グリム兄弟きょうだい

グリム兄弟きょうだいの有名ゆうめいな絵画かいが（左ひだり・ヴィルヘルム、右みぎ・ヤーコプ）

1847年ねんのダゲレオタイプ（左ひだり・ヴィルヘルム、右みぎ・ヤーコプ）

ハーナウのグリム兄弟きょうだい像ぞう

グリム兄弟きょうだい（グリムきょうだい、独どく: Brüder Grimm）は、19世紀せいきにドイツで活躍かつやくした言語げんご学者がくしゃ・文献ぶんけん学者がくしゃ・民話みんわ収集しゅうしゅう家か・文学ぶんがく者しゃの兄弟きょうだい。日本にっぽんでは、『グリム童話どうわ集しゅう』の編集へんしゅう者しゃとして知しられる。

同おなじ両親りょうしんから生うまれた兄弟きょうだいは全部ぜんぶで9人にん、幼おさなくして死しんだ者ものを除のぞくと男おとこ5人にん、女おんな1人にんの6人にん兄弟きょうだいであったが、通常つうじょうは後世こうせいにまで名なを残のこした次男じなんヤーコプと三男さんなんヴィルヘルムの二人ふたりを指さす（今日きょうでは後述こうじゅつの六ろく男なんルートヴィッヒも含ふくむこともある）。

多おおくをヤーコプとヴィルヘルムの兄弟きょうだいとして活躍かつやくしたが、グリム童話どうわ集しゅうではルートヴィヒも挿さし絵えを手てがけている。

来歴らいれき

ハーナウに生うまれる。父ちちは法律ほうりつ家かのフィリップ・ヴィルヘルム・グリム（1751年ねん - 1796年ねん）で、シュタイナウの伯爵はくしゃく領りょう管理かんり官かん兼けん司法官しほうかんであった。

兄弟きょうだいは裕福ゆうふくな家庭かていに生うまれたが、1796年ねんに父親ちちおやが肺炎はいえんで死去しきょし、困窮こんきゅうに陥おちいった。しかし、母方ははかたの伯母おばヘンリエッテ・ツィマーの援助えんじょにより、ヤーコプとヴィルヘルムの二人ふたりは、ギムナジウムに入学にゅうがくし、首席しゅせきで卒業そつぎょう、マールブルク大学だいがく法学部ほうがくぶに進学しんがくした。大学だいがくで、新進しんしんの法学ほうがく者しゃフリードリヒ・カール・フォン・ザヴィニー教授きょうじゅの影響えいきょうを受うけ、ドイツの古こ文学ぶんがくや民間みんかん伝承でんしょうの研究けんきゅうに目めを向むけるようになった。

ゲッティンゲン七なな教授きょうじゅ事件じけん

詳細しょうさいは「ゲッティンゲン七なな教授きょうじゅ事件じけん」を参照さんしょう

ヤーコプとヴィルヘルムはともにゲッティンゲン大学だいがくの教授きょうじゅだったが、1837年ねん 5 人にんの教授きょうじゅとともにハノーファー国王こくおうエルンスト・アウグストの違法いほう行為こうい（既存きそん憲法けんぽうに対たいする国王こくおうの不法ふほうな侵害しんがい）に対たいして抗議こうぎ文ぶんを提出ていしゅつし、国王こくおうによって罷免ひめんされた。「ゲッティンゲンの七なな人にん事件じけん」（Göttinger Sieben）とも呼よばれる。

1840年ねんに兄あにはベルリン大学だいがく教授きょうじゅとなるが、弟おとうとヴィルヘルムは同おなじくベルリンで、より自由じゆうな立場たちばで著述ちょじゅつ活動かつどうを行おこなった。多おおくを兄弟きょうだいとして活躍かつやくし、『グリム童話どうわ集しゅう』の編集へんしゅう者しゃとして著名ちょめいである。また、ゲルマン語ごの研究けんきゅう者しゃとしてもしられ、比較ひかく言語げんご学がくを生うみ出だした「グリムの法則ほうそく」でも知しられている。

