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高勢実乗 - Wikipedia
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高勢たかせ実み乗じょう

高勢たかせ 實み乘じょう（たかせ みのる、新しん字体じたい表記ひょうき：高勢たかせ 実み乗じょう、明治めいじ30年ねん（1897年ねん）12月13日にち - 昭和しょうわ22年ねん（1947年ねん）11月19日にち）は、日本にっぽんの俳優はいゆう。サイレント映画えいが時代じだいからトーキー初期しょきにかけ活動かつどうした。「アーノネおっさん」、「わしゃかなわんよ」等とうのギャグを繰くり出だすコミックリリーフとしての活躍かつやくで知しられ、とりわけ山中やまなか貞雄さだお監督かんとく作品さくひんの常連じょうれんであった。愛称あいしょうは「アーノネのオッサン」。本名ほんみょうは能登谷のとや 新しんー（のとや しんいち）。

たかせ みのる
高勢たかせ 實み乘じょう
高勢 實乘
本名ほんみょう 能登谷のとや 新しんー （のとや しんいち）
別べつ名義めいぎ 高勢たかせ 實み （たかせ みのる）
相馬そうま 一平いっぺい （そうま いっぺい）
生年月日せいねんがっぴ (1897-12-13) 1897年ねん12月13日にち
没ぼつ年月日ねんがっぴ (1947-11-19) 1947年ねん11月19日にち（49歳さい没ぼつ）
出生しゅっしょう地ち 日本の旗 日本にっぽん・北海道ほっかいどう函館はこだて市し
職業しょくぎょう 俳優はいゆう
ジャンル 新劇しんげき、劇映画げきえいが（現代げんだい劇げき・時代じだい劇げき、サイレント映画えいが・トーキー）
活動かつどう期間きかん 1915年ねん - 1947年ねん
配偶はいぐう者しゃ あり
著名ちょめいな家族かぞく 高勢たかせぎん子す 娘むすめ
主おもな作品さくひん
『國士無双こくしむそう』
『街まちの入墨いれずみ者しゃ』
『丹下たんげ左ひだり膳ぜん余話よわ 百ひゃく万まん両りょうの壺つぼ』
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生涯しょうがい

編集へんしゅう

1897年ねん[1]（明治めいじ30年ねん）12月13日にち、北海道庁ほっかいどうちょう函館はこだて区く（現在げんざいの北海道ほっかいどう函館はこだて市し）に生うまれる。1905年ねん（明治めいじ38年ねん）、7歳さいのときに上京じょうきょうし、舞台ぶたいにあがる。

長ながじてからは中部ちゅうぶ名古屋なごやで、「高勢たかせ 實み」の名なで一座いちざの座長ざちょうをつとめ、まじめな芝居しばいで売うっていた。東京とうきょうの新派しんぱの大御所おおごしょに、全国ぜんこくに名なを知しられ、名優めいゆうと呼よばれた高田たかだ実みのるがおり、高勢たかせは「名古屋なごやの高田たかだ実みのる」と評判ひょうばんされたほどで、「高勢たかせ實み」の芸名げいめいもこれに因ちなんでいる[2]。

1915年ねん（大正たいしょう4年ねん）、日活にっかつの前身ぜんしんの一いち社しゃM・パテー商会しょうかいの経営けいえい者しゃだった梅屋うめや庄吉しょうきちの新しん会社かいしゃM・カシー商会しょうかいが製作せいさくした映画えいが『竜神りゅうじんの娘むすめ』が、高勢たかせが映画えいがに出演しゅつえんしているもっとも古ふるい記録きろくである。1919年ねん（大正たいしょう8年ねん）4月がつ30日にちに公開こうかいされた天然色てんねんしょく活動かつどう写真しゃしん（天てん活かつ）製作せいさくの田村たむら宇一郎ういちろう監督かんとくの葛木かつらぎ香が一いち主演しゅえん作さく『孝女こうじょ白菊しらぎく』にも出演しゅつえんしている。

