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垂直離着陸機 - Wikipedia

垂直すいちょく離着陸りちゃくりく

VTOLから転送てんそう

垂直すいちょく離着陸りちゃくりく(すいちょくりちゃくりくき、英語えいご: Vertical Take-Off and Landing aircraft, VTOL[ちゅう 1])は、まった滑走かっそうしないで垂直すいちょく方向ほうこう離着陸りちゃくりくする航空機こうくうき[1]飛行船ひこうせん気球ききゅうなどのけい航空機こうくうき回転かいてんつばさふく場合ばあいもあるが、固定こていつばさ限定げんていするのが一般いっぱんてきである[2]

それぞれの方式ほうしきてきした領域りょういき
たてじく馬力ばりきごと浮上ふじょう効率こうりつよこじく回転かいてんつばさめん荷重かじゅう
F-35垂直すいちょく離着陸りちゃくりくシステム解説かいせつ

また、電動でんどうのものはeVTOLばれるが、こちらは一般いっぱんてき回転かいてんつばさをもった機体きたいあつかわれる。

特徴とくちょう分類ぶんるい

編集へんしゅう

固定こていつばさ垂直すいちょく離着陸りちゃくりくおこな場合ばあい離着陸りちゃくりくにはエンジンの動力どうりょくのみで機体きたい浮揚ふようさせるパワード・リフトおこな必要ひつようがある[2]。このため推力すいりょく重量じゅうりょうを1以上いじょうげられるよう、軽量けいりょう機体きたい強力きょうりょくなエンジンのわせがもとめられる[2]。また、離着陸りちゃくりく遷移せんい飛行ひこうちゅうそらりょくてき安定あんていたもつことができないため、動力どうりょくによる機体きたい制御せいぎょ装置そうちそなえる[2]。VTOL形式けいしきは、パワード・リフト方式ほうしき遷移せんい飛行ひこうでの推進すいしん方式ほうしきわせとうによって多様たようであり、飛行ひこう成功せいこうした機体きたいだけでも、15 - 20種類しゅるい分類ぶんるいされる[2]

なお、垂直すいちょく離着陸りちゃくりくおおくは、垂直すいちょく離着陸りちゃくりく(VTOL)だけでなく短距離たんきょり離着陸りちゃくりく(STOL)にも対応たいおうしており、このような機体きたい垂直すいちょく/短距離たんきょり離着陸りちゃくりくしょうされる[3]

1928ねんにはニコラ・テスラがフリーバー(Flivver)と名前なまえ空中くうちゅう輸送ゆそう装置そうち特許とっきょたが、それが垂直すいちょく離着陸りちゃくりく最初さいしょたる。なお、これは現代げんだいのティルトローターにちかいものであった。だい世界せかい大戦たいせん後期こうき連合れんごうこくぐんからのばくげきつねにさらされることになったナチス・ドイツは、滑走かっそうなしで運用うんようできる迎撃げいげき開発かいはついそいだ。ドイツのかく航空機こうくうき企業きぎょうハインケル ヴェスペ英語えいごばんハインケル レルヒェ英語えいごばんフォッケウルフ トリープフリューゲルなどを提案ていあんしたが、いずれも実用じつようされずに終戦しゅうせんむかえている。

これら航空機こうくうきは、いずれも「機体きたいてて」の垂直すいちょく離着陸りちゃくりく方式ほうしきっており、戦後せんご連合れんごうこくも、ちかいシステムでの実用じつよう目指めざし、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくXFYXFV-1製作せいさくし、フランスC450コレオプテール開発かいはつした。しかしXFY以外いがい垂直すいちょく離着陸りちゃくりく成功せいこうせず、XFVは一応いちおう飛行ひこうにも成功せいこうしたものの、性能せいのう実用じつようせい問題もんだいがあり(ちょう音速おんそく戦闘せんとう時代じだいにおいて、いまだ音速おんそく未満みまんであった)実用じつようにはいたっていない。これら、機体きたいてて垂直すいちょく離着陸りちゃくりく実現じつげんしようという方式ほうしきは、テイル・シッター方式ほうしきとよばれる。一番いちばん問題もんだいとされたのは垂直すいちょく着陸ちゃくりくにパイロットがミラーを利用りようしてでしか地面じめんことができないため、垂直すいちょく着陸ちゃくりく非常ひじょう困難こんなんなことであり、この方式ほうしきでの垂直すいちょく離着陸りちゃくりく実用じつよう無理むりであるという結論けつろんいたった。

