オンボード

オンボードは、特とくにパーソナルコンピュータ (PC) においてマザーボード基板きばん上じょうに直接ちょくせつ接続せつぞくされた形態けいたいで提供ていきょうされるデバイス、またはそのデバイスによって提供ていきょうされる機能きのうのことである。俗ぞくにオンボなどと略称りゃくしょうされる場合ばあいもある。

概要がいよう[編集へんしゅう]

PCシステムにおいて、マザーボード基板きばん上じょうに直接ちょくせつ接続せつぞくされたデバイスにより提供ていきょうされる機能きのうをオンボードと呼称こしょうする。ただしマザーボード上じょうに搭載とうさいされるシステムチップセットにより実現じつげんされる機能きのうのうち、ごく標準ひょうじゅん的てきになっている機能きのうは特とくにオンボード機能きのうとは呼よばれない場合ばあいも多おおい。（例れい：シリアルポートコントローラやUSBコントローラなど）

歴史れきし[編集へんしゅう]

PC/AT互換ごかんシステムの普及ふきゅう当初とうしょ、システムの中核ちゅうかくを成なすマザーボードはシステムチップセット以外いがいにCPUおよびメモリを搭載とうさいするためのソケットと、拡張かくちょうカードを接続せつぞくするためのISAスロット程度ていどを搭載とうさいした、ごく簡単かんたんな構成こうせいのものであった。これは当時とうじのPC/AT互換ごかんシステムが可能かのうな限かぎり機能きのうをコンポーネント化かし、拡張かくちょうカード上じょうに分離ぶんりしていたためである。このため、当時とうじは必須ひっすの各種かくしゅレガシーI/OコントローラやIDEコントローラまでが拡張かくちょうカードにより実装じっそうされる状況じょうきょうであった。

しかしPCの普及ふきゅうに伴ともなう低てい価格かかく需要じゅようの高たかまりと半導体はんどうたい製造せいぞう技術ぎじゅつの進歩しんぽにより、まず基本きほん的てきな機能きのうからシステムチップセットへの統合とうごうが進すすめられた。これにより、拡張かくちょうカードを必要ひつようとせずマザーボード上じょうに実装じっそうされたデバイスのみで使用しよう可能かのうな機能きのうオンボード機能きのうが誕生たんじょうした。またデバイス自体じたいの小型こがた化かから、単体たんたいのコントローラチップをマザーボード上じょうに搭載とうさいすることで追加ついか機能きのうを付与ふよする手法しゅほうも誕生たんじょうした。

以降いこう、PCシステム自体じたいの低てい価格かかく化かや省しょうスペース需要じゅようの高たかまりにより、オンボード機能きのうは積極せっきょく的てきに用もちいられるようになっている^{[要よう出典しゅってん]}。

オンボード機能きのうのメリットとデメリット[編集へんしゅう]

メリット
- 部品ぶひん点数てんすうの減少げんしょうおよび製造せいぞう工程こうていの簡略かんりゃく化かによる低てい価格かかく化か
- 実装じっそう面積めんせきおよび体積たいせきの小ちいささによる省しょうスペース化か
- 拡張かくちょうカードの接触せっしょく不良ふりょうによる動作どうさ不良ふりょうの減少げんしょう
- マザーボードとデバイスの相性あいしょう問題もんだいの減少げんしょう（基板きばん設計せっけい時じに相性あいしょうが検討けんとうされる）
- PCIなどの標準ひょうじゅん仕様しように従したがわない接続せつぞくによる高性能こうせいのう化か。
デメリット
- 故障こしょう率りつの増大ぞうだい(当該とうがい部品ぶひんの故障こしょうがボード全体ぜんたいの故障こしょうとなりうる)
- 故障こしょう時じの修理しゅうりコストの増大ぞうだい（部品ぶひん点数てんすうが増ふえるため）
- 拡張かくちょう性せいの低下ていか（バスの占有せんゆう、オンボードデバイスと拡張かくちょうデバイスの競合きょうごうなど）

オンボードで提供ていきょうされる主おもな機能きのう[編集へんしゅう]

グラフィック[編集へんしゅう]

「オンボードグラフィック」を参照さんしょう

サウンド[編集へんしゅう]