同年どうねん、日活にっかつ向島むこうじま撮影さつえい所しょに二枚目にまいめで入社にゅうしゃ、役者やくしゃ時代じだいの衣ころも笠りゅう貞之助ていのすけらと共演きょうえん後ご、まもなく退社たいしゃ、翌よく1920年ねん（大正たいしょう9年ねん）にはすでに国際こくさい活かつ映うつ角かく筈はず撮影さつえい所しょに移籍いせきしている。細山ほそやま喜代松きよまつや畑中はたなか蓼坡しょうは作品さくひんに出演しゅつえんするが、やはり長続ながつづきせず、24歳さいを目前もくぜんにした1921年ねん（大正たいしょう10年ねん）秋あきには、帝国ていこく興行こうぎょうの協力きょうりょくを得えて「高勢たかせ映画えいが研究所けんきゅうじょ」を設立せつりつ、映画えいが製作せいさくに乗のり出だす。しかしこれも3か月げつで終了しゅうりょうする。

1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）9月1日にちの関東大震災かんとうだいしんさいを経へて、京都きょうとに移うつり、1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）初頭しょとうに東亜とうあキネマに入社にゅうしゃする。仁科にしな熊くま彦作品さくひんに重用じゅうようされるも、1926年ねん（大正たいしょう15年ねん）には衣笠きぬがさの『狂きょうつた一いち頁ぺーじ』の現場げんばに身みを投とうじ、相馬そうま 一平いっぺい（そうま いっぺい）と名乗なのり、以降いこう衣笠きぬがさ映画えいが連盟れんめいの設立せつりつに参加さんか、『十字路じゅうじろ』など連続れんぞく的てき出演しゅつえんを重かさねた。

その後ご、松竹しょうちく下加茂したかも撮影さつえい所しょに入はいり、時代じだい劇げきに出演しゅつえんしたが、林はやし長二ちょうじ郎ろう（長谷川はせがわ一夫かずお）と息いきが合あわず、松竹しょうちくを退社たいしゃ[2]。その次つぎに「高勢たかせ 實み乘じょう」の名なで嵐あらし寛ひろし寿郎としおプロダクションに入社にゅうしゃした。

1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）、30歳さいで日活にっかつ太秦うずまさ撮影さつえい所しょに入社にゅうしゃ。日活にっかつ時代じだいの初期しょきは伊藤いとう大輔だいすけ監督かんとくの『御ご誂あつらえ次郎吉じろきち格子こうし』の目明めあかし仁吉にきち、『興亡こうぼう新撰しんせん組ぐみ』の伊東いとう甲子太郎きねたろう、辻つじ吉郎よしろう監督かんとくの『血煙ちけむり荒神山こうじんやま』の安濃あのう徳とくなど、主演しゅえんの大河内おおこうち傳次郎でんじろうに対抗たいこうする陰険いんけんなキャラクターの悪役あくやくを演えんじた。現存げんそんの『血煙ちけむり荒神山こうじんやま』のフィルムでは、大河内おおこうちとの激はげしい立たち回まわりが残のこされている。

転機てんきは1932年ねん（昭和しょうわ7年ねん）の伊丹いたみ万作まんさく監督かんとく片岡かたおか千恵ちえ蔵ぞう主演しゅえんの『國士無双こくしむそう』であった。伊勢いせ伊勢いせ守役もりやくにおけるコミカルな演技えんぎが評判ひょうばんとなり、喜劇きげき役者やくしゃに転向てんこう、その後ご山中やまなか貞雄さだお監督かんとくの『怪盗かいとう白しろ頭巾ずきん』『丹下たんげ左ひだり膳ぜん余話よわ・百ひゃく万まん両りょうの壺つぼ』『河かわ内山うちやま宗俊むねとし』などに出演しゅつえん。

ここではアメリカの喜劇きげきコンビであるローレル・ハーディを真似まねて、鳥羽とば陽之助ようのすけとの「極楽ごくらくコンビ」シリーズが大当おおあたり。40歳さいになった1938年ねん（昭和しょうわ13年ねん）に東宝とうほうに移籍いせき、と極きわめて順調じゅんちょうに、口元くちもとの隠かくれる長ながい鼻はな鬚ひげと八はちの字じ眉まゆ、丸まるい目張めばりと独特どくとくのメイキャップにより、異様いような風体ふうたいを印象いんしょうづけ、強烈きょうれつな脇役わきやくキャラとして人気にんきを博はくした。とくにコメディアン転向てんこう、およびトーキー以降いこうに本領ほんりょうを発揮はっきした。一世いっせいを風靡ふうびした「あ－のね、おっさん。わしゃかなわんよ」[3]のギャグが、戦時せんじ中ちゅう、厭戦えんせん的てきであるとの理由りゆうから軍ぐんによって封印ふういんされた際さいには、巡業じゅんぎょうで糊口ここうを凌しのぐなど辛酸しんさんをなめる。