ヤーコプ・グリム

左ひだりからヘルマン・グリム、ルードルフ・グリム、ヴィルヘルム・グリム、ヤーコプ・グリムの墓はか

ヤーコプ・ルートヴィヒ・カール・グリム（ドイツ語ご: Jacob Ludwig Karl Grimm、1785年ねん1月がつ4日にち - 1863年ねん9月がつ20日はつか）は、グリム兄弟きょうだいの長兄ちょうけい。法制ほうせい史し・ゲルマン語ご研究けんきゅうで名なを成なし、1819年ねんから1834年ねんにかけて発行はっこうされた『ドイツ語ご文法ぶんぽう』で知しられる。この中なかの子音しいんの推移すいいについての法則ほうそく性せいは、「グリムの法則ほうそく」と呼よばれている。なお、ドイツ語ごの習得しゅうとくに欠かかせない概念がいねんであるウムラウトや強つよ変化へんか・弱じゃく変化へんかもヤーコプの造語ぞうごである。

大学だいがく卒業そつぎょう前まえの1805年ねんにサヴィニー教授きょうじゅの招まねきを受うけ、パリで法政ほうせい史し研究けんきゅうの助手じょしゅとして働はたらく。1806年ねんにドイツに戻もどってきたが、今度こんどはナポレオン戦争せんそうの後始末あとしまつで、公設こうせつ秘書ひしょとして各国かっこくを飛とび回まわり、ウィーン会議かいぎにも出席しゅっせきしている。その後ご、『ドイツ語ご文法ぶんぽう』を1819年ねんから1834年ねんにかけて発行はっこう。途中とちゅう、1829年ねん、弟おとうととともにゲッティンゲン大学だいがくに呼よばれ、司書ししょ官かん兼けん教授きょうじゅとして教鞭きょうべんを執とった。1835年ねん、『ドイツ神話しんわ学がく』を刊行かんこうし、ドイツ人じんにも忘わすれ去さられていた妖精ようせいや神かみ々の神話しんわ・伝説でんせつを書物しょもつに残のこした。評議ひょうぎ員いんにも選えらばれ、宮中きゅうちゅう顧問こもん官かんの称号しょうごうを受うけるなど大学だいがくでも彼かれは高たかく評価ひょうかされた。

しかし1837年ねん、「ゲッティンゲン七なな教授きょうじゅ事件じけん」（前述ぜんじゅつ）で失職しっしょくし、亡命ぼうめい先さきのカッセルで、自分じぶんたちの主張しゅちょうをまとめた弁明べんめい書しょ『彼かれの免職めんしょくについて』を発表はっぴょう、スイスのバーゼルで発刊はっかんされた。兄弟きょうだいは、失職しっしょくの身みのままドイツ語ご辞典じてんの編纂へんさんにあたったが、1840年ねんプロイセンの国王こくおうがフリードリヒ・ヴィルヘルム4世せいに代かわると、兄弟きょうだいはベルリン大学だいがくの教授きょうじゅとして迎むかえられた。1842年ねん、ザヴィニーや歴史れきし学者がくしゃランケと共ともに国家こっか勲章くんしょうプール・ル・メリトを与あたえられた。1846年ねんのフランクフルトで開催かいさいされたドイツ文学ぶんがく者しゃ会議かいぎでは、ヤーコプは満場一致まんじょういっちで議長ぎちょうに選出せんしゅつされた。また、1847年ねんのフランクフルト国民こくみん議会ぎかいでも代議員だいぎいんに選出せんしゅつされ、憲法けんぽう草案そうあんを提示ていじしている。

生涯しょうがいを独身どくしんで過すごし、ヴィルヘルムが結婚けっこんしてからは、ヴィルヘルム夫婦ふうふとともに暮くらした。

ヴィルヘルム・グリム

ヴィルヘルム・カール・グリム（ドイツ語ご: Wilhelm Karl Grimm、1786年ねん2月がつ24日にち - 1859年ねん12月16日にち）はグリム兄弟きょうだいの次兄じけい。グリム童話どうわの第だい二に版はん以降いこうの改訂かいていは、ほぼ彼かれの手てによっている。

ヴィルヘルムは、あまり体たいが丈夫じょうぶでなかったこともあり、政治せいじ的てきにも目立めだった活躍かつやくをした兄あにと違ちがい、身体しんたいをいたわりながら地道じみちに研究けんきゅうを続つづけた。社交しゃこう的てきな性格せいかくであったこともあり、兄弟きょうだいはそれぞれの違ちがいを認みとめつつ、よく補おぎない合あって活躍かつやくしたと言いわれている。

