十進法じっしんほう

十進法じっしんほう（じっしんほう、（英えい: decimal system）^{[注ちゅう 1]}とは、十じゅうを底そこ（てい）とし、底そこおよびその冪べきを基準きじゅんにして数かずを表あらわす方法ほうほうである。

記数きすう法ほう

十じゅう進しん記数きすう法ほうとは、十じゅうを底そことする位取くらいどり記数きすう法ほうである。十じゅう進しん記数きすう法ほうでは十じゅう種類しゅるいの数字すうじを並ならべることで数かずを表あらわす。用もちいられる数字すうじは例たとえば漢かん数字すうじ（〇、一いち、二に、三さん、四よん、五ご、六ろく、七なな、八はち、九きゅう）やアラビア数字すうじ（0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9）などがある。以下いかではアラビア数字すうじを用もちいる。

各かくアラビア数字すうじを自然しぜん数すう

0、1、・・・、9

の数値すうちに対応たいおうさせ、

$a_{m}a_{m-1}\cdots a_{1}a_{0}.b_{1}b_{2}\cdots b_{k}$

という数字すうじ列れつで表現ひょうげんする。（ただし、 $a_{*}$ 、 $b_{*}$ はそれぞれの 0 から 9 を示しめすいずれかの数字すうじであり、 $a_{m}\neq 0$ とする）

この数字すうじ列れつが、

$a_{m}\times 10^{m}+a_{m-1}\times 10^{m-1}+\cdots +a_{1}\times 10+a_{0}+{\frac {b_{1}}{10}}+{\frac {b_{2}}{10^{2}}}+\cdots +{\frac {b_{k}}{10^{k}}}$

という数値すうちであることを表あらわす^[1]。

別べつの位取くらいどり記数きすう法ほうと区別くべつする場合ばあいには、(15)₁₀ というように十じゅう進しん表記ひょうきは括弧かっこおよび下付かふの 10 で区別くべつする。

この他ほか、算木さんぎも十じゅう進しん記数きすう法ほうであるが、現在げんざいは用もちいられていない。しかし、算木さんぎから変化へんかした蘇州そしゅう号ごう碼は現在げんざいも香港ほんこんなどで僅わずかに使つかわれている。

そろばんは十進法じっしんほうと同おなじ仕組しくみだが、文字もじとして表記ひょうきすることはない。十進法じっしんほうのうち、五ご倍ばい→二に倍ばい→五ご倍ばい→二に倍ばい…の循環じゅんかんで繰くり上あげる方法ほうほうは、正確せいかくには「二に・五ご進しん法ほう」という。

ローマ数字すうじ、漢かん数字すうじ、ヒエログリフ（エジプト数字すうじ）などは、十じゅうを「10」ではなく新あたらしい文字もじとして表現ひょうげんするが、十進法じっしんほうを基本きほんにしている。

十進法じっしんほうという考かんがえ方かたは古代こだいからあったとみられる。日本にっぽんの須玖すぐ岡本おかもと遺跡いせき（福岡ふくおか県けん春日かすが市し）からは、弥生やよい時代じだいに分銅ふんどうのように重量じゅうりょうを計はかるため使つかわれた権けん（けん）という石器せっきが出土しゅつどしており、基準きじゅんとなる権けんの十じゅう倍ばいの重おもさのものが見みつかっている^[2]。

命数めいすう法ほう

十じゅう進しん命数めいすう法ほうとは、十じゅうを底そことする命数めいすう法ほうである。

数詞すうし

現在げんざい、世界せかいの言語げんごの数詞すうしは十じゅう進しん命数めいすう法ほうが圧倒的あっとうてきであり、北京ぺきん官話かんわ、英語えいご、スペイン語ご、ポルトガル語ご、ロシア語ご、日本語にほんご、ドイツ語ごなど、話者わしゃ数すうの多おおい言語げんごの大半たいはんで使つかわれている。古語こごではラテン語らてんごも同様どうようである。古語こご大言たいげん語ごで十じゅう進しん命数めいすう法ほうでないのは、二に十進法じっしんほうを遺のこすフランス語ふらんすごなどに限かぎられる。

十じゅう進しん命数めいすう法ほうは、ヒトの両手りょうての指ゆびの数かずに由来ゆらいする。数詞すうしが例外れいがいなく各かく桁けたの数かずと位いから構成こうせいされる完全かんぜんな十じゅう進しん命数めいすう法ほうは、呉ご語ごを除のぞく中国ちゅうごく語ごに見みられる。ベトナム語ごの数詞すうしもほぼ例外れいがいがない。朝鮮ちょうせん語ご、日本語にほんご、タイ語ごの数詞すうしは中国語ちゅうごくごから輸入ゆにゅうしたものである。なお、春秋しゅんじゅう戦国せんごく時代じだいまでの中国ちゅうごく語ごでは、各かく桁けたの間あいだに「と」を意味いみする「又また」や「有ゆう」を挿入そうにゅうした。『論語ろんご』では十じゅう五ごを「十じゅう有ゆう五ご」と書かかれている^[3]。

