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劇 げき の撮影 さつえい でハンサムキャブを使用 しよう するとその時代 じだい の雰囲気 ふんいき がでる
英国 えいこく 、ベッドフォードシャー州 しゅう ルートン にあるモスマン・コレクション (Mossman collection)に展示 てんじ されているハンサムキャブ
ハンサムキャブ (Hansom cab)とは馬 うま で引 ひ く車両 しゃりょう (馬車 ばしゃ :広義 こうぎ のcarriage(キャリッジ ))でフランス起源 きげん のカブリオレ に改良 かいりょう を加 くわ えたもの。タクシー 用途 ようと に使用 しよう される馬車 ばしゃ (日本 にっぽん の辻 つじ 馬車 ばしゃ )の一種 いっしゅ である。1834年 ねん に英国 えいこく レスターシャー州 しゅう ヒンクレー の建築 けんちく 家 か だったジョゼフ・ハンサム が製作 せいさく し特許 とっきょ をとった。安全 あんぜん にかじ取 と りができるように重心 じゅうしん を低 ひく く押 お さえてあり、速 はや さと安全 あんぜん 性 せい を兼 か ね備 そな えていたため、当初 とうしょ は「ハンサム・セーフティ・キャブ」いう名前 なまえ で呼 よ ばれた。
概要 がいよう
ハンサムキャブはキャブマンとよばれた運転 うんてん 手 しゅ (御者 ぎょしゃ )が後方 こうほう の高 たか い所 ところ にある座席 ざせき に腰掛 こしか けて運転 うんてん するカブリオレの一種 いっしゅ であり、ハンサムキャブとは「ハンサム製 せい キャブリオレ」という意味 いみ で、「キャブ」は「キャブリオレ 」(カブリオレ)を短 みじか くしたい方 いかた 。このことから現在 げんざい のタクシーを意味 いみ する「キャブ」とはカブリオレに由来 ゆらい し「馬車 ばしゃ (キャリッジ)」の一種 いっしゅ からきたものであることがわかる。英国 えいこく でタクシーを表 あらわ す総称 そうしょう を「ビークル・フォー・ハイヤー(vehicle for hire)」といい、これは有料 ゆうりょう で時間 じかん 単位 たんい で乗 の せる車両 しゃりょう という意味 いみ である。英国 えいこく で"vehicle for hire"の正式 せいしき 名称 めいしょう が「ハックニーキャリッジ 」だった。「ハックニーキャリッジ」は現在 げんざい まで英国 えいこく タクシーの正式 せいしき 名称 めいしょう であるが、ハンサムキャブが広 ひろ く使 つか われるようになったことから一般 いっぱん には「ハックニーキャリッジ」に代 か わり「キャブ」が使 つか われるようになった。
さらにタクシーメーター が登場 とうじょう し、運賃 うんちん の計測 けいそく がおこなわれるようになり「キャブ」は「タクシーキャブ (taxicab)」となった(タクシーキャブは日本 にっぽん ではタクシー と略 りゃく して呼 よ ばれる。このタクシー用途 ようと の馬車 ばしゃ は明治 めいじ 時代 じだい の日本 にっぽん で辻 つじ 馬車 ばしゃ と名 な づけられた。)。タクシーキャブ馬車 ばしゃ 、つまり辻 つじ 馬車 ばしゃ として製作 せいさく されたハンサムキャブは速度 そくど が出 だ せるよう軽量 けいりょう に作 つく られており、馬 うま 一 いち 頭 とう で引 ひ っ張 ぱ ることができた。19世紀 せいき のロンドンはそれ以前 いぜん の辻 つじ 馬車 ばしゃ 4輪 りん 2頭 とう 立 だ て6人 にん 乗車 じょうしゃ のハックニーキャリッジで混雑 こんざつ を引 ひ き起 お こしていた。しかし、2輪 りん 1頭 とう 立 だ てのハンサムキャブであればこの悪名 あくめい 高 たか い交通 こうつう 渋滞 じゅうたい の中 なか をすりぬけることができ他 た の辻 つじ 馬車 ばしゃ よりも目的 もくてき 地 ち に速 はや く到着 とうちゃく することができた。こうして「ハックニーキャリッジ」用途 ようと としてハンサムキャブが使 つか われるようになり、ハックニーキャリッジのことをキャブとよぶようになって現在 げんざい のタクシー呼称 こしょう につながる。
