カナダオオヤマネコ

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カナダオオヤマネコ
カナダオオヤマネコ
カナダオオヤマネコ Lynx canadensis
保全ほぜんじょうきょう評価ひょうか[1][2][3]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
ワシントン条約じょうやく附属ふぞくしょII
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 哺乳ほにゅうつな Mammalia
: 食肉しょくにく Carnivora
: ネコ Felidae
: ネコ Felinae
ぞく : オオヤマネコぞく Lynx
たね : カナダオオヤマネコ
L. canadensis
学名がくめい
Lynx canadensis
Kerr, 1792[4][5][6]
和名わみょう
カナダオオヤマネコ[7]
英名えいめい
American lynx[3]
Canada lynx[3][4][8]
Canadian lynx[5][6][8]

分布域

カナダオオヤマネコ (Lynx canadensis) は、哺乳ほにゅうつな食肉しょくにくネコオオヤマネコぞく分類ぶんるいされる食肉しょくにくるいオオヤマネコとはきんえんどういちしゅとみなす専門せんもんもいるが、ほんしゅにはオオヤマネコよりむしろボブキャットちか特徴とくちょう存在そんざいする。ボブキャットとは生息せいそくいき一部いちぶかさなるが、ほんしゅほうがより大型おおがたである。

分布ぶんぷ[編集へんしゅう]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく北部ほくぶアラスカしゅうカナダ[5][4][7]コロラドしゅうさい導入どうにゅう[5][8]

形態けいたい[編集へんしゅう]

あたまどうちょう体長たいちょう)67 - 110センチメートル[7]尾長おなが5 - 17センチメートル[7]体重たいじゅう7 - 17キログラム[7]。オオヤマネコと形態けいたいてきによくているが、やや小型こがたである。オスはメスよりからだおおきい。シルバーがかった茶色ちゃいろ毛皮けがわくろみがかった斑点はんてんをもつ。ひだえりのようなくびをもち、みみ先端せんたんにはくろぼうがある。虹彩こうさい黄土おうどしょくから緑色みどりいろで、瞳孔どうこう円形えんけい収縮しゅうしゅくする。4月から5がつと10がつから11月にかわする。なつふゆくらべてみじかく、あかみがかった茶色ちゃいろになる。あしうら体毛たいもうおおわれる[7]体毛たいもうおおわれたあしうらみじか寒冷かんれいへの適応てきおうかんがえられている[7]ながあしふかにおおわれたあしは、ふかゆきなかあるまわるのにてきしている。[9][よう検証けんしょう]

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

ヒョウ

Pardofelisぞく(アジアゴールデンキャットなどをふくむ)

Caracalぞく(サーバルをふくむ)

オセロットぞくLeopardus

ボブキャットLynx rufus

カナダオオヤマネコL. canadensis

オオヤマネコL. lynx

スペインオオヤマネコL. pardinus

ネコぞく

Johnson et al. (2006) よりX染色せんしょくたい・Y染色せんしょくたい・ミトコンドリアDNAの遺伝子いでんしより推定すいていした系統けいとうじゅより抜粋ばっすい[10]

カナダオオヤマネコの分類ぶんるいについては、このたねLynx canadensisとするかFelis canadensisとするか、さらにうならオオヤマネコぞくの4しゅ(オオヤマネコ、カナダオオヤマネコ、スペインオオヤマネコ、ボブキャット)は独自どくじぞく分類ぶんるいされるべきか、ネコぞくぞく分類ぶんるいされるべきか、という議論ぎろんがなされている[11][12]現在げんざいでは独自どくじのオオヤマネコぞく分類ぶんるいする方法ほうほうれられている。

以下いか亜種あしゅ分類ぶんるいは、Wozencraft (2005)・Lavoie et al. (2019) にしたが[5][6]分布ぶんぷはIUCN SSC Cat Specialist Group (Kitchener et al., 2017) にしたがうが、IUCN SSC Cat Specialist Groupではこれらの亜種あしゅみとめていない[4]

Lynx canadensis canadensis Kerr, 1792
カナダ本土ほんど
Lynx canadensis mollipilosus Stone, 1900
アラスカしゅう
Lynx canadensis subsolanus Bnags, 1897
ニューファンドランドとう
ニューファンドランドリンクス(Newfoundland lynx)とばれている。カンジキウサギがいないとき、カリブー子供こどもおそうことでられる[よう出典しゅってん]

