ジェフリー・サックス

ジェフリー・サックス

ニューケインジアン経済けいざい学がく
ブラジルブラジリアにて2005年ねんのサックス
生誕せいたん	(1954-11-05) 1954年ねん11月5日にち（69歳さい） ミシガン州しゅうデトロイト
国籍こくせき	アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
研究けんきゅう機関きかん	コロンビア大学ころんびあだいがく
研究けんきゅう分野ぶんや	政治せいじ経済けいざい学がく, 国際こくさい開発かいはつ論ろん
母校ぼこう	ハーバード大学だいがく
影響えいきょうを 受うけた人物じんぶつ	ポール・サミュエルソン ジョン・メイナード・ケインズ
論敵ろんてき	William Easterly Dambisa Moyo
影響えいきょうを 与あたえた人物じんぶつ	ヌリエル・ルビーニ ピーター・ダイアモンド
実績じっせき	ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト

ジェフリー・サックス（英語えいご: Jeffrey David Sachs, 1954年ねん11月5日にち - ）は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの経済けいざい学者がくしゃ（開発かいはつ経済けいざい学がく、国際こくさい経済けいざい学がく）。ミシガン州しゅうデトロイト出身しゅっしん。コロンビア大学ころんびあだいがく地球ちきゅう研究所けんきゅうじょ長ちょう（Earth Institute）を務つとめ、国連こくれんミレニアムプロジェクトのディレクターも兼務けんむしている。全米ぜんべい経済けいざい研究所けんきゅうじょ研究けんきゅう員いん、Millenium Promiseの代表だいひょうおよび共同きょうどう創設そうせつ者しゃでもある。

概要がいよう

医師いしが患者かんじゃの病気びょうきを診断しんだんするのと同おなじように、地理ちり的てき・歴史れきし的てき背景はいけいを考慮こうりょして途上とじょう国こくの現状げんじょうを詳くわしく分析ぶんせきしそれに適てきした途上とじょう国こく経済けいざい開発かいはつの援助えんじょをすべきだとするClinical Economics（臨床りんしょう経済けいざい学がく）提唱ていしょうしている。その中なかでも、アフリカ諸国しょこくの経済けいざいにおいては、特とくに、AIDSやマラリア等とうの医療いりょう援助えんじょが経済けいざい発展はってんに欠かかせないとし、医療いりょう分野ぶんやへの援助えんじょ、投資とうし等とうを推奨すいしょうしている。

これまで、ラテンアメリカ、東欧とうおう、ユーゴスラビア、ロシア政府せいふの経済けいざい顧問こもんを歴任れきにん、特とくにボリビア、ポーランド、ロシアの経済けいざい危機ききへの解決かいけつ策さくのアドバイスやIMF、世界銀行せかいぎんこう、OECD、WHO、国連こくれん開発かいはつ計画けいかく等ひとしの国際こくさい機関きかんを通つうじた貧困ひんこん対策たいさく、債務さいむ削減さくげん、エイズ対策たいさく等とうへの積極せっきょく的てきな活動かつどうを行おこなっている。

タイムマガジンのタイム100に連続れんぞくしてノミネートされており、2015年ねんにはブループラネット賞しょうを受賞じゅしょうした。

2008年ねん大統領だいとうりょう選挙せんきょにサックスを擁立ようりつする目的もくてきのNGOが設立せつりつされた。

労働ろうどう者しゃの福利ふくり向上こうじょうを目指めざし、ジョセフ・スティグリッツやローラ・タイソン、ロバート・ライシュらと協同きょうどうして、米国べいこく議会ぎかいへ2014年度ねんどまでに現行げんこうの時給じきゅう7.25ドルから9.80ドルへの最低さいてい賃金ちんぎん引ひき上あげを求もとめる手紙てがみを送おくっている。

