ヒップホップ

ヒップホップは、1970年代ねんだいにニューヨークのブロンクス地区ちくで開ひらかれたブロック・パーティーにルーツのある、音楽おんがく・ダンス・ファッションを中心ちゅうしんとする文化ぶんかである。1980年代ねんだいには、ヒップホップには三さん大だい要素ようそがあると言いわれていた。DJ、ブレイクダンス、グラフィティがその構成こうせい要素ようそである^{[要よう出典しゅってん]}。しかし現在げんざい^[いつ?]では、ミュージシャンとしてのMCを加くわえた四よん大だい要素ようそと言いわれている。ヒップは、とんでいる、ホップは跳躍ちょうやくするなどの意味いみがある。

ライターのスティーヴ・ヘイガーは、アフリカ・バンバータ^[1]の、ラップ音楽おんがくやブレイクダンス、グラフィティ・アートを含ふくめた黒人こくじん文化ぶんかをヒップホップとした発言はつげんは、ヴィレッジ・ヴォイスで最初さいしょに活字かつじになったものであると主張しゅちょうしている。

概要がいよう

スプレー缶かん（エアロゾル）によるグラフィティ

単たんに「ヒップホップ」と呼よんだ場合ばあい、サンプリングや打うち込こみのバックトラックに、MCによるラップを乗のせた音楽おんがくを指さすことがあるが、これらはヒップホップ・ミュージックと呼よぶのが正ただしい。これに「ブレイクダンス」と「グラフィティ」などを加くわえたものが本来ほんらいのヒップホップである。ヒップホップにおいて、ラップ（MC）、DJプレイ、ブレイクダンス、グラフィティは四よん大だい要素ようそと呼よばれる。

これらはアメリカのストリートギャング文化ぶんかとも関係かんけいがあるといわれ、抗こう争そうを無血むけつに終おわらせるために、銃じゅうや暴力ぼうりょくの代かわりとしてブレイクダンスやラップの優劣ゆうれつが争あらそわれた。ラップ、DJプレイ、ブレイクダンスには、フリースタイル・バトルと呼よばれる対決たいけつ方式ほうしきも存在そんざいする。その後ご、発祥はっしょう地ちアメリカだけにとどまらず、ブレイクダンスを踊おどったり、グラフィティをアートとしてとらえたり、ファッションにも影響えいきょうを及およぼすなど、ヒップホップ文化ぶんかは、欧米おうべい、日本にっぽんをはじめ世界せかい各国かっこくに広ひろまった。

これにアフリカ・バンバータが加くわえた「知識ちしき」までを五大ごだい要素ようそ、さらにKRS・ワンが提唱ていしょうした「ビートボックス」とストリート文化ぶんか「言語げんご」、「服装ふくそう」、「起業きぎょう精神せいしん」を含ふくむと九大きゅうだい要素ようそと呼よばれる^[2]。

詳細しょうさい

ラップするナズ

DJクール・ハーク

→詳細しょうさいは「ヒップホップミュージック」を参照さんしょう

起源きげんについては諸説しょせつ有あるが、一般いっぱん的てきに1970年代ねんだいに生うまれ、クール・ハーク^[3]（ブレイクビーツの発明はつめい者しゃ）、グランドマスター・フラッシュ^{[注ちゅう 1]}（スクラッチ技術ぎじゅつを普及ふきゅう）、アフリカ・バンバータ（ヒップホップという言葉ことばの生うみの親おや）らのDJたちの活躍かつやくによって、それまでのブロック・パーティを超こえた音楽おんがくとして広ひろがり始はじめた。

曲調きょくちょうやダンス、ファッションなどのスタイルを、それぞれオールド・スクール（Old School、1970年代ねんだい末まつ - 1980年代ねんだい初頭しょとう）、ニュー・スクール（New School, 1990年代ねんだい以降いこう）と呼よぶ。オールド・スクールのラッパーにはグランドマスター・フラッシュ、トリーチャラス・スリー、スーパー・ウルフ^[4] らがいた。1980年代ねんだい後期こうき - 1990年代ねんだい前期ぜんきはラップの全盛期ぜんせいきだったことから、特とくにゴールデンエイジ・ヒップホップと呼よばれる場合ばあいもある。日本にっぽんでは1980年代ねんだい半なかばのラップをミドル・スクール（Middle School）と表現ひょうげんすることがある。ミドル・スクールのラッパーには、Run-D.M.C.^[5]、LLクールJ、UTFO、フーディニらがいた。

