イリヤ・ニコラエヴィチ・ウリヤノフ

イリヤ・ニコラエヴィチ・ウリヤノフ Илья Николаевич Ульянов
ウリヤノフ一家いっかの肖像しょうぞう写真しゃしん （右側みぎがわの初老しょろうの男性だんせいがニコラエヴィチ。他たに妻つまアンナ、長男ちょうなんアレクサンドル、次男じなんウラジーミル（後ごのレーニン）、三男さんなんドミトリー、長女ちょうじょアンナ、次女じじょオルガ、三さん女じょマリア
生誕せいたん	1831年ねん7月がつ31日にち ロシア帝国ていこく アストラハン州しゅうアストラハン市し
死没しぼつ	1886年ねん1月がつ24日にち（54歳さい） ロシア帝国ていこく ウリヤノフスク州しゅうウリヤノフスク市し
職業しょくぎょう	物理ぶつり学者がくしゃ

イリヤ・ニコラエヴィチ・ウリヤノフ（Илья Николаевич Ульянов、ラテン文字もじ表記ひょうきの例れい:Ilya Nikolayevich Ulyanov 1831年ねん7月がつ31日にち - 1886年ねん1月がつ24日にち）は、北きたカフカス出身しゅっしんの物理ぶつり学者がくしゃ。平民へいみん出身しゅっしんであったが物理ぶつり教師きょうしとして教育きょういく面めんで顕著けんちょな功績こうせきを挙あげ、晩年ばんねんにロシア帝国ていこくにより貴族きぞくへ列れっせられた。しかし本人ほんにんは熱心ねっしんな共和きょうわ主義しゅぎ者しゃであり、農奴のうど制せいや貴族きぞく制度せいどに嫌悪けんお感かんを抱だいていた。

ロシア革命かくめいの指導しどう者しゃとなるウラジーミル・レーニンことウラジーミル・イリイチ・ウリヤノフの父ちちとして知しられ、「レーニンの父ちち」としても敬意けいいを抱いだかれていた。

生涯しょうがい

教育きょういく家か

1831年ねん7月がつ31日にち、北きたカフカスのアストラハン市しでニコライ・ヴァシリエヴィチ・ウリヤノフ（1770年ねん ‐ 1838年ねん）と、アンナ・アレクセイエウァナ・スミルノワの子ことして生うまれる。父ちちはチュヴァシ系けい解放かいほう農奴のうど出身しゅっしんであり、母はははカルムイク人じん（ロシアに移住いじゅうしたテュルク人じんの末裔まつえい）だった。

1854年ねんにカザン大学だいがくを卒業そつぎょうして数学すうがくと物理ぶつり学がくの学位がくいを取得しゅとく、卒業そつぎょう後ごは物理ぶつり教師きょうしとして教育きょういく活動かつどうに従事じゅうじした。1850年代ねんだいから60年代ねんだいにかけては上流じょうりゅう階級かいきゅう向むけのギムナジウムや女学校じょがっこうなどで物理ぶつり学がくを教おしえていた他ほか、ニコライ・ロバチェフスキーの同僚どうりょうとしてドヴォリャンスキー学院がくいんで教鞭きょうべんをとっていた時期じきもある。1869年ねん、帝国ていこく政府せいふからウリヤノフスク郡ぐん（当時とうじはシンビルスク郡ぐん）における公立こうりつ学校がっこうの監督かんとく官かんに任命にんめいされている。1874年ねんには総そう監かんに格上かくあげされ、1886年ねんまで同どう地方ちほうにおける教育きょういく政策せいさくの責任せきにん者しゃであった。1882年ねん、教育きょういく分野ぶんやにおける長年ながねんの功績こうせきを讃たたえられ、ロシア帝国ていこく政府せいふは帝国ていこく政府せいふ官職かんしょくにおけるニコラエヴィチの階級かいきゅうを第だい四よん位いに相当そうとうする市民しみん評議ひょうぎ員いん（Actual Civil Councilor）へと格上かくあげし、聖ひじりウラジーミル勲章くんしょう（第だい三さん等級とうきゅう）と名誉めいよ貴族きぞくの称号しょうごうを与あたえた。

