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MEMS - Wikipedia

MEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)は、機械きかい要素ようそ部品ぶひんセンサアクチュエータ電子でんし回路かいろひとつのシリコン基板きばん、ガラス基板きばん有機ゆうき材料ざいりょうなどのうえ微細びさい加工かこう技術ぎじゅつによって集積しゅうせきしたデバイスをす。プロセスじょう制約せいやく材料ざいりょうちがいなどにより、機械きかい構造こうぞう電子でんし回路かいろべつなチップになる場合ばあいがあるが、このようなハイブリッド場合ばあいもMEMSという。

半導体はんどうたいプロセスもちいて作成さくせいされたギア左下ひだりした)とダニ右上みぎうえ)の電子でんし顕微鏡けんびきょう写真しゃしんサンディア国立こくりつ研究所けんきゅうじょ SUMMiTTM Technologies の好意こういによる www.mems.sandia.gov
LIGAプロセスで製造せいぞうされたひかりスイッチ

その製作せいさくには、LIGAプロセスや半導体はんどうたい集積しゅうせき回路かいろ作製さくせい技術ぎじゅつをはじめとして、立体りったい形状けいじょう可動かどう構造こうぞう形成けいせいするために犠牲ぎせいそうエッチングプロセスももちいられる。

以前いぜんは、MEMSはセンサなどの既存きそんのデバイスの代替だいたいおも目的もくてきとして研究けんきゅう開発かいはつすすめられていたが、近年きんねんはMEMSにしかゆるされない環境かんきょうでの実験じっけん手段しゅだんとして注目ちゅうもくされている。たとえば、電子でんし顕微鏡けんびきょうちゅうだか真空しんくう微小びしょう空間くうかんだが、MEMSならばそのちいささと機械きかいてき性質せいしつ利用りようして電子でんし顕微鏡けんびきょうでの実験じっけんおこなうことができる。また、DNA生体せいたい試料しりょうなどのナノ・マイクロメートルの物質ぶっしつ操作そうさ捕獲ほかく分析ぶんせきするツールとしても活躍かつやくしている。

現在げんざい製品せいひんとして市販しはんされているものとしては、インクジェットプリンタのヘッド、圧力あつりょくセンサ加速度かそくどセンサジャイロスコーププロジェクタ写真しゃしん焼付やきつけとう利用りようされるDMD光造こうぞう形式けいしき3Dプリンターレーザープロジェクタひとし使用しようされるガルバノメータなどがあり、徐々じょじょ応用おうよう範囲はんい拡大かくだいしつつある。

市場いちば規模きぼ拡大かくだいして応用おうよう分野ぶんや多岐たきにわたるため、期待きたいおおきく、だいDRAMわれたこともある。

歴史れきしてきにはふるくから機械きかい構造こうぞう半導体はんどうたい製作せいさく技術ぎじゅつ作製さくせいする方法ほうほうおこなわれてきた。1951ねんにはRCAしゃによりシャドーマスク製作せいさくされ、1963ねんにはすで豊田とよだ中央ちゅうおう研究所けんきゅうじょにより半導体はんどうたい圧力あつりょくセンサ発表はっぴょうされている。1970ねんごろにはスタンフォード大学だいがくNASA委託いたく研究けんきゅうガスクロマトグラフシリコンウエハうえ作成さくせいされた[注釈ちゅうしゃく 1][1][2]。MEMSの定義ていぎにもよるが、いくつかの文献ぶんけんでは世界せかい最初さいしょのMEMSは1967ねん発表はっぴょうされたH. C. Nathansonによる「The Resonant Gate Transistor」[3]となっている。ただし、圧力あつりょくセンサもMEMSに分類ぶんるいされるので豊田とよだ中研ちゅうけん半導体はんどうたい圧力あつりょくセンサもMEMSとかんがえられ、どれが世界せかいはつであるかについては議論ぎろんかれる。

