NOLQ-2

NOLQ-2は、海上かいじょう自衛隊じえいたいの電波でんぱ探知たんち妨害ぼうがい装置そうち。電子でんし戦せん支援しえんと電子でんし攻撃こうげきの機能きのうを兼かね備そなえ、イージス艦かんに搭載とうさいされた。メーカーは三菱電機みつびしでんき。

NOLQ-2のECMアンテナ。

NOLQ-2BのECMアンテナ。

NOLQ-X

護衛ごえい艦かん用ようの国産こくさん電子でんし戦せん装置そうちは、まず日本電気にほんでんきを製作せいさく者しゃとしたDD向むけの電波でんぱ探知たんち装置そうち（ESM）の開発かいはつ・配備はいびが先行せんこうしたが、後のちには三菱電機みつびしでんきを製作せいさく者しゃとしてDDG・DDH向むけに妨害ぼうがい（ECM）機能きのうも備そなえた電波でんぱ探知たんち妨害ぼうがい装置そうちも開発かいはつされ、昭和しょうわ48年ねん度ど計画けいかく艦かんより、NOLQ-1として装備そうび化かされた。一方いっぽう、技術ぎじゅつ研究けんきゅう本部ほんぶ第だい4室しつは昭和しょうわ50年ねん度どより水上すいじょう艦かん用よう電波でんぱ探知たんち妨害ぼうがい装置そうち（水みず電でん妨さまたげ、NOLQ-X）の開発かいはつに着手ちゃくしゅしていた。これは対たい艦かんミサイル防御ぼうぎょ（ASMD）に対応たいおうした次世代じせだいの電子でんし戦せん装置そうちと位置付いちづけられており、脅威きょうい電波でんぱの瞬時しゅんじ探知たんち、そして大型おおがた艦艇かんていの大おおきいレーダー反射はんしゃ断だん面積めんせき（RCS）に見合みあった大だい妨害ぼうがい電力でんりょくの放射ほうしゃと多た目標もくひょう対処たいしょ能力のうりょくが主要しゅよう課題かだいとなった。

このうち、受信じゅしん装置そうちは日本電気にほんでんきの担当たんとうとなった。当時とうじ、同社どうしゃはNOLR-6電波でんぱ探知たんち装置そうちを製造せいぞうしていたが、同機どうきでは遠距離えんきょり探知たんちを重視じゅうしして手動しゅどうによる探知たんち・計測けいそくを主体しゅたいとした高こう感度かんど受信じゅしん能力のうりょくに開発かいはつ努力どりょくを傾注けいちゅうしていたのに対たいし、ASMDを主眼しゅがんとする水みず電でん妨さまたげではむしろ高速こうそく性せいが重視じゅうしされることから、瞬時しゅんじ周波数しゅうはすう計測けいそく (IFM) 技術ぎじゅつとマルチビーム・モノパルス方かた探さがせ技術ぎじゅつの開発かいはつに重点じゅうてんを置おいた。特とくにIFM技術ぎじゅつは、当時とうじ世界せかい的てきに発展はってん途上とじょうだったために部品ぶひんレベルからの独自どくじ開発かいはつが求もとめられた。一方いっぽう、妨害ぼうがい装置そうちは三菱電機みつびしでんきの担当たんとうとなり、多た目標もくひょう対処たいしょ能力のうりょくを実現じつげんする広帯域こうたいいきレンズアンテナ方式ほうしきを検討けんとうした結果けっか、ロットマンレンズ移うつり相しょう器きと進行しんこう波は管かん（TWT）増幅器ぞうふくきを用もちいたアクティブ・フェーズドアレイ・アンテナが採択さいたくされた。ただしこのロットマンレンズ移うつり相しょう器きの伝送でんそう損失そんしつが大おおきく、その低減ていげんのために開発かいはつ努力どりょくが傾注けいちゅうされた。

昭和しょうわ52・53年ねん度どの部分ぶぶん試作しさく、昭和しょうわ54・55年ねん度どの本ほん試作しさくを経へて、昭和しょうわ56年ねん度どから58年ねん度どにかけて「ゆきかぜ」において技術ぎじゅつ・実用じつよう試験しけんが行おこなわれ、同どう年度ねんどで開発かいはつを完了かんりょうした。しかし水みず電でん妨さまたげ（NOLQ-X）は受信じゅしん装置そうちだけでも5架か構成こうせいと、護衛ごえい艦かんに装備そうびするには非常ひじょうに大掛おおがかりなシステムであった。また10年ねんにおよぶ開発かいはつ期間きかんのために技術ぎじゅつ的てきに陳腐ちんぷ化かした部分ぶぶんも多おおかったことから、そのまま装備そうび化かするのではなく、その技術ぎじゅつ的てき成果せいかを採用さいようすることとなった。

NOLQ-2

このような経緯けいいを踏ふまえて、水みず電でん妨さまたげ（NOLQ-X）を元もとにした電波でんぱ探知たんち妨害ぼうがい装置そうちとして開発かいはつされたのがNOLQ-2であった。これは水みず電でん妨さまたげの技術ぎじゅつ的てき成果せいかを採用さいようしつつ、下記かきのような変更へんこうを行おこなったものであった。