 
ショート SC.1

1953ねんイギリスロールス・ロイスは、スラスト・メジャリング・リグ英語えいごばんとよばれるもの開発かいはつした。「そらぶベッドの骨組ほねぐみ(flying bedstead)」とよばれたこの代物しろものは、まさにベッドの骨組ほねぐみのような風貌ふうぼうであり、外見がいけんてきにも航空機こうくうきとはいがたい代物しろものであったが、これに使用しようされたエンジンの思想しそうは、ショート SC.1英語えいごばん使つかわれたエンジンにがれている。さらにこのシステムは、画期的かっきてき推力すいりょく偏向へんこうしきのジェットエンジンであるペガサス・エンジン開発かいはつへつながった。ペガサス・エンジンは推力すいりょく偏向へんこう可能かのうなノズルを4ヶ所かしょち、単発たんぱつでも安定あんていたもって垂直すいちょく離着陸りちゃくりく可能かのうとした。

イギリスはこのペガサスエンジンを装備そうびするホーカー P.1127開発かいはつすすめ、1960ねんにはホバリング飛行ひこう成功せいこうしている。さらにその発展はってんがたであるホーカー・シドレー P.1154計画けいかくしたが、これは試作しさく直前ちょくぜんにキャンセルされた。しかし、ホーカー P.1127の開発かいはつつづけられ、改良かいりょうがたであるケストレル、そして、それの実用じつようがたであり、世界せかいはつ実用じつよう垂直すいちょく離着陸りちゃくりくであるハリアーした。ハリアーはおおくのくに採用さいようされ、開発かいはつこくのイギリスをふくめ、正規せいき空母くうぼ導入どうにゅうできない海軍かいぐんにおいて、けい空母くうぼをもって代替だいたいするさい搭載とうさいとしてもちいられた。

 
AV-8B

アメリカはイギリスが開発かいはつしたハリアーにいちはや関心かんしんしめし、強襲きょうしゅう揚陸ようりくかん搭載とうさいとして海兵かいへいたい採用さいようした。さらには発展はってんがたハリアー II開発かいはつし、もと開発かいはつこくであるイギリスにぎゃく輸出ゆしゅつされるにいたっている。1960年代ねんだいから1970年代ねんだいにかけて、大型おおがた空母くうぼ代替だいたいとしてせいうみかん構想こうそうまれ、搭載とうさいとしてマッハ2きゅうちょう音速おんそく戦闘せんとうXFV-12開発かいはつしたが、結局けっきょく実用じつようにはいたらず、せいうみかん構想こうそう実現じつげんしなかった。ただしその構想こうそうは、強襲きょうしゅう揚陸ようりくかん必要ひつよう空母くうぼ代替だいたいとして運用うんようするというかたちかされ、また他国たこく海軍かいぐんけい空母くうぼ影響えいきょうあたえた。

 
はつ実用じつようティルトローター V-22

NASAは1977ねんXV-15(en)というティルトローター開発かいはつした。ニコラ・テスラのフリーバーからはじまり、1950年代ねんだいにはXV-3やXV-15といった実験じっけん実験じっけんつづいていたこの方式ほうしきは、JVX計画けいかくにより本格ほんかくてき実現じつげんけた開発かいはつはじまった。これには以前いぜんからどうシステムの実験じっけん開発かいはつしていたベルなどが開発かいはつたずさわっている(V-22原型げんけいともいえるX-22もベルが製作せいさく)。この計画けいかくはV-22として結実けつじつし、どう機体きたい現在げんざい配備はいびすすめられている。また民間みんかんとしては、この方式ほうしきのノウハウをおお保有ほゆうするベルがBA609を開発かいはつはつ飛行ひこう成功せいこうしている。アメリカではほかに、シコルスキーS-72という機体きたい開発かいはつしている。Xウイングともよばれるこの機体きたいはヘリコプターと固定こていつばさのあいのこといった機体きたいであり、ヘリコプターとほぼ同様どうようかたち垂直すいちょく離着陸りちゃくりくおこなった。また、ボーイング開発かいはつしたX-50もこれにちかかたちった航空機こうくうきであるが、カナード・ローター/ウィング(CRW) という形式けいしきっている。

