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== 歴史 == |
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== 歴史 == |
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強い 相互作用の 現代的イメージの起源はクォーク 模型である。1964 年、[[マレー・ ゲルマン|ゲルマン]]<ref name="Gell-Man1964"> |
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=== 原型 === |
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1932年、[[ジェームズ・チャドウィック]]により[[原子核]]を構成する[[中性子]]が発見されたことで、原子核物理では[[核力]]を解明しようという風潮が起こった。1933年-1935年、核力のうちの強い相互作用は、[[湯川秀樹]]([[エルンスト・シュテュッケルベルク]]も独立に発見)によって強い力を伝える[[中間子論]]で初めて定式化された。1947年に[[パイ中間子]]が発見され、この理論は実証された。場と粒子の対応が一般に認められるのは中間子論と中間子の発見による。[[湯川相互作用]]は、相互作用の数式の原型として、多くの相互作用に名前を残す。 |
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=== 量子電磁力学 === |
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{{see also|量子電磁力学#歴史}} |
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1927年から1928年、[[ポール・ディラック]]および[[ヴェルナー・ハイゼンベルク]]が[[生成消滅演算子]]に基づいた[[場の量子論]]の基礎を確立し、[[古典電磁気学|古典電磁場]]を[[量子化]]する[[量子電磁力学]]を創始する。1927年には、[[フリッツ・ロンドン]]が(可換)[[ゲージ理論]]を形成した。1940年代になって、[[朝永振一郎]]、[[リチャード・ファインマン]]および[[ジュリアン・シュウィンガー]]は、それまでの場の量子論の上に相対論的共変性、相対論的ゲージおよび[[繰り込み]]の方法を確立し、量子電磁力学を完成させた。 |
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量子電磁力学は、驚異的な精度で実験と一致し、{{要出典範囲|素粒子間の相互作用を全てゲージ理論で構成すべし、との機運が理論物理学界に広まった。|date=2010年11月}} |
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場の量子論の上に"ゲージ"および"繰り込み"を指導原理とする量子電磁力学は、後の弱い力・強い力を場の量子論の枠組みで扱う模範となり、[[ワインバーグ=サラム理論]]や量子色力学の理論形成へとつながった。 |
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{{see also|場の量子論|ゲージ理論|繰り込み}} |
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=== 強い力の非可換ゲージ === |
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{{see also|ゲージ理論#歴史}} |
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電磁相互作用の場の量子論である量子電磁力学では、力を伝える場の理論的指導原理は"可換"[[ゲージ理論]]であった。 |
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歴史的には、[[フリッツ・ロンドン]]が1927年に(可換)ゲージ理論を形成し、1943年に[[朝永振一郎]]が[[超多時間論]]において相対論的に共変な可換ゲージを論じた([[量子電磁力学]])。--> |
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1954年、強い相互作用を扱うための強い力の[[ヤン=ミルズ理論|非可換ゲージ理論]]が[[楊振寧]]および[[ロバート・ミルズ]]によって発表された<ref name=ym> |
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|first1=C. N. |last1=Yang |
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|last2=Mills |
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|title=Conservation of Isotopic Spin and Isotopic Gauge Invariance |
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|journal=[[Physical Review]] |
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|volume=96 |
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|issue=1 |
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|doi=10.1103/PhysRev.96.191 }}</ref>。これにより、量子色力学の非可換ゲージ理論が始まった。なお、[[内山龍雄]]も独立して、重力を含むより広い形式で可換ゲージ理論の発見に至っている([[ヴォルフガング・パウリ]]や南米の研究者{{誰|date=2011年9月}}もそれぞれ独立に発見している)。 |
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ただし、ゲージ理論では粒子の質量がゼロとなり、力の到達範囲は無限になる。(湯川の中間子の質量が力の到達を決めるのと同じ機構)。このため、ゲージ場で粒子の質量を扱うには、ヒッグス機構([[南部陽一郎]]の自発的対称性の破れが元)が必要である。 |
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# QCDにはヒッグズは現れないので、誤解を与えないようコメントアウト-StaggeredFermion |
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=== クォーク模型 === |
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{{see also|クォーク模型#歴史}} |
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力を伝える理論である場の量子論に対して、強い 力が作用する素粒子の 現代的な構造モデルは [[クォーク 模型]]である。1964 年に[[マレー・ゲルマン]]<ref name="Gell-Man1964"> |
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{{cite journal |