乗客 じょうきゃく は2人 ふたり ないしはぎっちりつめれば3人 にん が座 すわ れた。運転 うんてん 手 しゅ は車両 しゃりょう 後方 こうほう にある一段 いちだん 高 たか いばね付 つけ の座席 ざせき に座 すわ り客室 きゃくしつ の屋根 やね 越 ご しに手綱 たづな を取 と った。これはフランス起源 きげん のカブリオレ の変形 へんけい である。カブリオレは御者 ぎょしゃ は客 きゃく と相席 あいせき となり通常 つうじょう 乗客 じょうきゃく は1人 にん しか乗 の せられない。自家用 じかよう であれば主人 しゅじん 自身 じしん が御者 ぎょしゃ となりもうひとりの客人 きゃくじん を同席 どうせき させられるが辻 つじ 馬車 ばしゃ ではそうはいかない。カブリオレには後方 こうほう に従者 じゅうしゃ 用 よう のお立 た ち台 だい があった。これは従者 じゅうしゃ がいないときには荷物 にもつ のせにも使用 しよう された場所 ばしょ だった。ハンサムキャブではこのお立 た ち台 だい 部分 ぶぶん を御者 ぎょしゃ 席 せき とし、手綱 たづな (たづな)は幌 ほろ (屋根 やね )の上 うえ を通 とお る形 かたち にしたものだった。乗客 じょうきゃく は「トラップドア」と呼 よ ばれた屋根 やね 後方 こうほう にある小 ちい さな戸口 とぐち で後方 こうほう にいる御者 ぎょしゃ と話 はなし ができた。また乗客 じょうきゃく は車 くるま 室 しつ (キャブ)により悪天候 あくてんこう から保護 ほご されていた。客室 きゃくしつ は折 お りたたみ幌 ほろ のものだけでなく木製 もくせい で覆 おお われたものもあったがいずれも客室 きゃくしつ の前方 ぜんぽう は開放 かいほう されていた。折 お りたたみ式 しき の木製 もくせい ドアが足 あし 側 がわ をカバーしていたので、下方 かほう からの泥 どろ はねで服 ふく が汚 けが れるのを防 ふせ ぐことができた。加 くわ えて両側 りょうがわ のドアのさらに前方 ぜんぽう にはフェンダー (もしくはダッシュボード )が装備 そうび されていたので馬 うま の蹴 け り上 あ げる石 いし などからも守 まも られていた。
ハンサムキャブは英国 えいこく の他 ほか の都市 とし にもすぐに広 ひろ まった。カブリオレの故郷 こきょう パリ にも輸出 ゆしゅつ され「キャブ」とよばれたがこれは不人気 ふにんき だった。御者 ぎょしゃ 台 だい のある2人 ふたり 乗 の りはフランスではこの「キャブ」のみである。しかしベルリン 、サンクトペテルブルク などの欧州 おうしゅう の各 かく 都市 とし にまで普及 ふきゅう した。米国 べいこく にも19世紀 せいき 後半 こうはん には紹介 しょうかい され、ニューヨーク市 し では広 ひろ く使 つか われていた。現代 げんだい でもシドニー 、カイロ 、香港 ほんこん でハンサムキャブが見 み ることができる。
英国 えいこく では1920年代 ねんだい まで広 ひろ く使 つか われていたが、安価 あんか な自動車 じどうしゃ が現 あらわ れ、また信頼 しんらい 性 せい ある大量 たいりょう 輸送 ゆそう 機関 きかん などの輸送 ゆそう 形態 けいたい が登場 とうじょう したことにより、ハンサムキャブも次第 しだい に使 つか われなくなった。
文学 ぶんがく
ナルニア国 こく ものがたり の「魔術 まじゅつ 師 し のおい 」では、悪 あく の女王 じょおう ジェイディスがハンサムキャブを乗 の っ取 と りチャリオット のように乗 の り回 まわ してロンドンを訪 おとず れる。また、ナルニアに到着 とうちゃく した「キャブ」は「フランク王 おう 」となり、ハンサムキャブを引 ひ っ張 ぱ った馬 うま 「ストロベリー」は羽 はね をもつ馬 うま 「フレッジ」となる。
参照 さんしょう
Carriage Terminology: An Historical Dictionary by Donald H. Berkebile, Don H. Berkebile (1979) ISBN 0-87474-166-1
A Dictionary of Horse Drawn Vehicles by D.J.M. Smith (1988)
Looking at Carriages by Sallie Walrond (1992)
外部 がいぶ リンク
[1] The Sherlock Holmes Museum's Hansom Cab.
[2] Project Gutenberg's text of Fergus Hume's 'The Mystery of a Hansom Cab'.
[3] Official abstract from L.R. King's A Monstrous Regiment of Women featuring a cab-driving scene.