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サンじん

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サン
San
サンじん集落しゅうらく
そう人口じんこう
やく9まんにん
ボツワナの旗 ボツワナやく5まん5000にん
ナミビアの旗 ナミビアやく2まん7000にん
南アフリカ共和国の旗 みなみアフリカ共和きょうわこくやく1まんにん
居住きょじゅう地域ちいき
南部なんぶアフリカ
言語げんご
コイサン語族ごぞく
宗教しゅうきょう
多神教たしんきょう[1]
関連かんれんする民族みんぞく
コイコイじん

  1. ^ サンじん宗教しゅうきょう参照さんしょう
サンじん男性だんせい

サンじん(サンじん、San)は、南部なんぶアフリカカラハリ砂漠さばく狩猟しゅりょう採集さいしゅう民族みんぞくである。砂漠さばく狩猟しゅりょう採集さいしゅう民族みんぞく大変たいへんすくなく現在げんざいではこのサンじんぐらいしかいない。

かつて3000〜2000ねんまえくらいまでは、南部なんぶアフリカからひがしアフリカにかけてひろ分布ぶんぷしていた。しかし、バントゥーけい人々ひとびと白人はくじん進出しんしゅつにより激減げきげんし、現在げんざいはカラハリ砂漠さばくのこっているだけである。近年きんねん遺伝子いでんし解析かいせきでは人類じんるい祖先そせんされている[1][2]サバンナ生活せいかつするサンじんは「地球ちきゅう最古さいこ人類じんるい」ともばれ、移動いどうする狩猟しゅりょう採集さいしゅう民族みんぞくとして20世紀せいきにはすうおおくの生態せいたい人類じんるいがくもの観察かんさつ対象たいしょうとなった[3]

概要がいよう

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人口じんこうやく10まんにん[4]言語げんごコイサン語族ごぞく吸着きゅうちゃくおんあるいはクリックおん舌打したうちをするようにして発音はつおんされるおと)とよばれる類型るいけい分類ぶんるいされる非常ひじょう多様たようおと普通ふつう子音しいんとして使用しようする言語げんごである。言葉ことば構成こうせいする音素おんそ世界せかい最多さいたの200以上いじょうであり、世界一せかいいちむずかしい言語げんごわれる(日本語にほんご音素おんそは21・英語えいご音素おんそは46)。コイコイじんとは身体しんたい特性とくせい言語げんご文化ぶんかなどいちじるしく類似るいじしている。

呼称こしょう

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かつてオランダじんにより Bosjesmanやぶみん)とづけられ、英訳えいやくされブッシュマンBushman)となったが、侮蔑ぶべつふくかたであるとされる。しかし研究けんきゅうしゃやサンじん自身じしんなかには、「カラハリの叢林そうりん自由じゆうじん」という意味いみめてブッシュマンとひともいる。

サン (San) またはサーン (Sann, Sān) は、コイコイじんナマじんによるである。これらは通性つうせい複数ふくすうだが、男性だんせい複数ふくすうのサンクア(サンカ) (Sanqua)・ソアクア (Soaqua)・ソンクア (Sonqua) でもばれる。これらは英語えいごオランダでは17世紀せいきごろまで使つかわれていたふるで、18世紀せいきにブッシュマンにってわられた。しかし1970年代ねんだいから政治せいじてきただしさによりブッシュマン(このには性別せいべつ問題もんだいもある)が忌避きひされると、ふたたび「サン」が使つかわれはじめた。 ツワナ起源きげんのマサルワ (Masarwa) またはバサルワ[4](Basarwa) でもばれ、サン同様どうよう、1970年代ねんだいからブッシュマンにわりバサルワが使つかわれはじめた。