サウンド機能きのうは比較的ひかくてき早はやくからオンボード化かが進すすめられた非ひ必須ひっす機能きのうのひとつであり、現在げんざいではほとんど全すべてのシステムでオンボードのサウンド機能きのうを搭載とうさいしている。

単体たんたいコントローラチップを用もちいる手法しゅほうと、チップセットに統合とうごうされた機能きのうを用もちいる手法しゅほうが主おもに存在そんざいするが、特殊とくしゅな例れいとしてサウンド機能きのうをCPUに統合とうごうしたサイリックスのMediaGXやグラフィックチップに統合とうごうしたNeoMagicのMagicMedia 256AVなども存在そんざいする。

チップセット統合とうごう機能きのうによるオンボードサウンド機能きのう[編集へんしゅう]

オンボードサウンド機能きのうの誕生たんじょう当初とうしょは後述こうじゅつの単体たんたいのサウンドコントローラチップをマザーボード上じょうに実装じっそうする手法しゅほうが一般いっぱん的てきであったが、1999年ねんにインテルが発表はっぴょうしたハブ・アーキテクチャで採用さいようされたサウスブリッジ ICHではAudio Codec 97 (AC'97) 規格きかく準拠じゅんきょのサウンドコントローラを統合とうごうしていた。これにより、サウスブリッジ (ICH) と安価あんかなAC'97コーデックチップだけでサウンド機能きのうが実現じつげんできるようになり、以降いこうはサウスブリッジにコーデックチップを組くみ合あわせてサウンド機能きのうを搭載とうさいするマザーボードが一般いっぱん化かした。インテルは2005年ねんにAC'97の後継こうけい規格きかくであるHD Audioを発表はっぴょうし、以降いこうのオンボードサウンド機能きのうはHD Audio準拠じゅんきょのものが一般いっぱん的てきとなっている。

なお、一部いちぶでは特とくにこの形式けいしきで搭載とうさいされているオンボードサウンド機能きのうのみを指さして「AC'97のオンボードサウンド」と略称りゃくしょうすることもあるが、AC'97自体じたいはサウンドデバイスとインタフェースの設計せっけいに関かかわる規格きかくである。このため、当時とうじは単体たんたいサウンドチップもAC'97準拠じゅんきょが標準ひょうじゅん的てきであり、正確せいかくな用法ようほうではない。詳細しょうさいはAudio Codec 97の項こうを参照さんしょう。

拡張かくちょうカード形状けいじょうのオンボードサウンド[編集へんしゅう]

サウンド機能きのうを実現じつげんするためのコーデックチップは一般いっぱん的てきにマザーボードの基板きばん上じょうに実装じっそうされるが、一部いちぶのマザーボードでは高音こうおん質しつ化かやインタフェースの搭載とうさいを目的もくてきとしてAMRやCNR、または独自どくじ規格きかくの拡張かくちょうスロットを用もちいて接続せつぞくされる拡張かくちょうカード形状けいじょうの基板きばんにコーデックチップを搭載とうさいしているものも存在そんざいした。拡張かくちょうカードおよびスロットは1990年代ねんだい末期まっき～2000年代ねんだい前半ぜんはんまでは見みかけられたが、今いまでは全まったく見みかけられない。

これらは外見がいけん的てきには単体たんたいのサウンドカードに酷似こくじしている場合ばあいもあるが、あくまでコントローラはサウスブリッジに依存いぞんしているものであり、対応たいおうマザーボード以外いがいでは動作どうさしない。そのため、これら製品せいひんもオンボードサウンド機能きのうとして扱あつかわれる。

単体たんたいサウンドコントローラによるオンボードサウンド機能きのう[編集へんしゅう]

ISAまたはPCIにより接続せつぞくされるサウンドコントローラチップをマザーボード上じょうに直接ちょくせつ実装じっそうする形態けいたいのオンボードサウンドである。オンボードサウンド機能きのうの発生はっせい当初とうしょはこの手法しゅほうによる実装じっそうが一般いっぱん的てきであり、特とくに拡張かくちょうカードの使用しようできないノートパソコンにおいては標準ひょうじゅん的てきに採用さいようされていた。