1960年代ねんだいには、フランスがミラージュIIIもとにして、ミラージュIII Vバルザック Vという機体きたい開発かいはつした。この機体きたい音速おんそく飛行ひこう可能かのうであり、水平すいへい飛行ひこうでマッハ1.3という速度そくどすことができた。どう機体きたいは1966ねん3がつ垂直すいちょく離陸りりくから水平すいへい飛行ひこうへの移行いこう成功せいこうした。しかし水平すいへい飛行ひこうよう垂直すいちょく上昇じょうしょうようべつのエンジンをもちい、かつ垂直すいちょく上昇じょうしょうようエンジンを8搭載とうさいするという、きわめて実用じつようせいとぼしい機体きたいであり、あくまで試験しけんであり、実用じつようはされていない。

 
世界せかいはつの4はつ垂直すいちょく離着陸りちゃくりくティルトウィングしきXC-142

おなごろ、アメリカではXC-142という機体きたい開発かいはつされているが、試作しさくされた5すべ事故じここしている。

1号機ごうきはテイルローター関係かんけい事故じこで3にん死亡しぼうなどである。この機体きたい事故じこ原因げんいん致命ちめいてき欠陥けっかんではなく充分じゅうぶん改良かいりょう可能かのうだった。だが、ベトナム戦争せんそう緊迫きんぱくしていたために、実用じつようにはいたらなかった。

1960年代ねんだいから1970年代ねんだい初頭しょとうにかけて、西にしドイツF-104もとにして、実験じっけんであるVJ 101開発かいはつし、X-1、X-2という2試作しさくつくられた。つばさはし搭載とうさいされたエンジンそのものを90方向ほうこう転換てんかんして垂直すいちょく上昇じょうしょうし、かつコックピット直後ちょくごのリフトエンジンを併用へいようする方式ほうしきである。この機体きたい音速おんそく飛行ひこう可能かのうであったが、コストだか政治せいじてき都合つごうから実用じつようされなかった。西にしドイツはどう時期じきVAK 191Bけい戦闘せんとうドルニエ Do 31輸送ゆそうといった、VTOL開発かいはつしているが、いずれも量産りょうさんにはいたってはいない。

日本にっぽんでは1970ねん航空宇宙技術研究所こうくううちゅうぎじゅつけんきゅうじょ開発かいはつしていた実験じっけん(FTB)が離陸りりくおよび滞空たいくう成功せいこうしたが実用じつようにはむすびつかなかった。FTBは全長ぜんちょう10m、ながさ7m、たかさ3mのジュラルミンせい骨組ほねぐみの中央ちゅうおうにターボジェットエンジンを2搭載とうさいしたもので、高度こうど1.5mに上昇じょうしょうして3ふんじゃく滞空たいくうできる性能せいのうゆうしていた[4]

東側ひがしがわ諸国しょこくでは、ソビエト連邦れんぽうソ連それん)がYak-38実戦じっせん配備はいびした。これは実験じっけんであるYak-36実用じつようしたものであり、ソ連それんキエフきゅう航空こうくう母艦ぼかんなどの艦載かんさいとして設計せっけい生産せいさんされた。この機体きたいのエンジンは前述ぜんじゅつのペガサスエンジンとことなりノズルは2ヶ所かしょしかたず、安定あんていして垂直すいちょく上昇じょうしょうするにはべつにリフトエンジンを2必要ひつようであった。また当初とうしょはSTOVL機能きのうゆうしていなかった。この方式ほうしき水平すいへい飛行ひこうにはデッドウェイトをすという欠点けってんがあり、またVTOL性能せいのう自体じたい安定あんていせいわるく、生産せいさんされた200ちゅう20以上いじょうがVTOL事故じこうしなわれたとされる。また、ソ連それん後継こうけいとしてYak-141開発かいはつした。Yak-38同様どうようのリフトエンジン併用へいようしきだが、メインエンジンは一段いちだんすぐれた推力すいりょく偏向へんこうノズルをそなえ、ちょう音速おんそく戦闘せんとうとして一流いちりゅう能力のうりょくっていたが、ソビエト連邦れんぽう崩壊ほうかいによって予算よさんがなくなったこと、試作しさく事故じこ喪失そうしつしたことなどを理由りゆうとして生産せいさんされずにわった。ソ連それん崩壊ほうかいのロシアでは新型しんがた空母くうぼけにV/STOL開発かいはつしているとされているが、詳細しょうさい不明ふめいである。

