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ケトコナゾール

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
ケトコナゾール
IUPAC命名めいめい法ほうによる物質ぶっしつ名めい
臨床りんしょうデータ
販売はんばい名めい ニゾラール
胎児たいじ危険きけん度ど分類ぶんるい
法的ほうてき規制きせい
  • 処方しょほう薬やく(UK, 経口けいこう製剤せいざい)
投与とうよ経路けいろ 外用がいよう
薬物やくぶつ動態どうたいデータ
血漿けっしょうタンパク結合けつごう84～99%
代謝たいしゃ肝臓かんぞう
半減はんげん期きBiphasic:
  • Initial phase: 2 時じ間あいだ
  • Terminal phase: 8 時じ間あいだ
排泄はいせつ糞便ふんべん、尿にょう
識別しきべつ
CAS番号ばんごう
 65277-42-1
ATCコード J02AB02 (WHO) D01AC08 (WHO)G01AF11 (WHO)
PubChem CID: 47576
DrugBank APRD00401
ChemSpider 401695
KEGG D00351
化学かがく的てきデータ
化学かがく式しきC26H28Cl2N4O4
分子ぶんし量りょう531.43 g/mol
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ケトコナゾール（Ketoconazole）とは、真ま菌きん症しょうの治療ちりょうに使用しようされるイミダゾール系けい合成ごうせい抗こう真ま菌きん薬やくの一ひとつである。白癬はくせん、カンジダ症しょう、癜なまず風ふう、脂あぶら漏も性せい湿疹しっしんの治療ちりょうに用もちいられる。日本にっぽんで処方箋しょほうせん医薬品いやくひんのみ軟膏なんこうと液剤えきざいのヤンセン ファーマ先発せんぱつ品ひんニゾラールが処方しょほうされているが、世界せかいでは、錠剤じょうざいやケトコナゾール含有がんゆうふけ取とりシャンプーが市販しはんされている[1]。

経口けいこう投与とうよには通常つうじょう、より毒性どくせいの低ひくいトリアゾール系けい抗こう真ま菌きん薬やくであるフルコナゾールやイトラコナゾールが用もちいられる。2013年ねん、欧州おうしゅう医薬品いやくひん庁ちょう（EMA）のヒト用よう医薬品いやくひん委員いいん会かい（CHMP）は、ケトコナゾール経口けいこう投与とうよ後ごの肝かん障害しょうがいの危険きけんが服用ふくようの利益りえきを上回うわまわったと結論けつろんし、欧州おうしゅう連合れんごうでのケトコナゾール全身ぜんしん投与とうよを禁きんずる様よう勧告かんこくした[2]。ケトコナゾールの経口けいこう薬やくは、オーストラリアで2013年ねんに[3][4]、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくで2015年ねんに販売はんばいが中止ちゅうしされた[5]。

ケトコナゾールの作用さようには、他たに糖とう質しつコルチコイド(英えい)の生なま合成ごうせいを抑制よくせいする作用さようがあるので、抗こううつ薬やくへの応用おうようの可能かのう性せいについて研究けんきゅうされた事ことがある[6][7]。

適応症てきおうしょう

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クリーム・ローション[8][9]

抗こう真ま菌きん薬やく

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局所きょくしょ投与とうよ

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ケトコナゾールの外用がいよう剤ざいは通常つうじょう、皮膚ひふ、粘膜ねんまくの真ま菌きん感染かんせん症しょう（白癬はくせん、カンジダ症しょう、癜なまず風ふう等とう）に処方しょほうされる[10]。そのほか、真ま菌きんの一種いっしゅMalassezia furfur が関係かんけいする頭垢ふけや脂あぶら漏も性せい湿疹しっしんに対たいして、皮膚ひふ常つね在ざい菌きんを抑おさえるためにも使用しようされる[10][11][12]。

経口けいこう抗こう真ま菌きん薬やく

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日本にっぽんでは、経口けいこう投与とうよは承認しょうにんされていない。

