クィディッチ

真まん中なかの赤あかい球たまが「クアッフル」左右さゆうの球たまが「ブラッジャー」（ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターの展示てんじ）

クィディッチ（英語えいご quidditch）は、ハリー・ポッターシリーズに登場とうじょうする架空かくうのスポーツ。箒ほうきに乗のって飛行ひこうする7人にんの選手せんしゅで1チームを構成こうせいし、試合しあいでは楕円だえん状じょうの競技きょうぎ場じょうの上空じょうくうで2チームが4つのボールを使つかって対戦たいせんするという設定せってい。

魔法まほう学校がっこうを舞台ぶたいとするハリー・ポッターシリーズ中なかでクィディッチというスポーツは学校がっこう生活せいかつを構成こうせいする要素ようその一ひとつである。これはラグビースクールのラグビー、イートン・カレッジのEton wall gameなどイギリスのパブリックスクールの伝統でんとうにならった設定せっていだと考かんがえられる。1997年ねんに出版しゅっぱんされたシリーズ第だい1巻かんの『ハリー・ポッターと賢者けんじゃの石いし』で主人公しゅじんこうハリー・ポッターは実力じつりょくを見込みこまれて自分じぶんの寮りょうのクィディッチ選手せんしゅの一人ひとりとなり、シーカーのポジションを務つとめる。その後ご、作中さくちゅうではクィディッチ競技きょうぎ場じょうでの寮りょう対抗たいこうのクィディッチの試合しあい、プロ選手せんしゅの試合しあいなどが描写びょうしゃされる。

別途べっと出版しゅっぱんされた『クィディッチ今昔こんじゃく』には、ハリー・ポッターシリーズの世界せかいでのクィディッチの歴史れきしが古代こだいにまで遡さかのぼって描えがかれている。

日本語にほんごで他たにキディッチ、クイディッチとも。

語かたり誌し

「ditch」（溝みぞ）の一種いっしゅを指さす意味いみでの「quidditch」という単語たんごは古ふるくから英語えいごに存在そんざいしていた。J・K・ローリング自身じしんは深ふかく考かんがえずに("on a total whim")作中さくちゅうのこのスポーツにこの名前なまえを付つけたと述のべた。

オックスフォード英語えいご辞典じてんは2017年ねんにハリー・ポッターシリーズの「quidditch」を新語しんごとして採録さいろくした。

設定せってい

ハリー・ポッターシリーズ中ちゅうでは、イギリス発祥はっしょうで、世界せかい的てき人気にんきを有ゆうするスポーツという設定せってい。ワールドカップも開催かいさいされる。2チームに分わかれ、所定しょていの球たまをゴールに投入とうにゅうして得点とくてんを競きそう、現実げんじつ世界せかいにおけるバスケットボールやサッカーなどに似にた球技きゅうぎ。魔法まほう界かいにおいてもっとも人気にんきのあるスポーツとされる。ただし人気にんきの度合どあいについては各国かっこくによって差さがあり、派生はせいスポーツのクォドポットが人気にんきのアメリカや空そら飛とぶカーペットが主要しゅような移動いどう手段しゅだんなアジアでは、人気にんきがそれほどでもない（なお、日本にっぽんではアジアでも例外れいがい的てきにクィディッチが盛さかんである。これは数すう世紀せいき前まえにホグワーツ生せいの集団しゅうだんが箒ほうきで世界せかい一周いっしゅう中ちゅうに風ふうに吹ふき飛とばされていたところをマホウトコロの職員しょくいんに助たすけられた際さいのお礼れいとしてクィディッチを伝つたえたためであるとされる）。

ローリングによれば、クィディッチはバスケットボールに似にているという。

歴史れきし

11世紀せいきにイギリスのクィアディッチ湿原しつげんで始はじまったとされている。このころはスポーツというよりも遊あそびで、スニッチは使用しようしなかった。その後ご1398年ねんに、ザカリアス・マンプスがしっかりとしたルールを定さだめたとされている。1473年ねん、初はじめてクィディッチ・ワールドカップが開催かいさいされる。1674年ねんにはイギリスでクィディッチ・リーグが設立せつりつされ、1750年ねんに「魔法まほうゲーム及およびスポーツ局きょく」が設立せつりつ。クィディッチの公式こうしきルールが誕生たんじょうした。

