仮面かめん

仮面かめん（かめん）もしくはマスク（英えい: mask）とは、人体じんたいのうち顔かおの一部いちぶまたは全体ぜんたいに被こうむるもの、または覆おおうものを指さす。頭あたま部ぶまで覆おおうものを含ふくめることもある。

仮面かめんをかぶったカーニバルの参加さんか者しゃ

英語えいごのmaskやフランス語ふらんすごのmasqueは仮面かめんやマスクと訳やくされるが、以下いかの通とおり定義ていぎの範囲はんいは同一どういつでなくずれがある（例れいとして剣道けんどうの面めんやガスマスクなどはmaskであるが仮面かめんとは呼よばれない。フランス語ふらんすごのmasqueは英語えいごのmaskと同おなじ意味いみであるが、単体たんたいで仮面かめん劇げきという意味いみもある。）。

日本語にほんごにおける「仮面かめん」とは、顔かおを隠かくし正体しょうたいを分わからなくするために用もちいられる（覆面ふくめん）、あるいは儀式ぎしきや演劇えんげきや祭礼さいれいなどの時ときに役やくになりきるために使つかわれるなど、ペルソナに関かかわる用具ようぐとしての意味合いみあいに特とく化かしており、本ほん項こうでもそれらについて記述きじゅつする。

一方いっぽう、鼻はなや口くちなどを中心ちゅうしんに衛生えいせい・防護ぼうご目的もくてきで覆おおう実務じつむ的てきなものについては日本語にほんごの「仮面かめん」の範疇はんちゅうには含ふくまれず、専もっぱら外来がいらい語ごで「マスク」と呼よばれる。

仮面かめんの意義いぎ

縄文じょうもん時代じだいの面めん（土ど面めん、貝かい面めん）。新潟にいがた県立けんりつ歴史れきし博物館はくぶつかんの展示てんじ。

日本にっぽん古来こらいの仮面かめん

ヴェネツィア本島ほんとうで売うられているカーニバル用ようの仮面かめん。ヴェネツィアのカーニバルは仮面かめん舞踏ぶとう会かいに大おおきな影響えいきょうを与あたえた

図画ずが工作こうさくの授業じゅぎょうで作つくられた仮面かめん

顔かおを覆おおって隠かくすことはさまざまな意味合いみあいがある。他人たにんからはわからないということのみならず、装着そうちゃくするマスクがかたどっている神かみ・精霊せいれい・動物どうぶつ（実在じつざい架空かくうを問とわず）等とうそのものに人格じんかくが変化へんかする（神格しんかくが宿やどる）とも信しんじられ、古ふるくから宗教しゅうきょう的てき儀式ぎしき・儀礼ぎれいまたはそれにおける舞踏ぶとう、あるいは演劇えんげきなどにおいて用もちいられてきた。こうした性格せいかくのものは、日本にっぽんにおいては一般いっぱん的てきにはマスクといわれず、仮面かめんと称しょうされることが多おおい。

そうした仮面かめん舞踏ぶとう（儀礼ぎれい）は、紀元前きげんぜん4000年ねんごろにすでに行おこなわれていたという。これは当時とうじに描えがかれたアフリカのアルジェリア・タッシリ・ナジェールの洞窟どうくつ壁画へきが（英語えいご版ばんの写真しゃしんギャラリーも参照さんしょう）から推測すいそくされている。日本にっぽんにおける最古さいこの仮面かめんは縄文じょうもん時代じだい中期ちゅうき前半ぜんはん（5千せん年ねん以上いじょう前まえ）の土ど面めんであるという。現存げんそんする国内こくない最古さいこの木製もくせい仮面かめんは弥生やよい時代じだい終末しゅうまつ（3世紀せいき）の纏まとい向こう遺跡いせきから出土しゅつどしたものである。

いっぽう、顔かおを隠かくすという意味合いみあいが強つよいマスクは、日本にっぽんにおいては一般いっぱんに覆面ふくめんと呼よばれ、「覆面ふくめん強盗ごうとう」や「覆面ふくめんレスラー」などのように用もちいられる（なお、上記じょうきの衛生えいせいマスクと同様どうように、神事しんじ・仏事ぶつじ、または貴人きじんへの配膳はいぜんの際さいに口くちを覆おおって息いきがかからないようにするためのものも覆面ふくめんと呼よぶ。一般いっぱんに和紙わしなどによって作つくられる）。

しかしながら、中世ちゅうせいヨーロッパにおいておこった仮面かめん舞踏ぶとう会かい（マスカレード）での「仮面かめん」は、上記じょうきの宗教しゅうきょう的てき儀式ぎしきのように仮かりの何者なにものかになりきるわけではなく、顔かおを隠かくすという意味合いみあいが強つよい。よって、布ぬのなどのやわらかい素材そざいで顔かおを隠かくす（顔かおを覆おおう）マスクを覆面ふくめんといい、硬質こうしつの素材そざいで作つくられたマスクを仮面かめんと呼よぶような用法ようほうが日本にっぽんでは一般いっぱん的てきとみられる（これは物品ぶっぴんに対たいするものであり、言語げんごそのものに関かんすることは国語こくご辞典じてんなどを参照さんしょうされたい）。

