2018年ねん名護なご市長しちょう選挙せんきょ

2018年ねん名護なご市長しちょう選挙せんきょ（2018ねんなごしちょうせんきょ）は、2018年ねん（平成へいせい30年ねん）1月がつ28日にちに告示こくじされ、同年どうねん2月がつ4日にちに執行しっこうされた沖縄おきなわ県けん名護なご市しの市長しちょう選挙せんきょである。

概要がいよう

2014年ねんの名護なご市長しちょう選挙せんきょで再さい当選とうせんし、市長しちょうに就任しゅうにんした稲いね嶺みね進すすむの任期にんき満了まんりょうに伴ともない行おこなわれた選挙せんきょである。

名護なご市しは普天間ふてんま飛行場ひこうじょうの移転いてん先さき候補こうほ地ちである辺野古へのこを抱かかえており、沖縄おきなわ県けん宜野湾ぎのわん市しの普天間ふてんま飛行場ひこうじょうの辺野古へのこ移設いせつを着実ちゃくじつに進すすめたい安倍晋三あべしんぞう政権せいけんと、辺野古へのこ移設いせつ反対はんたいを主張しゅちょうする翁おう長雄ながお志こころざし知事ちじ率ひきいる「オール沖縄おきなわ」勢力せいりょくとの「代理だいり戦争せんそう」として位置いちづけられ、同年どうねん秋あきに控ひかえる沖縄おきなわ県知事けんちじ選せんの前哨ぜんしょう戦せんとして両りょう陣営じんえいは国政こくせい選挙せんきょ並なみの総そう力戦りきせんを展開てんかいし、全国ぜんこく的てきに高たかい注目ちゅうもくを集あつめた。

2017年ねん7月がつ27日にち、現職げんしょく5期き目めの名護なご市議会しぎかい議員ぎいんの渡具知とぐち武豊たけとよは、地元じもと県議けんぎや野党やとう市議しぎらでつくる候補者こうほしゃ選考せんこう委員いいん会かい幹事かんじ会かいで次期じき市長しちょう選せんに立候補りっこうほする意向いこうを表明ひょうめい。同年どうねん8月がつ23日にち、現職げんしょくの稲嶺いなみねは3選出せんしゅつ馬ばを表明ひょうめい。8月、首相しゅしょう官邸かんていサイドは渡具知とぐちの擁立ようりつに難色なんしょくを示しめし、党とう県連けんれんは女性じょせいを軸じくに別べつの候補者こうほしゃを模索もさくするも、人選じんせんは難航なんこう。10月10日にちの衆院しゅういん選せん公示こうじを前まえに時間切じかんぎれとなり、10月4日にち付づけで渡具知とぐちの推薦すいせんを決きめた。

2018年ねん1月がつ28日にち、名護なご市長しちょう選挙せんきょ告示こくじ。渡具知とぐちは無所属むしょぞくで自由民主党じゆうみんしゅとう、公明党こうめいとう、日本にっぽん維新いしんの会かいの推薦すいせんを受うけ立候補りっこうほした。選挙せんきょに際さいして渡具知とぐち陣営じんえいには二に階かい俊博としひろ自由民主党じゆうみんしゅとう幹事かんじ長ちょう、菅かん義よし偉えら内閣ないかく官房かんぼう長官ちょうかん、小泉こいずみ進すすむ次郎じろう自民党じみんとう筆頭ひっとう副ふく幹事かんじ長ちょうら政権せいけん幹部かんぶが続々ぞくぞくと応援おうえんに入はいり、小泉こいずみは「知事ちじと政府せいふの代理だいり戦争せんそうではなく、町まちづくりのための政策せいさく論争ろんそうだ」と強調きょうちょうし、「もう代理だいり戦争せんそうは終おわらせよう」と訴うったえたほか、「自主じしゅ投票とうひょう」とした前回ぜんかいの選挙せんきょで投票とうひょう先さきが二分にぶんしていた公明党こうめいとうは2000〜2500票ひょうあるとされる基礎きそ票ひょうを今回こんかいは渡具知とぐちに一本いっぽん化かしたほか、支持しじ母体ぼたいである創価学会そうかがっかいも動員どういんし、同どう会かいの原田はらだ稔みのる会長かいちょうや幹部かんぶを沖縄おきなわ入いりさせるなどの総そう力戦りきせんを展開てんかいした。一方いっぽうの稲嶺いなみね陣営じんえいは翁長おなが知事ちじら「オール沖縄おきなわ」勢力せいりょくに加くわえ、志位しい和夫かずお日本にっぽん共産党きょうさんとう委員いいん長ちょう、小沢おざわ一郎いちろう自由党じゆうとう代表だいひょう、吉田よしだ忠ただし智さとし社民党しゃみんとう党首とうしゅ、増子ましこ輝彦てるひこ民進党みんしんとう幹事かんじ長ちょう、辻つじ元もと清美きよみ立憲りっけん民主党みんしゅとう国対こくたい委員いいん長ちょう、山本やまもと太郎たろう自由党じゆうとう共同きょうどう代表だいひょうなどが応援おうえんに入はいり、基地きち移設いせつ反対はんたいを訴うったえた。