生態せいたい[編集へんしゅう]

針葉樹しんようじゅりん低木ていぼくりん生息せいそくする[7]単独たんどく生活せいかつする[7]夜行やこうせいで、昼間ひるまやぶなかいわかげなどでやす[7]ひろ縄張なわばりをもつ。地表ちひょう傾向けいこうつよいが、のぼりやおよぐこともできる[7]みなみ南西なんせいめんした斜面しゃめんつくることがおお[13]

おもカンジキウサギLepus americanusべるが、かじるい、ヘラジカ・トナカイなどの動物どうぶつ死骸しがいべる[7]ノウサギなどのげっるいくわ昆虫こんちゅうネズミリス鳥類ちょうるい捕食ほしょくする。このため、やく10ねんのスパンで個体こたいすう減少げんしょうするカンジキウサギにわせて、ほんしゅ個体こたいすう激減げきげんする[14]ハドソンわんしゃ(Hudson's Bay Company, HBC)とカナダ政府せいふにこれについての1730年代ねんだいからの記録きろくのこっている[15]。グラフには特徴とくちょうてき顕著けんちょ増減ぞうげんかえ記録きろくされており、ピーク生息せいそくすう最低さいていでは10ばいほどのがある。ピークからそこまではやく5ねんかかり、そのすぐに生息せいそくすう増加ぞうかはじめる。

繁殖はんしょく様式ようしき胎生たいせい繁殖はんしょくは3 - 5月で、妊娠にんしん期間きかんは9週間しゅうかん[7]。1かいに1 - 6ひきおもに3 - 4ひき)のようじゅう[7]野生やせいでは、最大さいだい8とうようじゅうんだれいがある[5][8]わか個体こたいびられるかどうかは、縄張なわばちゅう獲物えものとなる生物せいぶつがどれだけいるかにかっている。ようじゅう生後せいご10日とおか開眼かいがんし、生後せいごやく6 - 8週間しゅうかんえさおこな[5]生後せいご8 - 10かげつ成獣せいじゅうわる[7]生後せいご10 - 17かげつ独立どくりつする[8]。メスは、どもが離乳りにゅう自力じりき獲物えものさがすようになるまでそだげる。寿命じゅみょうは、野生やせい最長さいちょう16ねん[5][8]

人間にんげんとの関係かんけい[編集へんしゅう]

森林しんりん伐採ばっさいによる生息せいそく破壊はかい交通こうつう事故じこわなによるこん、コヨーテとの競合きょうごうなどによる影響えいきょう懸念けねんされている[3]。1977ねんにネコ単位たんいでワシントン条約じょうやく附属ふぞくしょIIに掲載けいさいされている[2]

日本にっぽんでは、リュンクスぞく(オオヤマネコぞく単位たんい特定とくてい動物どうぶつ指定していされている[16]