アメリカが開発かいはつちゅうのF-35Bは、どういち機体きたい派生はせいがた垂直すいちょく離着陸りちゃくりく機能きのう付与ふよするというものだが、一部いちぶ燃料ねんりょうタンク部分ぶぶんはいして垂直すいちょく離着陸りちゃくりくのための装備そうび付加ふかするという方式ほうしきで、航続こうぞく距離きょり以外いがいかた(A/Cがた)にさほどおとらぬ能力のうりょく予定よていである。メインエンジンに推力すいりょく偏向へんこうノズルをてんでは、従来じゅうらいほかおおくの垂直すいちょく離着陸りちゃくりくおなじだが、リフトエンジン併用へいようではなく、メインエンジンからびたシャフトで駆動くどうされるリフトファンをもちいる方式ほうしきである。ジェットエンジンは静止せいし効率こうりつひくいものであるため、垂直すいちょく上昇じょうしょうにファンをもちいればより効率こうりつたかくなる。

個人こじんけのVTOLとしては、カナダのポール・モーラー英語えいごばんが「スカイカー」というものを開発かいはつしている。skycar(そらくるま)は現状げんじょうかぶことはできているが、水平すいへい飛行ひこうへの移行いこう試験しけん完了かんりょうしていないじょう有人ゆうじんでの飛行ひこうおこなっていない。一方いっぽうで、日本にっぽんでも長野ながのけん松本まつもとにあるGEN CORPORATION英語えいごばん開発かいはつしたGEN H-4存在そんざいしており(後述こうじゅつ)、実際じっさい販売はんばいもされた。

ほかには、地球ちきゅうそとでの使用しよう想定そうていしたもののなかにもVTOL存在そんざいする。LLRV(Lunar Landing Research Vehicle)というもので、滑走かっそう平面へいめん存在そんざいしない地形ちけいでの、VTOLによる運用うんよう想定そうていしている。

実用じつよう

編集へんしゅう

開発かいはつちゅう

編集へんしゅう
  • AW609(ベル/アグスタ・エアロスペースしゃ) - 民間みんかんよう胴体どうたいSUBARU製作せいさく
  • ベル V-280 - 2017ねん12月はつ飛行ひこう、ティルトローター方式ほうしき
  • Lilium Jet(リリウム・ジェット) - 垂直すいちょく離着陸りちゃくりく可能かのうな100%電気でんき動力どうりょく小型こがた電気でんきエアタクシーとして2017ねん世界せかいはつ飛行ひこうテストに成功せいこう。2019ねん有人ゆうじん飛行ひこうテスト予定よてい
  • ジョビー・アビエーション - エアタクシーサービスを目指めざすアメリカのベンチャー企業きぎょう

おも形式けいしき

編集へんしゅう

回転かいてんつばさ以外いがい垂直すいちょく離着陸りちゃくりくは、国際こくさい民間みんかん航空こうくう機関きかん(ICAO)ではパワード・リフト類別るいべつしている。

コンバーチプレーン

編集へんしゅう

メインエンジンのノズルの噴射ふんしゃやプロペラの主軸しゅじく方向ほうこうえ、推力すいりょく離着陸りちゃくりくには下方かほうに、水平すいへい飛行ひこうには後方こうほう変更へんこうするもの。飛行ひこう特性とくせい固定こていつばさから回転かいてんつばさ転換てんかんできることから『転換てんかんしき航空機こうくうき』(Convertible Aircraft)とばれていた[5][6]

ティルトローター

編集へんしゅう

垂直すいちょく離着陸りちゃくりくにおいて、エンジン(とプロペラ)の方向ほうこう転換てんかんする方式ほうしきのもの。推力すいりょく転向てんこうしきともばれる[6]

垂直すいちょく離着陸りちゃくりく(と低速ていそく飛行ひこう)には、上方かみがたいたプロペラは、ヘリコプターのローターのようにもちいられる。そのため、通常つうじょうのプロペラよりかなり直径ちょっけいおおきなプロペラをもちいる(ただしローターとみなせば、通常つうじょうのヘリコプターよりは小型こがたとなる)。