日本にっぽんにおける伝統でんとう芸能げいのうである能のう（能楽のうがく）などに用もちいる仮面かめん（能面のうめん）等とうは、わざわざ仮面かめんとは称しょうさず、単たんに面めんと呼よぶ（専門せんもん的てきには「おもて」と呼よぶ）。そうした面めんのていねい語ご（幼児ようじ語ご）がお面めんであり、現在げんざいでも祭礼さいれいなどの際さいに大道だいどうで的屋てきやが子供こども向むけにさまざまなキャラクター物ものを販売はんばいしている。

このように、面めん・仮面かめん・覆面ふくめんなどはすべてマスクではあるが、日本にっぽんにおいては用法ようほうに微妙びみょうな差さがある。

仮かり装用そうようマスク

政治せいじ家かのマスクをかぶって集会しゅうかいに出でかける人々ひとびと（2008年ねん米べい共和党きょうわとう大会たいかい）

覆面ふくめんレスラー（オスカー・グティエレス）

以下いかに、こうした演劇えんげき・芸能げいのう等とうに用もちいられるものではない仮装かそう用ようマスクの実例じつれいなどを述のべる。

• いわゆるパーティーグッズとしての仮かり装用そうようマスク（変装へんそうマスク）はゴム（軟質なんしつプラスチック）製せい（en:Latex mask）で、動物どうぶつや架空かくうまたは実在じつざいの人物じんぶつの顔かおを模もして作つくられたものが多おおい。頭あたま全体ぜんたいを覆おおう（頭あたまからかぶる）タイプでは、目め・鼻はな・口くちなどの部分ぶぶんに穴あなが開ひらいている。種類しゅるいとしてはウマ、狼おおかみ男おとこ、フランケンシュタインが人気にんきがあるという。また、政治せいじや政治せいじ家かを批判ひはんするPR活動かつどうのときに、その政治せいじ家かの顔かおを模もしたマスクが用もちいられることがある（en:Richard Nixon mask）。これらのマスクで著名ちょめいなのは米国べいこくドンポスト社しゃ（en:Don Post）や日本にっぽんのオガワゴム製せいのものである。ドンポスト社しゃでは政治せいじ家かや前述ぜんじゅつのフランケンシュタインなどのユニバーサル映画えいがのモンスターやスター・ウォーズ・シリーズなどのキャラクターマスクを商品しょうひん化かしていた。また、これらは頭あたまからかぶるため「かぶりもの」とも俗称ぞくしょうされる。言葉ことばのニュアンスとしては仮面かめんとも覆面ふくめんとも言いいがたく、仮装かそう用ようマスクとしか言いいようがない。ゴム製せいのものも多おおくラバーマスクとも呼よぶ。
• ドミノマスク / 女王じょおう様さまマスク（en:Domino mask）と呼よばれる目めなど顔かおの上うえ半分はんぶんのみを覆おおうアイマスク状じょうの仮面かめんも、SM用途ようとに限かぎらず現代げんだいでは仮装かそうやパーティーグッズとして広ひろまっている。フィクションでは『バットマン』の登場とうじょう人物じんぶつのロビンの着用ちゃくよう例れいが挙あげられる。チョウを模もした形状けいじょうの場合ばあいはバタフライマスクとも呼よばれる。古ふるくは仮面かめん舞踏ぶとう会かいが挙あげられ身分みぶんや素性すじょうを問とわず男女だんじょが交遊こうゆうできたという背徳はいとく的てきな雰囲気ふんいきから用もちいられるようになったと推測すいそくされる。ヴェネツィア・カーニバルではこれ以外いがいにも顔かお全体ぜんたいを覆おおい隠かくすものも複数ふくすう種しゅで用もちいられておりヴェネツィアマスクとも呼よばれる（en:Carnival of Venice#Types of masks）。
• ジョークグッズのひとつとして、鼻はなの下したにヒゲをつけ、それをメガネと組くみ合あわせたものも鼻はなマスクと呼よばれているが、医療いりょう用ようの鼻はなマスクとは異ことなる。ひげメガネ、鼻はなメガネともいうが、ヒゲ無なしのものや眉毛まゆげだけ付ついたものもある。また、本来ほんらい「鼻はなメガネ」（鼻眼鏡はなめがね）はツル無なしメガネの総称そうしょうである。
• 江戸えど時代じだいの日本にっぽんにおいて、大道芸だいどうげいや商品しょうひんの宣伝せんでん販売はんばいを行おこなう際さいに「百ひゃく眼め（ひゃくまなこ）」と呼よばれるアイマスクが用もちいられたことがある。長方形ちょうほうけいの紙かみに眉毛まゆげなどを描えがき、目めの瞳ひとみ部分ぶぶんのみをくりぬいたもので、その表情ひょうじょうのおかしさから人気にんきを呼よび、のちに当時とうじの先進せんしん的てきな演劇えんげきであった歌舞伎かぶきにも取とり入いれられた。また、博多はかた仁和にわ加かでは同様どうようの「半面はんめん」を現在げんざいでも用もちいており、二に◯加か煎餅せんべいの意匠いしょうとしても知しられる。これも一種いっしゅの仮装かそう用ようのマスクである。