パブリック・エナミーやBDPのアルバムは、社会しゃかい的てき意識いしきの萌芽ほうがを予感よかんさせた。1980年代ねんだい、ヒップホップは、ビートボックスのボーカルパーカッションテクニックを介かいして、人体じんたいを使用しようしたリズムの作成さくせいも受うけ入いれた。先駆せんく者しゃはダグ・E・フレッシュだった。ダグ・E・フレッシュやビズ・マーキーは、自身じしんの口くちと声こえ、他たの身体しんたいの部分ぶぶんを使用しようしてビート、リズムを創造そうぞうした。これらは「ヒューマンビートボックス」と呼よばれ、このジャンルのアーティストは、ターンテーブリズムのスクラッチやその他たの楽器がっきの音おとを歌うたったり楽器がっきの音おとを模倣もほうしたりした。

ミュージックビデオの登場とうじょうはエンターテインメントを変かえた。「プラネットロック」のミュージックビデオは、ヒップホップミュージシャン、グラフィティアーティスト、およびB-boyのサブカルチャーを紹介しょうかいした。1982年ねんから1985年ねんの間あいだに「ワイルドスタイル」、「ビートストリート」、「クラッシュグルーブ」、ブレイクダンス、「ドキュメンタリー・スタイル・ウォーズ」など、多おおくのヒップホップ関連かんれんの映画えいがが上映じょうえいされた。1980年ねんには、世界せかいの若者わかものの一部いちぶがヒップホップ文化ぶんかを受うけ入いれた。アメリカの都市としコミュニティでは、ヒップホップのファッションが流行りゅうこうした。Run-D.M.C.^{[注ちゅう 2]}だけでなく、アイスT、ビッグ・ダディ・ケイン、ドクター・ドレイらも愛用あいようしたゴールドのチェーン・アクセサリーや、ジャージとスニーカーなどが見みられた。その後ご、パブリック・エネミーやKRS1^[6]のブギー・ダウン・プロダクションなどが登場とうじょうした。

ニュー・スクール・ラップは、1980年代ねんだい末まつから1990年代ねんだい初頭しょとうまで流行りゅうこうした。ニュー・スクールのラッパーには、デ・ラ・ソウル^{[注ちゅう 3]}、ア・トライブ・コールド・クエスト、リーダーズ・オブ・ザ・ニュースクールらがいた。ファッションは、シルバーが流行りゅうこうした。また、サイズの大おおきな衣服いふくや、バギースタイルのパンツ（大おおきいサイズのダブついたズボン）を選えらび、腰こし履はきで着きるアーティストも見みられた。大おおきい服ふくを着きるようになったのは、大おおきめのサイズの服ふくを子供こどもに提供ていきょうしておけば、成長せいちょうしても買かい換かえる必要ひつようがないことなどが原因げんいんとされている。

別べつなカテゴライズとして、アーティストの出身しゅっしん地ちなどから、ヒップホップ発祥はっしょうの地ちであるニューヨークなどのアメリカ東海岸ひがしかいがんにおけるイースト・コースト・サウンド、ロサンゼルスなどのアメリカ西海岸にしかいがんにおけるウエスト・コースト・サウンド（ウエスト・サイド）といった、地域ちいきによる分わけ方かたがある。ニューヨークのラップは、ジャズトラックを使用しようした楽曲がっきょくもあり、対たいして初期しょきのウエスト・コースト・サウンドは、ドクター・ドレー、スヌープ・ドッグらを中心ちゅうしんとしたGファンクと呼よばれる、Pファンクなどをサンプリングし、シンセサイザーなどの電子でんし音おんを取とり入いれたトラックに、ギャングスタ・ラップをのせた。近年きんねんはサウス（南部なんぶ）やミッドウエスト（中西部ちゅうせいぶ）と呼よばれるローカルサウンドも登場とうじょうしている。サウスのトラックは、バウンスビートが特徴とくちょうである。ヒップホップのポピュラー化かにより、東海岸ひがしかいがんでギャングスタ・ラップをするものが現あらわれた。