このような微細びさい機械きかい構造こうぞう注目ちゅうもくあつめるきっかけとなったのは1987ねんTransducers'87で発表はっぴょうされたマイクロギアタービンである。そのマイクロモータくしがたアクチュエータなどの発明はつめいにより脚光きゃっこうびる。初期しょき段階だんかいではうごくだけでかったが最近さいきんでは応用おうよう見据みすえたデバイスが主流しゅりゅうである。

現在げんざいでは後述こうじゅつのように多様たよう応用おうようさきがあるため、MEMS応用おうよう市場いちば規模きぼ日本にっぽん国内こくないだけでもすうせんおくえんにものぼり、将来しょうらいてきにはすうちょうえん規模きぼになるとわれている[4]

プロセスの見地けんちでは、最近さいきんまで半導体はんどうたい集積しゅうせき回路かいろ技術ぎじゅつちかサーフェイスマイクロマシニング主流しゅりゅうであったが、ICP-RIEによるふかりエッチングウエハ接合せつごうLIGAプロセス技術ぎじゅつなどMEMS特有とくゆうのプロセス技術ぎじゅつ発展はってんによりバルクマイクロマシニング主流しゅりゅうとなってきている。
CMOS回路かいろわせたデバイスはCMOS回路かいろとのプロセス技術ぎじゅつ整合せいごうせいからサーフェイスマイクロマシニングもちいる場合ばあいおおいが、SOIウエハをもちいてバルクマイクロマシニングとCMOS回路かいろわせたデバイスもおおくなってきている。

代表だいひょうてきなMEMSデバイス

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市販しはんされている代表だいひょうてきなデバイス

おも応用おうようさき

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研究けんきゅう段階だんかいもの期待きたいされる応用おうよう分野ぶんや

おも微小びしょう高周波こうしゅうはスイッチや共振きょうしん実現じつげんする。

機械きかいてき高周波こうしゅうはスイッチの場合ばあい半導体はんどうたい高周波こうしゅうはスイッチより動作どうさ速度そくどおそいものの、てい損失そんしつのスイッチが実現じつげんできる。

共振きょうしん小型こがたたかQつものが作製さくせい可能かのうである。水晶すいしょうもちいてもたかいQ実現じつげんできるが、シリコンで作製さくせいできるため集積しゅうせき回路かいろとの集積しゅうせき容易よういである。

  • DNA分析ぶんせきチップ
  • 蛋白質たんぱくしつ分析ぶんせきチップ
  • マイクロスラスタ
  • マイクロカロリーメータ

MEMSのなかでもとくライフサイエンス分野ぶんや使用しようされるものをBioMEMSとぶ。おう用例ようれい多岐たきにわたり、従来じゅうらい固定こていしき分析ぶんせき装置そうちによる血液けつえき検査けんさ抗体こうたい検査けんさひとし代替だいたいすることを視野しやれて開発かいはつすすめられる。2000ねん以降いこう、MEMSはスマートフォンひとし内蔵ないぞうされる加速度かそくどセンサジャイロセンサひとし実用じつようされてきたが、つぎライフサイエンスへの分野ぶんや徐々じょじょあらたな活路かつろひろげつつあり有望ゆうぼう分野ぶんやであると予想よそうされる[5]従来じゅうらい固定こていしき分析ぶんせき装置そうちがBioMEMSにより小型こがたされればウェアラブル可能かのうになるため、慢性まんせいせい疾患しっかん患者かんじゃクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上こうじょう期待きたいされる[6][7]

MEMSにおける特徴とくちょうてきなプロセス技術ぎじゅつ

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集積しゅうせき回路かいろ作製さくせい技術ぎじゅつ以外いがいにMEMSでもちいられる技術ぎじゅつ

おおきな分類ぶんるい

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  • 直接ちょくせつ接合せつごう
  • 陽極ようきょく接合せつごう

せい電力でんりょくもちいたもの

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構造こうぞう簡単かんたん小型こがたいている。発生はっせいりょく方法ほうほうくらべてちいさい。MEMSではもっと使つかわれる駆動くどう原理げんり

