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エホバの証人しょうにん輸血ゆけつ拒否きょひ事件じけん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
最高裁判所さいこうさいばんしょ判例はんれい
事件じけんめい 損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう上告じょうこくどう附帯ふたい上告じょうこく事件じけん
事件じけん番号ばんごう 平成へいせい10(オ)1081
2000ねん平成へいせい12ねん)2がつ29にち
判例はんれいしゅう みんしゅう だい54かん2ごう582ぺーじ
裁判さいばん要旨ようし
医師いしが、患者かんじゃ宗教しゅうきょうじょう信念しんねんからいかなる場合ばあいにも輸血ゆけつけることは拒否きょひするとのかた意思いしゆうし、輸血ゆけつともなわないで肝臓かんぞう腫瘍しゅよう摘出てきしゅつする手術しゅじゅつけることができるものと期待きたいして入院にゅういんしたことをっており、みぎ手術しゅじゅつさい輸血ゆけつ必要ひつようとする事態じたいしょうずる可能かのうせいがあることを認識にんしきしたにもかかわらず、ほかに救命きゅうめい手段しゅだんがない事態じたいいたった場合ばあいには輸血ゆけつするとの方針ほうしんっていることを説明せつめいしないでみぎ手術しゅじゅつ施行しこうし、患者かんじゃ輸血ゆけつをしたなど判示はんじ事実じじつ関係かんけいしたにおいては、みぎ医師いしは、患者かんじゃみぎ手術しゅじゅつけるかかについて意思いし決定けっていをする権利けんりうばわれたことによってこうむった精神せいしんてき苦痛くつう慰謝いしゃすべく不法ふほう行為こういもとづく損害そんがい賠償ばいしょう責任せきにんう。
だいさんしょう法廷ほうてい
裁判さいばんちょう 千種ちくさ秀夫ひでお
陪席ばいせき裁判官さいばんかん もとはら利文としふみ 金谷かなや利廣としひろ 奥田おくだあきらどう
意見いけん
多数たすう意見いけん 全員ぜんいん一致いっち
意見いけん なし
反対はんたい意見いけん なし
参照さんしょう法条ほうじょう
憲法けんぽう13じょう民法みんぽう709じょう民法みんぽう710じょう
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エホバの証人しょうにん輸血ゆけつ拒否きょひ事件じけん(エホバのしょうにん ゆけつきょひじけん)とは、日本にっぽん1992ねん平成へいせい4ねん)にきた、宗教しゅうきょううえ理由りゆう輸血ゆけつ拒否きょひしていたエホバの証人しょうにん信者しんじゃが、手術しゅじゅつさい無断むだん輸血ゆけつおこなった医師いし病院びょういんたいして損害そんがい賠償ばいしょうもとめた事件じけん輸血ゆけつ拒否きょひ自己じこ決定けっていけんについてあらそわれた法学ほうがくじょう著名ちょめい判例はんれいである。

概要がいよう

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輸血ゆけつ拒否きょひ

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宗教しゅうきょう思想しそう禁忌きんき戒律かいりつ価値かちかん、または医療いりょううえ主張しゅちょうその理由りゆうにより、輸血ゆけつ拒否きょひするひとすくなからず存在そんざいする。かれらの主張しゅちょうは、生命せいめい危機ききおちい可能かのうせいがある場合ばあいふくめ、いついかなる状況じょうきょうでも輸血ゆけつ拒否きょひするとする絶対ぜったいてき輸血ゆけつ拒否きょひ絶対ぜったいてき輸血ゆけつ)と、生命せいめい危機ききがある場合ばあいなど、身体しんたい重大じゅうだい影響えいきょうあたえる場合ばあい輸血ゆけつ容認ようにんする相対そうたいてき輸血ゆけつ拒否きょひ相対そうたいてき輸血ゆけつ)の2つにけられる。

エホバの証人しょうにんは、聖書せいしょに「けなさい」とする言葉ことばなんてくることを理由りゆうとして、絶対ぜったいてき輸血ゆけつ拒否きょひ立場たちばをとっている。そして、エホバの証人しょうにん信者しんじゃであった女性じょせいAは、この教義きょうぎしたが生命せいめい危機ききがあるときもふくめていかなる場合ばあいにおいても輸血ゆけつ拒否きょひするというかた信念しんねんっていた。

