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コン語ご

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
コン語ご
話はなされる国くに ボツワナ、ナミビア
民族みんぞく サン人じん
話者わしゃ数すう 約やく3000
言語げんご系統けいとう
言語げんごコード
ISO 639-3 nmn – ǃXóõ
Linguist List nmn Taa
Glottolog taaa1242  Taa[1]
消滅しょうめつ危険きけん度ど評価ひょうか
Definitely endangered (Moseley 2010)
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コン語ご[2]（コンご、ǃXóõ）、またはター語ご（Taa[3]）は、ボツワナおよびナミビアの約やく3000人にんの人々ひとびとによって話はなされる言語げんごである[4][5]。ツウ語族ごぞく（南部なんぶコイサン語族ごぞくとも呼よばれる）に属ぞくする。

吸着きゅうちゃく音おん（クリック）との二に重じゅう調音ちょうおんによって、膨大ぼうだいな数かずの子音しいんを持もつことで有名ゆうめいである。かつて最もっとも多おおくの子音しいんを持もつ言語げんごは北西ほくせいコーカサス語族ごぞくのウビフ語ごとされていたが、ウビフ語ごが83の子音しいんを持もつのに対たいして、コン語ごは122の子音しいんを持もつとされる[4]。ただし音韻おんいん的てき解釈かいしゃくによって子音しいんの数かずは異ことなる。

南部なんぶコイサン語族ごぞくは5つの吸着きゅうちゃく音おんを持もち、ほかの言語げんごよりも吸着きゅうちゃく音おんの種類しゅるいが多おおい。コン語ごは南部なんぶコイサン語族ごぞくのうち現在げんざいも言語げんご社会しゃかいが残のこっている事実じじつ上じょう唯一ゆいいつの言語げんごである[6][4]。

コン語ごの話者わしゃはサン人じんとも呼よばれる南部なんぶアフリカの人々ひとびとに属ぞくする。かつては狩猟しゅりょう採集さいしゅう民みんだったが、現在げんざいの生活せいかつは多様たようである[7]。

コン語ごの話者わしゃは、自分じぶんの言語げんごを「Taa-ǂaan」と呼よぶ。「taa」は人間にんげんを意味いみし、「ǂaan」は言葉ことばを意味いみする[7]。

ユネスコは危機ききに瀕ひんする言語げんごのうち「危険きけんな言語げんご」(definitely endangered)に分類ぶんるいしている[3]。

音声おんせい

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コン語ごは吸着きゅうちゃく音おんの多用たようによってよく知しられる。吸着きゅうちゃく音おんを含ふくむ語彙ごいの割合わりあいは70%を越こえる[8][9]。

コン語ごは非常ひじょうに多おおくの子音しいんを持もつが、いくつ子音しいんがあるかは学者がくしゃによって見解けんかいが異ことなる。子音しいんの数かずが多おおくなるのは吸着きゅうちゃく音おんとそれに伴ともなう軟口蓋なんこうがい音おんまたは口蓋垂こうがいすい音おん（クリック伴とも音おんと呼よばれる）との二に重じゅう調音ちょうおんによるためだが、1938年ねんのビーチによる古典こてん的てきな研究けんきゅう[10]以来いらい、二に重じゅう調音ちょうおん全体ぜんたいをひとつの音素おんそと見みなしていたのに対たいし、トレイル (Anthony Traill (linguist)) はこれらを子音しいん連続れんぞくと解釈かいしゃくすべきだと主張しゅちょうした。この考かんがえでは、たとえば[kǃxʼ][11]という子音しいんは、/kǃ/（歯茎はぐき吸着きゅうちゃく音おん）と/kxʼ/（破やぶ擦ず的てき軟口蓋なんこうがい放出ほうしゅつ音おん）の子音しいん連続れんぞくと解釈かいしゃくされる[12]。ギュルデマンや中川なかがわ裕ひろしらは子音しいん連続れんぞく説せつを支持しじしている[13]。全体ぜんたいをひとつの音素おんそとする解釈かいしゃくによれば122の子音しいんがあるが、この解釈かいしゃくによれば、子音しいんの数かずは88ほどに減少げんしょうする[4]。

コン語ごは吸着きゅうちゃく音おん種しゅを5種類しゅるい(ʘ, ǀ, ǃ, ǂ, ǁ)とクリック伴とも音おんを17種類しゅるい持もつ。この組くみ合あわせによって全部ぜんぶで83種類しゅるいのクリック子音しいんが存在そんざいする（理論りろん的てきには85種類しゅるいになるが、ɢʘʼ, ɢǂʼが存在そんざいしないため）[14][15]。このうち11、12、13、14、17番ばんの伴とも音おんは子音しいん連続れんぞくと見みなした方ほうがよい[16]。

両りょう唇くちびる吸着きゅうちゃく音おん 歯は吸着きゅうちゃく音おん 歯茎はぐき吸着きゅうちゃく音おん 硬かた口蓋こうがい歯茎はぐき吸着きゅうちゃく音おん 歯茎はぐき側面そくめん吸着きゅうちゃく音おん
1 ɡʘ ɡǀ ɡǃ ɡǂ ɡǁ
2 kʘ kǀ kǃ kǂ kǁ
3 kʘʰ kǀʰ kǃʰ kǂʰ kǁʰ
4 ɢʘ ɢǀ ɢǃ ɢǂ ɢǁ
5 qʘ qǀ qǃ qǂ qǁ
6 ŋʘ ŋǀ ŋǃ ŋǂ ŋǁ
7 ŋ̥ʘ ŋ̥ǀ ŋ̥ǃ ŋ̥ǂ ŋ̥ǁ
8 ʔŋʘ ʔŋǀ ʔŋǃ ʔŋǂ ʔŋǁ
9 ŋ̥ʘʰ ŋ̥ǀʰ ŋ̥ǃʰ ŋ̥ǂʰ ŋ̥ǁʰ
10 kʘˣ kǀˣ kǃˣ kǂˣ kǁˣ
11 ɡʘkx ɡǀkx ɡǃkx ɡǂkx ɡǁkx
12 kʘʼqʼ kǀʼqʼ kǃʼqʼ kǂʼqʼ kǁʼqʼ
13 ɡʘqʼ ɡǀqʼ ɡǃqʼ ɡǂqʼ ɡǁqʼ
14 ɡʘh ɡǀh ɡǃh ɡǂh ɡǁh
15 kʘʔ kǀʔ kǃʔ kǂʔ kǁʔ
16 qʘʼ qǀʼ qǃʼ qǂʼ qǁʼ
17 ɢǀh ɢǃh ɢǂh