私生活しせいかつでは同おなじ学校がっこう教師きょうしで、スウェーデン系けいロシア人じんの改宗かいしゅうユダヤ教徒きょうとであったマリア・アレクサンドロヴナ・ブランク（1835年ねん - 1916年ねん）と結婚けっこんしてアレクサンドル、ウラジーミル、ニコライ、ドミトリー、アンナ、オルガ、オルガ、マリアの4男なん4女じょを儲もうけ、3男なん2女じょが成人せいじんした。しかし、後世こうせいに子孫しそん（つまり、イリヤの子孫しそん）を残のこしたのは四よん男なんのドミトリーだけである。

1886年ねんに脳出血のうしゅっけつのため急死きゅうしし、長男ちょうなんアレクサンドルの処刑しょけい、次男じなんウラジーミル（レーニン）の逮捕たいほなど、以降いこう家族かぞくの命運めいうんは大おおきく暗転あんてんすることとなる。

自由じゆう主義しゅぎ者しゃ

ニコラエヴィチは学者がくしゃや教育きょういく家かとして優すぐれた資質ししつを持もった人物じんぶつであったが、同時どうじに近代きんだい的てきな教育きょういく制度せいどの確立かくりつを目指めざした自由じゆう主義しゅぎ者しゃでもあった。彼かれは国籍こくせきや階級かいきゅう、宗教しゅうきょう、民族みんぞく、性別せいべつによる教育きょういく機会きかいの格差かくさに反対はんたいして、誰だれでも意欲いよくがあれば学問がくもんを学まなべる様ように政府せいふへ働はたらきかけた。一部いちぶの歴史れきし家かは「レーニン以前いぜんから、ニコラエヴィチの自由じゆう教育きょういくに向むけての運動うんどうによってウリヤノフ家かはロシア革命かくめいに貢献こうけんしていた」と評価ひょうかしている。1871年ねんには公立こうりつ学校がっこうの監督かんとく官かんとしてチュヴァシ語ごで学まなぶ事ことができる公立こうりつ学校がっこうを設立せつりつして、ロシア語ごが使つかえないチュヴァシ人じんにも教育きょういく機会きかいを与あたえる努力どりょくをした。同様どうようにモルドヴィン人じん、タタール人じんの為ための公立こうりつ学校がっこうも設立せつりつして、帝国ていこく内ないの少数しょうすう民族みんぞくが学問がくもんを学まなぶ上うえでの不利ふりを是正ぜせいした。

子供こども達たちへの影響えいきょう

貴族きぞくの地位ちいに甘あまんじず奴隷どれいや貧困ひんこんといった階級かいきゅう問題もんだいを子供こども達たちに伝つたえる努力どりょくを惜おしまなかった。父ちちの影響えいきょうにより生しょうじたレーニン（次男じなんウラジーミル）ら子供こども達たちの価値かち観かんはより貧まずしい階級かいきゅうや異い民族みんぞくへの同情どうじょうと、階級かいきゅう制度せいどへの嫌悪けんおを育はぐくむことになる。事実じじつ、1歳さいで早世そうせいした次女じじょオルガ・イリイチナ・ウリヤノヴァ、19歳さいの若わかさで早世そうせいした三さん女じょオルガ・イリイチナ・ウリヤノヴァ（姉あねと同名どうめい）、生うまれた年としに亡なくなった三男さんなんニコライ・イリイチ・ウリヤノフの3人にんの子供こども達たちを除のぞけば、レーニンを含ふくむウリヤノフ兄弟きょうだい姉妹しまい5人にん全員ぜんいんが革命かくめい家かの道みちを選えらんでいる。

