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そばきよし

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そばきよし(そばせい)は落語らくご演目えんもくのひとつ。どう演題えんだいでは、おも東京とうきょうえんじられる。蕎麦そば羽織はおり(そばのはおり)[1][2]羽織はおり蕎麦そば(はおりのそば)[1]とも。

上方かみがた落語らくご発祥はっしょう古典こてん落語らくごで、東西とうざいえんじられるへび含草(じゃがんそう)[3]についてもこの項目こうもく記述きじゅつする。

概要がいよう[編集へんしゅう]

へび含草[編集へんしゅう]

もちだいいを自慢じまんするおとこなぞ薬草やくそうをめぐる滑稽こっけいばなしはらばなしは、一休宗純いっきゅうそうじゅん発言はつげん逸話いつわ集成しゅうせいしたという名目めいもく著者ちょしゃしょう笑話しょうわほん一休いっきゅう関東かんとう咄』寛文ひろふみ12年版ねんばん上巻じょうかんのうちだい7へんだいしょくばなしのこと」とされる[2][3]が、作家さっか落語らくご研究けんきゅう宇井うい日本にっぽん全国ぜんこく伝承でんしょうされる民話みんわ類型るいけいである「とろかしくさ」(せき敬吾けいご日本にっぽん昔話むかしばなし集成しゅうせい分類ぶんるい記号きごうD-452)との共通きょうつうてん指摘してきしている[2]

おも演者えんじゃ上方かみがた2代目だいめ桂枝雀かつらしじゃく東京とうきょう4代目だいめさんゆうていえんせい2代目だいめかつらしょう金治きんじ2代目だいめかつらぶんあさらがられる。

そばきよし[編集へんしゅう]

東京とうきょう3代目だいめかつら三木助みきすけが、『へび含草』の登場とうじょう人物じんぶつ主題しゅだいになるものおおきく改変かいへんした演目えんもくおも演者えんじゃ10代目だいめ金原かなはらちんせい3代目だいめ古今ここんていちょうらがられる。

あらすじ[編集へんしゅう]

へび含草[編集へんしゅう]

なつのある一人ひとりおとこ甚平じんべい友人ゆうじん東京とうきょうでは隠居いんきょ)のいえあそびにったところ、よごれたくさってあるのをつける。友人ゆうじんは「これは『へび含草』とばれる薬草やくそうで、ウワバミ(=大蛇おろち)が人間にんげん丸呑まるのみにしたさい、これをなめてはらりをしずめるのだ」とう。めずらしがったおとこは、へび含草をけてゆずってもらう。

そんななか友人ゆうじんこし、もらいものもちはじめる。おとこけたばかりのもちばし、くちれる。友人ゆうじんは「だれべていいといったのか」と、いたずらっぽくたしなめ、「ひとことゆるしをてからけるのが礼儀れいぎだろう。それならこのはこなかはいったもち全部ぜんぶべてくれても文句もんくわない」といいはなつ。おとこ面白おもしろがり、「それなら、これからそのもち全部ぜんぶべてやろう」と宣言せんげんする。

おとこは「ただべるだけではげいいので、『もちきょくい』をせよう」とって、げたもちをさまざまなポーズでくちれる曲芸きょくげい披露ひろうする(「おしみ久松ひさまつ相生あいおいもち」「出世しゅっせこいたきのぼりのもち」といった、滑稽こっけいをつける)など、余裕よゆうせる。しかしふたつをのこしたところでうごかなくなり、つい観念かんねんしてあやまる。かえろうとして友人ゆうじんに「かがみしてくれ」とたのみ、友人ゆうじんが「いまさらづくろいをしても仕方しかたがないだろう」とくと、おとこは「いや、下駄げたさがすのだ。したいたらくちからもちてくる」

長屋ながやかえったおとこゆかくが一向いっこうらくにならず、甚平じんべいひもわえけたへび含草のことをおもして、「胃薬いぐすりになるだろう」とくちれてみる。

その心配しんぱいになった友人ゆうじん長屋ながやおとずれ、障子しょうじけると、おとこ姿すがたはなく、もち甚平じんべいてあぐらをかいていた。へび含草は(人間にんげんの)もの消化しょうかたすけるくさではなく、人間にんげんかすくさだったのである。

そばきよし[編集へんしゅう]

江戸えどそば世間せけんばなしをしているきゃく連中れんちゅうは、見慣みなれぬおとこ大量たいりょうりそばをべる様子ようす非常ひじょう感心かんしんし、おとこたいし、おとこりそばを20まいべられるかどうか、というけをちかける。おとこなんなく20まいをたいらげ、きん獲得かくとくする。