ティルトウイング

編集へんしゅう

垂直すいちょく離着陸りちゃくりくにおいて、エンジン(とプロペラ)のみならず、主翼しゅよく同時どうじ方向ほうこう転換てんかんするもの。こうりゅうへん方式ほうしきともばれる[6]

リフトエンジン

編集へんしゅう

水平すいへい飛行ひこうようのエンジンとはべつに、垂直すいちょく離着陸りちゃくりく専用せんようのエンジン(リフトエンジン)をつもの。ふくあい推進すいしんしきともばれる[6]

フランスが開発かいはつしたバルザック V代表だいひょうされるように、この方式ほうしきでは水平すいへい飛行ひこうよう垂直すいちょく離着陸りちゃくりくようにそれぞれせんもんのエンジンをもちいるが、後述こうじゅつ欠点けってんおおきく、完全かんぜん実用じつようせいつものは前節ぜんせつべた推力すいりょく偏向へんこうしきのエンジンとリフトエンジンを併用へいようする場合ばあいおおい。

リフトエンジンは水平すいへい飛行ひこうには推力すいりょくげんとしてもちいないため、デッドウエイトとなって全体ぜんたいてき性能せいのう低下ていかまねくが、エンジンとしては短時間たんじかん駆動くどうさせるだけでようりるため、おな推力すいりょく通常つうじょうのジェットエンジンよりも小型こがた軽量けいりょう可能かのうであり、ある程度ていどはこの欠点けってん緩和かんわされる。しかし、ジェットエンジンは静止せいし効率こうりつわるいという欠点けってんがあり、リフトエンジンにジェットエンジンをもちいることにはそのてん問題もんだいがある。また、リフトエンジンを集中しゅうちゅうして配置はいちすると機体きたい全体ぜんたい重量じゅうりょうバランスとのいがむずかしいが、分散ぶんさん配置はいちするとかくエンジンの推力すいりょく完全かんぜん同調どうちょうさせなければならない(同調どうちょう不完全ふかんぜんでは体勢たいせいくずして墜落ついらくしてしまう)、という技術ぎじゅつてき困難こんなんがあった。

この方式ほうしき航空機こうくうき開発かいはつにはとくソビエト熱心ねっしんで、ヤコブレフ設計せっけいきょくがほぼ専任せんにんてき担当たんとうしていた。ソビエトが実戦じっせん配備はいびした唯一ゆいいつ垂直すいちょく離着陸りちゃくりく戦闘せんとうである Yak-38実用じつようには成功せいこうしたが量産りょうさんされずにわったYak-41(Yak-141)はいずれも推力すいりょく変更へんこうしきエンジン併用へいようのリフトエンジン方式ほうしきである。

なお、2018ねん現在げんざいほぼ唯一ゆいいつ実用じつようであるF-35Bは、離着陸りちゃくりくよう別個べっこのエンジンをつのではなく、メインエンジンからびたシャフトで駆動くどうされるだい推力すいりょくのリフトファンをもちいることで小型こがた軽量けいりょうはかっている。

コレオプター

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コレオプター(Coleopter)は垂直すいちょく離着陸りちゃくりくいち形式けいしき胴体どうたいダクテッドファンそなえる。全体ぜんたいてきたるよう外観がいかんのファンをそなえ、小型こがた操縦そうじゅうせき先端せんたんにある。大半たいはんのダクテッドファンの設計せっけい同様どうようにコレオプターは離着陸りちゃくりくから接地せっちする。代表だいひょうてき機種きしゅは1950年代ねんだいにフランスのスネクマ開発かいはつしたC450やアメリカのヒラー VXT-8である。

最初さいしょのコレオプターの概念がいねんだい世界せかい大戦たいせんちゅうにドイツで考案こうあんされた。大戦たいせん末期まっきの1944ねん飛行場ひこうじょう破壊はかいされて使用しよう不能ふのうになってもどこからでも離着陸りちゃくりく可能かのうなVTOL迎撃げいげき開発かいはつ検討けんとうされた。ハインケルしゃではWespeとラーチェ提案ていあんした。Wespeはベンツの2,000 hpターボプロップエンジン使用しようするあんだったが実現じつげんせず、Lercheは2DB 605をピストンエンジン動力どうりょくとした。両方りょうほうとも実現じつげんしなかった。