経歴けいれき

• 1976年ねん：ハーバード大学だいがく 学士がくし（summa cum laude）
• 1978年ねん：ハーバード大学だいがく 修士しゅうし
• 1980年ねん：ハーバード大学だいがく 博士はかせ、助教授じょきょうじゅ就任しゅうにん
• 1982年ねん：ハーバード大学だいがく 准じゅん教授きょうじゅ就任しゅうにん
• 1983年ねん：ハーバード大学だいがく 教授きょうじゅ就任しゅうにん（Galen L.Stone Professor of International Trade）
• 2002年ねん：コロンビア大学ころんびあだいがく 教授きょうじゅ就任しゅうにん（地球ちきゅう研究所けんきゅうじょ所長しょちょう）
• 2003年ねん：コロンビア大学ころんびあだいがく Quetelet Professor Of Sustainable Development就任しゅうにん

主張しゅちょう

TPP

経済けいざい政策せいさくの目標もくひょうは低てい所得しょとく者しゃや中ちゅう間あいだ層そうを含ふくめた社会しゃかいのすべての階層かいそうの暮くらし向むきを良よくすることである。 ゆえに、貧者ひんじゃや労働ろうどう者しゃを犠牲ぎせいにして富裕ふゆう層そうを利りするような協定きょうていには懐疑かいぎ的てきになるべきであるとサックスは述のべる。

ISDSや過度かどなコピーライトはサックスにとっても懸念けねん事項じこうである。TPP以前いぜんの貿易ぼうえき協定きょうていでも米国べいこくは(社会しゃかい的てき便利べんりさを越こえた)コピーライトの長期間ちょうきかん保護ほごや強つよい知的ちてき財産ざいさん権けんを主張しゅちょうし、大だい規模きぼな製薬せいやく会社かいしゃを利りするようなことを行おこなってきた。そして既すでに様々さまざまな企業きぎょうが既存きそんのISDSを利用りようして政府せいふを揺ゆさぶっているが、TPPに含ふくまれているISDSは危険きけん度ど・不ふ必要ひつようさが以前いぜんより大おおきく、当該とうがい国家こっかの法体ほうたい系けいへの打撃だげきになるとサックスは述のべる。

最もっとも失望しつぼうさせる事項じこうは、TPPには環境かんきょうや労働ろうどうの章あきらすらないことである。TPP推進すいしん者しゃらは労働ろうどう基準きじゅんや環境かんきょうを大事だいじにすると毎回まいかい言いうにもかかわらずである。 気候きこう変動へんどうに関かんしては検討けんとうすらされていない。米国べいこく議会ぎかいはそのTPPにNOを突つきつけるべきだとサックスは結論けつろんづける。

中国共産党ちゅうごくきょうさんとう

2018年ねん12月、ファーウェイの最高さいこう財務ざいむ責任せきにん者しゃである孟はじめ晩ばん舟ふねが、対たいイラン経済けいざい制裁せいさい違反いはん容疑ようぎでアメリカの要請ようせいによりカナダで逮捕たいほされたことについて、中国ちゅうごく封ふうじ込こめの一環いっかんであるとし、孟はじめの引ひき渡わたしを求もとめるアメリカを偽善ぎぜんと非難ひなんした。サックスは、制裁せいさい措置そちに違反いはんして罰金ばっきんを科かせられたアメリカ企業きぎょう幹部かんぶは逮捕たいほされていないと主張しゅちょうしている。この記事きじで批判ひはんを受うけたサックスは、26万まん人にんのフォロワーがいたTwitterアカウントを閉鎖へいさした。アジア・ソサエティのフェローであるアイザック・ストーン・フィッシュは、サックスがファーウェイのポジションペーパーに序文じょぶんを書かいていることを指摘してきし、サックスがファーウェイから報酬ほうしゅうを得えているのではないかと疑問ぎもん視ししたが、サックスは報酬ほうしゅうを受うけ取とっていないと述のべた。