くやしくなったきゃく連中れんちゅうは、翌日よくじつふたたてんにやってきたおとこに30まいへの挑戦ちょうせんちかけるが、またしてもおとこかんしょく成功せいこうし、前日ぜんじつばいきんってみせていく。どくがったひとりの常連じょうれんきゃくが、「あのひと本名ほんみょうせい兵衛ひょうえさん、通称つうしょう『そばっいのせい兵衛ひょうえりゃくして『そばきよし』という、だいいで有名ゆうめいひとですよ」と、かねうばわれたきゃく連中れんちゅうおしえる。

くやしさがおさまらないきゃく連中れんちゅうは、今度こんどは50まいだいいをせい兵衛ひょうえちかける。せい兵衛ひょうえ自信じしんらぎ、「またあらためて」とみせして、そのままそばの本場ほんば信州しんしゅうかけてしまう(演者えんじゃによっては、せい兵衛ひょうえ行商ぎょうしょうじんとして紹介しょうかいされ、信州しんしゅう商用しょうようかけたと説明せつめいする)。

あるせい兵衛ひょうえ信州しんしゅう山道さんどうまよってしまう。途方とほうにくれ、木陰こかげやすんでいると、うえにウワバミがいるのをつけ、こえせないほど戦慄せんりつする。ところがウワバミはせい兵衛ひょうえづいておらず、せい兵衛ひょうえがウワバミの視線しせんさきうと、じゅうかまえる猟師りょうしがいるのがえる。ウワバミは一瞬いっしゅんすきをついてその猟師りょうしからだき、丸呑まるのみにしてしまう。はらがふくれたウワバミはくるしむが、かたわらにえていた黄色きいろい(あるいはあかい)くさをなめるとはら元通もとどおりにしぼみ、せい兵衛ひょうえづかぬままやぶのむこうへえる。せい兵衛ひょうえは「あのくさはらやく(=消化しょうかやく)になるんだ。これを使つかえばそばがいくらでもべられる。いくらでもかせげる」とほくそみ、くさんで江戸えどかえる。

せい兵衛ひょうえれいのそばをたずね、けにるうえ、約束やくそくよりおおい60まい(あるいは70まい)のそばをべることを宣言せんげんする。大勢おおぜい野次馬やじうま見守みまもなか、そばがはこまれ、だいいが開始かいしされる。せい兵衛ひょうえは50まいまで順調じゅんちょうはしすすめたが、そこからいきくるしくなり、休憩きゅうけいもうて、みな廊下ろうかさせ(あるいは自分じぶん縁側えんがわはこばせ)、障子しょうじらせる。せい兵衛ひょうえはそのすきに、信州しんしゅうんだくさをふところからし、なめはじめる。

観客かんきゃくみせものは、障子しょうじのむこうがしずかになったので不審ふしんおもう。

一同いちどう障子しょうじけると、せい兵衛ひょうえ姿すがたはなく、そばが羽織はおりすわっていた。れいくさは、もの消化しょうかたすけるくさではなく、人間にんげんかすくさだったのである。

関連かんれん作品さくひん[編集へんしゅう]

  • テレビアニメ『まんが日本にっぽんむかしばなし』においてはらはなしとなった民話みんわをモチーフとする以下いかのエピソードが制作せいさく放送ほうそうされた。
    • 「とけてしもうて蕎麦そば団子だんご」- 周防すおうこく舞台ぶたい旦那だんな下男げなんたび途中とちゅう出来事できごと大蛇おろち消化しょうかやくはキノコ、けたのちには着物きものおおきな蕎麦そば団子だんごのこる。
    • 「とろかしくさ」 - せい兵衛ひょうえ主人公しゅじんこう、そばのだいいでけをおこなうなど、そばきよしちかい。
  • 「パンドラキン」 - よるみねひさし翻案ほんあん短編たんぺんよる落語らくご愛好あいこうで、自作じさく落語らくご要素ようそふくめることがおおい)。蕎麦そばスパゲッティえている。『パタリロ!』コミックス10かん文庫ぶんこばん妖怪ようかい缶詰かんづめ」に収録しゅうろく

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 東大とうだい落語らくごかい増補ぞうほ 落語らくご事典じてん青蛙あおがえるぼう、1973ねん 
  • 宇井うい愁『わらい辞典じてん 落語らくご角川書店かどかわしょてん角川かどかわ文庫ぶんこ〉、1976ねん