イリヤ・エレンブルグ

エレンブルグ（1943年ねんの写真しゃしん）

イリヤ・グリゴーリエヴィチ・エレンブルグ（ロシア語ご:Илья́ Григо́рьевич Эренбу́рг、1891年ねん1月がつ26日にち - 1967年ねん8月がつ31日にち）は、ソ連それんの作家さっか。

略歴りゃくれき

ユダヤ人じん技師ぎしの子ことしてロシア帝国ていこく時代じだいのウクライナのキーウで生うまれた。モスクワの第だい1中学ちゅうがくに入学にゅうがくするが、1906年ねんに15歳さいでボリシェヴィキの地下ちか運動うんどうに参加さんかし、中学ちゅうがくから放校ほうこう処分しょぶんを受うける。1909年ねんにフランスに亡命ぼうめいして神秘しんぴ主義しゅぎ・耽美たんび主義しゅぎの影響えいきょうを受うける。1917年ねんの革命かくめいに際さいして帰国きこくし、各地かくちを放浪ほうろうののち演劇えんげきの仕事しごとや文学ぶんがくの講義こうぎをしていたが、1921年ねんに芸術げいじゅつ派遣はけん員いんとして国外こくがいに去さり、作品さくひんを書かいてソ連邦それんぽうの出版しゅっぱん物ぶつに掲載けいさいしはじめた。

大だい祖国そこく戦争せんそうにおいては対たい独どく宣伝せんでん活動かつどうの一端いったんを担にない、赤軍せきぐんに従軍じゅうぐんした。これについては回想かいそう録ろくに詳くわしい。1941年ねんの長編ちょうへん『パリ陥落かんらく』（Падение　Парижа）と1947年ねんの対たい独どく協力きょうりょく者しゃアンドレイ・ウラソフ将軍しょうぐんを題材だいざいとした大作たいさく『嵐あらし』（Буря）はいずれもスターリン賞しょうを受うけた。世界せかい平和へいわのために活動かつどうし、スターリン平和へいわ賞しょうも受うけている。

1967年ねん、前立腺ぜんりつせんと膀胱ぼうこうの癌がんにより死去しきょ。モスクワのノヴォデヴィチ女子じょし修道院しゅうどういんの墓地ぼちに埋葬まいそうされている。墓石はかいしには友人ゆうじんであったパブロ・ピカソによる肖像しょうぞう画がの複製ふくせいが刻きざまれている。

作風さくふう

1920年代ねんだいまでのエレンブルグの作風さくふうはモダニズムの傾向けいこうが著いちじるしいが、ソ連それんで五ごカ年かねん計画けいかくが始はじまった1930年代ねんだいには国策こくさくである工業こうぎょう化かを「肯定こうてい的てきに」あつかった作品さくひんが主おもとなる。ドイツ・フランス・スペインで人生じんせい最良さいりょうの時ときを過すごしたエレンブルグは、ソ連それんではほとんど亡命ぼうめい者もののように感かんじながらも、時代じだいに順応じゅんのうし生いきのびることに成功せいこうした。

スターリン批判ひはん後のちに書かかれた『雪ゆきどけ』（Оттепель）（1954年ねん）において、エレンブルグはスターリン時代じだいにおける芸術げいじゅつ家かの悲劇ひげきを描えがき、のちのパステルナークやソルジェニーツィンなどと同おなじくスターリニストたちの攻撃こうげきの的まととなった。1964年ねんに発表はっぴょうされた『回想かいそう録ろく』は、自己じこ弁護べんごとソ連邦それんぽうの政策せいさくを正当せいとう化かする傾向けいこうを免まぬかれていないとしても、20世紀せいきロシアの歴史れきしに手てがかりを与あたえた。