終戦しゅうせん後ごの1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）、斎藤さいとう寅次郎とらじろう監督かんとく、古川緑波ふるかわろっぱ、横山よこやまエンタツ、花菱はなびしアチャコ、初代しょだい柳家やなぎや権けん太たい楼ろう、石田いしだ一松いちまつらと共演きょうえんした『東京とうきょう五ご人にん男おとこ』に出演しゅつえん。闇やみで裕福ゆうふくとなった農民のうみん役やくが好評こうひょうで、喜劇きげき役者やくしゃとして復活ふっかつをめざした矢先やさきの1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）11月19日にちに死去しきょ。満まん49歳さい没ぼつ。遺作いさくは斎藤さいとう寅次郎とらじろう監督かんとくの『浮世うきよも天国てんごく』。

人物じんぶつ・エピソード

編集へんしゅう
 
『國士無双こくしむそう』（1932年ねん）

高勢たかせ實み乘じょうと改名かいめいして日活にっかつに転てんじ、大河内おおこうち傳次郎でんじろうの敵役かたきやくに選えらばれ『血煙ちけむり荒神山こうじんやま』で初はつ顔合かおあわせしたが、大河内おおこうちはものすごい近視きんしで、「チャンバラになると盲滅法めくらめっぽう斬ぎりまくる」とおどかされた高勢たかせは、向むこうがそうならこっちも黙だまってはいられないと、「真剣しんけんを持もってやる」と言いい出だした。大河内おおこうちもこれには驚おどろき、「向むこうが真剣しんけんならこっちも真剣しんけんだ」と真剣しんけん同士どうしのチャンバラが始はじまった。稲垣いながき浩ひろしによると「それまでに見みることのなかった意外いがいな迫力はくりょくがあった」という。稲垣いながきが後のちに高勢たかせにこのときの話はなしを聞きくと「なにしろ向むこうは盲めくら同然どうぜんの暴あばれん坊ぼうだから真剣しんけんでも持もたんと危あぶなくてイカン」、大河内おおこうちに聞きくと「向むこうは気違きちがいでしょう。気違きちがいに刃物はものと言いいますからな。真剣しんけんを持もって立たち向むかえば、多少たしょうは向むこうも手加減てかげんしますワ」などと、どっちもどっちの答こたえを返かえした。

高勢たかせはこうした熱演ねつえん役者やくしゃであり、特異とくいなマスクで熱演ねつえんするとグロテスクで、観客かんきゃくは高勢たかせが銀幕ぎんまくに出でると身震みぶるいして眼めをつむるという始末しまつで、館主かんしゅらからも高勢たかせを出ださぬようにと希望きぼうした。これが百ひゃく八はち十じゅう度ど転向てんこうした『国士無双こくしむそう』で喜劇きげき的てき熱演ねつえんが成功せいこうし、従来じゅうらいのグロテスクを脱皮だっぴして「アーノネ、オッサン」と独自どくじなスタイルを作つくり上あげ、鳥羽とば陽之助ようのすけと「極楽ごくらくコンビ」シリーズで多おおくの楽たのしい作品さくひんを生うんだのは来歴らいれきの通とおりである。

このあと、稲垣いながきや山中やまなか貞雄さだおの真面目まじめな作品さくひんにまで、「わしゃマスコットじゃから出だしてもらいますよ」と言いってのこのこ勝手かってに出でるようになった。出でてくれば何なにか一いち芝居しばいさせねばならず、その芝居しばいがクサビとなって、映画えいがを面白おもしろくした。高勢たかせは「どうやオッサン。わしが出でたから見物けんぶつが入はいったじゃろうが」と、誰だれをつかまえても「オッサン」と呼よんだので、逆ぎゃくにこれが渾名あだなになった。