その他たの言語げんごでは、十じゅうの倍数ばいすうが一語いちごで表あらわされたり、十じゅう一いちから十じゅう九きゅうまでの数かずが一語いちごで表あらわされたり、十じゅう一いちから十じゅう九きゅうまでが「十じゅうにRを加くわえた」語ごで表あらわされたりする例れいが多おおい。例たとえば、英語えいごでは、十じゅう一いちは ^*ten-one ではなく eleven であり、二に十じゅうは ^*two-ten ではなく twenty である。また、十じゅうの倍数ばいすうについても、日本語にほんごの「みそ」(三さん十じゅう)や漢かん数詞すうしの「四よん十じゅう」やラテン語らてんごの「sexaginta」(六ろく十じゅう) というように、「掛かける十じゅう」を意味いみする接尾せつび辞じを付つけている数詞すうしが多おおい。

五ご本ほん指ゆびの手てが二に本ほんあるので、十じゅうの他ほかに五ごも基準きじゅんにして、「十じゅうの累乗るいじょう数すう」と「十じゅうの累乗るいじょう数すうの五ご倍ばい」で桁けたを繰くり上あげる方法ほうほうがある。これを二に五ご進しん法ほうと呼よぶ。このような数詞すうしを持もつ言語げんごは少すくなく、ウォロフ語ご^[4]、クメール語ご^[5]などがある。一方いっぽう、十じゅうを二に個この五ごに分わける言語げんごは存在そんざいしない。

不規則ふきそくな数詞すうしは子供こどもの数かずの能力のうりょくに悪影響あくえいきょうがあるという報告ほうこくがある^[6]。

以下いかに漢語かんご、日本語にほんご（大和言葉やまとことば）、ウォロフ語ご、英語えいご、ラテン語らてんごの数詞すうしを示しめす。

数かず	漢語かんご	日本語にほんご（大和言葉やまとことば）	ウォロフ語ご	英語えいご	ラテン語らてんご
1	一いち	ひい	benna	one	unus
2	二に	ふう	ñaar	two	duo
3	三さん	みい	ñetta	three	tres
4	四よん	よ	ñenent	four	quattuor
5	五ご	いつ	juróom	five	quinque
6	六ろく	む	juróom benna	six	sex
7	七なな	なな	juróom ñaar	seven	septem
8	八はち	や	juróom ñetta	eight	octo
9	九きゅう	ここ	juróom ñenent	nine	novem
10	十じゅう	とお	fukka	ten	decem
11	十じゅう一いち	とおあまりひい	fukka ak benna	eleven	undecim
12	十じゅう二に	とおあまりふう	fukka ak ñaar	twelve	duodecim
20	二に十じゅう	はた	ñaar fukka	twenty	viginti
21	二に十じゅう一いち	はたあまりひい	ñaar fukka ak benna	twenty-one	viginti et unus

単位たんい系けい

10 を底そことする単位たんいには以下いかのものがある。

メめートル法とるほう
国際こくさい単位たんい系けい（SI接頭せっとう語ご）
百分率ひゃくぶんりつ、千せん分ふん率りつ
世紀せいき
摂氏せっし温度おんど計けい
貨幣かへい制度せいど
発行はっこうされる貨幣かへいの額面がくめんは、5 も基準きじゅんにする二に五ご進しん法ほうが普通ふつうである。

10 の冪べき乗じょうに基もとづく単位たんい系けいはフランス革命かくめい以降いこうに世界せかい規模きぼに拡大かくだいしたが、それ以前いぜんには地域ちいきごとに様々さまざまな数かずに基もとづく単位たんい系けいが使用しようされていた。たとえば、ヤード・ポンド法ほうでは1 ヤード = 3 フィート = 36 インチである。中国ちゅうごくや日本にっぽんの尺貫法しゃっかんほうも、1 丈たけ = 10 尺しゃく = 100 寸すんなど 10 の冪べき乗じょうに基もとづく部分ぶぶんは多おおいものの、1 斤きん = 16 両りょうのような例外れいがいも多おおい。単位たんい系けいを 10 の冪べき乗じょうに基もとづくものに移行いこうすることを「十じゅう進化しんか」という。