入院にゅういんから手術しゅじゅつまで

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1992ねん平成へいせい4ねん7がつ6にち、Aは立川たちかわ病院びょういんにおいて、悪性あくせい肝臓かんぞう血管腫けっかんしゅであるとの診断しんだんけた。Aは輸血ゆけつをせずに手術しゅじゅつをすることをのぞんだものの、どう病院びょういん医師いしから不可能ふかのうであるとして拒否きょひされたため、11にちどう病院びょういん退院たいいんした。そのため、退院たいいんAは輸血ゆけつなしで手術しゅじゅつ可能かのう医師いし病院びょういんさがしていた。

医師いしBは、エホバの証人しょうにん教義きょうぎ協力きょうりょくてきである医師いし紹介しょうかいするエホバの証人しょうにん医療いりょう機関きかん連絡れんらく委員いいんかい以下いか連絡れんらく委員いいんかい)のあいだで、輸血ゆけつをせずに手術しゅじゅつおこなった経験けいけんがあることでられていた。Aが輸血ゆけつなしで手術しゅじゅつおこなえる医師いし病院びょういんさがしていることをった連絡れんらく委員いいんかいは、7がつ27にちにBにたいしてAの病状びょうじょうならびに輸血ゆけつ拒否きょひする意向いこうつた診療しんりょう依頼いらいした。依頼いらいけたBは、がんが転移てんいさえしていなければ輸血ゆけつなしで手術しゅじゅつ可能かのうであるむねつたえ、すぐに検査けんさするようべた。8月18にち、AはBが所属しょぞくする東京大学とうきょうだいがく医科いかがく研究所けんきゅうじょ附属ふぞく病院びょういん以下いか医科研いかけん)に入院にゅういんした。医科研いかけんでは医師いしC、Dの2めいがAの主治医しゅじいとなった(以下いかB・C・Dを医師いしBら)。

同日どうじつ、CがAにたいしてごく少量しょうりょう血液けつえきや、自己じこ輸血ゆけつ可否かひうたのにたいして、Aは「できません」とこたえた。9月7にち、Dが「手術しゅじゅつには突発とっぱつてきなことがこるので、そのときは輸血ゆけつ必要ひつようです」「輸血ゆけつしないで患者かんじゃなせると、こちらは殺人さつじんざいになります。やくざでも、にそうになっていて輸血ゆけつをしないと状態じょうたいだったら、自分じぶん輸血ゆけつします」とったところ、Aは「んでも輸血ゆけつをしてもらいたくない、そういう内容ないよう書面しょめんいてします」とったが、Dは「そういう書面しょめんをもらってもしょうがないです」とこたえた。同月どうげつ10にち、Aは医科研いかけん指示しじ都立とりつ広尾ひろお病院びょういんMRI検査けんさけ、同月どうげつ11にち検査けんさ結果けっかをCにわたした。そのさいにCは、ふたた輸血ゆけつ可否かひうたが、Aも前回ぜんかい同様どうよう「できません」とこたえた。

検査けんさ結果けっかけて、手術しゅじゅつかかわる医師いしらは手術しゅじゅつについてのじゅつぜん検討けんとうかいおこなった。検討けんとうかい結果けっか、Aの腫瘍しゅよう不測ふそく事態じたいから大量たいりょう出血しゅっけついた可能かのうせいがあるとされ、基本きほんてき輸血ゆけつおこなわないとしても、生命せいめい危険きけん事態じたいそなえてあらかじめ血液けつえき準備じゅんびする必要ひつようせいがあるという意見いけんされたため、血液けつえき準備じゅんびすることになった。これは、医科研いかけん患者かんじゃ輸血ゆけつ拒否きょひ意志いし尊重そんちょうして極力きょくりょく輸血ゆけつおこなわないようにはするが、輸血ゆけつ以外いがいには救命きゅうめい手段しゅだんがない場合ばあい患者かんじゃおよびその家族かぞく許諾きょだく有無うむにかかわらず輸血ゆけつおこなうという方針ほうしん相対そうたいてき輸血ゆけつ拒否きょひ)をとっていたためである。