人気にんき絶頂ぜっちょうの時ときに「ワシャ、カナワンヨ」の言葉ことばが全国ぜんこくに流行りゅうこう。戦争せんそうで暗くらかった気分きぶんを明あかるくしたが、軍部ぐんぶから「この非常時ひじょうじにカナワンとは何事なにごとだ」と叱しかりを受うけ、同時どうじに持もち味あじの突飛とっぴな演技えんぎまで自粛じしゅくを命めいじられた。戦後せんごひっそり亡なくなるが、華はなやかな葬式そうしきもなかった。稲垣いながきは「観客かんきゃくや我々われわれをあれほど楽たのしませてくれた役者やくしゃだっただけに、その最後さいごの寂さびしさは悲かなしくもおもうが、はででなかったのが、アーノネのオッサンらしいのかもしれない」と高勢たかせを偲しのんでいる[4]。

寛ひろしプロ時代じだい、賀茂かも神社じんじゃの糺ただすの森もりで蛇へびをつかまえては喰くっていた。電光石火でんこうせっかで蛇へびの首根くびねっこを押おさえてガブリとやる、アラカンが「わーっ汚けがれな、よせっ」と止とめても、「大将たいしょう、これ栄養えいようありまんね」と返かえすので、アラカンも「栄養えいよう関係かんけいない、もうお前まえロケつれてくのやめや」と恐おそれをなしたという。この蛇へびを何なん匹ひきもとってきては、家いえで夫婦ふうふで喰くうのだが、来客らいきゃくがあると蒲焼かばやきにして出だすので、知しらない者ものたちは「景気けいきよろしおまんなあ、あっこへいったらいつでもウナギマムシ御馳走ごちそうしてくれます」などと喜よろこんでいた。アラカンは「役者やくしゃとしては芸げいのある男おとこでおましたな、寛ひろしプロ奇人きじん伝でん、この男おとこにとどめをさします」と語かたっている[5]。

また、印行いんこうがないので自身じしんの一物いちもつに朱肉しゅにくを付つけて押おし、あとで「大おおきさが違ちがうから俺おれの印しるしじゃない」と相手あいてを煙けむに巻まいた。

娘むすめはムーラン・ルージュ新宿しんじゅく座ざを経へて、戦後せんごは吉本よしもと新しん喜劇きげきで活躍かつやくした元もと女優じょゆう・高勢たかせぎん子す。ぎん子すの娘むすめ・久美子くみこの夫おっと、すなわち義理ぎりの孫まごが石井いしい光三みつぞう。

おもな出演しゅつえん作さく

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レコード

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  • 1940年ねん「オッサンの挨拶あいさつ」（ビクター）
  • 1940年ねん「オッサンの國定くにさだ忠治ただはる」（キング）
  • 1940年ねん「オッサンの森もりの石松ひかげのかずら」（キング）

関連かんれん事項じこう

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註

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  1. ^ 1890年ねん生なま説せつが多おおくみられる（Minoru Takase - IMDb（英語えいご）ほか）が、函館はこだて市役所しやくしょのサイト内ないの「はこだて人物じんぶつ誌し 高勢たかせ実み乗じょう （能登谷のとや新一しんいち）」もしくは『別冊べっさつ毎日まいにちグラフ』（1966年ねん3月がつ号ごう、毎日新聞社まいにちしんぶんしゃ）等とうの記述きじゅつを採用さいようした。
  2. ^ a b 『ひげとちょんまげ』（稲垣いながき浩ひろし、毎日新聞社まいにちしんぶんしゃ刊かん）
  3. ^ 1969年ねんから放送ほうそうされたアニメハクション大だい魔王まおうの前半ぜんはん放送ほうそう回かいで、主人公しゅじんこうが話はなしのラストで、そのまま、もしくは多少たしょうもじって用もちいられている
  4. ^ ここまで『ひげとちょんまげ』（稲垣いながき浩ひろし、毎日新聞社まいにちしんぶんしゃ刊かん）より
  5. ^ 『聞書ききがきアラカン一いち代だい - 鞍馬あんば天狗てんぐのおじさんは』（竹中たけなか労ろう、白川しらかわ書院しょいん）

参考さんこう文献ぶんけん

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外部がいぶリンク

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