1990年代ねんだい頃ころから東海岸ひがしかいがんを代表だいひょうするディディ（パフ・ダディ）、ノトーリアス・B.I.G.擁ようするバッド・ボーイ・エンターテインメント（Bad Boy Entertainment）と、西海岸にしかいがんを代表だいひょうするドクター・ドレー^{[注ちゅう 4]}、スヌープ・ドッグ、2パック（出身しゅっしんはイースト・コーストではあるが、最盛さいせい期きの活動かつどう場所ばしょはウエスト）らが所属しょぞくするデス・ロウ・レーベルとの対立たいりつが象徴しょうちょう的てきであるように、両りょう海岸かいがんのアーティストたちはお互たがいを威嚇いかく、中傷ちゅうしょうし合あった。それらの内容ないようはラップの歌詞かしにも現あらわれ、ギャングを巻まき込こんだ暴行ぼうこう、襲撃しゅうげき、発砲はっぽう事件じけんなどに発展はってんした。この東西とうざい抗争こうそうは、2パック、ノトーリアス・B.I.G.という両りょう海岸かいがんを代表だいひょうする有名ゆうめいラッパーを、ともに銃撃じゅうげき事件じけんで失うしなう悲惨ひさんな結末けつまつを招まねいた。抗こう争そうはその後ご、個人こじん間あいだのビーフ（中傷ちゅうしょう合戦かっせん）を除のぞいて、沈静ちんせい化かしている。

歴史れきし

→詳細しょうさいは「ヒップホップ音楽おんがくの歴史れきし」を参照さんしょう

代表だいひょう的てきなレコードレーベル

※五十音ごじゅうおん順じゅん

サブジャンル

オールドスクール・ヒップホップ

1970年代ねんだい後半こうはんから1980年代ねんだいにかけ、黎明れいめい期きのヒップホップを統括とうかつしたジャンル。代表だいひょう的てきなアーティストにシュガーヒル・ギャング、グランドマスター・フラッシュ^{[注ちゅう 5]}、クール・ハークなど。

ミドル・スクール

1980年代ねんだい半なかばのヒップホップを表あらわす日本にっぽん独自どくじ表現ひょうげん。アメリカではゴールデンエイジ・ヒップホップと呼よぶ場合ばあいもある。

ニュー・スクール

デラソウル、リーダーズ・オブ・ニュースクールなど。

ネクスト・スクール

エドOG&ダ・ブルドッグズやメイン・ソースなど。

ギャングスタ・ラップ

ギャング活動かつどうや犯罪はんざい行為こういについて言及げんきゅうしたジャンルで、歌詞かしの過激かげきな内容ないようが度々どど論争ろんそうを引ひき起おこす。ハードコア・ヒップホップとほぼ同義どうぎ。

Gファンク

上記じょうきのギャングスタ・ラップから派生はせいしたジャンル。代表だいひょう的てきなアーティストにドクター・ドレー、スヌープ・ドッグ、ウォーレンGなど。

サザン・ヒップホップ

南部なんぶラップともいう。マスターP^{[注ちゅう 6]}、スリー6マフイアなど。

ヒップホップ・ソウル

ヒップホップのトラックの上うえに、新あたらしいR&Bのメロディーを乗のせたジャンル。代表だいひょう的てきなアーティストにメアリー・j・ブライジらがいた。日本にっぽんの宇多田うただヒカルのサウンドも、このジャンルに属ぞくする。」

チカーノラップ

メキシコ系けい移民いみんたちが中心ちゅうしんになり勃興ぼっこうしたジャンル。キッド・フロスト^{[注ちゅう 7]}、メローマン・エイスなど。

マイアミ・ベース

ルーク^{[注ちゅう 8]}や2ライブ・クルー^{[注ちゅう 9]}など。

ラガ・ヒップホップ/ダンスホール

シャバ・ランクス、ビーニー・マン、シャギー、ショーン・ポールらが活躍かつやくした。

ニューメタル

ヘヴィメタルとヒップホップを融合ゆうごうしたジャンルで、コーン、スリップノットなどがいる。

その他たのジャンル

クランク: 1990年代ねんだいのシンセサイザーや重じゅう低音ていおんのベースを特徴とくちょうのラップ。代表だいひょう者しゃはリル・ジョン、マシン・ガン・ケリーらがいる。
トラップ: 1990年代ねんだいにクランクから派生はせいしたジャンル。代表だいひょう者しゃはドレイク、カーディーB、XXXテンタシオン、トラヴィス・スコットなど。
エモ・ラップ: 2010年代ねんだいにエモとラップを融合ゆうごうさせたジャンル。代表だいひょう者しゃはXXXテンタシオン^{[注ちゅう 10]}など。