9月14にち、BはAのおっとならびに息子むすこ手術しゅじゅつ説明せつめいおこなった。そのさいBは、さい出血しゅっけつがあった場合ばあいさい手術しゅじゅつ可能かのうせいについてれ、そのさいは「医師いし良心りょうしんしたがって治療ちりょうおこなう」と輸血ゆけつ可能かのうせいについて言外げんがいしめそうとした。説明せつめい、Aの息子むすこは、Aが輸血ゆけつけられないこと、輸血ゆけつをしなかったためにしょうじた損傷そんしょうかんして医師いしおよび病院びょういん職員しょくいんなどの責任せきにんわないむねとAの署名しょめい記載きさいした免責めんせき証書しょうしょをBに手渡てわたしたところ、Bはこれを「わかりました」とり、同席どうせきしていたCまたはDにわたした。

9月16にち、Aにたいする手術しゅじゅつがB、C、D、肝臓かんぞう外科医げかいであるE、麻酔ますいであるF、Gら(以下いかBら)によっておこなわれたが、患部かんぶ腫瘍しゅよう摘出てきしゅつした時点じてん出血しゅっけつ多量たりょうとなったため、Bらは輸血ゆけつをする以外いがいにAのいのちすくうことができないと判断はんだんして輸血ゆけつおこなった。その結果けっか手術しゅじゅつ成功せいこうした。医師いしBらは、輸血ゆけつ可能かのうせいつたえることでAが治療ちりょう拒否きょひすることをおそれ、最後さいごまで相対そうたいてき輸血ゆけつ拒否きょひ方針ほうしんをAに説明せつめいしなかった。

提訴ていそ

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Aは医科研いかけん退院たいいんしたあと、絶対ぜったいてき輸血ゆけつ拒否きょひ特約とくやくはんして輸血ゆけつおこなったくに医科研いかけん国立こくりつであったため)の債務さいむ不履行ふりこう責任せきにん輸血ゆけつ可能かのうせいについての説明せつめい義務ぎむ違反いはんによって、Aの輸血ゆけつかんする自己じこ決定けっていけん侵害しんがいしたことにたいする医師いしBらの不法ふほう行為こうい責任せきにん医師いしBらの不法ふほう行為こういたいするくに使用しようしゃ責任せきにん主張しゅちょうし、くに医師いしBらを相手取あいてど合計ごうけい1,200まんえん損害そんがい賠償ばいしょうもと提訴ていそした。

下級かきゅうしん判決はんけつ

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だいいちしん

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判決はんけつ

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1997ねん平成へいせい9ねん)3がつ12にち東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょは、原告げんこく請求せいきゅうをいずれも棄却ききゃくした。

債務さいむ不履行ふりこう責任せきにん

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輸血ゆけつおこなわないとする特約とくやくはんして、病院びょういんがAにたいして輸血ゆけつおこなったことによるくに債務さいむ不履行ふりこう責任せきにんについては、絶対ぜったいてき輸血ゆけつ拒否きょひする契約けいやく公序良俗こうじょりょうぞくはんして無効むこうであることを理由りゆうとしてみとめなかった。

不法ふほう行為こうい責任せきにん

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医師いしBらの輸血ゆけつ可能かのうせいについての説明せつめい義務ぎむ違反いはんによる不法ふほう行為こうい責任せきにんについては、医師いし救命きゅうめい義務ぎむがあることにくわえ、エホバの証人しょうにんである患者かんじゃ輸血ゆけつ可能かのうせいつたえると輸血ゆけつ拒否きょひするおそれがあり、その結果けっかいた蓋然性がいぜんせいたかいことなどを考慮こうりょすると、輸血ゆけつ可能かのうせいについて説明せつめいしなかったことがただちに違法いほうであるとはえないとしてみとめなかった。

控訴こうそ

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原告げんこくは、この判決はんけつ不服ふふくとして控訴こうそおこなった。8月13にちにAが死去しきょしたため、Aのおっと息子むすこ訴訟そしょう承継しょうけいした。

