アクメ・コーポレーション

アクメ・コーポレーション（Acme Corporation）とは、特とくにワーナー・ブラザース製作せいさくのカートゥーンに繰くり返かえし登場とうじょうする架空かくうの企業きぎょう。『ワイリー・コヨーテとロード・ランナー』のアニメ短編たんぺんではお約束やくそくのギャグとなっている、ここぞという最悪さいあくのタイミングで故障こしょうしたり破滅はめつ的てきな逆ぎゃく効果こうかが起おこる奇妙きみょうな製品せいひんを扱あつかっているのが特徴とくちょうである。

ワーナー・ブラザースのカートゥーン以外いがいにも、映画えいが、テレビのシリーズ番組ばんぐみ、コマーシャルやコミックストリップでも普遍ふへん的てきな社名しゃめいとして使用しようされている。

アクメという言葉ことばは「最高潮さいこうちょう、頂点ちょうてん、最上さいじょうの」と言いう意味いみのギリシャ語ご（ακμή:英語えいごの翻こぼし字じはakmē）から来きているため、上記じょうきの『ロード・ランナー』シリーズにおけるこの社名しゃめいは皮肉ひにくにもなっている。

日本語にほんご訳やくでは単たんに「アクメ」や「アクメ印しるし」と表記ひょうきされたり、エピソードによっては注釈ちゅうしゃくなどの説明せつめいが無なかったりする。

由来ゆらい

現実げんじつ世界せかいでのアクメかなとこの広告こうこく

アクメは「頂点ちょうてん」を意味いみするため、最高さいこうの商品しょうひんであることを表あらわすため実際じっさいに使つかわれることがあった。初期しょきの国際こくさい的てきな「アクメ」ブランドには、1870年代ねんだい半なかば以降いこうにJ Hudson＆Coによって作つくられたホイッスル「アクメ・シティ」があり、その後ご「アクメ・サンダラー」や1895年ねんにはアクメ・サイレンも作つくられた。イエローページのようなアルファベット順じゅんの電話でんわ帳ちょうが普及ふきゅうした1920年代ねんだいには、アクメという言葉ことばを社名しゃめいに入いれることが人気にんきになった。Aから始はじまる会社かいしゃは電話でんわ帳ちょうの最初さいしょのほうに掲載けいさいされる上うえに、「最高さいこう」という意味いみもあったからである。当時とうじアクメと名なづけられた会社かいしゃは巷ちまたにあふれ、Acme Brick、Acme Markets、Acme Bootsなど、幾いくつかは今日きょうでも生いき残のこっている。初期しょきのシアーズのカタログには、ワーナー・ブラザースのカートゥーンに何なん度ども登場とうじょうするかなとこを含ふくめ「アクメ」の商標しょうひょうを持もつ製品せいひんがいくつも載のっていた。

ワーナー・ブラザースのアニメーターであるチャック・ジョーンズは、アクメという名前なまえをつけるのが流行はやっていたので採用さいようしたと語かたっている。

アクメという名前なまえはまた、当時とうじのロサンゼルスの人々ひとびとにとってもう一ひとつの含ふくみがあった。ワーナー・ブラザースのカートゥーンが製作せいさくされている間あいだ、ロサンゼルスの信号しんごう機きはアクメ・トラフィック・シグナル社しゃによって製造せいぞうされていたが、この信号しんごうは小ちいさな赤あかと緑みどりの光ひかりに「停止ていし」と「進すすめ」の腕木うでき信号しんごうを組くみ合あわせたものだった。鐘かねは今日きょうの信号しんごう機きで使つかわれる黄色きいろい光ひかりの役割やくわりを果はたし、信号しんごうが変かわるタイミングで5秒間びょうかん鳴なり響ひびいていた。アクメの腕木うでき信号しんごう機きがあると、この鐘かねが鳴なり響ひびいて車くるまが発進はっしんし甲高かんだかいタイヤの音おとを立たてるなど、視覚しかく的てきなおもしろみが多おおく喜劇きげき的てきな効果こうかを持もつため、ワーナー・ブラザースの『ルーニー・テューンズ』と『メリー・メロディーズ』でよく使つかわれている。

アクメが、「あらゆる物ものを作つくる会社かいしゃ(A Company Making Everything)」「アメリカの会社かいしゃがあらゆる物ものを作つくる(American Companies Make Everything)」「あらゆる物ものを製造せいぞうするアメリカ企業きぎょう(American Company that Manufactures Everything)」といった意味いみの頭字かしらじ語ご(ACME) だとするのは間違まちがいである。