用具ようぐ

箒ほうき（ほうき / 各かく選手せんしゅに1本ほんずつ）

クィディッチ競技きょうぎ用ようとされる飛行ひこう用よう箒ほうきは、魔法まほう界かいにおける（実用じつよう）飛行ひこう用よう箒ほうきでは最さい高級こうきゅう品ひんとされている。クィディッチワールドカップでは、開催かいさい当時とうじの最高さいこう性能せいのうを有ゆうする箒ほうきが公式こうしきの箒ほうきに指定していされる。また、箒ほうきにはいくつかのブランド・シリーズおよびメーカー（ニンバス、ファイアボルト、クイーンスイーブ、コメットなど）がある。

ボール

クィディッチで使つかわれるボールは3種類しゅるいあり、それぞれ異ことなる役割やくわりを持もつ。

クアッフル（1個いっこ）

直径ちょっけい30センチほどの革かわ製せいの赤あかいボール。かつては革かわ色しょくだったが泥どろのなかに落おちると発見はっけんが難むずかしくなるため赤あかく塗ぬられた。縫ぬい目めはない。これを相手あいてゴールに入いれると10点てんとなる。

片手かたてで掴つかむための「握にぎり呪文じゅもん」と、落下らっか速度そくどを遅おそくする呪文じゅもん（取とり落おとしたときに拾ひろいやすくするため）がかけられている。

ブラッジャー（2個こ）

クアッフルより少すこし小ちいさい鉄製てつせいの黒くろいボール。直径ちょっけいは10インチ（25.4cm）。自由自在じゆうじざいに飛とび回まわり、最もっとも近ちかくにいる選手せんしゅを無差別むさべつに箒ほうきから叩たたき落おとそうとする。通称つうしょう「暴あばれ球だま」。

大昔おおむかしは大おおきな石いしに魔法まほうをかけたものだったが、打うたれて砕くだけた破片はへんがてんでんばらばらに選手せんしゅを追おい掛かけ回まわすため、割われないように鉛なまりに変更へんこうされたが、表面ひょうめんがへこむと真まっ直すぐ飛とぶ能力のうりょくに異常いじょうを起おこすので鉄てつに変更へんこうされた（とはいえ、鉄製てつせいでも全まったく割われないわけではない。石いしよりは割われにくいというだけである）。語源ごげんはBlooder（ブラッダー：血ちまみれにするもの）および、Bladder（膀胱ぼうこう：現実げんじつ世界せかいのサッカーの歴史れきしにおいて初期しょきはボールとして豚ぶたの膀胱ぼうこうを膨ふくらましたものを使用しようしたことと関連かんれんする）。しかし、ホグワーツの歴史れきしのなかでも、顎あごの骨ほねを折おった人ひとが2、3人にんほどいるだけで死亡しぼう事故じこはいまだ起おこっていないとされる。

スニッチ（1個いっこ）

胡桃くるみくらいの大おおきさの金属きんぞく製せいの金色きんいろのボール。ピッチ内ないを縦横無尽じゅうおうむじんに飛とび回まわる。これを捕とった選手せんしゅの所属しょぞくチームに150点てんが与あたえられ、同時どうじに試合しあい終了しゅうりょうとなる（い換いかえれば、これが捕つかまらない限かぎりいつまでも試合しあいが続つづくため、わずか3.5秒びょうで試合しあい終了しゅうりょうになったこともあれば、数ヶ月すうかげつ試合しあいが続つづいたこともある）。スニッチには両りょうチームのシーカーにほぼ同時どうじに捕つかまえられた時ときにどちらが先さきに捕とったかを判別はんべつするために「肉にくの記憶きおく」という魔法まほうが掛かけられている。