吸着きゅうちゃく音おん以外いがいの西部せいぶコン語ごの子音しいん体系たいけいは以下いかのようになる[4]。

非ひ吸着きゅうちゃく音おん
唇音しんおん 歯茎はぐき音おん 歯茎はぐき破やぶ擦ず音おと 軟口蓋なんこうがい音おん 口蓋垂こうがいすい音おん 口蓋垂こうがいすい破やぶ擦ず音おと 声門せいもん音おん
破裂はれつ音おん p ph b bh t th d dh ts tsh dz dzh k ɡ kh ɡh q ɢ qh ɢh (ʔ)
放出ほうしゅつ音おん pʼ tʼ tsʼ dzʼ kʼ ɡʼ qʼ ɢʼ qχかいʼ ɢχかいʼ
鼻音びおん m n ɲ ŋ
声門せいもん化か鼻音びおん ʔm ʔn
摩擦音まさつおん f s χかい h
接近せっきん音おん w j
側面そくめん音おん l
はじき音おん ɾ

母音ぼいんも複雑ふくざつであり、通常つうじょうの母音ぼいん（aなど）のほかに咽頭いんとう化か母音ぼいん（aˤ）、strident vowel（）、息いきもれ声ごえ母音ぼいん（a̤）の区別くべつがある[17]。このうちstrident vowelは咽頭いんとう化かの程度ていどをさらに甚はなはだしくした母音ぼいんで、喉頭蓋こうとうがいの速はやい振動しんどう（ふるえ音おん）をともなう[18]。

文法ぶんぽう

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名詞めいしがいくつかのクラスに分わかれ、動詞どうしや前置詞ぜんちしとその目的もくてき語ごの間あいだなどでクラスを一致いっちさせる[4]。

方言ほうげん

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コン語ごはボツワナで話はなされる東部とうぶコン語ごと、ナミビアで話はなされる西部せいぶコン語ごに分わけられる[3][13]。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Taa”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/taaa1242 
  2. ^ 『言語げんご学がく大だい辞典じてん』の「コイサン語族ごぞく」の項こう（第だい1巻かん1662-1672ページ、加賀谷かがや良平りょうへい）では「コオ」と書かかれているが、中川なかがわ(1998) p.53で「コン語ご」としているのに従したがう
  3. ^ a b c UNESCO Atlas of the World's Languages in Danger, http://www.unesco.org/culture/languages-atlas/en/atlasmap/language-id-1441.html 
  4. ^ a b c d e f TAA: Language, Documentation of endangered languages, http://dobes.mpi.nl/projects/taa/language/ 
  5. ^ UNESCOでは約やく4000人にんとする
  6. ^ 中川なかがわ(1998) p.57
  7. ^ a b TAA: People, Documentation of endangered languages, http://dobes.mpi.nl/projects/taa/people/ 
  8. ^ 中川なかがわ(1998) p.53
  9. ^ Ladefoged & Maddieson (1996) p.246
  10. ^ Beach, D.M. (1938). The Phonetics of the Hottentot Language. W. Heffer & Sons 
  11. ^ Ladefoged & Maddieson (1996) p.271 によると[kǃʼqʼ]の方言ほうげん音おん
  12. ^ Nakagawa (1991) pp.60-61
  13. ^ a b 中川なかがわ(2016) pp.290-293
  14. ^ 中川なかがわ(1998) p.60
  15. ^ Ladefoged & Maddieson (1996) pp.264-269
  16. ^ Ladefoged & Maddieson (1996) pp.269-273
  17. ^ Ladefoged & Maddieson (1996) pp.308-310
  18. ^ Ladefoged & Maddieson (1996) pp.310-312

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Ladefoged, Peter; Maddieson, Ian (1996). The Sounds of the World's Languages. Oxford: Wiley-Blackwell. ISBN 978-0631198154。
  • Nakagawa, Hiroshi (1991). “A first report on the click accompaniments of ǀGui”. Journal of the International Phonetic Association 26 (1): 41-54. 
  • 中川なかがわ裕ひろし「コイサン諸語しょごのクリック子音しいんの記述きじゅつ的てき枠組わくぐみ(<特集とくしゅう>アフリカ諸語しょごの音声おんせい)」『音声おんせい研究けんきゅう』第だい2巻かん第だい3号ごう、日本にっぽん音声おんせい学会がっかい、1998年ねん、52-62頁ぺーじ、CRID 1390282679764935168、doi:10.24467/onseikenkyu.2.3_52、ISSN 13428675。 
  • 中川なかがわ裕ひろし「コイサン音韻おんいん類型るいけい論ろん：初期しょき報告ほうこく」『日本にっぽん言語げんご学会がっかい第だい153回かい大会たいかい予稿よこう集しゅう』2016年ねん、290-293頁ぺーじ。 

外部がいぶリンク

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