フィクションでの描写びょうしゃ

アクメ・コーポレーションは『ロード・ランナー』では、明示めいじこそされないものの、どれだけ手てが込こんでいたり大おおげさであっても、想像そうぞうしうるあらゆるタイプの製品せいひんを生産せいさんするコングロマリットのような企業きぎょうとして描えがかれる。ただしそのほとんどが決けっしてキャラクターの期待きたい通どおりには機能きのうしない（一部いちぶの製品せいひんは機能きのうしすぎてコヨーテに対たいして逆ぎゃく効果こうかになる）。『ロード・ランナー』シリーズの『ミッミッ』では、フェアフィールド郡こおり区く（ニュージャージー州しゅう）に拠点きょてんを置おく「Acme Rocket-Powered Products,Inc.」として登場とうじょうする。その製品せいひんの多おおくはワイリー・コヨーテのため特別とくべつに製造せいぞうされているようで、例たとえば「ロードランナーつまずき用よう」という但ただし書がきのアクメ巨大きょだい輪わゴムといった製品せいひんがある。

彼かれらの製品せいひんには多おおくの改善かいぜん点てんが残のこっているものの、アクメの配送はいそうサービスだけは他社たしゃのつけいる余地よちがない。ワイリーは単たんにメールボックスに注文ちゅうもんを入いれる（または映画えいが『ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション』のようにWebサイトで注文ちゅうもんを入力にゅうりょくする）だけで、数すう秒びょう以内いないにその製品せいひんを入手にゅうしゅしてしまう。

登場とうじょうする作品さくひん

「アクメ簡易かんいトンネル」に入にゅうろうとして激突げきとつしたワイリー・コヨーテの壁画へきが。マサチュまさちゅーセッツ工科大学せっつこうかだいがくのロッチ図書館としょかんの壁かべ

「アクメ」の名前なまえは、膨大ぼうだいな数かずのアニメや漫画まんが、『アイ・ラブ・ルーシー』初期しょきエピソードなどのテレビ番組ばんぐみ、バスター・キートンの無声むせい映画えいが『隣となり同士どうし』(1920)やハロルド・ロイドの『豪勇ごうゆうロイド』(1922)など無声むせい時代じだい以降いこうの映画えいがに至いたるまで、一般いっぱん的てきな会社かいしゃ名めいとして使用しようされている。