AC'97対応たいおうのサウスブリッジの普及ふきゅう以降いこう、単体たんたいのサウンドチップを搭載とうさいするマザーボード製品せいひんは激減げきげんした。ただしパフォーマンスおよび立体りったい音響おんきょう効果こうかなどの付加ふか機能きのうにおいて単体たんたいサウンドコントローラは統合とうごうサウンド機能きのうよりも有利ゆうりな製品せいひんも存在そんざいするため、単体たんたいのサウンドコントローラを搭載とうさいするマザーボード製品せいひんも主おもにハイエンド製品せいひんで存在そんざいする。

ネットワーク[編集へんしゅう]

かつてイーサネットによるLAN機能きのうをオンボードで搭載とうさいするのはネットワークに接続せつぞくすることが前提ぜんていのサーバや業務ぎょうむ向むけPCなどに限かぎられていた。しかし、2000年ねん代だい初頭しょとうからのブロードバンドの普及ふきゅうと、家庭かていでPCを複数ふくすう台だい所有しょゆうすることが一般いっぱん的てきになったことに伴ともない、ほとんど全すべてのシステムでオンボードのイーサネット機能きのうが搭載とうさいされるようになっている。単体たんたいコントローラチップを用もちいる手法しゅほうと、チップセットに統合とうごうされた機能きのうを用もちいる手法しゅほうが存在そんざいする。一般いっぱん的てきなオンボードLAN機能きのうでは1つのRJ45 LANコネクタのみを備そなえるが、複数ふくすうのコネクタを搭載とうさいする機種きしゅも存在そんざいする。

単体たんたいイーサネットコントローラによるオンボードLAN機能きのう[編集へんしゅう]

PCI接続せつぞくのイーサネットコントローラチップをマザーボード上じょうにオンボード搭載とうさいすることで実現じつげんされるもので、古ふるくから広ひろく用もちいられてきた。サーバなどの業務ぎょうむ用ようシステムでは性能せいのう的てきに優すぐれるインテルや3COMなどの製品せいひんが主おもに採用さいようされたが、一般いっぱん向むけシステムでもオンボードLANが一般いっぱん化かして以降いこうはRealtekなどの安価あんかな製品せいひんも広ひろく採用さいようされるようになっている。1000BASE-Tの登場とうじょう直後ちょくごは論理ろんり層そうチップと物理ぶつり層そうチップが分わかれていたイーサネットコントローラーも存在そんざいしたが、現在げんざいでは論理ろんり層そうチップと物理ぶつり層そうチップが1チップ化かしたイーサネットコントローラーを搭載とうさいするのが主流しゅりゅうである。

チップセットとの接続せつぞくにはPCIまたはPCI Expressが使用しようされるのが一般いっぱん的てきだが、1000BASE-Tの登場とうじょう直後ちょくごには十分じゅうぶんな帯域たいいきと普及ふきゅう率りつを持もつ適当てきとうな汎用はんようバスが存在そんざいしなかったため、一部いちぶのインテルチップセットではCSAと呼称こしょうする専用せんようバスを用もちいて接続せつぞくするものもあった。

拡張かくちょうカード形状けいじょうのオンボードLAN機能きのう[編集へんしゅう]

LAN機能きのうを実現じつげんするためのチップは一般いっぱん的てきにマザーボードの基板きばん上じょうに実装じっそうされるが、サウンド機能きのうと同様どうように、一部いちぶのマザーボードではAMRやCNR、または独自どくじ規格きかくの拡張かくちょうスロットを用もちいて接続せつぞくされる拡張かくちょうカード形状けいじょうの基板きばんに物理ぶつり層そうチップを搭載とうさいしているものも存在そんざいした。拡張かくちょうカードおよびスロットは1990年代ねんだい末期まっき～2000年代ねんだい前半ぜんはんまでは見みかけられたが、今いまでは全まったく見みかけられない。

これらは外見がいけん的てきには単体たんたいのLANカードに酷似こくじしている場合ばあいもあるが、あくまでコントローラはサウスブリッジに依存いぞんしているものであり、対応たいおうマザーボード以外いがいでは動作どうさしない。そのため、これら製品せいひんもオンボードLAN機能きのうとして扱あつかわれる。

チップセット統合とうごう機能きのうによるオンボードLAN機能きのう[編集へんしゅう]