アフリカの仮面かめん

ナイジェリアのイジョ族ぞくの仮面かめん

アフリカ大陸たいりくでは、それぞれの地域ちいきに住すむ部族ぶぞくが、祭祀さいしのために、それぞれ独特どくとくの仮面かめんを作つくってきている。これらの仮面かめんは、大陸たいりくの各国かっこくが離合りごう集散しゅうさんを繰くり返かえしてきていても、しばしば国境こっきょう線せんを超こえて、以前いぜんからの部族ぶぞく社会しゃかいが各地かくちで生いき残のこっていて、独特どくとくの仮面かめんを維持いじしている。その多おおくは美術びじゅつ的てきにも高たかく評価ひょうかされている。

しかし、これらアフリカの仮面かめんについては、ヨーロッパ（とくにフランスや英国えいこく）や米国べいこく（たとえばアイオワ大学だいがく）で研究けんきゅうや紹介しょうかいが行おこなわれているものの、日本にっぽんでは、ほとんど紹介しょうかいされていない。

インディアンの仮面かめん治療ちりょう

北きたアメリカのインディアン（ネイティブ・アメリカン）の多おおくの部族ぶぞくでは、仮面かめんには呪術じゅじゅつ的てきな強つよい力ちから＝霊力れいりょくがあると考かんがえられており、シャーマン（＝医者いしゃ）が仮面かめんを被こうむって病気びょうきの治癒ちゆを祈祷きとうする「仮面かめん治療ちりょう」（＝医療いりょう）が一般いっぱん的てきに行おこなわれていた（いる）。そもそも、病気びょうきと言いう物ものは、「魂たましいの抜ぬけた状態じょうたい」と考かんがえられており、「悪霊あくりょうの仕業しわざ」か「悪わるい呪術じゅじゅつ師しの呪のろい」によって起おこると考かんがえられていたからである。また、儀式ぎしきで病気びょうきを治なおす仮面かめんの呪術じゅじゅつ団だん（仮面かめん団だん）が存在そんざいし、病気びょうきを治なおしてもらった者ものは、仮面かめん団だんに加くわわり、治療ちりょうの手伝てつだいをする義務ぎむがあった。

著名ちょめいなマスク

「デスマスク」、「ライフマスク」の項こうを参照さんしょうのこと。

• 日本にっぽん面めん - 伎楽ぎがく面めん、能面のうめん、おかめ、ひょっとこ、狐きつね面めん
• ツタンカーメンのマスク（世界せかいで最もっとも知しられた芸術げいじゅつ作品さくひん・デスマスクの一ひとつ）
• ネイティブ・アメリカン・マスク
• ガイ・フォークス・マスク - 映画えいが『Vフォー・ヴェンデッタ』（2005年ねん）以降いこう、アノニマスなどに見みられるように、ガイ・フォークスの仮面かめんはある種しゅの抵抗ていこう運動うんどうのシンボルとなっている。節ふし「影響えいきょう」を参照さんしょう。

博物館はくぶつかん

• Museo Nacional de la Máscara - メキシコ国立こくりつ仮面かめん博物館はくぶつかん
• Second Face: Museum of Cultural Masks - オンライン博物館はくぶつかん
• International Carnival and Mask Museum - ベルギー、バンシュの博物館はくぶつかん
• Museo delle maschere mediterranee - 地中海ちちゅうかいマスク博物館はくぶつかんの意い。サルデーニャの民族みんぞく学がく博物館はくぶつかん。

日本にっぽん

• 日本にっぽん仮面かめん歴史れきし館かん
• アフリカ仮面かめん美術館びじゅつかん

イベント

• rabaul mask festival - 毎年まいとし、パプアニューギニアのラバウルで行おこなわれる全ぜん世界せかいの仮面かめんが関かかわるも催もよおし。

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

ポーランドの野外やがい演劇えんげきでの仮面かめん

• 面めん
• 仮面かめん劇げき
• ルチャリブレ
• 「仮面かめん」で始はじまるページの一覧いちらん
• タイトルに「仮面かめん」を含ふくむページの一覧いちらん

外部がいぶリンク

• 能面のうめん 長澤ながさわ重春しげはる能面のうめん集しゅう
• Ritual, Masks, and Sacrifice
• TraditionalBuddhist Masks from Nepal
• The Secret of Masks
• The Mythic Mask: mask history and contemporary mask art
• The Noh Mask Effect: A Facial Expression Illusion
• Read about more than 40 types of "Masks" created by African tribes.
• Essortment
• Bolivian indigenous and mestizo masks
• Smithsonian Institute African Mask Links
• Virtual Museum of Death Mask
• Chinese Opera Mask
• Artyfactory
• Contemporary Mask Art by TJ Brockelman