひさしなどの反論はんろんもあり、雑誌ざっしの知名度ちめいどが一気いっきに高たかくなり、毎号まいごう完売かんばい状態じょうたいとなった。

• 開高かいこう健けん（1973年ねん1月がつ号ごう-6月がつ号ごう）

対談たいだん「随時ずいじ小酌しょうしゃく」、コラム「トイレ探訪たんぼう」「私わたしの葬式そうしき」などを掲載けいさい。（開高かいこうが2月がつから6月がつまでベトナムへ取材しゅざい旅行りょこうのため、実際じっさいにはあまり関かかわることができなかったという）

• 五木いつき寛之ひろゆき（1973年ねん7月がつ号ごう-12月号ごう）

五木いつき寛之ひろゆき「日本にっぽん腰巻こしまき文学ぶんがく大賞たいしょう」を開始かいし、休刊きゅうかんまで毎年まいとし実施じっしされ、8回かい、実施じっしされた。第だい1回かい受賞じゅしょうは、新潮社しんちょうしゃの山口やまぐち瞳ひとみ『酒飲さけのみの自己じこ弁護べんご』。ソンコ・マージュ「ギター無宿むしゅく世界せかい放浪ほうろう記き」が人気にんきとなる。

• 藤本ふじもと義一ぎいち（1974年ねん1月がつ号ごう-6月がつ号ごう）

各かく方面ほうめんから集あつめた「没ぼつ」原稿げんこう特集とくしゅう（1974年ねん2月がつ）、竹中たけなか労ろう「あえて美空みそらひばりを弁護べんごする」、大島おおしま渚なぎさ「縁起えんぎの悪わるい話はなし」、阿おもね奈井文彦ふみひこ「三途さんずの川かわを渡わたる」、対談たいだん「加か虐しいたげ被虐ひぎゃく是ぜ好日こうじつ」などが話題わだいとなる。

• 金子かねこ光晴みつはる（1974年ねん7月がつ号ごう-12月号ごう）

「面白おもしろ半分はんぶん電話でんわ対談たいだん」で第だい1回かいは北きた杜夫もりおVS佐藤さとう愛子あいこ。

• 井上いのうえひさし（1975年ねん1月がつ号ごう-6月がつ号ごう）

特集とくしゅう「テレビ、人間にんげん、…」「テレビお偉方えらがた身元みもと調査ちょうさ」など、テレビに関かんする記事きじで特徴とくちょうを出だした。

• 野坂のさか昭あきら如（1975年ねん7月がつ号ごう-12月号ごう）

篠沢しのざわ秀夫ひでおの連載れんさいなど。

• 遠藤えんどう周作しゅうさく（1976年ねん1月がつ号ごう-6月がつ号ごう）

「神父しんぷさんの好奇心こうきしん座談ざだん会かい」、講談こうだん「四畳半よじょうはん年増としまの色いろ張ちょう」、井上いのうえ洋治ようじ神父しんぷとトルコ嬢じょうの「激烈げきれつ対談たいだん」など掲載けいさい。

• 開高かいこう健けん（1976年ねん7月がつ号ごう-12月号ごう）

サントリー社長しゃちょう佐治さじ敬三けいぞうとの連載れんさい対談たいだんなど。

• 田辺たなべ聖子せいこ（1977年ねん1月がつ号ごう-6月がつ号ごう）

匿名とくめい座談ざだん会かい「男性だんせい作家さっか読よむべからず」（出席しゅっせき者しゃの佐藤さとう愛子あいこ、中山なかやまあい子こ、田辺たなべ聖子せいこは写真しゃしんを掲載けいさい）。高橋たかはし孟はじめ（カモカ・シリーズのイラスト担当たんとう）の「海軍かいぐんめしたき物語ものがたり」（1977年ねん1月がつ-）は後のちに新潮社しんちょうしゃから単行本たんこうぼん化かされてベストセラーとなった。筒井つつい康隆やすたかの露悪ろあく的てきな日記にっき「腹はら立りつ半分はんぶん日記にっき」を連載れんさい（1977年ねん1月がつ-1978年ねん6月がつ）。

