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クレルヴォ交響曲こうきょうきょく

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シグルド・ヴェッテンホヴィ=アスパによる『クレルヴォ』のポスター(1892ねん)

クレルヴォ』または『クッレルヴォ』(Kullervo作品さくひん7は、ジャン・シベリウス初期しょき合唱がっしょう管弦楽かんげんがくきょく楽章がくしょう配置はいち内部ないぶ構成こうせいからると交響曲こうきょうきょくびうる内容ないようっており、『クレルヴォ交響曲こうきょうきょく』("Kullervo" -sinfonia)とする俗称ぞくしょうないしは通称つうしょう一般いっぱんしている(日本にっぽんでは、促音そくおん表記ひょうきせず「クレルヴォ」とすることが一般いっぱんてきである。ただし下記かきにおいては、曲名きょくめい以外いがい部分ぶぶんでは、クッレルヴォと表記ひょうきする)が、シベリウス自身じしん譜面ふめんだいとびらに「交響曲こうきょうきょく」の文字もじ記入きにゅうしておらず、「独唱どくしょうしゃ合唱がっしょう管弦楽かんげんがくのための交響こうきょう」との副題ふくだいえていた。このような事情じじょうにより、交響曲こうきょうきょく全集ぜんしゅう収録しゅうろくされない場合ばあいがある。

作曲さっきょく経緯けいい受容じゅよう

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シベリウスは留学りゅうがくちゅう1891ねんベルリンロベルト・カヤヌスの『アイノ交響曲こうきょうきょく』をいて感銘かんめいけ、みずからもしん愛国あいこくてき題材だいざいによるだい規模きぼ管弦楽かんげんがくきょく作曲さっきょくをしようとおもつ。同年どうねんはるから留学りゅうがくさきウィーンで、叙事詩じょじしカレワラ』にもとづく管弦楽かんげんがくきょく作曲さっきょくりかかり、結局けっきょくこれが『クレルヴォ交響曲こうきょうきょく』として結実けつじつすることになった(それまでに作曲さっきょくみの部分ぶぶんは、ドイツてきであるとの理由りゆうからててしまったという)。作曲さっきょく過程かていにおいて、ウィーン音楽おんがくいんにおける指導しどう教授きょうじゅロベルト・フックスカール・ゴルトマルク講評こうひょうもとめて酷評こくひょうされる一方いっぽうで(ただしシベリウスは気落きおちするどころか意地いじになって作曲さっきょくつづけた)、ブルックナーの《交響こうきょうきょくだい3ばん》の公演こうえん立会たちあい、刺戟しげきけている。またウィーンでは、ベートーヴェンの《交響こうきょうきょくだい9ばん》の公演こうえんにもせっしたものの、作曲さっきょくしゃ当人とうにんべんによると、こちらからはなにるものがなかったという。

当初とうしょは3ないし4楽章がくしょう程度ていどにする予定よていであったが、結局けっきょく5楽章がくしょういた。また、当初とうしょは50もの題材だいざいかんがしたものの、題材だいざいえらびは入念にゅうねんにとのゴルトマルクの助言じょげんれて満足まんぞくできるものにしぼみ、結局けっきょく 『カレワラ』だい35しょうからだい36しょうの「クッレルヴォ」の物語ものがたりにした。

1892ねん4がつ28にち作曲さっきょくしゃ自身じしん指揮しきおこなったヘルシンキ初演しょえんは、評論ひょうろん家筋いえすじからはおおむね好評こうひょうだったものの、作品さくひん撤収てっしゅうしてしまう。これは、カール・フローディンのようなスウェーデンけいフィンランドじんあいだでは激賞げきしょうされ、オスカル・メリカントのようにフィン母語ぼごとするひとからは判断はんだん保留ほりゅうされたことも影響えいきょうしているようである(一方いっぽうで、フローディンは「次回じかいさくレンミンカイネンを題材だいざいとする交響こうきょう創作そうさくを」シベリウスにすすめており、ゆくゆくはシベリウスがその実現じつげんけてうごしたということも、記憶きおくめておくべきであろう)。

初期しょきのシベリウスはブルックナーのような改訂かいていへきがあり、ほんさくもいずれは改訂かいていするつもりであったらしい。このため初演しょえんは、断片だんぺんてきかたちで3かい(そのうち1かいはピアノ伴奏ばんそうばんで)演奏えんそうされたのをかぞえるだけで、シベリウスぼつ1958ねんむすめ婿むこユッシ・ヤラスえんじ指揮しきするまで、全曲ぜんきょく演奏えんそうおこなわれなかった。最初さいしょ全曲ぜんきょく録音ろくおんは、1970ねんパーヴォ・ベルグルンドによっておこなわれた。ベルグルンドは1985ねんにデジタル方式ほうしきさい録音ろくおんおこなっている。

物語ものがたり

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クッレルヴォの物語ものがたりは『カレワラだい31しょうからだい36しょうたる。その概略がいりゃくつぎとおりである。

