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BDSM - Wikipedia

BDSM(ビーディーエスエム)とは、人間にんげん性的せいてき嗜好しこうなか嗜虐しぎゃくてき性向せいこうをひとまとめにして表現ひょうげんする言葉ことばである。

collar(首輪くびわ
BDSMプレイよう仮面かめん

BDSMは上記じょうきの「B」「D」「SM」にとどまらず、ちから支配しはい中心ちゅうしんとした幅広はばひろ性的せいてき行動こうどうあそび、関係かんけい包括ほうかつする用語ようごである[1]ちかしい文脈ぶんみゃくかたられるべつ略語りゃくごとして、D&S、DS、D/S…Domination & Submission(ドミネイション:支配しはい & サブミッション:服従ふくじゅう)とばれる言葉ことばもある。そのためSMと区別くべつしてBDSMはBondage & Discipline(またはDomination) & Submission & Manipulation(マニピュレーション:操作そうさ)などと原義げんぎられることがあり、解釈かいしゃく様々さまざまである。ボンデージ直訳ちょくやくすれば「とらわれの身分みぶん」であり、その状態じょうたいす。ディシプリンは「懲戒ちょうかい」を意味いみし、西洋せいようでは体罰たいばつによるきびしいしつけ意味いみする。サディズムはしいたげ性向せいこう、マゾヒズムは被虐ひぎゃく性向せいこうであるので、状況じょうきょうとしての嗜虐しぎゃく行為こういとしての嗜虐しぎゃくふく広範こうはん言葉ことばえる。行為こういわらせるための合図あいず言葉ことばであるセーフワードをあらかじめめておくことがある[1]

BDSMプレイのれい

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目隠めかく手錠てじょう
 
女性じょせいペニスバンド装着そうちゃくして男性だんせいアナルセックスおこなう(Pegging
 
顔面がんめん騎乗きじょう
 
貞操ていそうたい
 
ペニスケージ
 
フェムドム
ロールプレイ
パートナー同士どうし誘拐ゆうかいはん被害ひがいしゃなどおたがいに役柄やくがらめておこなう。傍目はためかられば実際じっさい犯罪はんざいおこなっていると間違まちがわれる場合ばあいおおい。
エイジプレイ
日本にっぽんでは幼児ようじプレイ一般いっぱんてきであるが、ちちむすめはは息子むすこなど年齢ねんれいのある役割やくわりとしておこなロールプレイ
ヒューマン・アニマル・ロールプレイ
パートナーを人間にんげんではなく動物どうぶつとしてあつかう。ネコイヌウマポニーガール)などが欧米おうべいでは人気にんきがある。
オークションプレイ
擬似ぎじてき人身じんしん売買ばいばい商品しょうひんとするプレイ。
フェムドム
ぎゃくレイププレイ
おんなおとこおそう。
顔面がんめん騎乗きじょうプレイ
おとこがわが「」になる。
射精しゃせい管理かんり
男性だんせいよう貞操ていそうたいまたはペニスケージをもちいておとこ射精しゃせい管理かんりする。
コック・アンド・ボール・トーチャー(Cock And Ball Torture、CBT)
おとこ陰茎いんけい睾丸こうがんめる。
ぎゃくアナルセックス
おんなペニスバンド装着そうちゃくしておとこ肛門こうもんおかす。
ポゼッションプレイ
パートナーを家具かぐにする。ベッドのマットレスをくりいてれそのうえる、ソファーとクッションのあいだれる、椅子いすにするなど。
緊縛きんばくプレイ
なわ相手あいて緊縛きんばくする。
ろうそくプレイ
のついたろうそくかたむけて、したたちるけたろう肉体にくたいらす。
強制きょうせい女性じょせい
服従ふくじゅうがわのパートナーを女装じょそうさせたり、女性じょせいてきうよう調教ちょうきょうする。

学術がくじゅつ研究けんきゅう

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社会しゃかいてき医学いがくてき研究けんきゅう

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Richtersら(2008)の調査ちょうさによると、BDSMを実践じっせんしているひとはより幅広はばひろ性的せいてき実践じっせん経験けいけんしている(たとえば、オーラルセックスアナルセックス複数ふくすうのパートナー、グループセックス、テレフォンセックス、ポルノ視聴しちょうせい玩具おもちゃ使用しようフィストファックアニリングスなど)。しかしBDSM実践じっせんしゃは、性行為せいこうい強制きょうせいされたり、不幸ふこうになったり、不安ふあんかんじたり、性的せいてき困難こんなん経験けいけんしたりという傾向けいこうはみられなかった。むしろBDSMを実践じっせんしていた男性だんせいは、そうでない男性だんせいよりも心理しんりてき苦痛くつう度合どあいがひくかった[2]