  • 平行へいこう平板へいばんがたしずかでんアクチュエータ
  • くしがたしずかでんアクチュエータ
  • スクラッチドライブアクチュエータ (Scratch Drive Actuator:SDA)
  • しずかでんマイクロモータ

コイルや磁石じしゃく必要ひつようになるため、せいでんがたくら構造こうぞう複雑ふくざつおおきいが、おおきなちから発生はっせいすることができる。ヒステリシスやドリフトをともなうこともある。

  • 電磁でんじりょくアクチュエータ
  • 磁歪アクチュエータ

おおきなちから発生はっせいできるが、変位へんいちいさい。

  • あつでんがたアクチュエータ
  • あつでんバイモルフ

構造こうぞう簡単かんたんで、おおきなちから発生はっせいできるが、ドリフトなどの不安定ふあんてい要素ようそがある

  • 圧縮あっしゅく気体きたいもちいたもの
  • 電気でんき分解ぶんかいもちいたもの

ソフトウェア

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MEMSは微小びしょう構造こうぞうぶつなので、解析かいせきおこなさいには汎用はんようてきなシミュレーションソフトウェアでは、微小びしょう構造こうぞうによる特有とくゆう現象げんしょう考慮こうりょしていないため正確せいかく解析かいせきおこなうことができない。近年きんねんではPCのスペックも向上こうじょうしているため汎用はんようシミュレーションでも解析かいせき可能かのうであると紹介しょうかいされているが、せいでんデバイスやシステム解析かいせきといった総合そうごうてきなMEMS設計せっけいかんがえると汎用はんようソフトウェアより専門せんもんソフトウェアに優位ゆういせいがある。

専門せんもんソフトウェア

・IntelliSuite (IntelliSenseしゃ)[2]

・CoventorWare

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 宇宙船うちゅうせんうち空気くうき成分せいぶん分析ぶんせきして宇宙うちゅう飛行ひこう健康けんこう状態じょうたい調しらべる目的もくてきだったとされる。

出典しゅってん

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  1. ^ James B. Angell; Stephen C. Terry; Phillip W. Barth (April 1983). “Silicon Micromechanical Devices”. サイエンティフィック・アメリカン 248 (4): 44 - 55. 
  2. ^ J.B.エンジェル、S.C.テリー、P.W.バース「シリコン基板きばんんだマイクロセンサー」『サイエンス』、日経にっけいサイエンスしゃ、1983ねん6がつごう、18ぺーじ 
  3. ^ Nathanson, H.C. Newell, W.E. Wickstrom, R.A. Davis, J.R., Jr., "The resonant gate transistor," IEEE Transactions on Electron Devices, 1967, Volume 14, Issue 3 On pages 117- 133
  4. ^ 出典しゅってん:MEMS関連かんれん市場いちば現状げんじょう将来しょうらい予測よそくについて。マイクロマシンセンター:http://mmc.la.coocan.jp/research/market/market2007/market2007.html
  5. ^ [1]
  6. ^ Grayson, Amy C. Richards, et al. "[Grayson, Amy C. Richards, et al. "A BioMEMS review: MEMS technology for physiologically integrated devices." Proceedings of the IEEE 92.1 (2004): 6-21. A BioMEMS review: MEMS technology for physiologically integrated devices.]" Proceedings of the IEEE 92.1 (2004): 6-21.
  7. ^ Saliterman, Steven S. Fundamentals of BioMEMS and medical microdevices. Bellingham, WA: Wiley-Interscience, 2006.

文献ぶんけん

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  • James B. Angell; Stephen C. Terry; Phillip W. Barth (April 1983). “Silicon Micromechanical Devices”. サイエンティフィック・アメリカン 248 (4): 44 - 55. 
  • J.B.エンジェル、S.C.テリー、P.W.バース「シリコン基板きばんんだマイクロセンサー」『サイエンス』、日経にっけいサイエンスしゃ、1983ねん6がつごう、18ぺーじ 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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