サン・カルロ劇場げきじょう

サン・カルロ劇場げきじょう
サン・カルロ劇場げきじょう（正面しょうめん）
情報じょうほう
種別しゅべつ	歌劇かげき場じょう
開館かいかん	1737年ねん11月4日にち (1737-11-04)
所在地しょざいち	イタリア ナポリ
位置いち
外部がいぶリンク	公式こうしきサイト

サン・カルロ劇場げきじょう(イタリア語ご: Teatro di San Carlo) はイタリア・ナポリにある歌劇かげき場じょうで、劇場げきじょうとしてはヨーロッパで現役げんえき最古さいこのものである。資金しきん不足ふそくのため1874年ねん-1875年ねんのシーズンが中止ちゅうしされた以外いがい、定期ていき公演こうえんが中止ちゅうしされたことがない点てんでも特筆とくひつされる。

歴史れきし・沿革えんかく

18世紀せいき・劇場げきじょう創建そうけん

サン・カルロ劇場げきじょうは、ナポリに劇場げきじょうがあることを望のぞんだブルボン朝あさナポリ王国おうこくの初代しょだい王おうカルロ (1759年ねんに退位たいいし、ブルボン朝ちょうスペインの国王こくおうカルロス3世せいとなる)によって建造けんぞうされた。開場かいじょうは1737年ねん11月4日にち（国王こくおうの聖名せな祝日しゅくじつ）、演目えんもくはピエトロ・メタスタージオ台本だいほん、ドメニコ・サッロ音楽おんがくのオペラAchille in Sciroであった。タイトルロールのアキレウス役やくをアルト歌手かしゅのヴィットーリア・テージが歌うたった。この時ときサッロはオーケストラの指揮しきも行おこない、幕間まくあいにはグロッサテスタの2つのバレエも演えんじられた。この劇場げきじょうはその建築けんちく、金きむ装飾そうしょく、および豪華ごうか壮麗そうれいな青色あおいろ（ブルボン家かの色いろであった）の布ぬの張ちょう装飾そうしょくで有名ゆうめいとなった。

当時とうじ、ナポリのオペラは全ぜんヨーロッパでも著名ちょめいなものであった。オペラ・ブッファの領域りょういきのみならず、オペラ・セリアにおいても、レーオ、ポルポラ、トラエッタ、ピッチンニ、ヴィンチ、アンフォッシ、ドゥランテ、ヨンメッリ、チマローザ、パイジエッロ、ジンガレッリなどが活躍かつやくしていた。ナポリはヨーロッパにおける音楽おんがく上じょうの首都しゅとと見み做されており、他国たこくの作曲さっきょく家か、例たとえばハッセ、ヨハン・クリスティアン・バッハ、グルックなどもサン・カルロ劇場げきじょうをそのキャリアの頂点ちょうてんとして考かんがえていた。同様どうように、多おおくの著名ちょめいな歌手かしゅもサン・カルロ劇場げきじょうで演えんじた。"La Cochetta"という愛称あいしょうで知しられるルクレツィア・アングイアーリ、ナポリの音楽おんがく院いん出身しゅっしんのカストラートたち―カファレッリ（ガエターノ・マヨラーノ）、ファリネッリ（カルロ・ブロスキ）、ジジエッロ（ジョアッキーノ・コンティ）などである。

19世紀せいき

1816年ねん2月がつ12日にち、サン・カルロ劇場げきじょうは火事かじにより焼失しょうしつするが、両りょうシチリア王おうフェルディナンド1世せい（ナポリ王おうとしてはフェルディナンド4世せい、劇場げきじょう創設そうせつ者しゃカルロス3世せいの子こ）の命いのちにより僅わずか10か月げつにして再建さいけんされる。現在げんざいの建築けんちくはこの再建さいけん建築けんちくと基本きほん的てきには同一どういつであり、変化へんかはヴェルディの提案ていあんしたオーケストラ・ピットの設置せっち（1872年ねん）、電気でんき照明しょうめいの導入どうにゅうおよび中央ちゅうおうシャンデリアの撤廃てっぱい（1890年ねん）、入口いりくちロビー並ならびに楽屋がくや棟とうの建築けんちく、に限かぎられている。

1817年ねん1月がつ12日にち、再建さいけんされた劇場げきじょうはマイールの『パルテーノペの夢ゆめ』Il sogno di Partenopeで再さいオープンする。スタンダールはこの公演こうえんの2夜目よめを聴きいており「ヨーロッパのどこにも、この劇場げきじょうに比くらべ得えるどころか、この劇場げきじょうの素晴すばらしさの足許あしもとに及およぶところも存在そんざいしない。ここは人ひとの目めを眩惑げんわくし、ここは人ひとの魂たましいを狂喜きょうきさせる」と書かきしている。