現代げんだい科学かがくてき基準きじゅんもちいたBDSMの心理しんりがくてき側面そくめんかんする研究けんきゅうはほとんどない。Charles Moserによると、BDSMに共通きょうつう症状しょうじょう精神せいしん病理びょうりがあるという証拠しょうこはなく、BDSM実践じっせんしゃみずからの性的せいてき嗜好しこうもとづいて特別とくべつ精神せいしんてき問題もんだいかかえているという証拠しょうこはないと強調きょうちょうしている[3]

しばしば問題もんだいしょうじるのは、自分じぶん自身じしん分類ぶんるいするときである。「カミングアウト」の段階だんかいで、自分じぶん自身じしんの「正常せいじょうさ」について自問自答じもんじとうすることがきわめて一般いっぱんてきである。Moserによると、BDSM嗜好しこう自覚じかくすることによって、現在げんざい‐BDSMな関係かんけい破壊はかいするかもしれないというおそれをこしうるという。このことが、日常にちじょう生活せいかつにおける差別さべつおそれとあいまって、場合ばあいによっては非常ひじょう負担ふたんおおきなじゅう生活せいかつへつながる可能かのうせいもある。またBDSM嗜好しこう否定ひていすることは、自分じぶん自身じしんの「ヴァニラ」なライフスタイルによるストレスと不満ふまんや、パートナーをつけられないという不安ふあんこす可能かのうせいもある。ほとんどの場合ばあいBDSM嗜好しこうのぞくことは不可能ふかのうであるため、BDSM嗜好しこうのぞきたいという願望がんぼう心理しんりてき問題もんだいこすこともある。最後さいごに、BDSM実践じっせんしゃ暴力ぼうりょくてき犯罪はんざいをすることはめったにないとされている。一般いっぱんてきにBDSM実践じっせんしゃ犯罪はんざいは、BDSM実践じっせんとは関係かんけいがない。Moserの研究けんきゅうでは、BDSM実践じっせんしゃたちの社会しゃかいてき権利けんり否定ひていする理由りゆうになるような科学かがくてき証拠しょうこはないと結論けつろんづけられている。スイスの精神せいしん分析ぶんせきしゃFritz Morgenthalerも著書ちょしょHomosexuality, Heterosexuality, Perversion (1988)で同様どうよう見方みかた共有きょうゆうしている。Morgenthalerは、問題もんだいかならずしも規範きはんてき行動こうどうからこるのではなく、ほとんどの場合ばあいみずからの嗜好しこうたいする社会しゃかいてき反応はんのうからしょうじると主張しゅちょうしている[4]。また1940ねん精神せいしん分析ぶんせきTheodor Reikもあんおな結論けつろんたっしている[5]

Moserの結論けつろんは、オーストラリアでおこなわれたBDSMの人口じんこう統計とうけいてきおよび心理しんり社会しゃかいてき特徴とくちょうかんするRichtersら(2008)の研究けんきゅうによって、さらに支持しじされている。Richtersら(2008)は、BDSM実践じっせんしゃ対照たいしょうぐんよりも性的せいてき暴行ぼうこう経験けいけんしていない傾向けいこうにあり、また対照たいしょうぐんくらべて不幸ふこう不安ふあんかんじる傾向けいこうがないことを発見はっけんした。さらにBDSM男性だんせいは、対照たいしょうぐんよりも心理しんりてき幸福こうふくのレベルがたかいとべている。そして「BDSMは、マイノリティにとってはしてき魅力みりょくある性的せいてき関心かんしんまたはサブカルチャーであり、過去かこけた虐待ぎゃくたいや『正常せいじょうな』セックスにともなう困難こんなんなどによる病理びょうりがくてき症状しょうじょうではない」と結論けつろんづけている[6]

ジェンダー研究けんきゅう

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どの性別せいべつ人間にんげんがBDSM実践じっせんしゃおおいかという研究けんきゅうや、BDSMの役割やくわり(トップやボトム)の割合わりあいかんする研究けんきゅうのような、性差せいさやBDSMでの役割やくわりかんする実証じっしょうてき研究けんきゅうはあまりない。

BDSMやせい倒錯とうさくたいするよくある誤解ごかいの1つとして、女性じょせい男性だんせいよりもマゾヒズムてき役割やくわりにな傾向けいこうにある、というものがある。Roy Baumeister(2010)の研究けんきゅうでは、女性じょせいよりも男性だんせいのマゾヒストがおおく、女性じょせい優位ゆういよりも男性だんせい優位ゆういほうすくなかった。このような研究けんきゅうから、BDSMにおいて性別せいべつやマゾヒズム役割やくわりについてめつけてはならないということが示唆しさされる。こうした誤解ごかいしょうじた理由りゆうひとつとして、女性じょせいせいかんする社会しゃかいてき文化ぶんかてき固定こてい観念かんねんげられる。マゾヒズムは、男性だんせい女性じょせい女性じょせいちょう女性じょせいてき衣装いしょうなどのような活動かつどうつうじて、あるしゅのステレオタイプてき女性じょせいてき要素ようそ強調きょうちょうすることもある。しかし、こうした服従ふくじゅうてきなマゾヒズム役割やくわり傾向けいこうを、ステレオタイプな女性じょせい役割やくわりむすびつけて解釈かいしゃくするべきではない。また、おおくのマゾヒズムのスクリプトにはこうした傾向けいこうふくまれていない[7]