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{{cite journal |
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|author=M. Gell-Mann |
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|author=M. Gell-Mann |
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|title=A Schematic Model of Baryons and Mesons |
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|title=A Schematic Model of Baryons and Mesons |
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|journal=[[Physics Letters]] |
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|journal=[[Physics Letters]] |
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|volume=8 |
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|volume=8 |issue=3 |pages=214–215 |
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|issue=3 |
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|pages=214–215 |
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|year=1964 |
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|year=1964 |
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|doi=10.1016/S0031-9163(64)92001-3 |
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|doi=10.1016/S0031-9163(64)92001-3 |
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}}</ref>と[[ジョージ・ツワイク]]<ref name="Zweig1964a"> |
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}}</ref>と[[ジョージ・ツワイク|ツワイク]]<ref name="Zweig1964a"> |
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{{cite journal |
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{{cite journal |
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|author=G. Zweig |
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|author=G. Zweig |
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|url=http://lib-www.lanl.gov/la-pubs/00323548.pdf |
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|url=http://lib-www.lanl.gov/la-pubs/00323548.pdf |
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|year=1964 |
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|year=1964 |
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}}</ref>によりクォーク が導入された。その 後、クォークの 束縛状態であるハドロンの[[パウリの 排他原理|パウリ 統計]]の 問題から ”新しい ”[[ 自由度]] 、カラーが ハン 、[[ 南部陽一郎|南部]]<ref> |
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}}</ref>および[[ユヴァル・ネーマン]]により各々独立して[[クォーク模型]]が導入された。その原型は[[西島和彦]]やゲルマンの[[ストレンジネス]]を利用した、[[陽子|P]]、[[中性子|N]]、[[ラムダ粒子|Λ]] を[[基本粒子]]とする[[坂田昌一]]の[[坂田模型]]である<ref>{{Cite journal|和書|author=小川修三 |title=坂田学派と素粒子模型の進展 |date=1996-02-05 |publisher=社団法人日本物理学会 |journal=日本物理學會誌 |volume=51 |number=2 |naid=110002068935 |pages=90-94 |url=http://wwwsoc.nii.ac.jp/jps/jps/butsuri/50th/50(2)/50th-p90.html |ref=harv}}</ref>。その数学化が、1959年に小川修二・池田峰夫・[[大貫義郎]]により、素粒子と考えられていた P、N、Λ の対称性に基づく[[坂田模型|IOO理論]] (SU<3> - U<3>)(山口嘉夫も独立に)として実現される。これは[[群 (数学)|群]]による[[対称性]]の記述がクォーク模型の原型に本格的に使われた最初の事例である<ref>{{Cite journal|和書|author=大貫義郎 |title=対称性理論事始 |date=1991-03-20 |publisher=素粒子論グループ 素粒子研究編集部 |journal=素粒子論研究 |volume=82 |number=6 |naid=110006408072 |pages=503-547 |ref=harv}} |
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</ref>。(ただし、[[量子力学]]に初めて[[群論]]を使った事例は、1927年にヘルマン・ワイルが[[原子スペクトル]]の対称性を記述したものである<ref>[http://www.gap-system.org/~history/Biographies/Wigner.html Wigner Biography]</ref>。また、1939年には[[ユージン・ウィグナー]]による[[原子核]]をSU(4) で記述する重要な論文が出ている<ref>Ann. of Math. (2) 40 (1939), 149-204</ref>。IOO対称性は、これらの理論からよりクォーク模型に近づいたものと位置付けられる。) |
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=== カラー・グルーオン === |