ケトコナゾールは真ま菌きんによる様々さまざまな疾患しっかん―カンジダ症しょう、ヒストプラズマ症しょう、コクシジオイデス症しょう、ブラストミセス症しょう―に有効ゆうこうであるが、アスペルギルス症しょうには無効むこうである[13]。1977年ねんに初はじめて合成ごうせいされ[10]、最初さいしょのアゾール系けい経口けいこう抗こう真ま菌きん薬やくとして用もちいられた[13]。しかし毒性どくせいが強つよいうえ、消化しょうか器きからのバイオアベイラビリティが低ひくく、活性かっせいを示しめす菌きん種しゅが限かぎられているので、イトラコナゾールに取とって代かわられている[13][14]。

ケトコナゾールを表おもて在ざい性せい・深ふか在ざい性せい真ま菌きん症しょうに対たいして、経口けいこうで用もちいる場合ばあいには、1日にち200〜400mgを服用ふくようしなければならない[15]。

抗こうアンドロゲン薬やく・抗こう糖とう質しつコルチコイド薬やく

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ケトコナゾールの副作用ふくさようは真ま菌きん感染かんせん症しょう以外いがいの病態びょうたいの治療ちりょうにも応用おうようし得える。ケトコナゾールは真ま菌きんのエルゴステロール合成ごうせいを阻害そがいするが、ヒトに高こう用量ようりょう（>800mg/日にち）投与とうよするとコレステロールをステロイドホルモン（テストステロンやコルチゾール等ひとし）に変換へんかんするのに必要ひつような酵素こうそ群ぐんを阻害そがいする[13][15]。具体ぐたい的てきには、コレステロールからプレグネノロンを生成せいせいするコレステロール側がわ鎖くさり開ひらき裂きれ酵素こうそ、プレグネノロンをアンドロゲンに変かえる17αあるふぁ-水酸化すいさんか酵素こうそと17,20-分解ぶんかい酵素こうそ[15]、11-デオキシコルチゾールをコルチゾールに酸化さんかする11βべーた-水酸化すいさんか酵素こうそ（英語えいご版ばん）を阻害そがいする[16]。これらの酵素こうそはいずれも、ミトコンドリアに存在そんざいするシトクロムP450である[17]。これらの抗こうアンドロゲン作用さよう、抗こう糖とう質しつコルチコイド作用さように基もとづいて、ケトコナゾールを進行しんこう前立腺ぜんりつせん癌がんの第だい二に選択せんたく薬やくとして用もちいた例れい[15][18]や、クッシング症候群しょうこうぐんの治療ちりょう（糖とう質しつコルチコイド産さん生せい抑制よくせい）に用もちいた例れい[19]がある。しかし、前立腺ぜんりつせん癌がんの治療ちりょうに用もちいる場合ばあいには急性きゅうせい副ふく腎不全じんふぜんを防止ぼうしするために糖とう質しつコルチコイドを併用へいようする必要ひつようがある[15]。ケトコナゾールは低てい用量ようりょうで多毛たもう症しょうの治療ちりょうや、GnRHアナログ（英語えいご版ばん）との併用へいようで精巣せいそう中毒ちゅうどく症しょう（英語えいご版ばん）の治療ちりょうに用もちいられた[15]。いずれの場合ばあいでも、肝かん毒性どくせいの危険きけん性せいが使用しようの足枷あしかせとなった[15]。特とくに多毛たもう症しょうの様ような非ひ致死ちし的てきな疾患しっかんでは、肝かん毒性どくせいの危険きけんは服用ふくようの利益りえきを上回うわまわらない。

獣医じゅうい学がく領域りょういきでの使用しよう

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ペットに投与とうよする場合ばあい、既存きそんの錠剤じょうざいでは投与とうよ量りょうが多おおすぎるので、獣しし医師いしはしばしば錠剤じょうざいを小ちいさく切きって使用しようする[20]。

副作用ふくさよう

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ケトコナゾール外用がいよう剤ざいの副作用ふくさよう発現はつげん率りつは、製造せいぞう販売はんばい後ご調査ちょうさで3.5%であり、主おもな副作用ふくさようは

  1. 接触せっしょく皮膚ひふ炎えん（1.5%）
  2. 瘙痒（0.9%）
  3. 投与とうよ部位ぶい発赤はっせき（0.7%）
  4. 投与とうよ部位ぶい刺激しげき感かん（0.5%）