控訴こうそしん

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判決はんけつ

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1998ねん平成へいせい10ねん)2がつ9にち東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょは、いちしん判決はんけつ変更へんこう控訴こうそじん請求せいきゅう一部いちぶみとめ、B、C、Dおよびくにたいして55まんえん支払しはらいをめいじる判決はんけつくだした。

債務さいむ不履行ふりこう責任せきにん

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くに債務さいむ不履行ふりこう責任せきにんについては、Aと病院びょういんとのあいだ成立せいりつしていた特約とくやく相対そうたいてき輸血ゆけつ拒否きょひまり、絶対ぜったいてき輸血ゆけつ拒否きょひではないとしてみとめなかった。

そのように判断はんだんされた理由りゆうは、Aと病院びょういんとのあいだ絶対ぜったいてき輸血ゆけつ拒否きょひもうみと承諾しょうだく成立せいりつしていなかったためである。裁判所さいばんしょは、過去かこにエホバの証人しょうにん信者しんじゃ輸血ゆけつ容認ようにんしたれいげ、エホバの証人しょうにん信者しんじゃ輸血ゆけつ拒否きょひ一概いちがい絶対ぜったいてき輸血ゆけつ拒否きょひであるとはえないとした。そして、Aの口頭こうとうでの輸血ゆけつ拒否きょひもうみはいち明確めいかく承諾しょうだくされておらず、Bにわたされた免責めんせき証書しょうしょも「損傷そんしょう」という文言もんごんをも許容きょようしているかが明確めいかくでないとした。

ただし、かり絶対ぜったいてき輸血ゆけつ拒否きょひ契約けいやく成立せいりつしていた場合ばあい有効ゆうこうせいについては、輸血ゆけつ拒否きょひ他人たにん権利けんり侵害しんがいしないこと、過去かこ輸血ゆけつ拒否きょひによる死亡しぼうれい刑事けいじ訴追そついおこなわれていないこと、輸血ゆけつなしで手術しゅじゅつおこな医療いりょう機関きかん存在そんざいなどを理由りゆうに、公序良俗こうじょりょうぞく違反いはんにより無効むこうとしただいいちしん判決はんけつくつがえ有効ゆうこうであるとした。

不法ふほう行為こうい責任せきにん

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医師いし不法ふほう行為こうい責任せきにんについては、B、C、Dの説明せつめい義務ぎむ違反いはんによるAの自己じこ決定けっていけん侵害しんがいおよび、くに使用しようしゃ責任せきにんみとめた。

判決はんけつでは、「本件ほんけんのような手術しゅじゅつおこなうについては、患者かんじゃ同意どうい必要ひつようであり、(中略ちゅうりゃく)この同意どういは、かく個人こじんゆうする自己じこ人生じんせいのありかた(ライフスタイル)はみずからが決定けっていすることができるという自己じこ決定けっていけん由来ゆらいするものである」と自己じこ決定けっていけんみとめ、さらに「ひとはいずれはすべきものであり、そのいたるまでのきざまはみずか決定けっていできるといわなければならない(たとえばいわゆる尊厳そんげん選択せんたくする自由じゆうみとめられるべきである)」とかんする自己じこ決定けっていけんについてもみとめた。

説明せつめい義務ぎむ違反いはんについては、「医師いしは、エホバの証人しょうにん患者かんじゃたいして輸血ゆけつ予測よそくされる手術しゅじゅつをするに先立さきだち、どう患者かんじゃ判断はんだん能力のうりょくゆうする成人せいじんであるときには、輸血ゆけつ拒否きょひ意思いし具体ぐたいてき内容ないよう確認かくにんするとともに、医師いし輸血ゆけつについての治療ちりょう方針ほうしん説明せつめいすることが必要ひつようであるとほぐされる」としたうえで、B、C、Dには、絶対ぜったいてき輸血ゆけつ拒否きょひおこなわない方針ほうしん確定かくていした時点じてんでAにたいしてそのことを説明せつめいする機会きかいもうけるべきであったとした(E、FはAおよびその家族かぞく接触せっしょくする機会きかいがなかったことから説明せつめい義務ぎむ違反いはんはないとされた)。

