キャリッジ・リターン

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
機械きかいしきタイプライター。ひだりにキャリッジ・リターンをおこなうレバーがいている。

キャリッジ・リターン(carriage return)は本来ほんらいテレタイプ端末たんまつBaudot Code における制御せいぎょ文字もじ用語ようごで、行末ゆくすえから行頭ぎょうとうもど復帰ふっきコードであって、改行かいぎょうコードふくまない。そのタイプライターいちぎょうんだうしろ固定こていするシリンダー(キャリッジ)をつぎくだり先頭せんとうにタイプできるようにもどし(リターン)改行かいぎょうする機構きこう(またはその機構きこう操作そうさするレバー)を「キャリッジ・リターン」とんだ。キャリッジ・リターンが電動でんどうちかられずに操作そうさできるようになったのは、1960年代ねんだいスミス・コロナせい電動でんどうタイプライターが最初さいしょである。電動でんどうタイプライターでその操作そうさおこなうキーには "carriage return" または "return" と刻印こくいんされていた。英語えいごけん以外いがいにも通用つうようするよう 「」 というシンボル(リターン記号きごう)がそのキーに刻印こくいんされるようになっていき、文字もじ使つかわずにそのキー操作そうさあらわすときにこの記号きごう使つかわれるようになっていった。

コンピュータでの意味いみ[編集へんしゅう]

コンピューティングでは、キャリッジ・リターン (CR) はASCIIUnicodeEBCDICにおける制御せいぎょ文字もじ一種いっしゅで、プリンターまたはなんらかの表示ひょうじ装置そうちカーソルどういちぎょう先頭せんとう位置いち移動いどうさせる意味いみつ。ほとんどの場合ばあいカーソルつぎくだりおなけた位置いち移動いどうさせる改行かいぎょうコードわせて使つかわれ、2つをわせて「改行かいぎょう操作そうさあらわす。用語ようご上述じょうじゅつのようにテレタイプ端末たんまつやタイプライターに由来ゆらいする。これは初期しょきのプリンターがタイプライターとよくていて、タイプライターとおなじようにキャリッジ・リターン機構きこうがあって、それをこの制御せいぎょ文字もじ操作そうさしていたためである。

グラフィックスを表示ひょうじできないプリンターテレタイプ端末たんまつ、コンピュータ端末たんまつでは、改行かいぎょうコードをともなわないキャリッジ・リターンを使つかって文字もじかさちでき、そうすることで擬似ぎじてきなグラフィックスを実現じつげんしたり、アンダーラインを文字もじ付与ふよしたり、文字もじ抹消まっしょうしたりといったことを実現じつげんしていた。

コンピュータプログラムでは、キャリッジ・リターン文字もじ単独たんどくまたは改行かいぎょう文字もじとも行末ゆくすえしめすコードとして使つかわれるが、おな機能きのうべつ文字もじあらわすこともある(改行かいぎょうコード参照さんしょう)。ワープロソフトなどでは、「改行かいぎょう」と「強制きょうせい改行かいぎょう」を区別くべつしており、「改行かいぎょう」は段落だんらく区切くぎり、「強制きょうせい改行かいぎょう」は段落だんらくない強制きょうせいてき改行かいぎょうで、キャリッジ・リターンだけでは前者ぜんしゃ機能きのうになる。HTMLなどでは、改行かいぎょう段落だんらくえに独自どくじ表現ひょうげん採用さいようしており、復帰ふっきコードや改行かいぎょうコードは空白くうはく文字もじとしてあつかわれる。

ASCIIおよびUnicodeでは、キャリッジ・リターン(復帰ふっきコード)の10しん文字もじコードは 13(16しんでは 0D)である。C言語げんごやC言語げんご影響えいきょうけたおおくの言語げんごでは、\r復帰ふっきコードをあらわ[1]

ユーザインタフェース機能きのう[編集へんしゅう]

WindowsMacintoshおよびおおくのGUIオペレーティングシステムでは、リターンキーを押下おうかするとダイアログボックスデフォルトオプション(通常つうじょうOKYes)を選択せんたくしたことになる。

Mac OS ではリターンキーとエンターキーにちがいがあるが、Microsoft Windows ではちがいがない。現在げんざいでは区別くべつなく使つかわれているが、キーボードじょうにリターンキーとエンターキーがある場合ばあい実際じっさいにはことなるスキャンコードおくっているので、プログラムによってことなる用途ようと使つかうこともできる。

まとめ[編集へんしゅう]

  • 一般いっぱんに「キャリッジ・リターン」文字もじ生成せいせいするキー
    「エンター」キー (Enter)
    「リターン」キー (Return)
    キー
    Ctrl-M
  • ASCIIおよびUnicodeでの「キャリッジ・リターン」
    10しんコード: 13
    16しんコード: 0D
    シンボル: CR
  • プログラミング言語げんごでのエスケープコードと「キャリッジ・リターン」を生成せいせいする関数かんすう
    PHP, Python, Bash, C/C++, C#, Java, JavaScript, Perl, Ruby: \r
    Visual Basic (VB), VBA, VB.NET: vbCr または Chr$(13)
    CFML: Chr(13)
    XML (HTML, XSLT): 
  • Microsoft Office での「キャリッジ・リターン」
    Word: Shift-Enter
    検索けんさく」と「置換ちかん」での正規せいき表現ひょうげん: ^p
    検索けんさく」と「置換ちかん」での代替だいたい表現ひょうげん: ^013
    検索けんさく」と「置換ちかん」での「手動しゅどう復帰ふっきよう表現ひょうげん: ^l
  • OpenOffice.org での「キャリッジ・リターン」
    Writer での「検索けんさく」と「置換ちかん」の正規せいき表現ひょうげん: $

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Eric S. Roberts. The Art and Science of C. Addison-Wesley, 1995. p311.