であった[8]。

妊にん婦ふが使用しようした場合ばあいの安全あんぜん性せいは確立かくりつしていない[8][9]。米国べいこくの胎児たいじ危険きけん度ど分類ぶんるいはCで、動物どうぶつ実験じっけんで経口けいこう投与とうよ時じに催奇形がた作用さようが見みられている。1990年代ねんだいに、クッシング症候群しょうこうぐんの2人ふたりの妊にん婦ふが服用ふくようした際さいには、副作用ふくさようは報告ほうこくされなかった[21][22]が、2例れいでは少すくな過すぎて安全あんぜんであるとの根拠こんきょにはならない。ヨーロッパで行おこなわれた観察かんさつ研究けんきゅうでは、母体ぼたいがケトコナゾールを内服ないふくした場合ばあい、胎児たいじへのリスクを明あきらかにすることはできなかった[23]。

2013年ねん7月がつにアメリカ食品しょくひん医薬品いやくひん局きょくは、経口けいこう薬やくのケトコナゾール（日本にっぽんでは未み承認しょうにん）は重じゅう篤あつしな肝かん障害しょうがいと副腎ふくじん障害しょうがいを引ひき起おこし得えることを警告けいこくした。その中なかでケトコナゾール錠じょうは、あらゆる真ま菌きん感染かんせん症しょうにおいて第だい一いち選択せんたく薬やくではないことが示しめされた。ケトコナゾール錠じょうは、風土病ふうどびょう性せい真ま菌きん症しょうとして知しられる一部いちぶの真ま菌きん症しょうに、他たの抗こう真ま菌きん剤ざいが無効むこうまたは不ふ忍しのぶ容ひろしである場合ばあいにのみ使用しようすべきであるとFDAは勧告かんこくした[24]。

局所きょくしょ投与とうよの場合ばあいは、肝かん障害しょうがいや副腎ふくじん障害しょうがいや薬物やくぶつ相互そうご作用さようは問題もんだいにならない。剤ざい形がたは、日本にっぽんで入手にゅうしゅできるクリームとローションのほか、世界せかいではシャンプー・石鹸せっけん・皮膚ひふ用ようゲル剤ざいが存在そんざいする[24]。

作用さよう機き序じょ

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抗こう真ま菌きん薬やくとしては、ケトコナゾールはイミダゾール系けいに属ぞくし、真ま菌きんの細胞さいぼう膜まくや酵素こうその成分せいぶんであるエルゴステロール合成ごうせいに介入かいにゅうする。全すべてのアゾール系けい抗こう真ま菌きん薬やくと同様どうように、ケトコナゾールの主おもな作用さようはシトクロムP450 14αあるふぁ-脱だつメチル化か酵素こうそ（英語えいご版ばん）（P45014DM）の阻害そがいである[25]。この酵素こうそはラノステロールからエルゴステロールへと繋つながるステロール生せい合成ごうせい経路けいろの一部いちぶである。フルコナゾールやイトラコナゾールの方ほうが細胞さいぼう膜まくへの親和しんわ性せいが高たかく、殺ころせ真ま菌きん作用さようが強つよい。

抗こうアンドロゲン薬やくとしては、2つの作用さよう機き序じょがあることが知しられている。1つ目めは最もっとも注目ちゅうもくすべき点てんで、高こう用量ようりょうケトコナゾール（400mgを1日にち3回かい）は精巣せいそうと副腎ふくじんの両方りょうほうでアンドロゲンの合成ごうせいを阻害そがいして、血ち中ちゅうテストステロン濃度のうどを低下ていかさせる[15][26]。これは、テストステロンの前駆ぜんく体たいを含ふくむステロイドの合成ごうせい・分解ぶんかいを司つかさどる17αあるふぁ-水酸化すいさんか酵素こうそ・17,20―分解ぶんかい酵素こうその阻害そがいによりもたらされる効果こうかである[15]。全身ぜんしんのアンドロゲン量りょうが減少げんしょうする結果けっか、ケトコナゾールはアンドロゲン依存いぞん性せい前立腺ぜんりつせん癌がんの治療ちりょうに寄与きよすることになる[27]。2つ目めは、ケトコナゾールはアンドロゲン受容じゅよう体たい阻害そがい薬やくであり、テストステロンやジヒドロテストステロン（DHT）と云ゆったアンドロゲンと競合きょうごう的てきに受容じゅよう体たいに結合けつごうする。この効果こうかは高こう用量ようりょうでも弱よわいものである[28]。