そして、説明せつめい義務ぎむおこたった結果けっか、Aが「絶対ぜったいてき輸血ゆけつ意思いし維持いじして医科いかけんでの診療しんりょうけないこととするのか、あるいは絶対ぜったいてき輸血ゆけつ意思いし放棄ほうきして医科いかけんでの診療しんりょうけることとするかの選択せんたく機会きかい自己じこ決定けっていけん行使こうし機会きかい)をうばわれ、その権利けんり侵害しんがいされた」と説明せつめい義務ぎむ違反いはん自己じこ決定けっていけん違反いはん因果いんが関係かんけいみとめた。

上告じょうこく

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B、C、Dおよびくには、この判決はんけつ不服ふふくとして上告じょうこくした。

最高裁さいこうさい判決はんけつ

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2000ねん平成へいせい12ねん)2がつ29にち最高裁判所さいこうさいばんしょは、上告じょうこく棄却ききゃくした(はんタ1031ごう158ぺーじ)。理由りゆう以下いかとおりである。

「B医師いしらが、Aの肝臓かんぞう腫瘍しゅよう摘出てきしゅつするために、医療いりょう水準すいじゅんしたがった相当そうとう手術しゅじゅつをしようとすることは、ひと生命せいめいおよ健康けんこう管理かんりすべき業務ぎょうむ従事じゅうじするものとして当然とうぜんのことであるということができる。しかし、患者かんじゃが、輸血ゆけつけることは自己じこ宗教しゅうきょうじょう信念しんねんはんするとして、輸血ゆけつをともなう医療いりょう行為こうい拒否きょひするとの明確めいかく意思いしゆうしている場合ばあい、このような意思いし決定けっていをする権利けんりは、人格じんかくけんいち内容ないようとして尊重そんちょうされなければならない。そして、Aが、宗教しゅうきょうじょう信念しんねんからいかなる場合ばあいにも輸血ゆけつけることは拒否きょひするとのかた意思いしゆうしており、輸血ゆけつをともなわない手術しゅじゅつけることができると期待きたいして医科研いかけん入院にゅういんしたことをB医師いしらがっていたなど、本件ほんけん事実じじつ関係かんけいしたでは、B医師いしらは、手術しゅじゅつさい輸血ゆけつ以外いがいには救命きゅうめい手段しゅだんがない事態じたいしょうずる可能かのうせい否定ひていしがたいと判断はんだんした場合ばあいには、Aにたいし、医科研いかけんとしてはそのような事態じたいいたったときには輸血ゆけつするとの方針ほうしんをとっていることを説明せつめいして、医科研いかけんへの入院にゅういん継続けいぞくしたうえ、B医師いしらのした本件ほんけん手術しゅじゅつけるかかをA自身じしん意思いし決定けっていにゆだねるべきであったとするのが相当そうとうである」

「ところが、B医師いしらは、本件ほんけん手術しゅじゅついたるまでのやく1かげつあいだに、手術しゅじゅつさい輸血ゆけつ必要ひつようとする事態じたいしょうずる可能かのうせいがあることを認識にんしきしたにもかかわらず、Aにたいして医科研いかけん採用さいようしていたみぎ方針ほうしん説明せつめいせず、同人どうじんおよび上告じょうこくじんらにたいして輸血ゆけつする可能かのうせいがあることをげないまま本件ほんけん手術しゅじゅつ施行しこうし、みぎ方針ほうしんしたがって輸血ゆけつをしたのである。そうすると、本件ほんけんにおいては、B医師いしらは、みぎ説明せつめいおこたったことにより、Aが輸血ゆけつをともなう可能かのうせいのあった本件ほんけん手術しゅじゅつけるかかについて意思いし決定けっていをする権利けんりうばったものといわざるをず、このてんにおいて同人どうじん人格じんかくけん侵害しんがいしたものとして、同人どうじんがこれによってこうむった精神せいしんてき苦痛くつう慰謝いしゃすべき責任せきにんうものというべきである」

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外部がいぶリンク

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