• 筒井つつい康隆やすたか（1977年ねん7月がつ号ごう-1978年ねん6月がつ号ごう）

クレージーな持もち味あじで人気にんきが高たかまり、発行はっこう部数ぶすうも増加ぞうか。編集へんしゅう長ちょうも延期えんきして1年間ねんかん務つとめた。山下やました洋輔ようすけ「全ぜん冷ひや中ちゅう顛末てんまつ記き」、タモリ「ハナモゲラ語ごの思想しそう」連載れんさい。タモリの原稿げんこうが締しめ切きりに間まに合あわず、4ページ分ぶんが真まっ白しろのまま店頭てんとうに並ならんだことがある。佐藤さとう嘉よしみ尚なおの呼よびかけで、小林こばやし亜あ星ぼしに会長かいちょうを頼たのみ、「大だい日本にっぽん肥満ひまん者しゃ連盟れんめい（大だいピ連れん）」が結成けっせいされたことも話題わだいとなった。

佐藤さとうによれば、筒井つつい編集へんしゅう長ちょう時代じだいが一番いちばん売うれ行ゆきがよかったが、以前いぜんからの負債ふさいもあり、原稿げんこう料りょうの未払みはらいが続つづいていた。筒井つついは「自分じぶんが編集へんしゅう長ちょうをした一いち年間ねんかんについては責任せきにんがある」と言いって、原稿げんこう料りょう分ぶん（ウン百ひゃく万まん）を立たて替かえてくれたという。

• 半村はんむら良りょう（1978年ねん7月がつ号ごう-12月号ごう）

架空かくうのお茶ちゃの家元いえもと「南みなみ千せん家いえ流りゅう」を特集とくしゅうし、アン・ルイスらが入門にゅうもんした。特集とくしゅう「皇居こうきょ再さい利用りよう計画けいかく」「次期じき元号げんごうは"早稲田わせだ"（法政ほうせいでも可か）に決定けってい」など。

• 井上いのうえひさし（1979年ねん1月がつ号ごう-6月がつ号ごう）

特集とくしゅう「テレビCMまる一いち日にち」「世界せかい最新さいしんテレビ事情じじょう」など、テレビに関かんする記事きじ。

• 田村たむら隆一りゅういち（1979年ねん7月がつ号ごう-12月号ごう）

小しょう詩集ししゅう、西にし江こう雅之まさゆきによる紀行きこう文ぶんなど。

• 佐藤さとう嘉よしみ尚なお（1980年ねん）

発行はっこう人じんとして編集へんしゅう長ちょう交代こうたい制せい休止きゅうし。8月がつ号ごうを出だした後のちに倒産とうさんし、9月がつ号ごう以降いこうは休刊きゅうかん。

「臨終りんじゅう号ごう」は常連じょうれんライター・元もと編集へんしゅう者しゃの有志ゆうし（阿おもね奈井文彦ふみひこ、牛ぎゅう坂さか浩二こうじ、土屋つちや健けんら）が企画きかく編集へんしゅうしたもので、歴代れきだい編集へんしゅう長ちょうらが登場とうじょう。発行はっこう所しょは「土筆つくし舎しゃ」となっている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 尾崎おざき秀樹ひでき、宗そう武たけ朝子あさこ『雑誌ざっしの時代じだい その興亡こうぼうのドラマ』主婦しゅふの友社ともしゃ 1979年ねん
• 木本きもと至いたる『雑誌ざっしで読よむ戦後せんご史し』新潮社しんちょうしゃ 1985年ねん
• 佐藤さとう嘉よしみ尚なお『「面白おもしろ半分はんぶん」の作家さっかたち――70年代ねんだい元祖がんそサブカル雑誌ざっしの日々ひび』集英社しゅうえいしゃ〈集英社しゅうえいしゃ新書しんしょ〉、2003年ねん8月がつ26日にち。ISBN 4-08-720204-6。