作品さくひん

• フリオ・フレニト　Хулио Хуренито （1922年ねん）
• ニコライ・クルボフの生涯しょうがいと破滅はめつ　Жузнь и гибель Николая Курбова （1923年ねん）
• 13本ほんのパイプ　Тринадцать трубок （1923年ねん）
• トラストD. E.　Трест　Д．Е． （1923年ねん）
• ジャンナ・ネイの恋こい Любовь Жанны Ней （1924年ねん）
• 1925年ねんの夏なつ　Лето 1925 года （1926年ねん）
• 第だい二にの日ひ　День второй （1934年ねん）
• 息いきもつがずに　Не переводя　дыхания （1935年ねん）
• パリ陥落かんらく　Падение　Парижа （1941年ねん）
• 嵐あらし　Буря （1947年ねん）
• 第だい九きゅうの波なみ　Девятый Вал （1952年ねん）
• 雪ゆきどけ　Оттепель （1954年ねん）
• 回想かいそう録ろく （1964年ねん）

邦訳ほうやく

「雪ゆきどけ」以外いがい

• 『欧おう羅ら巴ともみの滅亡めつぼう』椎名しいな晟あきら訳わけ 玄げん文ぶん社しゃ 1924
• 『けれども地球ちきゅうは廻まわりつてゐる』八はち住じゅう利雄としお訳わけ 原始げんし社しゃ 1927
• 『フリオ・フレニトとその弟子でし達たち』河村かわむら雅みやび訳わけ 春秋しゅんじゅう社しゃ 1927
  • 『フリオ・フレニトの遍歴へんれき』工藤くどう精一郎せいいちろう訳わけ「世界せかい文学ぶんがく全集ぜんしゅう 20世紀せいきの文学ぶんがく 第だい28 (エレンブルグ、カターエフ)』集英社しゅうえいしゃ 1965
• 『トラストD・E』昇のぼり曙夢しょむ訳わけ 世界せかい文学ぶんがく全集ぜんしゅう 第だい38巻かん (新興しんこう文学ぶんがく集しゅう)新潮社しんちょうしゃ 1929
  • 『トラストD・E』吉よし上うえ昭三しょうぞう訳わけ「世界せかいSF全集ぜんしゅう 第だい9巻かん』早川書房はやかわしょぼう 1970
  • 『トラストDE ヨーロッパ滅亡めつぼう史し』小笠原おがさわら豊樹とよき、三木みき卓たく訳わけ 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 1970、海うみ苑えん社しゃ 1993
  • 『トラストDE』中本なかもと信幸のぶゆき訳わけ「世界せかい文学ぶんがく全集ぜんしゅう 42 (エレンブルグ.レオーノフ.アクショーノフ)』学習がくしゅう研究けんきゅう社しゃ 1979
• 『コンミユーン戦士せんしのパイプ』蔵原くらはら惟おもんみ人じん訳わけ 新興しんこう文学ぶんがく全集ぜんしゅう 第だい22 平凡社へいぼんしゃ 1928
• 『自動車じどうしゃの一生いっしょう』高田たかだ保たもつ訳わけ 内外ないがい社しゃ 国際こくさい最さい鋭するど文学ぶんがく叢書そうしょ 1930
• 『ジャンヌ・ネイの愛あい』河村かわむら雅みやび訳やく 春秋しゅんじゅう社しゃ 1930
• 『これが映画えいがだ 夢ゆめの工場こうじょう』岩崎いわさき昶あきら訳わけ 往来おうらい社しゃ 映画えいが科学かがく研究けんきゅう叢書そうしょ 1933
• 『第だい二にの日ひ』中村なかむら白葉はくよう訳わけ 現代げんだいソヴェト文学ぶんがく全集ぜんしゅう 三さん笠かさ書房しょぼう 1935
  • 『第だい二にの日ひ』中村なかむら融とおる訳わけ 新潮しんちょう文庫ぶんこ 1955
• 『息いきもつがずに』上脇うえわき進すすむ訳わけ 改造かいぞう社しゃ 1936
• 『西方せいほうの作家さっかたち』小出こいで峻たかし、大島おおしま博光ひろみつ訳わけ 橡とち書房しょぼう 1936
• 『パリ陥落かんらく』淡あわ徳三郎とくさぶろう、成田なりた精きよし太ふとし共とも訳やく 万まん里さと閣かく 1951