銀色ぎんいろの羽はね（映画えいがでは金色きんいろ）があり、空中くうちゅうを素早すばやく飛とぶ。稲妻いなづまのようなスピードで正確せいかくに方向ほうこう転換てんかんすることができる。捕とるのが非常ひじょうに困難こんなんであり、そのためスニッチを捕とる専せん門もんのポジション「シーカー」が設もうけられている。

古ふるくはスニジェットという同形どうけいの魔法まほう生物せいぶつが使つかわれていたが、乱獲らんかくされ絶滅ぜつめつ危惧きぐ種しゅとなったため、その魔法まほう生物せいぶつに似にた特徴とくちょうのボールが開発かいはつされた。スニッチはスニジェットと異ことなりピッチ内ないにとどまる魔法まほうがかけられている。

クラブ（ビーター1人にんにつき1本ほんずつ）

ビーターが味方みかたのチームに近付ちかづいたブラッジャーを打うつために使つかう、魔法まほうで強化きょうかされた木製もくせいの棍棒こんぼう。

ルール

7名めいの選手せんしゅで構成こうせいされたチームが2チーム、計けい14名めいで対戦たいせんする。審判しんぱんは主審しゅしん1人ひとりと線審せんしん数すう人にん。競技きょうぎ場所ばしょは「ピッチ」と呼よばれる専用せんようのものが使つかわれる。競技きょうぎ時間じかん中ちゅうに、クアッフルを相手あいてチームのゴールに投なげ入いれて得点とくてんを競きそう（1ゴール10点てん）。ただし、スニッチを捕とるとボーナス得点とくてん（150点てん）が得えられるため、クアッフルによる得点とくてんが低ひくくても、この得点とくてん差さ以内いないならば逆転ぎゃくてんが可能かのうである。基本きほん的てきに試合しあい時間じかん中ちゅう、選手せんしゅは（墜落ついらくして負傷ふしょうした場合ばあいを除のぞき）地面じめんに足あしをついてはいけないが、キャプテンが審判しんぱんにタイムを申もうし立たてた時ときのみ足あしをついても良よい。試合しあいが12時じ間あいだを超こえた場合ばあい、このタイムは2時じ間あいだまで延長えんちょうできる。またスニッチがいつまでたっても捕つかまらない場合ばあい、両りょうチームのキャプテンの合意ごういがあれば試合しあいを終了しゅうりょうすることも可能かのう。また杖つえはピッチへの持もち込こみ自体じたいは可能かのうだが、相手あいてチームの選手せんしゅや箒ほうき、審判しんぱん、ボール、または観客かんきゃくに対たいしての使用しようは禁止きんしされている。

ポジション

チェイサー

1チームに3名めい。クアッフルを奪うばい合あい、相手あいてチームのゴールに入いれることが役目やくめ。

キーパー

1チームに1名めい。相手あいてチームがクアッフルをゴールに入いれるのを守まもる。マグルのスポーツにおけるゴールキーパーと同おなじ。

ビーター

1チームに2名めい。飛とんでくるブラッジャーをクラブで追おい払はらったり、相手あいてチームのプレイヤーにぶつけるのが役目やくめ。

シーカー

1チームに1名めい。スニッチを捕つかまえるのが役目やくめ。クィディッチの花形はながたともされるポジションで、相当そうとうの機動きどう力りょくが求もとめられる。

ピッチ

長径ちょうけい500フィート（152メートル）、短たん径みち180フィート（55メートル）の楕円だえん形がたの競技きょうぎ場じょうとなっており、ゴールポストは3本ほんの棒ぼうの先端せんたんにリングがつけられた形状けいじょうとなっている。映画えいがでは、中央ちゅうおうのポストが左右さゆうのポストより高たかくなっている。選手せんしゅはフィールドの境界きょうかい線せんの外側そとがわに出でてはならないが、上限じょうげん高度こうどは設定せっていされていない。