同年どうねん2月がつ4日にちの投開票とうかいひょうの結果けっか、新人しんじんで移設いせつ容認ようにん派はの渡具知とぐちが現職げんしょくで移設いせつ反対はんたいを掲かかげる稲いね嶺みねを破やぶり、初はつ当選とうせんを決きめた。この敗北はいぼくにより「地元じもとの民意みんい」を移設いせつ反対はんたいの理由りゆうとしてきたオール沖縄おきなわ及および翁長おながには痛手いたでとなった。

基礎きそデータ

• 選挙せんきょ事由じゆう：任期にんき満了まんりょう
• 告示こくじ日び：2018年ねん1月がつ28日にち
• 投票とうひょう日び：2018年ねん2月がつ4日にち

立候補者りっこうほしゃ

立候補りっこうほ届出とどけで順じゅん。

候補者こうほしゃ名めい	生年月日せいねんがっぴ	年齢ねんれい	性別せいべつ	所属しょぞく党派とうは	推薦すいせん・支持しじ	新旧しんきゅう別べつ	前ぜん職しょく
稲いね嶺みね進すすむ	1945年ねん7月がつ17日にち	72	男おとこ	無所属むしょぞく	社民党しゃみんとう・日本にっぽん共産党きょうさんとう・自由党じゆうとう・沖縄おきなわ社会しゃかい大衆たいしゅう党とう・民進党みんしんとう推薦すいせん、立憲りっけん民主党みんしゅとう支持しじ	現げん	現職げんしょく市長しちょう
渡具知とぐち武豊たけとよ	1961年ねん8月がつ12日にち	56	男おとこ	無所属むしょぞく	自由民主党じゆうみんしゅとう・公明党こうめいとう・日本にっぽん維新いしんの会かい推薦すいせん	新しん	名護なご市議会しぎかい議員ぎいん

選挙せんきょ結果けっか

各かく候補こうほの得票とくひょう率りつ

  渡具知とぐち武豊たけとよ (54.63%)

  稲いね嶺みね進すすむ (45.36%)

2月がつ4日にちに行おこなわれた投開票とうかいひょうは、午後ごご8時じに投票とうひょうが締しめ切きられ、午後ごご9時じから開票かいひょう作業さぎょうが始はじまった。最終さいしゅう投票とうひょう率りつは76.92%で、前回ぜんかいより微増びぞうし、期日きじつ前ぜん投票とうひょう者もの数すうは異例いれいの当日とうじつ有権者ゆうけんしゃの44.4%に当あたる過去かこ最多さいたの計けい2万まん1660人にん（男性だんせい10,235人にん、女性じょせい11,425人にん）に上のぼった。

開票かいひょう結果けっかは下記かきの通とおり。

※当日とうじつ有権者ゆうけんしゃ数すう：49,372人にん 最終さいしゅう投票とうひょう率りつ：76.92%（前回ぜんかい比ひ：＋0.21pts）

候補者こうほしゃ名めい	年齢ねんれい	所属しょぞく党派とうは	新旧しんきゅう別べつ	得票とくひょう数すう	得票とくひょう率りつ	推薦すいせん・支持しじ
渡具知とぐち武豊たけとよ	56	無所属むしょぞく	新しん	20,389票ひょう	54.63%	（推薦すいせん）自民じみん・公明こうめい・維新いしん
稲いね嶺みね進すすむ	72	無所属むしょぞく	現げん	16,931票ひょう	45.36%	（推薦すいせん）社民しゃみん・共産きょうさん・自由じゆう・沖縄おきなわ社しゃ大だい・民みん進すすむ （支持しじ）立憲りっけん