北部ほくぶ住民じゅうみんはクン (!Kung) ともばれる。

身体しんたいてき遺伝いでんてき特徴とくちょう

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平均へいきん身長しんちょう男子だんしやく155cmとてい身長しんちょうであるものの身長しんちょう150cm以下いかピグミーではない。毛髪もうはつ極端きょくたんちぢれたで、内部ないぶ多量たりょう脂肪しぼう組織そしき蓄積ちくせきのために後方こうほう突出とっしゅつしている臀部でんぶっている。皮膚ひふ褐色かっしょくでしわがおおく、突出とっしゅつした頬骨ほおぼねをもつ。人種じんしゅ5だい区分くぶんではカポイドとされる。アフリカの最古さいこ住民じゅうみんであるとかんがえられており、もっとふるくに分岐ぶんきしたY染色せんしょくたいハプログループA系統けいとうこう頻度ひんどられる[5][6][7]

文化ぶんか

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言語げんご

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コイコイじんやサンじんはなコイサン諸語しょご現代げんだいではひとつの語族ごぞくとしてはみとめられていない。かつてジョーゼフ・グリーンバーグ吸着きゅうちゃくおんつアフリカしょ言語げんごのうちバントゥーぐんクシぞくさない言語げんごをひとまとめにして「コイサン語族ごぞく」としたが、ウェストファル (Ernst Oswald Johannes Westphalはこれを否定ひていし、南部なんぶアフリカのコイサン諸語しょごをホッテントット、ジュ(Ju)、タア(Taa)、クィ(ǃwi)の4つの語族ごぞくけた[8]現在げんざいではこのうちタアとクィはひとつの語族ごぞくにまとめられ、Kx'a北部ほくぶ)、Khoe中部ちゅうぶ)、Tuu南部なんぶ)の3つの語族ごぞくけられている。このうちKhoeは基本きほんてきにコイコイじん(ホッテントット)の言語げんごであるが、サンじん一部いちぶ言語げんごもここにぞくする[9]

社会しゃかい

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親族しんぞく関係かんけいもとづく40–50にん単位たんいぐらいのすう家族かぞく集団しゅうだんあつまったりはなれたりしながら移動いどう生活せいかつをする。いちヶ所かしょのところに数日すうじつからいちヶ月かげつ程度ていどしかいない。そのあいだ住居じゅうきょは、半球はんきゅうじょう草葺くさぶ小屋こや簡単かんたんつくってむ。

警察けいさつ裁判さいばんにあたるものはなく、集団しゅうだんりまとめるリーダーが存在そんざいしないあたま社会しゃかいである。また、職業しょくぎょう身分みぶん地位ちいもない。おとこ狩猟しゅりょうをして、おんな採集さいしゅうするといったような性別せいべつ年齢ねんれいによる役割やくわりちがいはあるものの、社会しゃかいきずいている構成こうせいいん対等たいとう関係かんけいである。

親族しんぞく体系たいけいせい世代せだいによって二分にぶんされる。ちち兄弟きょうだいちちはは姉妹しまいははぶ。冠婚葬祭かんこんそうさい成人せいじんしきなどの通過つうか儀礼ぎれい簡単かんたんにすまし、派手はでまつりなどはおこなわない。

宗教しゅうきょう

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無数むすうかみ々の頂点ちょうてん天空てんくうしん創造そうぞうしんであるカアング、病気びょうき原因げんいんとなる悪霊あくりょうしんじているが、アニミズム(原始げんし宗教しゅうきょう)であり、統一とういつされた体系たいけいてき宗教しゅうきょうっていない。

近代きんだい影響えいきょう

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1990年代ねんだい以降いこう世界せかいてきグローバリゼーションボツワナ政府せいふ福祉ふくし向上こうじょう動植物どうしょくぶつ保護ほご、さらには鉱物こうぶつ資源しげん開発かいはつ名目めいもくとした近代きんだい政策せいさく影響えいきょうにより、中央ちゅうおうカラハリ動物どうぶつ保護ほごなどの保護ほご区域くいきがいへの定住ていじゅうすすむなど、サンじん生活せいかつおおきくわりつつある[4]21世紀せいきには農耕のうこう牧畜ぼくちくなど定住ていじゅう生活せいかつおこなっている人々ひとびと多数たすうとなり、かつてのような狩猟しゅりょう採集さいしゅう生活せいかつしているサンじんはほとんどいないとられている[10]