だい世界せかい大戦たいせん大半たいはんのVTOLの研究けんきゅうヘリコプター中心ちゅうしんとしておこなわれたがその一方いっぽう単純たんじゅん回転かいてんつばさ限界げんかいあきらかになりジェットエンジンの噴射ふんしゃ直接ちょくせつ利用りようする方法ほうほうとう方法ほうほう開発かいはつ開発かいはつ方針ほうしん転換てんかんされた。スネクマは1950年代ねんだいアターVolantシリーズ一環いっかんとして開発かいはつすすめた。最終さいしゅうてき環状かんじょうつばさC450開発かいはつされ1959ねん5がつ6にちはつ飛行ひこうしたが、7がつ25にち不安定ふあんてい特性とくせいにより、大破たいはして開発かいはつられた。

アメリカでも同様どうようヒラー・エアクラフト英語えいごばんしゃチャールズ・ツィンマーマン英語えいごばんによって独自どくじ設計せっけいされた複数ふくすうのダクテッドファンしきのVTOLの開発かいはつすすめていた。いくつかの初期しょき成功せいこうのち陸軍りくぐんおおきさと重量じゅうりょうやすように要求ようきゅう転換てんかんしたことによりあたらしい安定あんていせい問題もんだいしょうじた。これらは全体ぜんたいてきおおきさと出力しゅつりょく必要ひつようだったが満足まんぞくのゆく結果けっかられなかった。その一方いっぽうでヒラーしゃ海軍かいぐんにコレオプターの設計せっけい概念がいねん提案ていあんした。この結果けっかヒラー VXT-8提案ていあんされたがこれはスネクマの設計せっけいていたがジェットエンジンではなくプロペラを使用しようしていた。しかしながら、導入どうにゅうされたタービンしきUH-1のようなヘリコプターと比較ひかくしてピストンエンジンしきのVXT-8はいちじるしく性能せいのうおとっていたため、海軍かいぐん興味きょうみうしなった。モックアップのみが完成かんせいした。

テイルシッター

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XFY-1

テイルシッター垂直すいちょく離着陸りちゃくりくいち形態けいたいマクドネルダグラスDC-Xデルタクリッパーのようにしたにして離着陸りちゃくりくする。このたね航空機こうくうきとしてもっと有名ゆうめいなのがライアン・X-13である。プロペラしきではロッキードXFV-1とコンベアXFY-1がある。艦載かんさいとしてF-16のテイルシッターが調査ちょうさされ風洞ふうどう実験じっけんよう模型もけいつくられた。それは機首きしゅがる構造こうぞうだった。

ナチス・ドイツ空軍くうぐんでも同様どうようにテイルシッター計画けいかくとしてフォッケウルフ トリープフリューゲル(回転かいてんつばさ)戦闘せんとうがあった。この計画けいかくつばさはし小型こがたジェットエンジンを噴射ふんしゃすることにより主翼しゅよく回転かいてんさせる構造こうぞうでいわば主翼しゅよくそのものがプロペラになっていた。完成かんせいはしなかったが構造こうぞうじょう通常つうじょう着陸ちゃくりく不可能ふかのう困難こんなんともなったとかんがえられる。またフランスではC450 コレオプテールうジェットエンジンの実験じっけん製造せいぞうされている。

テイルシッターの飛行ひこうにおいて離陸りりく垂直すいちょくから水平すいへい着陸ちゃくりく水平すいへいから垂直すいちょくへの遷移せんい飛行ひこうでは操縦そうじゅう困難こんなんであった。また着陸ちゃくりく操縦そうじゅうしゃ地面じめん直接ちょくせつこと困難こんなんであり、操縦そうじゅうきわめてむずかしかった。また着陸ちゃくりく地面じめんたいして完全かんぜん垂直すいちょく姿勢しせいたもこと要求ようきゅうされ、手動しゅどう操縦そうじゅうでも自動じどう制御せいぎょでも困難こんなんであった。くわえて艦載かんさいとしてもちいる場合ばあいは、れる艦上かんじょうにおいて完全かんぜん垂直すいちょく姿勢しせいたもつことが要求ようきゅうされ、まったくもって不可能ふかのうわざるをなかった。着陸ちゃくりく視界しかい問題もんだいは、機体きたい姿勢しせいかかわらず操縦そうじゅうせきかたむけて水平すいへいたもことで、ある程度ていど解決かいけつがみられたが、問題もんだい解決かいけつ困難こんなんであり、実用じつようしなかった。テイルシッターは最下さいかかならずキャスターじょう車輪しゃりんけられているが、これは着陸ちゃくりく横風おうふうすこしでもあるとふうながれてよこ移動いどうしながら着陸ちゃくりくすることを余儀よぎなくされるため、車輪しゃりんいと地面じめんっかかって重心じゅうしんたか機体きたい簡単かんたんたおれてしまうからである。