カナダアラスカ森林しんりん生息せいそくする。またアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくモンタナしゅうアイダホしゅうワシントンしゅうにも数多かずおお生息せいそくし、イエローストーンけん生態せいたいけい中心ちゅうしんであるイエローストーン国立こくりつ公園こうえんなかにもその姿すがたることができる[17]ユタしゅうミネソタしゅうニューイングランドではまれにしかることができない。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大陸たいりく中部ちゅうぶの48しゅう(contiguous United States)では、米国べいこく魚類ぎょるい野生やせい生物せいぶつきょく(U.S. Fish and Wildlife Service)によって絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅ指定していされており[18][19]コロラドしゅうでは1999ねんからほんしゅさい導入どうにゅうまれていた。そして2003ねんには野生やせいまれた最初さいしょ子供こども確認かくにんされ、さい導入どうにゅう成功せいこうおさめつつある。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Appendices I, II and III, valid from 28 August 2020 <https://cites.org/eng> (Accessed 03/12/2020)
  2. ^ a b UNEP (2020). Lynx canadensis. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (Accessed 03/12/2020)
  3. ^ a b c d Vashon, J. 2016. Lynx canadensis. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T12518A101138963. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-2.RLTS.T12518A101138963.en. Downloaded on 03 December 2020.
  4. ^ a b c d Kitchener A. C., Breitenmoser-Würsten Ch., Eizirik E., Gentry A., Werdelin L., Wilting A., Yamaguchi N., Abramov A. V., Christiansen P., Driscoll C., Duckworth J. W., Johnson W., Luo S.-J., Meijaard E., O’Donoghue P., Sanderson J., Seymour K., Bruford M., Groves C., Hoffmann M., Nowell K., Timmons Z. & Tobe S. 2017. “A revised taxonomy of the Felidae. The final report of the Cat Classification Task Force of the IUCN/SSC Cat Specialist Group”. Cat News, Special Issue 11, Pages 1-80.
  5. ^ a b c d e f g h Maxime Lavoie, Aurélie Renard, Serge Larivière, Lynx canadensis (Carnivora: Felidae), Mammalian Species, Volume 51, Issue 985, American Society of Mammalogists, 2019, Pages 136–154.
  6. ^ a b c W. Christopher Wozencraft, "Lynx canadensis," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Volume 1, Johns Hopkins University Press, 2005, Page 540.
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 成島なりしま悦雄えつお 「カナダオオヤマネコ」『世界せかい動物どうぶつ 分類ぶんるい飼育しいく2 (食肉しょくにく)』今泉いまいずみよしのり監修かんしゅう東京とうきょう動物どうぶつえん協会きょうかい、1991ねん、166ぺーじ
  8. ^ a b c d e f Luke Hunter 「カナダオオヤマネコ」山上やまかみ佳子けいこやく野生やせいネコの教科書きょうかしょ今泉いまいずみ忠明ただあき監修かんしゅう、エクスナレッジ、2018ねん、144-149ぺーじ
  9. ^ 世界せかい動物どうぶつ分類ぶんるい飼育しいく2 〔食肉しょくにく〕』 今泉いまいずみよしのり 監修かんしゅう東京とうきょう動物どうぶつえん協会きょうかい、1991ねん、P.166、ISBN 4-88622-061-4
  10. ^ Warren E. Johnson, Eduardo Eizirik, Jill Pecon-Slattery, William J. Murphy, Agostinho Antunes, Emma Teeling, Stephen J. O'Brien, "The Late Miocene Radiation of Modern Felidae: A Genetic Assessment," Science, Volume 311, No. 5757, 2006, Pages 73-77.
  11. ^ Zielinski, William J; Kuceradate, Thomas E (1998). American Marten, Fisher, Lynx, and Wolverine: Survey Methods for Their Detection. DIANE Publishing. pp. 77-8. ISBN 0788136283 
  12. ^ Carron Meaney; Gary P. Beauvais (2004ねん9がつ). “Species Assessment for Canada Lynx (Lynx Canadensis) in Wyoming” (PDF). アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく内務省ないむしょう, Bureau of Land Management. 2007ねん6がつ25にち閲覧えつらん
  13. ^ Slough, BG (1999). (abstract) “Characteristics of Canada Lynx, Lynx canadensis, Maternal Dens and Denning Habitat”. Canadian Field-Naturalist 113 (4): 605=608. http://md1.csa.com/partners/viewrecord.php?requester=gs&collection=ENV&recid=4698199&q=&uid=791057556&setcookie=yes (abstract) 2007ねん7がつ23にち閲覧えつらん. 
  14. ^ ナショナルジオグラフィック日本にっぽん公式こうしきサイト「オオヤマネコ」解説かいせつより
  15. ^ Weinstein, MS (1977). (abstract) “Hares, Lynx, and Trappers”. The American Naturalist 111 (980): 806–808. doi:10.1086/283212. http://links.jstor.org/sici?sici=0003-0147%28197707%2F08%29111%3A980%3C806%3AHLAT%3E2.0.CO%3B2-M&size=LARGE&origin=JSTOR-enlargePage (abstract) 2007ねん7がつ23にち閲覧えつらん. 
  16. ^ 特定とくてい動物どうぶつリスト (動物どうぶつ愛護あいご適切てきせつ管理かんり)環境省かんきょうしょう・2020ねん12月3にち利用りよう
  17. ^ Potter, Tiffany (2004ねん4がつ13にち). “Reproduction of Canada Lynx Discovered in Yellowstone”. Nature: Year in Review. National Park Service. 2007ねん3がつ19にち閲覧えつらん
  18. ^ http://ecos.fws.gov/docs/federal_register/fr3552.pdf 65 Federal Register 16051 16086
  19. ^ Canada Lynx - U.S. FWS

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]