またEmily Priorによれば、女性じょせいマゾヒストのなかには伝統でんとうてき従属じゅうぞくてき役割やくわり実践じっせんしているようにえるひともいるかもしれないが、BDSMで女性じょせいたちは、支配しはいてき役割やくわり服従ふくじゅうてき役割やくわりどちらにおいても、みずからの性的せいてきアイデンティティをつうじて個人こじんてき能力のうりょく表現ひょうげんしたり経験けいけんしたりすることができる。2013ねんにPriorはマゾヒストを自認じにんする女性じょせいたちにインタビュー調査ちょうさおこない、彼女かのじょたちがみずからの性的せいてきアイデンティティとフェミニストとしてのアイデンティティとのあいだ矛盾むじゅんかんじているかどうかをたずねた。Priorの研究けんきゅうによれば、彼女かのじょたちはほとんど矛盾むじゅんかんじておらず、実際じっさいにはむしろフェミニストとしてのアイデンティティがみずからの服従ふくじゅうてき性的せいてきアイデンティティをささえているとかんじていた。彼女かのじょたちにとって服従ふくじゅうてきせい行動こうどう性的せいてきアイデンティティは、場合ばあいによってはむしろ個人こじんてき性的せいてき感情かんじょうてきなニーズを満足まんぞくさせるようなものである。Priorは、たとえ服従ふくじゅうてき性的せいてきアイデンティティがフェミニズムの理想りそうからはずれているとおもわれるときでも、だい3フェミニズムはBDSMコミュニティの女性じょせいたちに、みずからの性的せいてきアイデンティティを充分じゅうぶん表現ひょうげんするための提供ていきょうしていると主張しゅちょうしている[8]

セクシュアル・マイノリティとの関係かんけい

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BDSMに参加さんかするすべての人々ひとびとセクシュアル・マイノリティLGBTクィア)であるわけではなく、すべてのセクシュアル・マイノリティの人々ひとびとがBDSMに参加さんかするわけでもない[1]。しかし、この両者りょうしゃのコミュニティは歴史れきしてきかさなる接点せってんもあった[1]たとえば、ゲイバーやボンテージてんなどが密接みっせつしていたエリアなどが存在そんざいしていた[9]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d What is BDSM? Your Queer Guide to Kink, Domination, Bondage, and More”. Them (2022ねん8がつ25にち). 2023ねん11月13にち閲覧えつらん
  2. ^ Richters, Juliet; De Visser, Richard O.; Rissel, Chris E.; Grulich, Andrew E.; Smith, Anthony M.A. (1 July 2008). "Demographic and Psychosocial Features of Participants in Bondage and Discipline, "Sadomasochism" or Dominance and Submission (BDSM): Data from a National Survey" (PDF). The Journal of Sexual Medicine. 5 (7): 1660–1668. doi:10.1111/j.1743-6109.2008.00795.x. ISSN 1743-6109. PMID 18331257. Archived from the original アーカイブ 2016ねん10がつ20日はつか - ウェイバックマシン (PDF) on 20 October 2016.
  3. ^ Charles Moser, in Journal of Social Work and Human Sexuality 1988, (7;1, S.43–56)
  4. ^ Fritz Morgenthaler: Homosexuality, Heterosexuality, Perversion, Analytic, April 1988, ISBN 978-0-88163-060-2
  5. ^ Theodor Reik: Aus Leiden Freuden. Masochismus und Gesellschaft, Fischer, 1983, ISBN 978-3-596-26768-2 (German)
  6. ^ Richters, J.; De Visser, R. O.; Rissel, C. E.; Grulich, A. E.; Smith, A. (2008). "Demographic and psychosocial features of participants in bondage and discipline, "sadomasochism" or dominance and submission (BDSM): Data from a national survey". The journal of sexual medicine. 5 (7): 1660–1668. doi:10.1111/j.1743-6109.2008.00795.x. PMID 18331257.
  7. ^ Baumeister, R. F. (1988). "Gender differences in masochistic scripts". Journal of Sex Research. 25 (4): 478–499. doi:10.1080/00224498809551477.
  8. ^ Prior, Emily (2013). "Women's Perspectives of BDSM Power Exchange". Electronic Journal of Human Sexuality. 16. Retrieved 4 March 2015.
  9. ^ How Gentrification Is Eroding San Francisco's Historic Leather Scene”. Them (2018ねん10がつ1にち). 2023ねん11月13にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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BDSMを題材だいざいとした作品さくひん

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