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クォーク 模型発見の 同年1964年、 [[クォーク ]]の [[束縛状態]]である [[ハドロン ]]の[[パウリの 排他原理|パウリ 統計]]の 問題の解析から 、「新しい 」[[ 自由度]] である[[色荷|カラー ]]が オスカー・グリーン バーグ ([[ :en:Oscar W. Greenberg]] ) <ref> O. W. Greenberg Spin and Unitary-Spin Independence in a Paraquark Model of Baryons and Mesons |
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Physical Review Letters 13(1964) 598-602 </ref>、韓茂栄 ([[:en:Moo-Young Han]]) 、南部陽一郎<ref> |
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{{cite journal |
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{{cite journal |
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|author=M.Y. Han, Y. Nambu |
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|author=M.Y. Han, Y. Nambu |
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|title=Three-Triplet Model with Double SU(3) Symmetry |
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|title=Three-Triplet Model with Double SU(3) Symmetry |
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|journal=[[Physical Review]] |
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|journal=[[Physical Review]] |
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|volume=139 |
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|volume=139 |pages=B1006 |
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|pages=B1006 |
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|doi=10.1103/PhysRev.139.B1006 |
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|doi=10.1103/PhysRev.139.B1006 |
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}}</ref>、グリーンバーグにより提唱された。一方で、QCDの理論的基礎は1954年に発表されていた、[[ヤン=ミルズ理論|ヤン=ミルズの非可換ゲージ理論]]<ref name=ym> |
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}}</ref>、および宮本米二、堀尚一<ref>{{Cite journal|和書|author=小川修三 |title=坂田学派と素粒子模型の進展 |date=1996-02-05 |publisher=社団法人日本物理学会 |journal=日本物理學會誌 |volume=51 |number=2 |naid=110002068935 |pages=90-94 |ref=harv}} </ref>により独立して提唱され、1973年に[[w:William A. Bardeen|ウィリアム・バーディーン]]、[[w:Harald Fritzsch|ハラルト・フリッチ]]および[[マレー・ゲルマン]]によって共同で書かれた論文によって明確に確立された<ref> |
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{{cite conference |
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|first1=C. N. |last1=Yang |
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|author=W. Bardeen, H. Fritzsch, M. Gell-Mann |
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|year=1973 |
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|title=Light cone current algebra, ''π''<sup>0</sup> decay, and ''e''<sup>+</sup> ''e''<sup>−</sup> annihilation |
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|title=Conservation of Isotopic Spin and Isotopic Gauge Invariance |
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|url=http://arxiv.org/abs/hep-ph/0211388v1 |
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|journal=[[Physical Review]] |
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|editor=R. Gatto |
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|volume=96 |issue=1 |pages=191–195 |
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|booktitle=Scale and conformal symmetry in hadron physics |
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|doi=10.1103/PhysRev.96.191 }}</ref>である。しかし、この 理論は 質量ゼロのベクトル 粒子(つまり、 長距離相互作用する 粒子)<ref>なお、この 粒子(グルーオンそのものである)が 観測されない 理由は、やはり[[クォークの 閉じ 込め]]による。 電気的に 中性な 光子と 異なり、グルーオンは 色価を 持つ。</ref> をふくみ、1fm 以下のスケールの 現象の 記述を 目指す 理論としては 不満足なものだった。さらにこの 当時は 非可換ゲー ジ理論の[[ 繰り 込み]] 可能性は証明されてい なかった。そして、 南部は[[カイラル 対称性]]やその [[自発的対称性の破れ]]な どを提唱し、1970年代に入ると、非可換ゲージ理論の繰り込み可能性<ref> |