ケトコナゾールとミコナゾールを併用へいようすると、糖とう質しつコルチコイド受容じゅよう体たいの阻害そがい薬やくとして働はたらく事ことが発見はっけんされた[29][30]。

投与とうよ経路けいろと吸収きゅうしゅう性せい

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経口けいこう投与とうよの場合ばあい、ケトコナゾールは酸性さんせい条件下じょうけんかで良よく吸収きゅうしゅうされるので、制せい酸さん薬やくを併用へいようした場合ばあいや他たの理由りゆうで胃いの酸性さんせい度どが低下ていかした場合ばあいには、吸収きゅうしゅうが低下ていかする。酸性さんせいの清涼飲料水せいりょういんりょうすいで服薬ふくやくすると吸収きゅうしゅう量りょうが増加ぞうかする[31]。ケトコナゾールは脂あぶら溶性ようせいが非常ひじょうに高たかく、脂肪しぼう組織そしきに蓄積ちくせきされる。

耐たい性せい

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Candida albicans を含ふくむケトコナゾール耐たい性せい菌きんが臨床りんしょう的てきに多数たすう分離ぶんりされている。実験じっけん的てきには、耐たい性せいはステロール生せい合成ごうせい経路けいろの変異へんいで発生はっせいする[32]。ステロール-5-6-不ふ飽和ほうわ化か酵素こうそが欠損けっそんすると、14αあるふぁ-脱だつメチル化か過程かていに対たいするアゾール系けい抗こう真ま菌きん薬やくの毒性どくせいが低下ていかする。多た剤ざい耐たい性せい（MDR）遺伝子いでんしが細胞さいぼう内ないの薬物やくぶつ濃度のうどの低下ていかに関連かんれんしている。アゾール系けい抗こう真ま菌きん薬やくの全すべてが同おなじ点てんに作用さようするために、アゾール系けい抗こう真ま菌きん薬やくは通常つうじょう交叉こうさ耐たい性せいがある[33][34]。

適応てきおう外がい使用しよう

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脱毛だつもう

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ケトコナゾール2%シャンプー

男性だんせい型がた脱毛だつもう症しょうの治療ちりょうに、ケトコナゾールシャンプーと経口けいこう5αあるふぁ-還元かんげん酵素こうそ阻害そがい薬やく（英語えいご版ばん）を併用へいようすることがある。ケトコナゾールの抗こう真ま菌きん特性とくせいは頭皮とうひの微生物びせいぶつ叢くさむらを減少げんしょうさせ、その結果けっか、脱毛だつもう症しょうに関連かんれんする毛もう包つつみ炎えんを減少げんしょうさせることができる[35]。

ケトコナゾールシャンプーのみ[36][37]または他たの治療ちりょう法ほうとの併用へいよう[38]が有用ゆうようであると示しめす臨床りんしょう試験しけんは限かぎられている。副作用ふくさようとして、頭皮とうひの刺激しげきや赤あかみなど過敏かびん症状しょうじょうが起おこることがある。また、洗浄せんじょう力りょくが強つよく髪かみがパサつくことがあるため、トリートメントの併用へいようが推奨すいしょうされる。

開発かいはつの経緯けいい

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ケトコナゾールは1976年ねんに発見はっけんされた[39]。

関連かんれん項目こうもく

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出典しゅってん

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関連かんれん文献ぶんけん

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  • Piérard-Franchimont C, Goffin V, Decroix J, Piérard GE (2002). “A multicenter randomized trial of ketoconazole 2% and zinc pyrithione 1% shampoos in severe dandruff and seborrheic dermatitis”. Skin Pharmacol. Appl. Skin Physiol. 15 (6): 434–41. doi:10.1159/000066452. PMID 12476017. 

外部がいぶリンク

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