選挙せんきょの争点そうてん

現職げんしょくの稲嶺いなみねは2010年ねん、2014年ねんの市長しちょう選せんに引ひき続つづき辺野古へのこへの移設いせつ反対はんたいを表明ひょうめいし、社民党しゃみんとう・日本にっぽん共産党きょうさんとう・自由党じゆうとう・沖縄おきなわ社会しゃかい大衆たいしゅう党とう・民進党みんしんとうの推薦すいせんと立憲りっけん民主党みんしゅとうの支持しじを受うけ、再選さいせんを目指めざして出馬しゅつば。辺野古へのこへの基地きち移設いせつ反対はんたいを前面ぜんめんに出だして訴うったえると共ともに、ネオパークオキナワに中国ちゅうごくからパンダを誘致ゆうちし観光かんこう資源しげんにする等ひとしの公約こうやくを訴うったえた。一方いっぽう、辺野古へのこへの移設いせつを容認ようにんする姿勢しせいを過去かこに示しめしていた新人しんじんで元もと名護なご市議しぎの渡具知とぐちは自民党じみんとう・公明党こうめいとう・日本にっぽん維新いしんの会かいからの推薦すいせんを受うけ立候補りっこうほ、辺野古へのこ移設いせつを争点そうてんとせず「国くにと県けんの裁判さいばんを見守みまもる」とし、市民しみん生活せいかつの向上こうじょうや経済けいざい振興しんこうなどを争そう点てんとして強調きょうちょうした。