2020年ねん6月がつ、サックスはアメリカによるファーウェイ標的ひょうてきは安全あんぜん保障ほしょうだけが目的もくてきではないと述のべた。サックスがアメリカ政府せいふが偽善ぎぜん的てき口実こうじつでファーウェイを悪者わるものにしていると非難ひなんしていることについて、2020年ねんに出版しゅっぱんされた『ヒドゥン・ハンド』のなかで、著者ちょしゃのクライブ・ハミルトンとマレイケ・オールバーグは、サックスがファーウェイとの密接みっせつな関係かんけいを持もっていなければ、サックスの主張しゅちょうは有意義ゆういぎで影響えいきょう力りょくがあったであろうとコメントしているが、これはサックスがファーウェイの「デジタルの未来みらいを共有きょうゆうするためのビジョン」を支持しじしていることを指さしている。また、ハミルトンとオールバーグは、サックスが中国ちゅうごく政府せいふやCEFCチャイナ・エナジーとの「ズブズブの関係かんけい」にあると述のべている。

2021年ねん1月がつのインタビューで、サックスはインタビュアーからの中国ちゅうごくのウイグル人じんに対たいする抑圧よくあつについての質問しつもんを「アメリカが犯おかした巨大きょだいな人権じんけん侵害しんがい」に言及げんきゅうすることで回避かいひした。その後ご、19の人権じんけん団体だんたいが共同きょうどうでコロンビア大学ころんびあだいがくにサックスの発言はつげんを問題もんだい視しする書簡しょかんを送付そうふした。書簡しょかんの署名しょめい者しゃたちは、サックスは、アメリカの人権じんけん侵害しんがいの歴史れきしに話はなしを逸そらすことで、中国ちゅうごくのウイグル人じんに対たいする抑圧よくあつを相対そうたい化かするという中国ちゅうごく外務省がいむしょうと全まったく同おなじロジックを用もちい、さらに中国ちゅうごく政府せいふに抑圧よくあつされた人々ひとびとの視点してんを矮小わいしょう化かすることで、「中国ちゅうごく政府せいふの視点してんを強調きょうちょうし、その政府せいふによって抑圧よくあつされている人々ひとびとの視点してんを矮小わいしょう化かすることによって、サックス教授きょうじゅは自みずからの組織そしきのミッションを裏切うらぎっている」と批判ひはんしている。『ザ・グローバリスト』の編集へんしゅう長ちょうであるステファン・リクターとJ.D.ビンデナゲルは、サックスが「古典こてん的てきな共産きょうさん主義しゅぎのプロパガンダ策略さくりゃく」を積極せっきょく的てきに推進すいしんしていると批判ひはんしている。

2021年ねん4月がつ、ウィリアム・シャバス（ミドルセックス大学だいがく）とともに、『PROJECT SYNDICATE』に寄稿きこうし、アメリカ国務省こくむしょうが中国ちゅうごく政府せいふによる新疆しんきょうウイグル自治じち区くにおけるウイグル人じん抑圧よくあつを「ジェノサイド」であり、かつ「人道じんどうに対たいする罪つみ」に認定にんていしたことを「薄うすっぺらい」と批判ひはんし、アメリカ国務省こくむしょうから提供ていきょうされたジェノサイドの証拠しょうこは何なにもないと述のべ、「アメリカ国務省こくむしょうがジェノサイドの告発こくはつを立証りっしょうできない限かぎり、告発こくはつを撤回てっかいすべきである」と主張しゅちょうしている。

『ナショナル・レビュー』によると、サックスは「中国共産党ちゅうごくきょうさんとうを含ふくむ権威けんい主義しゅぎ体制たいせいに寛容かんような態度たいどで長年ながねん意見いけんを述のべてきた」「COVID-19の起源きげん、世界せかいにおける中国ちゅうごくの役割やくわり、ウイグル人じん大量たいりょう虐殺ぎゃくさつなど、多おおくの問題もんだいで日常にちじょう的てきに北京ぺきんの路線ろせんを採用さいようしている」としている。2022年ねん、台湾たいわんの唐から奨すすむを受賞じゅしょう。