大学だいがくを卒業そつぎょう後ご、しばらくは病身びょうしんのため職しょくに就つけなかったが、1814年ねん、カッセル大公たいこうの図書館としょかん書記しょきとなる。1825年ねん、幼おさななじみのドルトヒェン・ヴィルトと結婚けっこんし、3人にんの子こを成なした。1829年ねん、兄あにヤーコプと共ともにゲッティンゲン大学だいがくに呼よばれ、教鞭きょうべんを執とった（正確せいかくには、この時点じてんでは司書ししょ、翌年よくねんから司書ししょ官かん兼けん助教授じょきょうじゅ、4年ねん後ごから司書ししょ官かん兼けん教授きょうじゅとなった）。1834年ねん、処世しょせい訓くん集しゅう『フライダンクの分別ふんべつ集しゅう』を復刻ふっこく。1837年ねん、「ゲッティンゲン七なな教授きょうじゅ事件じけん」（前述ぜんじゅつ）で失職しっしょくした。グリム兄弟きょうだいは、失職しっしょくの身みのままドイツ語ご辞典じてんの編纂へんさんにあたったが、1840年ねんプロイセンの国王こくおうがフリードリヒ・ヴィルヘルム4世せいにかわると、兄弟きょうだいはベルリン大学だいがくの教授きょうじゅとして迎むかえられた。

ルートヴィヒ・グリム

ルートヴィヒ・エーミール・グリム（ドイツ語ご: Ludwig Emil Grimm、1790年ねん3月14日にち - 1863年ねん4月がつ4日にち）は、グリム兄弟きょうだいの末弟ばってい。兄あにたちと違ちがい、大学だいがくまでは進学しんがくできなかったが、カッセルの美術びじゅつ学校がっこうの教授きょうじゅをつとめるなど、画家がかとして一定いっていの評価ひょうかを得えている。もともとグリムファンたちの間あいだでしか知しられない存在そんざいであったが、第だい二に次じ大戦たいせん後ご、一般いっぱんにも知しられるようになった。

フェルディナント・フィリップ・グリム

もう一人ひとりの弟おとうとフェルディナント・フィリップ（Ferdinand Philipp; 1788 - 1845）も童話どうわ・伝説でんせつを収集しゅうしゅうし、兄あにたちとは別べつに作品さくひんを発表はっぴょうしたものの長ながく忘わすれられていた。2020年ねんにいたってHeiner BoehnckeとHans Sarkowiczによって見直みなおされ、Der fremde Ferdinand: Märchen und Sagen des unbekannten Grimm-Bruders（見知みしらぬフェルディナント:グリムの知しられざる弟おとうとの童話どうわと伝説でんせつ）の題だいでベルリンの Die Andere Bibliothek から公刊こうかんされた（ISBN 978-3-8477-0428-7）。　

参考さんこう文献ぶんけん

• 高橋たかはし健二けんじ 『グリム兄弟きょうだい』 新潮社しんちょうしゃ〈新潮しんちょう文庫ぶんこ〉、2000年ねん ISBN 978-4101299310。元もと版はん・新潮しんちょう選書せんしょ、1968年ねん
• 高橋たかはし健二けんじ 『グリム兄弟きょうだいとアンデルセン』 東京書籍とうきょうしょせき、1987年ねん ISBN 978-4-487-72207-5
• ジャック・ザイプス 『グリム兄弟きょうだい　魔法まほうの森もりから現代げんだいの世界せかいへ』 鈴木すずき晶あきら訳わけ、筑摩書房ちくましょぼう、1991年ねん ISBN 978-4-480-83606-9

関連かんれん項目こうもく

• アルベルト・ルートヴィヒ・グリム：兄弟きょうだいと同どう時代じだい人じんで、同おなじように童話どうわ集しゅうを出だしているが兄弟きょうだいとは血縁けつえん関係かんけいにない。
• ドイツ・メルヘン街道かいどう : グリム兄弟きょうだいの生誕せいたん地ちハーナウからブレーメンまでの観光かんこう街道かいどう
• ブラザーズ・グリム : グリム兄弟きょうだいをモチーフとした映画えいが
• グリムの森もり : グリム童話どうわをテーマにした日本にっぽんの栃木とちぎ県けん下野したの市しにあるテーマパーク。

外部がいぶリンク

• グリム ヤーコプ・ルードヴィッヒ・カール：作家さっか別べつ作品さくひんリスト - 青空あおぞら文庫ぶんこ
• グリム兄弟きょうだい博物館はくぶつかん（ドイツ語ご）
• 『グリム（兄弟きょうだい）』 - コトバンク

ウィキソースには、グリム兄弟きょうだいの作品さくひんの日本語にほんご訳やくの原文げんぶんがあります。