  • 『パリ陥落かんらく』工藤くどう精一郎せいいちろう訳やく 新潮しんちょう文庫ぶんこ 1961
  • 『パリ陥落かんらく』高橋たかはし啓あきら吉きち訳わけ 新しん日本にっぽん出版しゅっぱん社しゃ 1986
• 『第だい九きゅうの波なみ』小笠原おがさわら豊樹とよき訳やく 彰あきら考こう書院しょいん 1952
  • 『第だい九きゅうの波なみ』泉いずみ三太郎さんたろう訳わけ 岩波書店いわなみしょてん 1955 現代げんだいの文学ぶんがく
• 『嵐あらし』西尾にしお章二しょうじ、松田まつだ作さく人じん共とも訳やく 河出かわで書房しょぼう 1953-1954 ソヴエト文学ぶんがく全集ぜんしゅう
• 『作家さっかの仕事しごと』鹿島かしま保夫やすお訳わけ 未み来社らいしゃ 1954 未来みらい芸術げいじゅつ学院がくいん
• 『世界せかいに平和へいわを』山田やまだ茂勝しげかつ訳わけ 大月書店おおつきしょてん 1954
• 『戦争せんそう』ソヴェト研究けんきゅう者しゃ協会きょうかい文学ぶんがく部会ぶかい訳やく 創はじめ元もと社しゃ 1954
• 『人ひとは生いきることを望のぞんでいる』川上かわかみ洸こう訳わけ編へん 新しん評論ひょうろん社しゃ 1954
• 『たそがれ』原子げんし林はやし二郎じろう訳わけ 20世紀せいき社しゃ 1955
• 『十じゅう三さん本ほんのパイプ』小笠原おがさわら豊樹とよき訳やく 修道しゅうどう社しゃ 1957、ブロンズ新しん社しゃ 1970、未知みち谷だに 2014
• 『現代げんだいの記録きろく』小笠原おがさわら豊樹とよき訳やく 修道しゅうどう社しゃ 1957
• 『自選じせんエレンブルグ文学ぶんがく・芸術げいじゅつ論集ろんしゅう 附ふ・雪ゆきどけ論争ろんそう』佐藤さとう清きよし郎ろう訳わけ 新興しんこう出版しゅっぱん社しゃ 1957
• 『日本にっぽん印象いんしょう記き』原はら卓也たくや、山田やまだ茂勝しげかつ訳やく 中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ 1957
• 『チエーホフ 作品さくひんを読よみなおして』篠原しのはら茂しげる訳わけ 紀伊国屋きのくにや書店しょてん 1960
• 『わが回想かいそう 人間にんげん・歳月さいげつ・生活せいかつ』全ぜん5部ぶ 木村きむら浩ひろし訳わけ 朝日新聞社あさひしんぶんしゃ 1961-1967
• 『ふらんすノート』木村きむら浩ひろし訳やく 岩波いわなみ新書しんしょ 1962
• 『芸術げいじゅつ家かの運命うんめい』小笠原おがさわら豊樹とよき訳やく 美術びじゅつ出版しゅっぱん社しゃ 1964 美術びじゅつ選書せんしょ
• 『エレンブルグ文学ぶんがく芸術げいじゅつ論集ろんしゅう』鹿島かしま保夫やすお訳やく 至誠しせい堂どう 1968
• 『長崎ながさきの雨あめ』稲田いなだ定雄さだお訳わけ 勁草書房しょぼう 1971

外部がいぶリンク

• 著作ちょさく集しゅう（ロシア語ご）
• The Black Book at jewishgen.org
• Tangled Loyalties, the 'definitive' Ehrenburg biography by Joshua Rubenstein at the book's home on the web（2007年ねん2月がつ5日にち時点じてんのアーカイブ）
• Long biography, includes quote above
• Article in The Columbia Encyclopedia
• Brief page on The Thaw
• Marevna, "Homage to Friends from Montparnasse" (1962)
• Read Ehrenburg's interview with The Paris Review