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|page=139 |
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|publisher=[[John Wiley & Sons]] |
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|id=ISBN 0-471-29292-3 |
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}}</ref>。カラーの概念の確立は、強い力のゲージ理論の端緒となる<ref>[http://www.jikkyo.co.jp/downloadcontents/4584871344.pdf 実教出版]</ref>。 |
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量子色力学において、カラーはクォークの3粒子に対応するのに対し、[[ゲージ粒子]]は[[グルーオン]]と呼ばれる。グルーオンは、マレー・ゲルマンらによって理論化された<ref> |
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{{cite journal |
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|author=M. Gell-Mann |
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|year=1962 |
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|title=Symmetries of Baryons and Mesons |
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|journal=[[Physical Review]] |
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|volume=125 |pages=1067–1084 |
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|doi=10.1103/PhysRev.125.1067 |
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|bibcode = 1962PhRv..125.1067G }}</ref><ref> |
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{{cite journal |
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|author=H. Fritzsch, Murray Gell-Mann, H. Leutwyler |
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|year=1973 |
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|title=Advantages of the Color Octet Gluon Picture. |
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|journal=[[Phys.Lett.B]] |
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|volume=47 |
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|pages=365-368 |
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|doi= |
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|bibcode = }}</ref>。 |
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しかし、この 理論は 質量ゼロのベクトル 粒子(つまり、 長距離相互作用する 粒子) を含み<ref>なお、この 粒子(グルーオンそのものである)が 観測されない 理由は、やはり[[クォークの 閉じ 込め]]による。 電気的に 中性な 光子と 異なり、グルーオンは 色価を 持つ。</ref>、1fm 以下のスケールの 現象の 記述を 目指す 理論としては 不満足なものだった。さらに 、この 量子色力学は カラー 閉じ込め(低エネルギー領域)は不完全ながらも説明できたが、[[ 繰り 込み]] 可能性が証明されてい ず、 高エネル ギーでの 漸近自由性は解明できな かった。 |
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=== 完成 === |
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1970年代に入ると、1971年[[ヘーラルト・トホーフト]]による非可換ゲージ理論の繰り込み可能性の証明がなされる<ref> |
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{{cite journal |
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|author='t Hooft, G. |
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|author='t Hooft, G. |
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|title=Renormalizable Lagrangians for massive Yang-Mills fields |
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|title=Renormalizable Lagrangians for massive Yang-Mills fields |
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|journal=[[Nuclear Physics B]] |
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|journal=[[Nuclear Physics B]] |
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|volume=35 |
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|volume=35 |pages=167–448 |
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|pages=167–448 |
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|doi=10.1016/0550-3213(71)90139-8 |