ウンタモは兄弟きょうだいのカレルヴォとのいさかいのすえにカレルヴォとその一族いちぞくを、身重みおもおんないちにんのこして皆殺みなごろしにし、おんなかえる。おんなはウンタモのもとでカレルヴォの息子むすこクッレルヴォを出産しゅっさんする。クッレルヴォはりかごのなかはやくもちちころしたウンタモへの復讐ふくしゅうくちにし、おそれたウンタモは様々さまざま手段しゅだんでクッレルヴォをころそうとするが、クッレルヴォは不死身ふじみであった。成長せいちょうしたクッレルヴォは鍛冶屋かじやイルマリネンに奴隷どれいとしてわたされる。(だい31しょう

イルマリネンのつまはクッレルヴォを牛追うしおいにやるが、悪戯いたずらいしれたパンをクッレルヴォにたせる。クッレルヴォはパンに仕込しこまれたいしちち形見かたみのナイフをってしまう。おこったクッレルヴォがせた野獣やじゅうによって、イルマリネンのつまかれてぬ。(だい32-33しょう

イルマリネンのもとしたクッレルヴォは、もり老婆ろうばからじつ家族かぞくがまだきているとらされる。クッレルヴォははは再会さいかいし、息子むすこすでんだとおもっていたこと、クッレルヴォのいもうと行方ゆくえ不明ふめいになったことをげる。(だい34しょう

クッレルヴォのちちはクッレルヴォに租税そぜいおさめにかせる。クッレルヴォはそのかえみちわかむすめ誘惑ゆうわくし、籠絡ろうらくする。2人ふたりたがいのうえかたり、はじめてわかれの兄妹きょうだいであったことをる。いもうとかわ入水じゅすいし、クッレルヴォも自殺じさつかんがえるがはは制止せいしされ、わってウンタモへの復讐ふくしゅうおもつ。(だい35しょう

クッレルヴォは家族かぞくわかれをげてウンタモのもとはいったが、その途上とじょう家族かぞく全員ぜんいんんだことをらされる。ウンタモの一族いちぞくほろぼしていえはらう。復讐ふくしゅうえたクッレルヴォは帰還きかんするもそこはであった。かなしみにれたかれは、いもうと誘惑ゆうわくした場所ばしょく。クッレルヴォはつみ呵責かしゃくえきれず、みずからのからだかたなしてぬ。(だい36しょう

楽曲がっきょく

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シベリウスの管弦楽かんげんがくきょくとしてはもっと規模きぼおおきく、全曲ぜんきょく演奏えんそうには通常つうじょう1時間じかん以上いじょうかかる。指揮しきしゃによって相違そういはあるものの、最近さいきんのいくつかの録音ろくおんれいでいうと、はや演奏えんそうではネーメ・ヤルヴィ指揮しきエーテボリ交響こうきょう楽団がくだん(1985ねん録音ろくおん)で68ふんエサ=ペッカ・サロネン指揮しきロサンジェルス・フィルハーモニック(1993ねん録音ろくおん)で70ふんおそ演奏えんそうではパーヴォ・ヤルヴィ指揮しきロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー (2003ねん録音ろくおん)で78ふんはんサー・コリン・デイヴィス指揮しきロンドン交響こうきょう楽団がくだん(1996ねん録音ろくおん)で81ふんとなっている。

短調たんちょう主調しゅちょうとして以下いかの5つの楽章がくしょうからり、クッレルヴォの生涯しょうがい様々さまざま段階だんかい年代ねんだいふうっている。

1. 導入どうにゅう Johdanto (Allegro moderato)
自由じゆうソナタ形式けいしき楽章がくしょう管弦楽かんげんがくのみ。演奏えんそう時間じかんは11.5~16.5ふん程度ていど
2. クレルヴォの青春せいしゅん Kullervon nuoruus (Grave)
なごやかな緩徐かんじょ楽章がくしょう。やはり管弦楽かんげんがくのみで演奏えんそう形式けいしきてきには自由じゆうなロンド形式けいしきで、A-B-A-B-Aの構造こうぞうをとる。演奏えんそう時間じかんは13.5~19.5ふん程度ていど
3. クレルヴォとそのいもうと Kullervo ja hänen sisarensa (Allegro vivace)
5拍子ひょうしることで有名ゆうめい楽章がくしょう男女だんじょ独唱どくしょう男声だんせい合唱がっしょうでクッレルヴォの恋愛れんあいうたげられるが、真実しんじつあかるみにたときにはときすでにおそく、いもうと自殺じさつしてしまう。むすびの男声だんせい独唱どくしょうは、いもうとなげくクッレルヴォをあらわしている。歌詞かしは『カレワラ』だい35しょうによる。演奏えんそう時間じかんは23~26ふん程度ていど
4. クレルヴォの出征しゅっせい Kullervon sotaanlähtö (Alla marcia)
スケルツォ楽章がくしょう該当がいとうし、精力せいりょくてき好戦こうせんてき音楽おんがくひろげられる。演奏えんそう時間じかんは9~11.5ふん程度ていど
5. クレルヴォの Kullervon kuolema (Andante)
おぼろげな男声だんせい合唱がっしょうがクッレルヴォのうたげる。歌詞かしは『カレワラ』だい36しょうによる。演奏えんそう時間じかんは9~14.5ふん程度ていど

編成へんせい

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外部がいぶリンク

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