1815年ねんから1822年ねんまで、ロッシーニはこのサン・カルロ劇場げきじょうを含ふくめたナポリ王国おうこく全すべての王立おうりつオペラ劇場げきじょうの劇場げきじょう付づけ作曲さっきょく家か・兼けん音楽おんがく監督かんとくであり、9つのオペラがこの時期じき書かかれた。『イングランドの女王じょおうエリザベッタ』(Elisabetta Regina d'Inghilterra, 1815)、『オテロ』(Otello, ossia il Moro di Venezia, 1816)、『アルミーダ』(Armida, 1817)、『エジプトのモーゼ』(Mosè in Egitto, 1818)、『湖上こじょうの美人びじん』(La Donna del Lago, 1819)、『ゼルミーラ』(Zelmira, 1822)などである。

この時期じきに定期ていき的てきに出演しゅつえんしていた著名ちょめいな歌手かしゅは、マヌエル・ガルシア 、その娘むすめマリア・マリブラン、ジュディッタ・パスタ、イサベラ・コルブラン、ジョヴァンニ・バティスタ・ルビーニ、ドメニコ・ドンツェッリなどである。またテノールの高音こうおんを競きそった有名ゆうめいなフランス人じん二に人にん―アドルフ・ヌーリとジルベール・ルイ・デュプレ（「胸むね声ごえのC」の創始そうし者しゃ）も出演しゅつえんしている。

『ゼルミーラ』の公演こうえん後ご、ロッシーニはコルブランと共ともにナポリからの逃避行とうひこうに立たつ。コルブランはその時ときまでは、サン・カルロ劇場げきじょう支配人しはいにんバルバイヤの愛人あいじんだったのだ。怒おこったバルバイヤは人気にんき上昇じょうしょう中ちゅうのイタリア人じんオペラ作曲さっきょく家かガエターノ・ドニゼッティと契約けいやくを交かわす。ロッシーニと同様どうようにナポリ王国おうこく・王立おうりつオペラ劇場げきじょう付づけ作曲さっきょく家か・兼けん音楽おんがく監督かんとくとなったドニゼッティはナポリに1822年ねんから1838年ねんまで滞在たいざい、この劇場げきじょうのために16のオペラを書かいた。『マリア・ストゥアルダ』(Maria Stuarda, 1834)、『ランメルモールのルチア』(Lucia di Lammermoor, 1835)、『ロベルト・デヴリュー』(Roberto Devereux, 1837)、『ポリウト』(Poliuto, 1838)などである。ただし『ポリウト』は検閲けんえつのためナポリでの上演じょうえんは断念だんねん、パリで『殉教者じゅんきょうしゃ』(Les Martyrs, 1840)としてフランス語ごで初演しょえんされ、『ポリウト』としての初演しょえんはドニゼッティの没後ぼつご1848年ねん11月当とう劇場げきじょうで行おこなわれた。

ジュゼッペ・ヴェルディもまたこの劇場げきじょうと縁えん深ふかい一人ひとりである。必かならずしも彼かれの傑作けっさくとは言いいがたいが、『アルツィラ』(Alzira, 1845)および『ルイザ・ミラー』(Luisa Miller, 1849)はサン・カルロ劇場げきじょうのために書かかれた作品さくひんである。『仮面かめん舞踏ぶとう会かい』(Un Ballo in Maschera)も本来ほんらいはこの劇場げきじょうのためのオペラだったが、スウェーデン国王こくおうが暗殺あんさつされるという筋書すじがき自体じたいが王国おうこくであるナポリでは検閲けんえつで不ふ許可きょかとされ、舞台ぶたいをアメリカ・ボストンに、初演しょえん地ちもローマに変更へんこうしての公演こうえんとなった。

20世紀せいき以降いこう

20世紀せいきに入はいって、サン・カルロは革新かくしん的てきな支配人しはいにんアウグスト・ラグーナを迎むかえる。彼かれは1920年ねんからの10シーズンをすべてワーグナー作品さくひんで開幕かいまくするという、当時とうじのイタリアでは異例いれいのプログラムを組くみ、またリッカルド・ザンドナーイ作曲さっきょく、ガブリエーレ・ダンヌンツィオ脚本きゃくほんのオペラ「フランチェスカ・ダ・リミニ」(Francesca da Rimini, 1921)などの新作しんさくオペラの初演しょえんにも熱心ねっしんだった。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんで大おおきな損害そんがいがなかったことも幸さいわいして、サン・カルロ劇場げきじょうは戦後せんごいち早はやくイギリスへの引越ひっこし公演こうえん（1946年ねん）を行おこなうなど、オペラ劇場げきじょうとしての機能きのうを回復かいふくした。その革新かくしん的てき伝統でんとうは戦後せんごも継続けいぞくし、たとえばアルバン・ベルクの「ヴォツェック」のイタリア初演しょえん（1949年ねん、カール・ベーム指揮しき）などが行おこなわれている。

2005年ねんには日本にっぽんへの引越ひっこし公演こうえんも行おこなわれた。

外部がいぶリンク

• サン・カルロ劇場げきじょう公式こうしきサイト