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}}</ref>や漸近的自由性<ref> |
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}}</ref>。さらに、1973年には[[デイビッド・グロス]]、[[フランク・ウィルチェック ]]および[[H. デビッド・ポリツァー]]により高エネルギーでの非可換ゲ-ジの[[漸近的自由性]]が[[繰り込み群]]を使ってに形成され<ref> |
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{{cite journal |
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|author=D.J. Gross, F. Wilczek |
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|title=Reliable perturbative results for strong interactions |
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|title=Reliable perturbative results for strong interactions |
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|volume=30 |
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|volume=30 |issue= |pages=1346–1349 |
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|issue= |
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|pages=1346–1349 |
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|doi=10.1103/PhysRevLett.30.1346 |
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|doi=10.1103/PhysRevLett.30.1346 |
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}}</ref>がようやく証明され、QCDは脚光を浴びるようになる。 |
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}}</ref>、QCDが確立する。グロス、ウィルチェクそしてポリツァーはこの漸近自由性により、また、トホーフトは繰り込み可能性により、[[ノーベル物理学賞]]を受ける。 |
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== 定式化 == |
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== 定式化 == |
量子色力学(りょうしいろりきがく、quantum chromodynamics)とは「強い相互作用」を説明する、 SU(3) ゲージ対称性に基づくゲージ場の量子論である。
色
クォークとグルーオンは、カラーチャージ(color charge、色荷)と呼ばれる量子数を持つ。カラーチャージは、光の三原色からの類推により「赤」、「緑」、「青」と呼ばれることがある。カラーチャージを持たない状態は「白色」であるとも呼ばれる。これは SU(3) リー代数の表現を分かりやすい言葉で表したものである。クォークは SU(3) の基本表現 3(三重項)を作り、反クォークは基本表現 3(反三重項)をなす。3 は「色」の類推で言えば「補色」に対応している。グルーオンは随伴表現 8(八重項)で、「色」と「補色」を共に持つ8つの状態がある(3 × 3 から、「白色」(一重項)となる組み合わせが取り除かれる)。
カラーチャージはグルーオンと呼ぶゲージ粒子を交換することでやり取りされ、これが強い相互作用の源になっている。この相互作用はカラーチャージ間の距離が小さくなる(交換される運動量が高くなる)と弱くなるという、漸近的自由性を示す。逆に距離が大きくなると相互作用が強まり一定の力に近づく。この結果クォークを単体で取り出すことはできない。これは、現実に観測されるハドロンの状態は「白色」に限られるという、クォークの閉じ込め現象を説明する。
「白色」状態を作るには、三原色を持つクォークと「補色」となるカラーチャージをもつ反粒子とでペアを作る(メソン)か、3つのクォークについて3つの三原色を重ねて「白色」となるようにトリオを作る(バリオン)かが考えられる。SU(3) の表現論の言葉で言えば、
- 3 × 3 = 1 + 8
- 3 × 3 × 3 = 1 + 8 + 8 + 10
に現れる 1 がそれぞれメソンとバリオンに対応している。グルーオンのみからも「白色」の状態を作ることができる。そのような粒子はグルーボールと呼ばれる。最も簡単なグルーボールをSU(3) の表現論の言葉で言えば、
- 8 × 8 = 1 + 8 + 8 + 10 + 10 + 27
に現れる1が対応している。また、これらの他に「白色」となる状態の可能性もあり、それらはエキゾチックであると呼ばれる。2003年に報道されたペンタクォークやテトラクォークはエキゾチックな粒子(エキゾチックハドロン)の例である。
テトラクォークをSU(3) の表現論の言葉で言えば、
- 3 × 3 × 3 × 3 = 1 + 8 + 8 + 10 + 8 + 10 + 1 + 8 + 27
に現れる1が対応している。
カラーチャージを持つことは、強い相互作用をするということと同じことである。それゆえ、電子やニュートリノなどのレプトンや電磁相互作用のゲージ粒子である光子はカラーチャージを持っていない。
歴史
強い相互作用の現代的イメージの起源はクォーク模型である。1964年、ゲルマン[1]とツワイク[2][3]によりクォークが導入された。その後、クォークの束縛状態であるハドロンのパウリ統計の問題から”新しい”自由度、カラーがハン、南部[4]、グリーンバーグにより提唱された。一方で、QCDの理論的基礎は1954年に発表されていた、ヤン=ミルズの非可換ゲージ理論[5]である。しかし、この理論は質量ゼロのベクトル粒子(つまり、長距離相互作用する粒子)[6]をふくみ、1fm以下のスケールの現象の記述を目指す理論としては不満足なものだった。さらにこの当時は非可換ゲージ理論の繰り込み可能性は証明されていなかった。そして、南部はカイラル対称性やその自発的対称性の破れなどを提唱し、1970年代に入ると、非可換ゲージ理論の繰り込み可能性[7][8]や漸近的自由性[9][10]がようやく証明され、QCDは脚光を浴びるようになる。
定式化
数学的には、量子色力学(以下、QCDと表記)はSU(3)対称群の非可換ゲージ理論である。カラーチャージを持つディラック場(クォーク場)同士の相互作用を媒介するゲージ場はグルーオン場である。
グルーオン場と相互作用するディラック場についてのQCDラグランジアン密度は以下のように表記される。
ここで、
- はガンマ行列
- はカラーチャージ を持つディラック場(ただし、iは3成分)
- はディラック場の随伴スピノル
- は共変微分
- はグルーオン場の結合定数
- はSU(3)の生成子(ただし、aは8成分)
- はグルーオン場(電磁場における電磁ポテンシャルに相当)
- はグルーオン場テンソル(電磁場における電磁場テンソルに相当)
- はSU(3)の構造定数
である。
脚注
関連項目