音楽おんがく用語ようご

Bボーイ: 「Bボーイ (B-Boy)」はブレイクする者もの、突破とっぱしていく少年しょうねんの意味いみ。ブレイクダンサーのことも指さす。この言葉ことばは、クール・ハークが作つくり出だしたとされ、ブロックパーティなどでブレイクビーツを流ながすと踊おどりだすダンサーのことを、「ブレイク・ボーイ (Break-Boy)」あるいは「Bボーイング (B-Boying)」と呼よんだことに由来ゆらいする。
ヒップホッパー: 日本にっぽんでは「ヒップホッパー (hip hopper)」という言葉ことばは「ヒップホップ文化ぶんかに没頭ぼっとうする人ひと」と解釈かいしゃくされる。しかし、KRS・ワンなどによると、本来ほんらいは「ヒップホップの四よん大だい要素ようそ全すべてが優すぐれていて、筋金入すじがねいりのヒップホップ育そだちのような人ひと」を指さす。

→「日本にっぽんのヒップホップ」も参照さんしょう

代表だいひょう的てきなアーティスト

MC

→「Category:アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのラッパー」および「日本にっぽんのヒップホップMC一覧いちらん」を参照さんしょう

DJ

グラフィティ・アーティスト

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

^ 1979年ねんにはエンジョイ・レコードから作品さくひんを発表はっぴょうし、1982年ねんの「ザ・メッセージ」はニューヨーク周辺しゅうへんだけで50万まん枚まい以上いじょうのヒットになった。
^ 「ウォーク・ジズ・ウェイ」が大だいヒットした。
^ 1989年ねんに「ミー、マイセルフ&アイ」がR&Bヒットとなった。
^ 1992年ねんの「ナッシン・バット・ア・Gサング」が1993年ねんにヒットした。
^ 1982年ねんに「ザ・メセージ」がNY周辺しゅうへんで50万まん枚まい売うれたとされる。
^ 1997年ねんに「アイ・ミス・マイ・ホーミーズ」がポップでもクロスオーバー・ヒットとなった。
^ 1990年ねんに「ラ・ラーサ」がヒットした。
^ もともとはルーク・スカイウォーカーを名乗なのっていたが、苦情くじょうが入はいりルークに改名かいめいした。
^ 曲きょくが放送ほうそう禁止きんしになったことがある。
^ 2018年ねんに射殺しゃさつされた。享年きょうねん20歳さい。
^ アフリカ・バンバータらが出演しゅつえん。

出典しゅってん

^ “Afrika Bambaataa”. Discogs. 2024年ねん9月がつ2日にち閲覧えつらん。
^ Nelson George. Hip Hop America. ISBN 978-0143035152
^ Chang, Jeff; DJ Kool Herc (2005). Can't Stop Won't Stop: A History of the Hip-Hop Generation. Macmillan. ISBN 978-0-312-30143-9.
^ “Super Wolf”. AllMusic. 2024年ねん9月がつ2日にち閲覧えつらん。
^ Augustin K. Sedgewick (November 6, 2002). “Run-D.M.C. Call It Quits”. RollingStone. April 9, 2015閲覧えつらん。
^ “Pop/Jazz; Rap Leads to Respectability and Academia for KRS-One(Nov. 17, 1989)”. The New York Times 20 May 2019閲覧えつらん。
^ ジェイソンズ・リリック 2022年ねん2月がつ28日にち閲覧えつらん

書籍しょせき

ヒップホップ・ジェネレーション[新装しんそう版ばん]：ジェフ・チャン、 DJクール・ハーク著ちょ：リットー・ミュージック
HIP HOP：ダースレイダー著ちょ、シンコー・ミュージック
ラップ・イヤー・ブック：アイスT