垂直すいちょく離着陸りちゃくりくあるいはホバリングときは、プロペラ場合ばあいプロペラりゅうどうつばさたることによって空中くうちゅう停止ていし状態じょうたいでも操縦そうじゅう可能かのうである。ジェット機じぇっとき場合ばあい推力すいりょく偏向へんこう操縦そうじゅうする。また、プロペラ場合ばあい回転かいてんつばさ反動はんどう(トルクロール)をすために同軸どうじく反転はんてんプロペラ採用さいようされている。

近年きんねんたんだんしき宇宙うちゅう輸送ゆそう惑星わくせい探査たんさUAVなどでもこころみられている。

おもなテイルシッター

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個人こじんよう垂直すいちょく離着陸りちゃくりく

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1970年代ねんだい初頭しょとうのアメリカ海兵かいへいたいのSTAMP (Small Tactical Aerial Mobility Platform)計画けいかく開発かいはつおこなわれていたもので、兵士へいしいちめい搭乗とうじょうして低空ていくう飛行ひこうするちょう小型こがた航空機こうくうき固定こていつばさともヘリコプターともことなる特異とくい形態けいたいをしており、厳密げんみつには垂直すいちょく離着陸りちゃくりくとはことなる航空機こうくうきである。

なに種類しゅるいかの試作しさく作成さくせいされたが量産りょうさんされたものく、開発かいはつ計画けいかく終了しゅうりょうしており、一部いちぶ試作しさく博物館はくぶつかん展示てんじされている。ジェットエンジンやロケットエンジンをもちいたものは、駆動くどう時間じかんきわめてみじかく、実用じつようのものとはならなかった。ローターをもちいた形式けいしき人間にんげんひとりをせて飛行ひこうするのがしらげいちはい代物しろものであり、それ以外いがい目的もくてき使つかえる余力よりょくかった。十分じゅうぶん能力のうりょく具備ぐびさせるために機体きたい規模きぼ拡大かくだいしてしまうと、たんにヘリコプターのかたち奇抜きばつなものにえたにぎない機体きたいとなってしまうのがあきらかであった。

日本にっぽん

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日本にっぽんではGEN CORPORATIONが開発かいはつした、固定こていピッチしき同軸どうじくじゅう反転はんてんしきローター[7]採用さいようした一人ひとりりの垂直すいちょく離着陸りちゃくりくであるGEN H-4存在そんざいする。ローターみち4.0m、全高ぜんこう2.5m、おもさ75kg。自社じしゃ開発かいはつのGEN125がたエンジン(125cc空冷くうれいしきひら対向たいこうエンジン)を4搭載とうさい。1998ねんにアメリカで開催かいさいされた一大いちだい航空こうくうイベント、EAA エアベンチャー・オシュコシュにてはつ飛行ひこう成功せいこう機体きたい記号きごう取得しゅとくしており(JX0076とJX0077)実際じっさいひと荷物にもつせた機体きたい試験しけんによって、無人むじんでの自立じりつ飛行ひこう可能かのうとするH-4Rや電動でんどう(eVTOL)したH-4Eなども試作しさくされている。