反則はんそく

クイデッィチには700以上いじょうの反則はんそくが存在そんざいするとされているが、基本きほん的てきなルール以外いがいは公表こうひょうされていない。もっとも、その9割わりは杖つえの使用しよう禁止きんしにより予防よぼうできる他ほか、残のこりの1割わりも「敵てきの箒ほうきの尾おに火ひをつける」や「斧おので相手あいてを攻撃こうげきする」のような余程よほど卑劣ひれつな選手せんしゅでもない限かぎりは行おこなわれないようなものばかりである。なお、第だい1回かいクイディッチワールドカップではその反則はんそく規定きてい全すべてが行おこなわれたという。

最もっとも基本きほん的てきな反則はんそく行為こういは以下いかの通とおり。

ブラッギング

相手あいての箒ほうきの尾おを捕つかまえ、速度そくどを落おとしたり、妨害ぼうがいする行為こうい。

ブラッチング

わざと衝突しょうとつするつもりで飛とぶ行為こうい。

ブラーティング

相手あいてをコースから外はずすため敵てきの箒ほうきの柄えを掴つかんで固定こていする行為こうい。

バンフィング

ブラッジャーを観客かんきゃくに向むけて打うちこむ行為こうい（ビーターのみ）。

コビング

相手あいての選手せんしゅに対たいして過度かどに肘ひじを使つかう行為こうい。

フラッキング

クアッフルを入いれられないように体からだの一部いちぶをゴールの輪わに入いれる行為こうい。キーパーは輪わの前まえでゴールを守まもらなければならない（キーパーのみ）。

ハバーサッキング

クアッフルを持もったまま輪わに手てを入いれる行為こうい。クアッフルはゴールに投なげ入いれなければならない（チェイサーのみ）。

クアッフル-ポッキング

クアッフルに細工ざいくをする行為こうい（チェイサーのみ）。

スニッチニップ

シーカー以外いがいの選手せんしゅがスニッチに触ふれたり掴つかむ行為こうい（シーカー以外いがい）。

スツージング

スコア・エリアに一いち度どに2人ふたり以上いじょうのチェイサーが突つっ込こむ行為こうい（チェイサーのみ）。

マグルクィディッチ

地上ちじょうのクィディッチ

詳細しょうさいは「クィディッチ (現実げんじつの競技きょうぎ)」を参照さんしょう

ハリー・ポッター・シリーズのクィディッチを元もとにした球技きゅうぎがアメリカの学生がくせいによって2005年ねんに始はじめられた。7人にん対たい7人にんで対戦たいせんするジェンダーフリーな競技きょうぎであり、プレイヤーは箒ほうきを股またにはさんで競技きょうぎ場じょうを走はしる。14名めいの他ほか、どちらにも属ぞくしないsnitch runner（1名めい）というポジションもある。

この競技きょうぎは複数ふくすうの既存きそんの競技きょうぎをもとにしており、ラグビー、ドッジボール、鬼おにごっこ、レスリング、ラクロスの要素ようそが見みられる。

40以上いじょうの国々くにぐにに計けい2万まん人にんあまりのクィディッチ競技きょうぎ者しゃがいる。

名称めいしょう変更へんこう

2021年ねん12月、アメリカとイギリスのリーグ組織そしきはクィディッチの競技きょうぎ名めいを変更へんこうすることを発表はっぴょうした。これはハリー・ポッターシリーズの原作げんさく者しゃであるJ・K・ローリングが反はんトランスジェンダーを肯定こうていするような言動げんどうに抗議こうぎするのに加くわえ、クィディッチという名称めいしょう自体じたいを映画えいが『ハリー・ポッターシリーズ』を制作せいさくしているワーナー・ブラザースが商標しょうひょう登録とうろくしており、スポンサーシップや放映ほうえい権けんなどで制約せいやくがあった問題もんだいを解消かいしょうしたい意向いこうがあるとしている。

2022年ねん7月がつにクアッドボール（Quadball）への競技きょうぎ名めい変更へんこうが発表はっぴょうされた。