その他た

• 「公選法こうせんほう特区とっく」と呼よばれ、選挙せんきょとなれば無法むほう地帯ちたいの如ごとく違反いはんがまかり通とおる他ほかの沖縄おきなわの選挙せんきょの例れいに漏もれず、両りょう陣営じんえいの公職こうしょく選挙せんきょ法ほう違反いはん報告ほうこくが多数たすうなされた。
  • 幟のぼりの違法いほう設置せっち、候補者こうほしゃを誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうするビラなど、両りょう陣営じんえいに公職こうしょく選挙せんきょ法ほうに抵触ていしょくする恐おそれのある行為こういが行おこなわれ、名護なご警察けいさつ署しょによる警告けいこくは69件けんに上のぼっている。
  • 2018年ねん8月がつ27日にち時点じてんでも、名護なご市内しないには公職こうしょく選挙せんきょ法ほうに違反いはんする横断幕おうだんまくや幟のぼりが撤去てっきょされずに残のこされている。
• 当選とうせん後ご、渡具知とぐちは結果けっかについて「複雑ふくざつな民意みんいが示しめされた」「私わたしを支持しじした人ひとも辺野古へのこの移設いせつについては反対はんたいする人ひとがおそらく何なん％かいたと思おもいます」「国くににべったりとはいかない。一定いっていの距離きょり感かんを置おいて基地きち問題もんだいと向むき合あう」と述のべた。
• 沖縄おきなわタイムスは、世論せろん調査ちょうさで基地きち移設いせつ反対はんたい派はが多数たすうを占しめながら稲いね嶺みねが当選とうせんしなかった選挙せんきょ結果けっかを「民主みんしゅ主義しゅぎの敗北はいぼく」と論ろんじ、外堀そとぼりを埋うめることであきらめムードを醸成じょうせいされたことが稲嶺いなみねの落選らくせんにつながったと安倍あべ政権せいけんを批判ひはんした。ただし、NHKが期日きじつ前ぜん投票とうひょう所しょで行おこなった出口いでぐち調査ちょうさでは、調査ちょうさに対たいし「（基地きち移設いせつ）賛成さんせい」と答こたえづらい雰囲気ふんいきがあった、「やや反対はんたい」とする者ものの中なかに他たの政策せいさく（景気けいき対策たいさくなど）を考慮こうりょしたなどの声こえがあったとし、他たの要素ようそも併あわせて取材しゅざいの中なかで渡具知とぐちの当選とうせんの可能かのう性せいを察知さっちしていた。
• 出口いでぐち調査ちょうさでは60代だい以上いじょうは稲嶺いなみね支持しじが多数たすう、50代だい以下いかは渡具知とぐち支持しじが多数たすうと、世代せだいを境さかいに支持しじが分わかれた。新田にった哲史てつしは、これまで沖縄おきなわでは寡占かせん状態じょうたいとなっている沖縄おきなわタイムス、琉球新報りゅうきゅうしんぽうが両紙りょうし似にたような論調ろんちょうで世論せろん形成けいせいを行おこなってきたが、新聞しんぶんを定期ていき購読こうどくしない、または定期ていき購読こうどくしなくなりつつある世代せだいが、インターネットを使つかって自分じぶんたちで情報じょうほうを得えて投票とうひょう判断はんだんを決きめたことから、風向かざむきが変かわったのではないかと推測すいそくしている。
• 出口いでぐち調査ちょうさでは稲嶺いなみね優勢ゆうせいとされていた。ただし、共同通信きょうどうつうしん、琉球新報りゅうきゅうしんぽう、沖縄おきなわタイムス共同きょうどうによる投票とうひょう日びの出口でぐち調査ちょうさは回答かいとう拒否きょひ率りつが49.7%となっていた。
• ジャーナリストの目黒めぐろ博ひろしは選挙せんきょ結果けっかについて以下いかの要因よういんを挙あげている。
  • 公明党こうめいとうが渡具知とぐちを推薦すいせんし、維新いしんの会かいも渡具知とぐちを推薦すいせんしたことで、両者りょうしゃの票ひょうの差さが縮ちぢまったと推測すいそくされている。
  • 名護なご市民しみんの中なかに「辺野古へのこ疲つかれ」が見みられた。同時どうじに行おこなわれた名護なご市議しぎ補選ほせん（渡具知とぐちの市議しぎ辞職じしょくに伴ともなう）でも、反はん基地きち活動かつどう家かとして有名ゆうめいな候補こうほが保守ほしゅ系けいの新人しんじん候補こうほに大差たいさで敗やぶれている。
  • 有権者ゆうけんしゃが「基地きち問題もんだい」より「生活せいかつ」への取とり組くみを求もとめた。
  • 「オール沖縄おきなわ」にまとまりが無ない。保革ほかく相乗あいのりであり、それぞれのグループ間あいだの主張しゅちょうの隔へだたりが大おおきい。全体ぜんたいを束たばねる存在そんざいもないので各かくグループで独自どくじに選挙せんきょ運動うんどうを行おこなっていた。
  • 応援おうえん弁士べんしの差さ。渡具知とぐちの応援おうえんを行おこなった小泉こいずみ進すすむ次郎じろうは名護なご市しのゴミ問題もんだいを採とり上あげ、高校こうこう、中学ちゅうがく、名産めいさん物ぶつを採とり上あげるなど市民しみんに聞ききやすい内容ないようであったのに対たいし、稲嶺いなみね陣営じんえい側がわの志位しい和夫かずお、福島ふくしま瑞穂みずほらは基地きち問題もんだい、安倍あべ政権せいけんとの対決たいけつに終始しゅうしし、前述ぜんじゅつの「辺野古へのこ疲つかれ」を倍加ばいかさせたのではないかと推測すいそくされる。1月31日にちの小泉こいずみ進すすむ次郎じろう演説えんぜつを境さかいとして、渡具知とぐちが優勢ゆうせいに転てんじたと見みる向むきもある。
  • 高齢こうれい者しゃ中心ちゅうしんの稲嶺いなみね陣営じんえいがSNSを苦手にがてとしているのに対たいし、渡具知とぐち陣営じんえいの若者わかものたちはSNSを駆使くしし、訴うったえを拡散かくさんした。一いち例れいとして前述ぜんじゅつの小泉こいずみ進すすむ次郎じろうによる応援おうえん演説えんぜつの情報じょうほう拡散かくさんなどが挙あげられる。
  • 稲嶺いなみねがパンダ誘致ゆうちを公約こうやくに挙あげたが、これが不評ふひょうだった。誘致ゆうち先さきはネオパークオキナワが想定そうていされていたが、ネオパークオキナワは経営けいえい難なんに悩なやんでおり、年間ねんかん数すう億おく円えんになるとも言いわれるパンダの飼育しいく料りょうやレンタル料りょうについては、稲嶺いなみね陣営じんえいからは何なんの説明せつめいも行おこなわれなかった。また、パンダ誘致ゆうちについては、稲嶺いなみね陣営じんえいの後援こうえん会かいにも知しらされていなかった。
  • 前回ぜんかい選挙せんきょで稲嶺いなみねが圧勝あっしょうしたこともあり、無名むめい市議しぎであった渡具知とぐちに対たいする慢心まんしんが稲嶺いなみね陣営じんえいにあった。上述じょうじゅつの投票とうひょう日びの出口でぐち調査ちょうさを含ふくめ、事前じぜんの各種かくしゅ世論せろん調査ちょうさでは辺野古へのこ移設いせつ反対はんたいが一貫いっかんして60%から70%を占しめていた。これは出口でぐち調査ちょうさと同おなじく回答かいとう拒否きょひ率りつが高たかいという要因よういんもある。

外部がいぶリンク

• 名護なご市し選挙せんきょ管理かんり委員いいん会かい