特とくにキャラクターとしてのワイリー・コヨーテを参照さんしょうしている例れいには次つぎのものがある。

アニメ、テレビ番組ばんぐみ

• 1988年ねんのディズニー/タッチストーンとアンブリン・エンターテインメントによる映画えいが『ロジャー・ラビット』はアクメ社内しゃないの仕組しくみを詳細しょうさいに説明せつめいしようとした。映画えいがのあらすじは、アクメ社しゃの創設そうせつ者しゃマービン・アクメ（声こえ:スタッビー・ケイ）の殺害さつがいが中心ちゅうしんになっている。映画えいがの様々さまざまな場面ばめんでアクメ製品せいひんが関かかわっており、設定せっていでは映画えいがのクライマックスの場面ばめんはアクメ社しゃ倉庫そうこである。
• 『タイニー・トゥーンズ』シリーズはアクメ社しゃの影響えいきょう力りょくをくわしく説明せつめいしており、シリーズ全体ぜんたいの設定せっていが「アクメ・エーカー」と呼よばれる街まちで起おこる出来事できごとで、作中さくちゅうの若わかき主人公しゅじんこうが通かようのも「アクメ・ルーニバシティ」である。あるエピソードで、コヨーテはアクメ社しゃを訴うったえ、安全あんぜんでない製品せいひんを製造せいぞうしていると非難ひなんした。しかし、裁判さいばんでアクメの代理人だいりにんは「適切てきせつに使用しようされていれば」製品せいひんは危険きけんではないと主張しゅちょうする。例たとえば、コヨーテは自分じぶん自身じしんをアクメ・カタパルトから射出しゃしゅつするために巻まき取とり式しきのロープを切断せつだんして失敗しっぱいしたが、アクメの代理人だいりにんによれば、本来ほんらいは単たんにレバーを引ひくだけでよかった。
• この会社かいしゃは『アニマニアックス』でも、「天才てんさい!!アインシュタイン博士はかせおいしいクッキーい・か・が??（原題げんだい:Cookies for Einstein)」からのアクメ・ソングや、アクメ・ラボにあるピンキー&ブレインの自宅じたくなどが作中さくちゅうに登場とうじょうする。
• 2003年ねんの映画えいが『ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション』ではアクメ・コーポレーションが大おおきな敵てきである。アクメ社しゃの本社ほんしゃも描えがかれており、その役員やくいんである悪漢あっかんミスター・ルーサー・チェアマン（声こえ:スティーヴ・マーティン）率ひきいる多た国籍こくせき企業きぎょうであることが判明はんめいする。
• 『ルーナティクス・アンリーシュド』シリーズは、アクメトロポリス(Acmetropolis)内ないで出来事できごとが展開てんかいしているという設定せっていである。
• 『アニマニアックス』の長編ちょうへん作品さくひん『Wakko's Wish』では、ワーナー兄弟きょうだい姉妹しまいやその他た登場とうじょう人物じんぶつがアクメ・フォールズの村むらに住すんでいる。
• デヴィッド・オライリーの短編たんぺん映画えいが『External World』では、障害しょうがいを負おった漫画まんがキャラクターのためのディストピアな引退いんたい施設しせつがアクメ・リタイアメント・キャッスルとして特集とくしゅうされている。
• 2015年ねんのOVA『Looney Tunes: Rabbits Run』では、アクメが百貨店ひゃっかてんとして描えがかれている。
• 2018年ねん8月がつ、ワーナー・ブラザースはクリス・マッケイ監督かんとくでJon&Josh Silbermanが脚本きゃくほんを完成かんせいさせたアニメ映画えいが『コヨーテVs.アクメ』を製作せいさく中ちゅうと発表はっぴょうした。

音楽おんがく

• Bell X1の曲きょく「One Stringed Harp」にはこんな歌詞かしが含ふくまれている。「ワイリー・コヨーテみたいに/落下らっかが十分じゅうぶんでないとしても/アクメからの粗悪そあく品ひんたち/彼かれらは不愉快ふゆかいな代物しろものを手てに入いれた」
• ブラジルのスラッシュメタルバンドChakalは1990年ねんのアルバム『The Man Is His Own Jackal』から「アクメ・デッドエンド・ロード」という曲きょくを発表はっぴょうしている。この曲きょくは『ロードランナー』で重要じゅうような音おと「ビーッ、ビーッ(Beep, beep)」で始はじまる。

法律ほうりつ

• ジョーイ・グリーンはワイリー・コヨーテがアクメ社しゃに対たいしてPL法ほうをもとに起おこした訴訟そしょうを扱あつかった架空かくうの記事きじ「Cliff-Hanger Justice」を書かいて、雑誌ざっし『National Lampoon』の1982年ねん8月がつ、9月、10月がつ号ごうの3部ぶに掲載けいさいされた。
• イアン・フレイザーは、架空かくうの訴状そじょう「コヨーテVS.アクメ」を書かいた。これは『ザ・ニューヨーカー』で発表はっぴょうされ、最終さいしゅう的てきに短編たんぺんフィクション作品さくひん集しゅうのタイトル作品さくひんになった。

その他た

• CPANは「Acme::」という名前なまえ空間くうかんを提供ていきょうしている、これはPerlプログラミング言語げんごにとってユーモラスで、役立やくだたずで、抽象ちゅうしょう的てきなモジュールを大量たいりょうに含ふくんでいる。「偉大いだいなる全すべての不条理ふじょうりなシステム作成さくせい者しゃ：ワイリー・コヨーテ(Wile E. Coyote)に敬意けいいを表あらわして」命名めいめいされた。

関連かんれん項目こうもく

• クイックEマート
• Ajax name brand
• オーシャニック航空こうくう
• ヨーヨーダイン
• 民みん明あかり書房しょぼう

脚注きゃくちゅう

注釈ちゅうしゃく

出典しゅってん

外部がいぶリンク

• “Coyote vs. Acme, Plaintiff's Opening Statement”. James Fuqua's Law Jokes. 28 July 2017閲覧えつらん。 From Frazier, Ian (June 1996). Coyote v. Acme (1 ed.). Farrar Straus Giroux. ISBN 0374130337  - Mock legal opening statement.
• “Evolution of a Peg”. Animation School Daily. 2019年ねん2月がつ9日にち閲覧えつらん。