しかし、サンじんおおくは貨幣かへい経済けいざい生活せいかつになじめず、失業しつぎょう伝統でんとう文化ぶんか消失しょうしつなどが社会しゃかい問題もんだいしている[4]定住ていじゅうによってこるストレスと現金げんきん経済けいざい浸透しんとうから、さけからんだ暴力ぼうりょく事件じけん自殺じさつ顕著けんちょとなっている[10]

タボ・ムベキ親交しんこうがあったサンぞく指導しどうしゃダヴィド・クルイパーみなみアフリカのアパルトヘイト廃止はいしながれにり、1994ねん国連こくれんでサンじん代表だいひょうとしてサンじん保護ほごうったえ、1999ねんには4まんヘクタールの土地とち返還へんかん成功せいこうさせている[11]

保護ほご区域くいきないにおいても、自生じせいするフーディアなどの薬用やくよう植物しょくぶつ採取さいしゅや、オリックスなどの動物どうぶつ狩猟しゅりょう違法いほうとされ逮捕たいほされる事例じれい相次あいついでいる[4]。フーディア製品せいひん商品しょうひんユニリーバしゃなどがたか利益りえきをあげているが、地元じもとへの還元かんげんはなく社会しゃかい問題もんだいになっている。

サンじんをテーマにした作品さくひん

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Gill, Victoria (1 May 2009). "Africa's genetic secrets unlocked" (online edition). BBC World News (British Broadcasting Corporation). Archived from the original on July 1, 2009. Retrieved 2009-09-03.
  2. ^ Rincon, Paul (24 April 2008). "Human line 'nearly split in two'". BBC News. Retrieved 2009-12-31.
  3. ^ 池谷いけがや和信かずのぶ人間にんげんにとってスイカとはなにか:カラハリ狩猟しゅりょうみんかんがえる』臨川りんせん書店しょてん 2014ねんISBN 9784653042358 pp.14-15
  4. ^ a b c d e 中西なかにし賢司けんじ「ブッシュマン逮捕たいほ続々ぞくぞく」『読売新聞よみうりしんぶん』2009ねん10がつ3にちづけ朝刊ちょうかん、13はん、8めん
  5. ^ Wood, Elizabeth T et al 2005 Contrasting patterns of Y chromosome and mtDNA variation in Africa: evidence for sex-biased demographic processes; also Appendix A
  6. ^ Naidoo, Thijessen et al 2010, Development of a single base extension method to resolve Y chromosome haplogroups in sub-Saharan African populations
  7. ^ Tishkoff, Sarah A. et al 2007 History of Click-Speaking Populations of Africa Inferred from mtDNA and Y Chromosome Genetic Variation
  8. ^ 加賀谷かがや良平りょうへい「コイサン語族ごぞく」『言語げんごがくだい辞典じてん』 1かん三省堂さんせいどう、1988ねん、1662-1672ぺーじISBN 4385152152 
  9. ^ 加賀谷かがや良平りょうへい「ホッテントット」『言語げんごがくだい辞典じてん』 3かん三省堂さんせいどう、1992ねん、1087-1088ぺーじISBN 4385152179 
  10. ^ a b 池谷いけがや和信かずのぶ人間にんげんにとってスイカとはなにか:カラハリ狩猟しゅりょうみんかんがえる』臨川りんせん書店しょてん 2014ねんISBN 9784653042358 pp.149-159
  11. ^ leader Dawid Kruiper dies - Northern Cape | IOL News
  12. ^ John Marshall Ju/’hoan Bushman Film and Video Collection, 1950-2000” (英語えいご). UNESCO. 2023ねん1がつ14にち閲覧えつらん