子孫しそん

子女しじょ

• 長女ちょうじょ アンナ・イリイチナ・ウリヤノヴァ（1864年ねん8月がつ14日にち - 1935年ねん10月がつ19日にち）
• 長男ちょうなん アレクサンドル・イリイチ・ウリヤノフ（1866年ねん - 1887年ねん） ：動物どうぶつ学者がくしゃ。サンクトペテルブルク大学さんくとぺてるぶるくだいがくで動物どうぶつ学がくを専攻せんこうしていたが、皇帝こうてい暗殺あんさつ未遂みすい事件じけんの関与かんよを疑うたがわれて処刑しょけいされる。
• 次女じじょ オルガ・イリイチナ・ウリヤノヴァ（1868年ねん - 1869年ねん7月がつ18日にち）：早世そうせい。
• 次男じなん ウラジーミル・イリイチ・ウリヤノフ（1870年ねん - 1924年ねん）：カザン大学だいがく在籍ざいせき中ちゅう、反はん王おう党派とうは運動うんどうに加くわわる。後のちにウラジーミル・レーニンの偽名ぎめいを用もちいて活動かつどうする。
• 三さん女じょ オリガ・イリイチナ・ウリヤノヴァ（1871年ねん11月4日にち - 1891年ねん5月がつ8日にち）：腸ちょうチフスで19歳さいで死去しきょ。
• 三男さんなん ニコライ・イリイチ・ウリヤノフ（1873年ねん - 1873年ねん）：幼児ようじ期きに早世そうせい。
• 四よん男なん ドミトリー・イリイチ・ウリヤノフ（1874年ねん - 1943年ねん）：医学いがく者しゃ。モスクワ大学だいがくで医学いがくを修おさめた後のち、医師いしとして活動かつどうしながら2人ふたりの兄あにの運動うんどうに加くわわる。彼かれの子孫しそんのみがイリヤの子孫しそんとして、現在げんざいまで続つづいている。
• 四よん女じょ マリヤ・イリイチナ・ウリヤノヴァ（1878年ねん2月がつ6日にち - 1937年ねん6月がつ12日にち）

義理ぎりの孫まご

• ゲオルギー（1906年ねん - 1972年ねん）：長女ちょうじょアンナとその夫おっとマルク（1863年ねん - 1919年ねん3月がつ10日とおか、55歳さいで死去しきょ）の義理ぎりの息子むすこ（養子ようし）。イリヤの義理ぎりの孫まご。

実みの孫まご

• オリガ（オルガ)・D・ウリヤーノワ（1922年ねん3月がつ4日にち - 2011年ねん3月がつ25日にち）：四よん男なんドミトリーが後妻ごさいアレクサンドラ・フョードロヴナ・カルポワ（1883年ねん - 1956年ねん）との間あいだに儲もうけた娘むすめ。アレクセイ・ニコラエヴィチ・マリツェフと結婚けっこん。
• さらに、ドミトリーは愛人あいじんErdokia Mikhailorna Chervyakova（1893年ねん - 1977年ねん）との間あいだに非ひ嫡子ちゃくしの男子だんし・ビクター・D・ウリヤノフ（1917年ねん - 1984年ねん）を儲もうけている。

曾孫そうそん

• 孫まごのオリガはアレクセイ・マリツェフと結婚けっこん。2人ふたりの間あいだにはナデジダという1人ひとりの娘むすめがおり、イリヤから見みれば曾孫そうそんにあたる。
• 非ひ嫡子ちゃくしの男子だんし・ビクターには、妻つまヴィクトリアとの間あいだにウラジーミル（1940年ねん生せい）とメアリー（1943年ねん生せい）という2人ふたりの子女しじょがおり、この2人ふたりもイリヤの曾孫そうそんにあたる。

玄孫げんそん

• 孫まごオリガとその夫おっとアレクセイの娘むすめナデジダにエレナという娘むすめがいる。
• 曾孫そうそん・ウラジーミルにはナデジダという娘むすめがいる。
• 曾孫そうそん・メアリーにはアレクサンドルという息子むすこがいる。

来らい孫まご

• 玄孫げんそん・アレクサンドルにはエフゲニー（1989年ねん生せい）、フョードル・アレクサンドロヴィチ（2006年ねん生せい）という2人ふたりの息子むすこがおり、2人ふたりはイリヤの来らい孫まごにあたる。

四男よつお・ドミトリーの子孫しそんはウリヤノフ家か唯一ゆいいつ（次男じなん・ウラジーミル・レーニンとの血縁けつえん関係かんけいを現在げんざいに繋つないでいる）の子孫しそんである。

参考さんこう書籍しょせき

• ドミトリー・ヴォルコゴーノフ著ちょ「レーニンの秘密ひみつ」（上巻じょうかん）