また、産業さんぎょう技術ぎじゅつ短期大学たんきだいがく講師こうし久保田くぼた憲司けんじが、過去かこのVZ-1シリーズを参考さんこうに、災害さいがい情報じょうほう収集しゅうしゅう人命じんめい救助きゅうじょよう個人こじんよう垂直すいちょく離着陸りちゃくりく(MicroVTOL、M-VTOLと呼称こしょう)を研究けんきゅう開発かいはつしている[8][9][10]直径ちょっけいやく2m、たかやく2.5m、おもさ180kg。円盤えんばんしたけた700ccのエンジン2全長ぜんちょう1.5mの可変かへんピッチしきじゅう反転はんてんしきローターを駆動くどう姿勢しせい制御せいぎょ人間にんげんのバランス感覚かんかくのみにたよらず、ジャイロ装置そうちとコンピューター制御せいぎょ機体きたい安定あんていせい確保かくほ設計せっけいじょう垂直すいちょく離陸りりくたかさ3-5mまで上昇じょうしょうし、最高さいこう時速じそく30kmで移動いどうできる。2m四方しほうのスペースがあれば離着陸りちゃくりく可能かのうで、土砂崩どしゃくずれなどで車両しゃりょうやヘリコプターがれない場所ばしょにもけるという。遠隔えんかく操作そうさによる無人むじんでの移動いどう将来しょうらいてきかんがえられている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ VTOLについては「ブイトール」と片仮名かたかな表記ひょうきされることもある[1]

出典しゅってん

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  1. ^ a b VTOL』 - コトバンク
  2. ^ a b c d e 齊藤さいとう 2006.
  3. ^ 野木のぎ 1997.
  4. ^ 浮上ふじょう実験じっけん成功せいこう 垂直すいちょく離着陸りちゃくりく朝日新聞あさひしんぶん』1970ねん昭和しょうわ45ねん)12月19にち朝刊ちょうかん 12はん 22めん
  5. ^ 転換てんかんしき航空機こうくうき - 日本航空にほんこうくう航空こうくう実用じつよう事典じてん
  6. ^ a b c d 将来しょうらい航空機こうくうき - 昭和しょうわ39年度ねんど 運輸うんゆ白書はくしょ
  7. ^ このローターのブレードの設計せっけいには宇宙うちゅう航空こうくう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう研究けんきゅういんたずさわっていた。
  8. ^ そら絨毯じゅうたんプロジェクト|産業さんぎょう技術ぎじゅつ短期大学たんきだいがく
  9. ^ 9/1 産業さんぎょう技術ぎじゅつ短期大学たんきだいがくオープンキャンパス : 世界せかい大学だいがくめぐり
  10. ^ “60ねんまえべいぐん断念だんねんまぼろし1人ひとり飛行ひこう円盤えんばん完成かんせい. 読売新聞よみうりしんぶん (YOMIURI ONLINE). (2013ねん12月11にち). オリジナルの2013ねん12月12にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131212042420/http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20131211-OYT1T00628.htm 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 石澤いしざわ, 和彦かずひこ「V/STOLの具現ぐげんしゃ ロールスロイス“ペガサス”」『世界せかい傑作けっさく No.111 ハリアー / シーハリアー』ぶん林堂はやしどう、2005ねん、90-95ぺーじISBN 978-4893191274 
  • 齊藤さいとう, 喜夫よしお「えあろすぺーすABC 【基礎きそ応用おうようへん】 VTOL/STOL」『日本航空にほんこうくう宇宙うちゅう学会がっかいだい54かんだい635ごう日本航空にほんこうくう宇宙うちゅう学会がっかい、2006ねん12月、361ぺーじNAID 10018580597 
  • とりやしなえ, 鶴雄つるお「VTOL戦闘せんとう攻撃こうげき技術ぎじゅつ開発かいはつ」『RAFハリアー(パート1)』ぶん林堂はやしどう世界せかい傑作けっさく No.194〉、2020ねん、72-77ぺーじISBN 978-4893193049 
  • 野木のぎ, 恵一けいいち航空こうくう母艦ぼかん発達はったつ」『世界せかい空母くうぼハンドブック』海人あましゃ世界せかい艦船かんせん別冊べっさつ〉、1997ねん、18-25ぺーじNCID BB09185700 
  • 野木のぎ, 恵一けいいち発着はっちゃくかん方式ほうしき徹底てってい比較ひかく : STOVL/STOBAR/CATOBAR (特集とくしゅう 世界せかい空母くうぼ 2015)」『世界せかい艦船かんせんだい825ごう海人あましゃ、2015ねん11月、126-129ぺーじNAID 40020597400 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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