1999年ねんにインテルが発表はっぴょうしたハブ・アーキテクチャで採用さいようされたサウスブリッジICHではOSI参照さんしょうモデルのデータリンク層そうに相当そうとうするネットワークコントローラを統合とうごうしており、安価あんかな物理ぶつり層そうチップを追加ついかするだけでオンボードLAN機能きのうが実現じつげんするようになっている。

しかしRealtekなどの提供ていきょうする単体たんたいコントローラが十分じゅうぶんに安価あんかなことに加くわえ、ソフトウェア処理しょりのサウスブリッジ統合とうごうコントローラでは高速こうそくなネットワーク処理しょりの際さいの負荷ふかが無視むしできないこともあり、オンボードサウンド機能きのうほど広ひろく採用さいようされているとは言いえない状況じょうきょうである。

インタフェース[編集へんしゅう]

インタフェース類るいはもっとも初期しょきからチップセットへの統合とうごうによるオンボード化かが進すすんだデバイスである。さらに、チップセットへの統合とうごうが一般いっぱん化かした後のちでもインタフェースの強化きょうかを目的もくてきに別途べっとコントローラチップなどがオンボード搭載とうさいがされる場合ばあいがある。これらの例れいにはIDE / Ultra ATAおよびシリアルATA、USBなどのインタフェースが主おもに該当がいとうする。レガシーインターフェースの大半たいはんはスーパーI/Oの機能きのうによって実現じつげんしている。

チップセット非ひ標準ひょうじゅんのインタフェースをオンボード搭載とうさいする例れいとしてはIEEE 1394が代表だいひょう的てきである他ほか、ノートパソコンで広ひろく搭載とうさいされるPCカード/CardBusシステムなども挙あげられる。

また、サーバシステムではSCSIやRAIDなどの、ストレージを接続せつぞくするための高速こうそくインタフェース用ようコントローラチップをオンボード搭載とうさいするものも多おおい。

その他た[編集へんしゅう]

CPUのオンボード実装じっそうは特とくに実装じっそうスペースの節約せつやくが重視じゅうしされるノートパソコンではごく一般いっぱん的てきに採用さいようされる他ほか、CPU単体たんたいでの交換こうかんを考慮こうりょする必要ひつようのない組くみ込こめ向こうシステムなどでも採用さいようされている。これらの場合ばあいは、ソケット用ようのPGAまたはLGAパッケージではなく、半田付はんだづけを前提ぜんていとしたBGAパッケージの製品せいひんが主おもに用もちいられる。

メインメモリのオンボード実装じっそうも一部いちぶのノートパソコンで採用さいようされている他ほか、主おもに低てい価格かかくPCなどでフラッシュメモリ（eMMC）もオンボード搭載とうさいされるようになった。

またCPU用ようの二に次じキャッシュメモリをスロットで搭載とうさいすることが当然とうぜんであった時代じだいには、二に次じキャッシュをあらかじめオンボードで搭載とうさいする製品せいひんも多おおく存在そんざいした。

オンボードで搭載とうさいできないもの[編集へんしゅう]

デスクトップパソコンでは、「電源でんげんユニット」、「スピーカー」、「キーボード」、「スライドパッド」、「画面がめん」はオンボードで搭載とうさいされていない。スピーカーについてはビープ音おん用ようのモノラルスピーカーをマザーボード上じょうにオンボードで搭載とうさいする事ことは技術ぎじゅつ的てきに可能かのうであるが、現在げんざいは外そと付づけが主流しゅりゅうである。

モデムは早はやくから広ひろく使用しようされているデバイスであるにもかかわらず、ノートパソコン以外いがいではオンボード搭載とうさいされることが一般いっぱん的てきではない。さらに、ノートパソコンにおいても内部ないぶ的てきには別べつモジュールとなっていることが多おおい。

これはモデムで使用しようする規格きかくが各国かっこくごとに統一とういつされておらず、ある国くにでモデムをオンボード搭載とうさいしても別べつの国くにでも使つかえるとは限かぎらず、製品せいひんの国際こくさい的てきな販売はんばいに支障ししょうをきたすためである。オンボードにできないモデムを安価あんかに搭載とうさいするためAMRおよびCNRといった規格きかくが策定さくていされているが、2000年代ねんだい半なかば以後いごはこのスロットを搭載とうさいするマザーボードは見みられなくなり、モデム自体じたいもブロードバンドの普及ふきゅうで使つかわれなくなっていった。