要求ようきゅうの変更へんこう

艦隊かんたい防御ぼうぎょ主体しゅたいから対象たいしょうをミサイルおよびミサイル・プラットフォームとし、ECMの要求ようきゅう能力のうりょくも下方かほう修正しゅうせいとした。一方いっぽう、ハイダイブしてくるミサイルに対処たいしょするため、高こう仰角ぎょうかく系けい目標もくひょう対処たいしょが追加ついかされた。

大幅おおはばな小型こがた化か

重量じゅうりょうベースで約やく半分はんぶんとなった。この一環いっかんとして、開発かいはつ品ひんでは電子でんし計算けいさん機きとしてAN/UYK-20を使用しようしていたのに対たいし、NOLQ-2ではマイクロプロセッサによる分散ぶんさんコンピューティングが導入どうにゅうされた。ただしこの方式ほうしきに伴ともなうインターフェース制御せいぎょ等とうの開発かいはつには苦労くろうが伴ともない、この要因よういんによる不具合ふぐあいも多発たはつした。

NOLQ-2はこんごう型がた（63DDG）より装備そうび化かされており、増大ぞうだいする経けい空そら脅威きょういに対たいして同時どうじ多た目標もくひょう対処たいしょ能力のうりょくを向上こうじょうし、イージスシステムのC&D機能きのうとの連接れんせつの円滑えんかつ化かやMk 36 SRBOCとの連接れんせつを確立かくりつしたほか、電波でんぱ妨害ぼうがい弾だん（EJ弾だん）の制御せいぎょ機能きのうを付加ふかするなどの改造かいぞうが加くわえられた。続つづくあたご型がた（14DDG）でも、一回ひとまわり小型こがた化かするなどした改正かいせい型がたであるNOLQ-2Bが搭載とうさいされており、63DDGではECMアンテナが衛星えいせい通信つうしんアンテナと正ただし対たいしたときに衛星えいせい通信つうしんアンテナが焼損しょうそんする恐おそれがあったのに対たいして、14DDGではこのような干渉かんしょうを回避かいひするため、アンテナ配置はいちを変更へんこうした。またまや型かた（27DDG）でも同どう系列けいれつのNOLQ-2Cが搭載とうさいされたが、これは妨害ぼうがい機能きのうを削除さくじょした電波でんぱ探知たんち装置そうちとなった。

搭載とうさい艦かん

• こんごう型がた護衛ごえい艦かん（63〜05DDG） - NOLQ-2
• あたご型がた護衛ごえい艦かん（14/15DDG） - NOLQ-2B
• まや型かた護衛ごえい艦かん（27/28DDG） - NOLQ-2C

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

• 海人あま社しゃ 編へん「ウエポン・システム (特集とくしゅう・最さい新鋭しんえいイージス艦かん「あたご」) -- (最さい新鋭しんえいイージス護衛ごえい艦かん「あたご」のすべて)」『世界せかいの艦船かんせん』第だい678、海人あま社しゃ、86-93頁ぺーじ、2007年ねん8月がつ。 NAID 40015530277。 
• 川村かわむら正一郎しょういちろう「NOLRシリーズの開発かいはつ・改善かいぜん－メーカーの苦心くしん－」『第だい5巻かん 船せん務つとむ・航海こうかい』 第だい2、水みず交会〈海上かいじょう自衛隊じえいたい 苦心くしんの足跡あしあと〉、2014年ねん、102-107頁ぺーじ。 
• 技術ぎじゅつ開発かいはつ官かん（船舶せんぱく担当たんとう）『技術ぎじゅつ研究けんきゅう本部ほんぶ50年ねん史し』2002年ねん、72-115頁ぺーじ。NDLJP:1283286。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1283286。 
• 香田こうだ洋二ようじ「国産こくさん護衛ごえい艦かん建造けんぞうの歩あゆみ」『世界せかいの艦船かんせん』第だい827号ごう、海人あま社しゃ、2015年ねん12月。 NAID 40020655404。 
• 近藤こんどう紘一こういち「NOLQシリーズの開発かいはつ・改善かいぜん－メーカーの苦心くしん－」『第だい5巻かん 船せん務つとむ・航海こうかい』 第だい2、水みず交会〈海上かいじょう自衛隊じえいたい 苦心くしんの足跡あしあと〉、2014年ねん、111-115頁ぺーじ。 
• 小滝こたき國雄くにお「艦艇かんてい用よう電子でんし戦せん装置そうち開発かいはつ・導入どうにゅうの軌跡きせき」『第だい5巻かん 船せん務つとむ・航海こうかい』 第だい2、水みず交会〈海上かいじょう自衛隊じえいたい 苦心くしんの足跡あしあと〉、2014年ねん、93-97頁ぺーじ。 
• 徳丸とくまる伸一しんいち「最さい新鋭しんえいDDG「まや」の防空ぼうくうシステム」『世界せかいの艦船かんせん』第だい889号ごう、海人あま社しゃ、53-57頁ぺーじ、2018年ねん12月。 NAID 40021712920。 
• 七宮ななみや知彦ともひこ「NOLQシリーズの開発かいはつ」『第だい5巻かん 船せん務つとむ・航海こうかい』 第だい2、水みず交会〈海上かいじょう自衛隊じえいたい 苦心くしんの足跡あしあと〉、2014年ねん、107-111頁ぺーじ。 

関連かんれん項目こうもく

• 海上かいじょう自衛隊じえいたいの電子でんし戦せん装置そうち
• AN/SLQ-32