著書ちょしょ

日本語にほんご訳やく

• （フィリップ・ラレーンと共著きょうちょ）『マクロエコノミクス』（上うえ・下巻げかん）、石井いしい菜穂子なほこ・伊藤いとう隆敏たかとし共とも訳やく、日本にっぽん評論ひょうろん社しゃ、1996年ねん
• 『世界せかいを動うごかす　ケネディが求もとめた平和へいわへの道みち』、櫻井さくらい祐子ゆうこ訳やく、早川書房はやかわしょぼう、2014年ねん
• Sachs, Jeffrey (October 4, 2011). The Price of Civilization: Reawakening American Virtue and Prosperity, Random House ISBN 978-1400068418
  • 『世界せかいを救すくう処方箋しょほうせん――「共感きょうかんの経済けいざい学がく」が未来みらいを創つくる』、野中のなか邦子くにこ・高橋たかはし早苗さなえ共ども訳やく、早川書房はやかわしょぼう、2012年ねん（原題げんだい　"The Price of Civilization"）
• Sachs, Jeffrey (2008). Common Wealth: Economics for a Crowded Planet ISBN 978-0-713-99919-8
  • 『地球ちきゅう全体ぜんたいを幸福こうふくにする経済けいざい学がく――過密かみつ化かする世界せかいとグローバル・ゴール』、野中のなか邦子くにこ訳わけ、早川書房はやかわしょぼう、2009年ねん
• Sachs, Jeffrey (2005). The End of Poverty: Economic Possibilities for Our Time, Penguin Press Hc ISBN 1-59420-045-9 (貧困ひんこんの終焉しゅうえんの原著げんちょ)
  • 『貧困ひんこんの終焉しゅうえん――2025年ねんまでに世界せかいを変かえる』、鈴木すずき主税ちから・野中のなか邦子くにこ共とも訳やく、早川書房はやかわしょぼう、2006年ねん ISBN 978-4150504045。ハヤカワ文庫ぶんこ、2014年ねん
• Sachs, Jeffrey (2003). Macroeconomics in the Global Economy, Westview Press ISBN 0-631-22004-6
• Sachs, Jeffrey (2002). A New Global Effort to Control Malaria (Science), Vol. 298, October 4, 2002
• Sachs, Jeffrey (2002). Resolving the Debt Crisis of Low-Income Countries (Brookings Papers on Economic Activity), 2002:1
• Sachs, Jeffrey (2001). The Strategic Significance of Global Inequality (The Washington Quarterly), Vol. 24, No. 3, Summer 2001
• Sachs, Jeffrey (1997). Development Economics Blackwell Publishers ISBN 0-8133-3314-8
• Sachs, Jeffrey and Pistor, Katharina. (1997). The Rule of Law and Economic Reform in Russia (John M. Olin Critical Issues Series (Paper)) Westview Press ISBN 0-8133-3314-8
• Sachs, Jeffrey (1994). Poland's Jump to the Market Economy (Lionel Robbins Lectures) The MIT Press ISBN 0-262-69174-4
• Sachs, Jeffrey (1993). Macroeconomics in the Global Economy Prentice Hall ISBN 0-13-102252-0
• Sachs, Jeffrey (ed) (1991). Developing Country Debt and Economic Performance, Volume 1 : The International Financial System (National Bureau of Economic Research Project Report) University of Chicago Press ISBN 0-226-73332-7
• Sachs, Jeffrey and Warwick McKibbin Global Linkages: Macroeconomic Interdependence and Co-operation in the World Economy, Brookings Institution, June, 277 pages. (ISBN 0-8157-5600-3)
• Sachs, Jeffrey (ed) (1989). Developing Country Debt and the World Economy (National Bureau of Economic Research Project Report) University of Chicago Press ISBN 0-226-73338-6
• Bruno, Michael and Sachs, Jeffrey (1984), "Stagflation in the World Economy"

関連かんれん項目こうもく

• レシェク・バルツェロヴィチ

外部がいぶリンク

• 公式こうしきウェブサイト